【医師・臨床心理士監修】アダルトチルドレンのカウンセリングとは?

この記事のポイント

  • アダルトチルドレンの生きづらさの正体と、その背景にある幼少期の体験との関連性がわかります。
  • カウンセリングがなぜ有効なのか、具体的な効果やプロセス、代表的な心理療法が理解できます。
  • 医師の視点から、信頼できるカウンセラーや相談機関の選び方、費用、公的支援の活用法まで具体的にわかります。

目次

導入

「なぜかいつも人間関係でつまずく」

「常に他人の顔色をうかがって疲れてしまう」

「自分に自信が持てず、漠然とした生きづらさを感じる」

長年このような悩みを抱え、その原因が分からずに自分を責めていないでしょうか。

最近「アダルトチルドレン(AC:Adult Children)」という言葉を知り、「もしかして自分のことかもしれない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

アダルトチルドレンとは、子ども時代に安心できるはずの家庭が機能不全に陥っており、心に傷を抱えたまま大人になった人々のことです。その結果として生じる生きづらさは、決してあなたの性格の問題ではありません。

この記事では、医師の監修のもと、アダルトチルドレンの生きづらさの根本原因から、その有効な解決策であるカウンセリングについて、以下の点を網羅的に解説します。

  • アダルトチルドレンの正確な意味と特徴(自己診断チェックリスト付)
  • カウンセリングの具体的な効果、プロセス、代表的な心理療法
  • 後悔しないための信頼できるカウンセラーの選び方
  • 費用相場や保険適用、公的支援の活用法
  • 仕事や恋愛など、ケース別の悩みを乗り越えるためのアプローチ

本記事を最後までお読みいただくことで、長年の悩みの正体を理解し、自分を責める気持ちから解放されるでしょう。

そして、カウンセリングという具体的な一歩を踏み出し、自分らしい穏やかな人生を取り戻すための道筋が見えてくるはずです。

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アダルトチルドレンとは【意味・特徴がわかるチェックリスト付】

アダルトチルドレンの心の中にいるインナーチャイルドのイメージ

アダルトチルドレン(AC)とは、子ども時代に安心できる家庭で過ごせなかったことが原因で、大人になってからも生きづらさを抱えている状態を指す言葉です。

病気ではありませんが、放置するとメンタルヘルスの不調につながる可能性があるため、専門家による適切なケアが重要と考えられています。

アダルトチルドレンの簡潔な定義

アダルトチルドレン(AC)とは、子ども時代に機能不全家族で育ったため、成人後も生きづらさを抱えている人を指す概念です。

機能不全家族とは、家族が本来持つべき安心感や愛情、支えといった機能がうまく働いていない家族のことです。

困難な環境を生き抜くために身につけた思考や行動パターンが、大人になった後に対人関係や自己肯定感の低さなどの生きづらさにつながります。

アダルトチルドレンは、医学的な診断名ではなく状態を表すものですが、その生きづらさからメンタルヘルス不調につながるケースもあります。

自分の傾向を知るための自己診断チェックリスト

まず、自分がアダルトチルドレンに当てはまるかを客観的に把握するため、以下の項目をチェックしてみましょう。

なお、「何項目以上でアダルトチルドレンに該当する」という明確な基準はありません。加えて、このチェックリストは医学的な診断を下すものではなく、あくまで自己理解を深めるための手がかりです。

  • 他人からどう思われるかが常に気になる
  • 人に頼みごとをするのが苦手で、何でも自分で抱え込んでしまう
  • 自分の意見を主張したり、「NO」と言ったりすることに強い罪悪感を感じる
  • 完璧でなければならない、少しの失敗も許されないと感じる
  • 自分が本当に何を感じているのか、何をしたいのかがよく分からない
  • 理由のない孤独感や、見捨てられることへの強い不安がある
  • 人との親密な関係を築くのが怖い、または過度に依存してしまう
  • 場の空気を読みすぎて、いつもおどけて明るく振る舞ってしまう
  • 問題が起きると「自分のせいだ」と過剰に自分を責めてしまう
  • 白か黒か、0か100かといった極端な考え方をしがちである

大切なのは項目の数そのものよりも、自分の生きづらさとどれだけ内容が重なるかです。もし、多くの項目に「自分のことだ」と感じる場合は、それだけ幼少期の経験が現在のあなたに広く影響を及ぼしている可能性を示唆しています。

