エゴグラムとは?5つの自我状態から分かる性格特徴について解説
エゴグラムとは、対人関係パターンの特徴を理解するための心理検査の一つです。
従業員の自己理解だけでなく、管理職のかかわり方の参考にもなり、組織におけるコミュニケーションにも役立ちます。
本記事では、エゴグラムからわかる5つの性格特性やパターン、ビジネスに生かす方法を解説します。エゴグラムをうまく活用し、組織のコミュニケーションの質を高めるため、参考にしてみてください。
エゴグラムとは
エゴグラムとは、性格やコミュニケーションに関する心理学理論である交流分析(カナダの精神科医エリック・バーンが提唱)をもとにして、バーンの弟子であるジョン・M・デュセイが考案した性格検査です。
言葉や表情などの観察できる行動を5つの自我状態に分類し、その特徴から対人関係パターンを理解できます。
エゴグラムの活用で、従業員が自分のコミュニケーションパターンを理解し、改善に役立てることが可能です。また、他者の対人関係の特徴を把握しておくと、適切なコミュニケーションの取り方が明確になります。
従業員一人ひとりが対人関係のパターンを理解できると、職場でのコミュニケーションが円滑になり、組織力の向上につながるでしょう。
関連記事:交流分析とは?7つの理論と職場で活用するメリットやポイントを解説
5つの自我状態の特徴・役割・分析
エゴグラムの基礎となっている交流分析では、人間が他者と交流するときの思考や感情の傾向を自我状態と呼びます。その上で、以下の3つに分けて対人関係の傾向を把握します。
- P(Parent:親):親の影響で身についたもの
- A(Adult:大人):大人になってから身につけたもの
- C(Child:子ども):幼少期のまま残っているもの
さらに、PはCP(批判的親)とNP(養育的親)、CはFC(自由な子ども)とAC(順応した子ども)に分けられます。5つの性格特性について詳しく解説します。
【P(Parent:親の要素)】
- CP(Critical Parents:批判的親)
- NP(Nurturing Parents:養育的親)
【A(Adult:大人の要素)】
- A(Adult:大人の要素)
【C(Child:子どもの要素)】
- FC(Free Child:自由な子ども)
- AC(Adapted Child:順応した子ども)
1.批判的親(CP)
性格のうち、信念を持って行動する厳しい一面を指します。親から受けたしつけや他人からの教え、社会のルールに影響を受けて形成される性格特性です。
CPが高い場合
ルールや規則を重視し、責任感が強いです。問題点を指摘して改善を試みるなど向上心があり、一度決めたことはやり通す信念の強さがあります。
一方で、自分の価値観を押しつけがちで、合致しない人を批判してしまう傾向もあるでしょう。
CPが低い場合
他人の行動や価値観を寛容に受け入れて、あまり批判をしない傾向があります。「○○であるべきだ」という型にはまった考えにとらわれないため、自由な発想をしやすいでしょう。
一方で、ルールや約束を軽視してしまうなどのルーズな一面があります。
2.養育的親(NP)
思いやりを持って世話を焼くような優しい一面です。親切心や奉仕精神などを含む寛大な心を指す性格特性です。
NPが高い場合
周囲の細やかな変化に気づき、他人に思いやりを持ってサポートすることが得意です。部下や同僚を励まし育てるといった関わりで、チームの信頼関係を構築できます。
しかし、過度の思いやりは過保護にもつながり、相手の成長を妨げてしまう場合もあります。
NPが低い場合
周囲とはさっぱりとした関係を望み、相手に必要以上に干渉せず、自分のペースを大切にします。
他人にあまり関心がなく、必要以上のコミュニケーションや共感的な関わりを求めません。
3.成人・大人(A)
大人としての自分の一面であり、現実的に計画立てて、冷静に判断する性格特性です。他の自我状態を適切に調整し、バランスを取る役割があります。
Aが高い場合
論理的かつ客観的に物事を判断でき、感情に左右されずに冷静な意思決定を行います。ビジネスでは、データをもとに合理的な判断ができるため、信頼される存在です。
一方で、能率や生産性を重視するあまり、周囲に冷たい印象を与える場合があります。
Aが低い場合
感情的な判断や直感に頼りがちな傾向があり、客観的な分析が苦手です。結果として、意思決定に誤りが生じることがあります。
たとえば、情に熱く、結果的に自分が損をする選択をすることがあります。考えるより行動する方が得意なタイプといえます。
4.自由な子ども(FC)
明るくてよく笑うような、自由奔放で子どもらしい一面がFCの特徴です。
FCが高い場合
創造力や好奇心が豊かで、柔軟な発想を持ち、新しいアイデアを生み出すことが得意です。コミュニケーションが得意で、人を楽しませるユーモアのセンスがあります。
ただし、気分屋で自制が効きにくい傾向があります。感情的になりやすく、思ったことをすぐに口に出すので周囲とトラブルを起こす可能性もあります。
FCが低い場合
本来の感情をあまり表に出さず、物静かでおとなしく控えめです。そのため、自己表現が苦手で悩みを内面にため込みやすい場合があるでしょう。
また、固定観念にとらわれがちで、創造力や柔軟性に欠けることもあります。
5.順応した子ども(AC)
感情表現を抑えて、周りに合わせようとする従順な子どもの心です。協調性や素直さ、我慢強さを含みます。
ACが高い場合
素直で協調性が高い性格です。ルールに忠実に行動できるため、大企業や公務員などの大きな組織の中で力を発揮しやすいといえます。
しかし、他人の顔色をうかがって自分の意見を抑えることが多くなり、ストレスを抱えやすいでしょう。