アダルトチルドレンは病気ではないが、専門家のケアが重要な原因

前述のとおり、アダルトチルドレンは医学的な病気として診断されるものではありません。

しかし、アダルトチルドレンによる慢性的なストレスや自己否定感は、心の健康を著しく損なう可能性を秘めています。

幼児期の虐待や家庭内の不和などのネガティブな経験(小児期逆境体験(ACE:Adverse Childhood Experiences))が、うつ病や依存症などの精神疾患を発症するリスクを高めるというデータもあります。

そのため、生きづらさを「性格の問題」として放置しないようにしましょう

参考:Felitti VJ, Anda RF, Nordenberg D, Williamson DF, Spitz AM, Edwards V, Koss MP, Marks JS. Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults. The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. Am J Prev Med. 1998 May;14(4):245-58.

あなたはどのタイプ?生きづらさの根源にある6つの役割

機能不全家族という不安定な環境で生き抜くため、子どもは無意識のうちに特定の「役割」を演じることがあります。

演じる役割は、家族内で自分を守るための方法でしたが、大人になってからも続けてしまうことが生きづらさの原因となっている場合があります。

アダルトチルドレンの人に多いのが、「機能不全家族の中での子どもが取りがちな役割」です。具体的には以下のとおりです。

アダルトチルドレンの6つのタイプ
タイプ(役割) 幼少期の姿 大人の特徴
ヒーロー(英雄) 家族の期待に応える「良い子」「優等生」 完璧主義で責任感が強く、ワーカホリックになりがち
スケープゴート(いけにえ) 家族の問題を引き受ける「問題児」 反抗的で自己破壊的な行動をとりやすく、社会への不信感が強い
ロストワン(いない子) 存在感を消して波風を立てない「忘れられた子」 自己主張が苦手で孤独を好み、自分の感情がわからない
ケアテイカー(世話役) 親やきょうだいの世話をする「小さな看護師」 自己犠牲的で過干渉。他者の問題に介入しすぎる
ピエロ(道化師) 家族の緊張を和ませる「おどけ役」 ユーモアで本心を隠し、場の空気を読みすぎる
イネイブラー(支え役) 問題を抱える親を支え、結果的に問題を助長する 共依存関係に陥りやすく、問題を直視できない

参考:Wegscheider-Cruse, S. (1985). Choice-making for co-dependents, adult children, and spirituality. Health Communications.

なぜカウンセリングが有効か?生きづらいを克服する効果とプロセス

アダルトチルドレンの悩みをカウンセリングで話すことで心が軽くなるイメージ

アダルトチルドレンからの回復にカウンセリングが有効なのは、専門家との安全な関係のなかで、過去の経験と現在の生きづらさのつながりを理解し、根本的な課題の解決を目指せるからです。そして、思考や行動のパターンを修正していくことで、根本的な課題の解決を目指します。

カウンセリングで得られる具体的な5つの効果

アダルトチルドレンの生きづらさ解消には、カウンセリングが以下の効果があるとされています。

カウンセリングで期待できる効果
効果 内容
自己理解の深化 なぜ自分が特定の方法で考え、感じ、行動するのか、その根源を幼少期の経験と結びつけて理解できます。
自己肯定感の向上 カウンセラーから無条件に受け入れられる経験を通じて、「ありのままで良い」という感覚を育み、低い自己肯定感を回復させます。
トラウマの癒し 安全な環境で過去の辛い記憶を専門的な手法で処理し、それにともなう感情的な苦痛を和らげます
思考パターンの修正 「自分はダメだ」のような自動的に浮かぶ否定的な思考(認知の歪み)に気づき、より現実的で健康的な考え方に変えていく練習をします。
健全な人間関係の構築 他者との適切な境界線の引き方や、自分の気持ちを正直に伝えるコミュニケーションスキルを学び、対等で健康的な関係を築けるようになります。

カウンセリングの具体的な流れ:初回面接から終結まで

カウンセリングがどのように進むのか、一般的な流れを知っておくと不安が和らぐでしょう。

カウンセリングの流れ
段階 内容
初回面接(インテーク) 現在の悩みやこれまでの経緯、家族関係などについて話します。カウンセラーは安心して話せる雰囲気を作りながら、問題の全体像を把握します。この場でカウンセラーとの相性を確認することも重要です。
アセスメントと目標設定 話し合った内容や心理検査などを参考に、問題の背景を多角的に評価します。その上で、カウンセラーと協力して「どのような状態を目指すか」という具体的な目標を設定します。
継続カウンセリング 週に1回や隔週に1回など、合意した頻度で面接を重ねます。対話を中心に、時には専門的な心理療法も用いながら、設定した目標に向けて取り組みます。つらい過去と向き合うこともありますが、あなたのペースが最優先されます。
終結 目標が達成され、自分自身の力で人生を歩んでいける自信がついた段階で、カウンセラーと話し合いの上でカウンセリングを終了します。

【医師が解説】認知行動療法、EMDRなど代表的な心理療法とその選び方

アダルトチルドレンの回復に向けたカウンセリングでは、対話に加え、個々の課題に応じた専門的な心理療法が用いられます。

代表的なアプローチと考え方について、医師の視点から解説します。

代表的な心理療法
心理療法の種類 内容
認知行動療法(CBT/Cognitive Behavior Therapy) 物事の受け取り方(認知)の癖に働きかけ、生きづらさにつながる思考を、より柔軟で現実的なものに変えていく治療法です。
EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing/眼球運動による脱感作と再処理法) 虐待など、特定のトラウマ体験による症状の改善に効果が期待できます。脳の情報処理プロセスに働きかけ、つらい記憶にともなう苦痛を和らげることを目指します。
インナーチャイルド・ワーク 自分の内側にいる「傷ついた子ども時代の自分」を癒すアプローチです。満たされなかった感情に気づき、自分で自分を慈しむ感覚を育てます。
精神分析的心理療法 無意識の領域に焦点を当て、問題の深層にある原因を探求するアプローチです。

どの心理療法が適しているかは、個人の抱える問題の性質やカウンセラーの専門性によって異なります。信頼できるカウンセラーは、いくつかの手法を適切に組み合わせ、あなたに合ったオーダーメイドの支援を提供してくれるはずです。

参考:世界保健機関 (WHO). (2013). Guidelines for the Management of Conditions Specifically Related to Stress.

参考:Bisson, J. I., et al. (2013). Psychological treatments for chronic post-traumatic stress disorder (PTSD) in adults. Cochrane database of systematic reviews, (12). 

後悔しないために。信頼できるカウンセラー・相談機関の選び方【東京・大阪など】

アダルトチルドレンのカウンセリングを受けるために信頼できるカウンセラーを慎重に選んでいるイメージ

カウンセリングの効果は、カウンセラーの専門性や相性に大きく左右されます。ここでは、後悔しないための選び方のポイントを、具体的な基準とともに解説します。

【必須】確認すべき資格(公認心理師・臨床心理士)と所属団体

心理カウンセラーを選ぶ上で、信頼性の高い資格を持っているかは最低限確認しましょう。

  • 公認心理師:心理職における唯一の国家資格です。資格取得には大学・大学院での専門的な学習が義務付けられており、高い専門性と倫理観が担保されています。
  • 臨床心理士:資格認定協会が認定する民間資格です。5年ごとの更新制で、指定の研修を受講することが必須とされています。