また、相手に依存しがちで、自分自身の感情や考えを持ちづらい一面があります。そのため、抱えたストレスや不満は、感情で表現できずに身体症状として表れることが多いでしょう。
ACが低い場合
周囲に惑わされず、自分の考えや感情を重視した行動を取ることが多いでしょう。
その一方で、融通が利かずに自己中心的な行動を取りがちで、チームワークに影響する可能性があります。
代表的なエゴグラムのパターン
エゴグラムは、5つの自我状態を数値化し、その強弱をグラフ化することで性格傾向を把握します。グラフの形によって「NPが高くFCが低い」などのパターンに分類できます。
代表的なエゴグラムのパターンとして、N型、逆N型、M型、W型の4つを紹介します。
N型
NP、ACが高い一方で、FCが低いタイプです。NPが高いため、他者に対する優しさ、配慮があり、人の話を聞くのも得意です。そのため、協調性が高く、人間関係は良好なことが多いでしょう。
ただし、ACが高くFCが低いので、言いたいことが言えない、人から頼まれると断れないなどでストレスをためやすい傾向があります。
献身的な部分はありますが、自分が楽しいと感じる活動を増やしていけるとバランスが良くなっていきます。
逆N型
CP、FCが高く、NP、ACが低いタイプです。CPが高いため、信念が強く、目標に向かって進むことが得意です。
一方で、ACとNPが低いため共感性に乏しく、人の言うことに耳を傾けない傾向があります。そのため、新しい目標や創造的なことにチャレンジできる反面、自己主張が強く対人トラブルを起こしやすい側面も持っています。
仕事を楽しめるタイプですが、上司になると部下にイライラするなど、対人関係上でのストレスを抱えやすいでしょう。NPを高めることで、指導力に加えて面倒見の良さが加わり、リーダーとして評価されやすくなります。
M型
好奇心旺盛、自分にも周りにも優しい、コミュニケーション能力が高いなどの特徴があり、周囲から慕われることが多いでしょう。
ただし、Aが低い場合は気持ちに流されやすかったり、やや無謀な行動を取ってしまったりするなど、冷静さに欠ける一面もあります。
そのため、複数の従業員を管理する必要があるリーダーや複数の関係者をまとめる調整役などは、あまり適さないでしょう。明るい人柄から、接客や営業などの対個人でのやり取りが主な職務に向いています。
W型
自分や周囲に対する義務感が強く、状況を冷静に分析する力を持つタイプです。しかし、ACが高くFCが低いため、周囲に気を使い、自分の意見を伝えにくい傾向があります。
現状に対する違和感があるのに、主張できない状況に落ち込むなど、対人関係上でストレスを抱えやすいでしょう。
NPが低いため、社内の調整役として機能するなど、コミュニケーションを要するポジションにはあまり向かないといえます。一方で、感情に左右されずに淡々と物事を進められるため、人との関わりが少ない事務作業などに適しているでしょう。
エゴグラムを企業で活用する方法
エゴグラムは、企業のチームビルディングやリーダーシップ開発など、組織づくりにも役立ちます。具体的にどのように活用するとよいのかを解説します。
チームビルディング
エゴグラムは、チームメンバーの性格を理解し、効果的なコミュニケーションを図るためのツールとして活用できます。チームビルディングにおいては、メンバー同士がお互いの考えや特徴を理解し合うことが大切です。
エゴグラムは、客観的な視点から対人関係のパターンを分析できるツールであり、チームメンバーの性格を理解して効果的なコミュニケーションを図るために利用できます。
チームが形成される段階でグループワークとしてエゴグラムを行い結果を共有することで、価値観の相互理解につながるでしょう。
関連記事:チームビルディングとは?定義や目的、会社が取り組む意義を解説
リーダーシップ開発
エゴグラムにより、人との関わり方を客観的に理解できるため、リーダーシップ開発にも役立ちます。リーダーが自身の特性を把握することで、部下への関わり方を見直すきっかけになるでしょう。
たとえば、NPが高い場合は、部下の主体性を尊重した関わり方が難しい可能性があります。部下にはあいまいな指示でもタスクを具体化して取り組む能力があるのに、質問したり、自ら考える機会を奪ってしまうことがあるかもしれません。
NPを弱めるため、部下にあえて裁量を持たせて成長を促したり、困ったときにだけ質問するなど、行動を変えられるとよいでしょう。
エゴグラムの活用によって、リーダーが部下への関わり方を見直すきっかけになり、組織のリーダーシップ向上にも役立ちます。
コミュニケーション改善
エゴグラムの活用により、従業員間のコミュニケーションの質を向上させることができます。相手の性格特性を知ることで、相手の反応を予測し、適切な対応を取れるようになるでしょう。
たとえば、Aの低い部下には客観的な視点からアドバイスするなど、特徴に応じてコミュニケーションを調整できます。相手にとって適切な関わり方がわかるため、より円滑なコミュニケーションにつながります。
まとめ:組織のコミュニケーション改善にはエゴグラムがおすすめ
エゴグラムは、5つの自我状態の特徴から対人関係のとり方を理解するためのツールです。グラフの形はそのときの状況、精神状態によって変わりますし、なりたい自分に近づくためにどうしたらよいかも明確になります(例:CPを上げる、ACを下げるためにはどうしたらよいかなど)。
職場のチームづくりやコミュニケーション改善効果も期待できます。エゴグラムはより良い組織づくりのために役立ちますので、ぜひご活用してみてください。
SUGARでは、エゴグラムを活用した企業研修のご依頼も承っております。従業員の自己理解を深め、組織のコミュニケーション改善のために役立つ内容を提供できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。