2つの資格を持つ専門家は、日本臨床心理士会などの職能団体に所属していることが多く、厳しい倫理規定(秘密保持義務など)を遵守しています。

参考:厚生労働省「公認心理師」

参考:日本臨床心理士資格認定協会「臨床心理士とは」

ウェブサイトで注意深くチェックしたい3つのポイント

相談するカウンセリングルームは、以下の点に注意して選びましょう。

①誇大な広告表現はないか

「必ず治る」「改善率99%」といった科学的根拠のない表現や、効果を過度に保証するような広告には注意が必要です。

②体験談の扱いは適切か


「お客様の声」を過度に掲載し、成功体験ばかりを強調している場合も慎重な判断が求められます。

カウンセリングの効果には個人差があるため、倫理観の高い専門家ほどその点は謙虚に記述する傾向があります。

③カウンセラー自身の課題を強調しすぎていないか


カウンセラー自身の苦労話も、共感につながる一方で、それが過度になると専門家としての客観性が保たれているか疑問が残ります。

医療機関(精神科・心療内科)と私設カウンセリングルームの違いと選び分け

アダルトチルドレンの悩みをどこに相談すればよいか迷う人も多いでしょう。それぞれの特徴を理解し、自分の状態に合わせて選ぶことが大切です。

相談先の選び方
項目 医療機関(精神科・心療内科) 私設カウンセリングルーム
特徴 医師が在籍し、診断や薬の処方が可能。カウンセリングは治療の一環として行われる。 臨床心理士や公認心理師などが運営。対話を通じた長期的な心のケアを専門とする。
どういう人向けか うつ症状、不眠、パニック発作など、日常生活に支障をきたす具体的な症状が強い場合。 病気というほどではないが、生きづらさの根本原因とじっくり向き合いたい場合。
メリット
  • 薬物療法と並行しやすい
  • 条件を満たせば保険適用となる場合がある
  • カウンセラーの専門性(トラウマ、愛着など)で選べる
  • 相談時間や頻度の自由度が高い

【医師からのアドバイス】

気分の落ち込みが長く続いたり、生活に支障があるほど不安が強かったりするなど、症状が重い場合は、まず医療機関を受診しましょう。

心身の状態を安定させた上で、医師と相談しながらカウンセリングを併用し、根本的な問題に取り組むことが安全で効果的な回復につながります。

オンラインカウンセリングという選択肢と産業医の活用

近年、ビデオ通話などを利用したオンラインカウンセリングも普及しています。場所を選ばず自宅からでも相談できるため、地方にお住まいの人や外出が困難な人にとっても利用しやすい選択肢です。

  • メリット:場所や時間を選ばず、全国の専門家から自分に合うカウンセラーを探せる。
  • デメリット:緊急時の対応が難しい場合がある。通信環境に左右される。
  • 選び方の注意点:対面と同様にカウンセラーの資格(公認心理師・臨床心理士)を確認し、プライバシー保護のためにセキュリティ対策がしっかりしたプラットフォームを選ぶことが重要です。

また、お勤め先によっては、産業医との面談を活用できる場合があります。

とくに、仕事上のストレスが生きづらさに影響している場合、労働環境への専門的な知見を持つ医師に相談できることは大きな利点です。法人契約であれば産業医面談という形で専門家への相談が可能です。

例えば、監修者である佐藤医師が代表を務める合同会社SUGARでは、オンラインでの産業医面談サービスを提供しており、働く人のメンタルヘルスをサポートしています。

オンライン産業医面談については、以下の記事も参考にしてみてください。

▼あわせて読みたい

参考:Hilty, D. M., et al. (2013). The effectiveness of telemental health: a 2013 review. Telemedicine journal and e-health, 19(6), 444–454. 

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

カウンセリング以外の主な相談先

カウンセリングは非常に有効ですが、それ以外にも利用できるサポートはあります。次の3つの選択肢を状況や目的に合わせて活用しましょう。

相談先①:公的な相談窓口

全国の精神保健福祉センターや、市町村の相談窓口では、精神保健福祉士などの専門職に無料で相談できます。

継続的なカウンセリングというよりは、問題の整理や適切な機関への紹介が主な役割です。

相談先②:自助グループ

同じ悩みを持つ人々が集まり、匿名で体験を分かち合い、支え合う場です。「ACoA(Adult Children of Alcoholics)」などが有名で、全国各地で開催されています。

専門家による治療とは異なりますが、孤独感の軽減や回復のヒントを得られる貴重な機会となり得ます。

相談先③:電話相談

夜間や緊急時に相談したい場合は、電話相談の利用も有効です。代表的な電話相談窓口は以下のとおりです。

電話相談窓口
窓口名 電話番号 誰が相談に乗ってくれるか
いのちの電話 0120-783-556 専門の研修を受けたボランティア相談員
よりそいホットライン 0120-279-338 専門の研修を受けた相談員
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 精神保健福祉センターなどの公的機関の職員や、委託された民間団体の相談員

カウンセリングの費用は?料金相場と保険適用・公的支援の活用法

アダルトチルドレンのカウンセリングにかかる費用や保険適用について計算しているイメージ

カウンセリングを受ける上で、費用は現実的な課題です。ここでは料金相場と、経済的負担を軽減するための支援制度について解説します。

カウンセリング料金の相場

カウンセリングは、原則として医療保険が適用されない自由診療です。料金は機関によってさまざまですが、一般的な相場は以下のとおりです。

  • 私設カウンセリングルーム:1回50分~60分で8,000円~15,000円程度。
  • 医療機関でのカウンセリング(自由診療): 1回50分で5,000~10,000円程度。
  • 大学附属の心理相談室:比較的安価で、1回3,000円~8,000円程度。
  • 公的な相談窓口(精神保健福祉センターなど: 原則無料ですが、継続的なカウンセリングは難しい場合があります。

保険適用になるケースとその条件

例外的に、精神科や心療内科などの医療機関でカウンセリングを受ける際に、保険が適用されるケースがあります。

  • 条件:医師が治療の一環としてカウンセリングが必要だと判断した場合に限られます。
  • 対象:医師や看護師による認知行動療法や公認心理師によるPTSDの治療などが診療報酬として認められています。
  • 費用:自己負担は原則3割となり、1回あたりの費用は1,500円~3,000円程度が目安です。

参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要 【重点分野Ⅱ(認知症、精神医療、難病患者に対する医療)】」

参考:厚生労働省「別表第一 医科診療報酬点数表」

負担を軽減する公的支援制度(自立支援医療・医療費控除)

  • 自立支援医療制度
    うつ病などの精神疾患で通院治療を継続的に受けている場合、申請により利用できる可能性があります。自立支援医療制度により、保険診療の自己負担額が原則1割に軽減されます。
  • 医療費控除
    カウンセリング費用が保険適用された場合は、年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた際に、確定申告をすることで所得税の一部が還付される医療費控除の対象となります。(自由診療の場合は対象外です)

参考:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」

参考:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」

【ケース別】アダルトチルドレンの悩みを乗り越える(仕事・恋愛)

アダルトチルドレンが抱える仕事や恋愛の悩みがカウンセリングで解決に向かうイメージ

アダルトチルドレンの特性は、仕事や恋愛といった具体的な場面でさまざまな困難を引き起こします。

カウンセリングがどのように役立つかをケース別にみていきましょう。

仕事の悩み:完璧主義や対人ストレスから解放されるには

親の期待に応えようと頑張ってきた人の場合、大人になっても仕事で高い基準を課してしまい、ストレスにつながるケースがあります。

過剰な自己批判と完璧主義は、常に高いプレッシャーを感じさせ、燃え尽き症候群のリスクを高めるリスクの一つです。

また、他人の評価を気にするあまり「NO」と言えず、キャパシティを超えて仕事を引き受けてしまったり、上司や同僚との健全な関係を築けず孤立したりすることがあります。

カウンセリングでのアプローチ①思考パターンの見直し

認知行動療法を用いて「〜すべきだ」といった非現実的な思考パターンを特定し、より柔軟な考え方ができるように支援します。

例えば、「少し体調が悪いくらいで休んではいけない。周りに迷惑をかけるべきではない」などの思考パターンです。

カウンセリングでのアプローチ②健全な人間関係のための主張方法

相手を尊重しつつも自分の意見を適切に伝えるアサーショントレーニングを学びます。過剰な業務を断ったり、健全な人間関係を築いたりすることが可能になります。

恋愛・結婚の悩み:共依存や回避のパターンを断ち切るには

恋愛や結婚といった親密な関係には、アダルトチルドレンが抱える問題が顕著に表れます。

パートナーに過度に依存したり、逆に見捨てられることを恐れて親密になることを避けたりするパターンを繰り返してしまう傾向があります。

カウンセリングでのアプローチ①幼少期の体験から自己理解を深める

愛着理論などを手がかりに、自分の恋愛パターンがどのような幼少期の経験から形成されたのかを理解します。

とくに、親子関係が現在の思考のクセや人間関係の取り方にどんな影響を与えているかを紐解いていきます。

カウンセリングでのアプローチ②他人とのバウンダリーを見直す

パートナーとの間に健全なバウンダリー(心の境界線)を引く練習をし、共依存的な関係から抜け出すことを目指します。

バウンダリーとは、自分と他人をわける境界線です。バウンダリーがあいまいだと、他人の期待や欲求を自分のもののように感じてしまい、過度に尽くしたり自分の意見を言えなくなったりしがちです。

他人の期待と自分の感情を区別することを意識して、適度な距離感を保てるように取り組みます。

アダルトチルドレンとトラウマ・愛着障害・二次症状(うつ病など)

アダルトチルドレンの生きづらさの根源にあるトラウマや愛着障害と、二次的な症状との関連を示すイメージ

アダルトチルドレンという概念をより深く理解するためには、その背景にあるトラウマや愛着の問題、そして併発しやすい精神疾患についての知識が不可欠です。

この視点は、根本的な回復を目指す上で重要な価値を持ちます。

すべての根底にある「発達性トラウマ」と支援の基本姿勢

アダルトチルドレンの生きづらさの根源には、発達性トラウマが関係していると考えられています。発達性トラウマとは、幼少期に繰り返される虐待やネグレクト、親の不和といった慢性的なストレス体験が、子どもの脳や心身の発達に深刻な影響を及ぼすという概念です。

このような背景を理解する上で重要なのが、トラウマインフォームドケア(TIC)という支援の基本姿勢です。

TICの姿勢は、目の前の人の問題行動を「その人に何があったのか? (What happened to you?)」という視点で理解するアプローチであり、アダルトチルドレンへのカウンセリングの基盤となる考え方です。

参考:van der Kolk BA. Entwicklungstrauma-Störung: Auf dem Weg zu einer sinnvollen Diagnostik für chronisch traumatisierte Kinder [Developmental trauma disorder: towards a rational diagnosis for chronically traumatized children]. Prax Kinderpsychol Kinderpsychiatr. 2009;58(8):572-86. 

愛着スタイルから見る人間関係のパターン

対人関係の問題の背景には、「愛着スタイル」が影響していることがあります。

愛着スタイルとは、幼少期の親との関係から形成された他人との関わり方の基本パターンです。

アダルトチルドレンの人の中には、親との関係で安心感を得られなかったことから「不安定型」の愛着スタイルを抱えている傾向があります。不安定型の愛着スタイルの代表例は以下のとおりです。

  • 自分に自信がなく他人に依存的になってしまう(不安型・依存型)
  • 人と親密になることを避ける(回避型・拒絶型)
  • 自分で決断するほどの自信はないが他人を頼ることも難しい(恐れ型)

幼少期の親との情緒的な絆の質が、その後の人間関係の「雛形」を形成します。

参考:岩壁茂、工藤由佳「愛着トラウマケアガイド: 共感と承認を超えて」金剛出版

うつ病や依存症など併発しやすい精神疾患と医療連携の重要性

前述のとおり、アダルトチルドレンはうつ病、不安障害、パニック障害、摂食障害、各種依存症などを併発するリスクが高い状態です。

精神的な症状が顕著な場合は、カウンセリングと並行して、あるいはカウンセリングに先立って、精神科や心療内科などの医療機関と連携しましょう。

薬物療法などで心身の状態を安定させてから、根本原因であるトラウマや思考の癖にアプローチしていくのが、安全で効果的な回復への道のりです。

よくある質問(FAQ)

アダルトチルドレンのカウンセリングに関するよくある質問とその回答

Q. アダルトチルドレンは、カウンセリングで本当に良くなりますか?

A. はい、多くの方がカウンセリングを通じて生きづらさの軽減を実感しています。

カウンセリングは魔法ではありませんが、信頼できる専門家と協力し、時間をかけて取り組むことで、自己肯定感が高まり、人間関係が楽になったり、自分らしい選択ができるようになったりと、具体的な変化が期待できるでしょう。

Q. カウンセリングにデメリットやリスクはありますか?

A. カウンセリングの過程で、忘れていたつらい記憶や感情が一時的にぶり返し、精神的に不安定になることがあります。

回復に必要なプロセスの一部ですが、信頼できるカウンセラーは不安定な状態でも安全に乗り越えられるよう支援してくれます。

また、カウンセラーとの相性が合わない、効果がすぐには感じられないといった可能性もリスクとして挙げられます。

Q. 毒親・機能不全家族だった親との関係は、どうすればいいですか?

A. カウンセリングが進む中で、親に対して怒りや悲しみを感じるのは自然な反応です。

大切なのは、まず自分の心を癒すことを最優先にすることです。

その上で、親と物理的・心理的に適切な距離を取る、自分の気持ちを冷静に伝えてみるなど、あなた自身が消耗しない関係性を再構築していくことを目指します。カウンセラーがそのプロセスも一緒に考えてくれるでしょう。

Q. 自分でできるセルフケア(治し方)はありますか?

A. はい、専門家の支援と並行してセルフケアを行うことは回復にとても役立ちます。

今日から始められることとして、以下のような方法が有効です。

自分でできるセルフケア
手法 説明
ジャーナリング(書く瞑想) 自分の感情や思考をありのままにノートに書き出すことで、頭の中が整理され、客観的に自分を見つめられる。
マインドフルネス 「今、この瞬間」の自分の感覚に意識を向ける瞑想法。過去の後悔や未来の不安から離れ、心を落ち着けられる。
自分を大切にする時間を作る 罪悪感を感じずに、自分が本当に心地よいと感じること、楽しいと感じることをする時間を意識的に作る

Q. 家族やパートナーにできることはありますか?

A. ご本人にとって、身近な人の理解とサポートは大きな力になります。大切なのは以下の3点です。

  1. ジャッジせず聴く: ご本人が過去の体験や現在の辛さを話してくれた時は、善悪の判断や安易なアドバイスをせず、まずは「そう感じてきたんだね」と、気持ちを受け止めて聴く姿勢が重要です。
  2. 正しい知識を学ぶ: アダルトチルドレンやトラウマについて学ぶことで、ご本人の言動の背景にある痛みを理解し、誤解やすれ違いを防げます。
  3. サポートする側も自分を大切に: 支える側が一人で抱え込みすぎると、心身が疲弊してしまいます。必要であればあなた自身も専門家や相談窓口を利用することが、結果的にご本人を長期的に支える力になります。

まとめ:生きづらさの克服は「自分のせいだ」と責めるのをやめることから始まる

長年にわたる生きづらさは、性格や努力不足が原因なのではありません。困難な子ども時代を生き抜くために、無意識に身につけた「生存戦略」の結果なのです。

アダルトチルドレンの苦しみが「自分のせいではなかった」と受け入れることが回復への第一歩となります。

カウンセリングは、過去の傷を安全に癒し、自分らしい人生を再構築していくための手段です。信頼できる専門家の支援のもと、自分自身を大切にする方法を学んでいきましょう。

もし、あなたが職場の人間関係や働き方について生きづらさを感じているなら、企業の福利厚生として産業医面談を活用することも一つの有効な方法です。

監修者である佐藤医師が代表を務める合同会社SUGARでは、働く人の心と体の健康をサポートするオンライン産業医サービスを提供しています。会社を通じてにはなりますが、専門的な立場からあなたのお悩みに寄り添い、具体的な解決策を一緒に考えます。

まずは自分の会社の産業保健体制を確認し、利用できるサポートがないか調べてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

  1. アダルトチルドレンは病名ですか?

    アダルトチルドレンは医学的な病名ではありません。しかし、幼少期の経験からくる生きづらさは、うつ病や不安障害などの精神疾患につながる可能性があるため、専門家によるカウンセリングを通じて心のケアをすることが非常に重要です。

  2. アダルトチルドレンのカウンセリングではどのようなことをしますか?

    カウンセリングでは、まず安全な環境で自分の悩みや生い立ちについて話します。カウンセラーとの対話を通じて、生きづらさの原因となっている思考の癖に気づき、過去のトラウマを癒し、自己肯定感を高めていくことを目指します。

  3. カウンセリングにはどのくらいの期間と費用がかかりますか?

    期間は個人の状況によりますが、数ヶ月から1年以上の継続が一般的です。費用は自由診療で1回8,000円〜15,000円が相場ですが、条件を満たせば医療機関で保険が適用される場合や、自立支援医療制度などの公的支援を利用できることもあります。

  4. カウンセリングを受ければ、本当に良くなりますか?

    はい、多くの方がカウンセリングを通じて生きづらさの軽減を実感しています。他人の顔色をうかがうことが減り、自己肯定感が高まることで、人間関係が楽になったり、自分らしい選択ができるようになったりといった効果が期待できます。

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