【産業医監修】エグゼクティブコーチングの効果と実施方法を解説
企業の経営者や幹部層などのエグゼクティブ層は、事業や経営に直結する責任を負うポジションです。同等に相談できる相手がいない中でも、常に利益追求のための施策を考えることが求められます。
プレッシャーに悩まされがちなエグゼクティブ層に対して有効なサポートとなるのが、エグゼクティブコーチングです。外部のコーチがエグゼクティブ層に対して、経営に特化したコーチングを行います。
本記事では、エグゼクティブコーチングの効果と実施方法を解説します。経営者や幹部層へのメリットはもちろん、組織に与える影響や教育効果も説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
エグゼクティブコーチングとは?
エグゼクティブコーチングは、経営者や幹部層に特化したコーチングです。コーチングサービスを提供する企業に外部委託し、そこから紹介されたコーチが経営者に対してコーチングを行います。経営幹部の養成を目的に、幹部層や上級管理職を対象とすることもあります。
エグゼクティブ層に特化したエグゼクティブコーチングですが、具体的にはどのような特徴があるのでしょうか。
特徴①:企業全体の経営課題に特化している
エグゼクティブコーチングは、経営者が抱える経営課題に特化したコーチングです。個人の内面を取り扱う一般的なコーチングに比べて、経営戦略や組織変革、事業推進などのテーマを主に扱います。
企業経営においては、ビジョンや理念を軸にしながらも、時代の変化を捉えて柔軟に対応していくことが必要です。経営者は、判断が困難な局面を経験しながらも、利益追求のために前進していくことが求められます。
そのようなプレッシャーを一人で抱えるのではなく、コーチとともに思考し気づきを得ていくことで乗り越えていく方法といえます。
特徴②:組織全体の変化も意識する
経営者自身の行動や意識の変容を促すだけでなく、その先にある組織全体の変化を見据え、対話を重ねていくことが特徴です。経営者が成長したり、新しい価値観が形成されたりすることで、社員への関わり方が変化することを目指します。
また、エグゼクティブコーチングにより、企業理念やビジョンがより明確になれば、社員にも浸透しやすくなるでしょう。企業のミッションに沿って社員が自発的に行動する、生産性の高い組織づくりにも役立ちます。
特徴③:経営コンサルティングとは目標が異なる
エグゼクティブコーチングは経営に関わるテーマを扱うため、経営コンサルティングと似ているものの、目標が異なります。
経営コンサルティングは、コンサルタントが保有する知識やスキルを用いて、課題を解決することが目標です。一方、エグゼクティブコーチングは対話を通して気づきを促すことで成長し、結果として課題が解決することを目指します。目標はあくまでも経営者自身の成長です。
成長しながら自分自身の力で解決していくことを目指すので、納得感を持って課題解決に取り組めるでしょう。
エグゼクティブコーチングによる4つの効果とメリット
経営に関わるテーマを扱いながらも、経営者自身の成長を通して課題の解決を目指すことがエグゼクティブコーチングの特徴です。エグゼクティブコーチングを行うことでどのような効果があるのでしょうか。
効果①:経験則によらない気づきを促進
経営者や幹部層は、成功体験の多さから過去の経験則にこだわってしまい、新しい気づきを得にくくなることがあります。また、間違っていても周囲から指摘される機会も減るでしょう。そして、自分のやり方に固執しがちです。
固執した状態では、周囲から助言されても、率直に取り入れることが難しいでしょう。新しいやり方や価値観を取り入れられず、企業の成長も停滞してしまう可能性があります。
エグゼクティブコーチングは、コーチとの対話の中で自問自答しながら答えを出していきます。自分で導き出した答えなら、納得感を持ちやすいでしょう。そのため、新しい気づきを得ることへの抵抗感が少なく、気づきを促進できます。
効果②:ストレスや不安の軽減
経営者は、事業に対する責任が重く、常に解決すべき課題に追われています。また、リーダーとしての役割上、周囲に弱みを見せられず、孤独感も抱えがちです。そのため、相談相手がいることは、精神的な支えになるでしょう。
加えて、事業を推進する上で抱える不安や恐怖との向き合い方をテーマとして扱えば、耐性を高めることにもつながります。
エグゼクティブコーチングによって、コーチの存在が支えになるとともに、困難を自力で乗り越えていく力を身につけられます。そして、ストレスや不安の軽減につながり、十二分に力を発揮できるようになるでしょう。
効果③:幹部候補や後継者の育成
経営者だけでなく、幹部層や後継者に受けてもらうことで、教育効果も見込めます。たとえば、能力は優れているが、リーダーシップが不足している幹部層や後継者に対してエグゼクティブコーチングを行います。
思考プロセスを見直すことで意思決定力の向上やコミュニケーションの改善につながり、リーダーに必要な資質を学べるでしょう。
効果④:組織への関わり方の改善
経営者や幹部層が変化することで、組織全体のコミュニケーションや関係の質が変化します。たとえば、幹部層の思考力が向上すれば、社内で建設的な議論が可能となり、精度の高い思考ができる組織へと成長できるでしょう。
また、経営者の明確なビジョンが社員に浸透すれば、ビジョンを共有できるようになります。その結果として、組織の方向性に沿って主体的に行動する社員が増えるでしょう。
エグゼクティブ層の意識が変わることで、組織への関わり方が改善され、企業全体の文化や風土によい影響を与える効果が期待できます。
エグゼクティブコーチングの実施方法
経営者や幹部層の成長をサポートするだけでなく、組織変革にも効果を発揮するエグゼクティブコーチングですが、どのようにして実施するのでしょうか。セッションの流れやテーマ例、実施形態について解説します。
1.基本的な流れは一般的なコーチングと同じ
エグゼクティブコーチングでは、一般的なコーチングと同様に、テーマや目標を設定し達成すべきことを確認しながら対話を行います。
導入時には、何を成果とするのかをコーチと話し合いながら明確化することが大切です。コーチングを受け入れる準備が整っていないと、十分な効果が期待できません。現状の課題をコーチと共有した上で開始します。
コーチングセッションは、おおむね60〜90分のセッションを、3カ月~1年程度継続することが一般的です。経営者のスケジュールに合わせて、月に1~2回程度実施されます。
2.エグゼクティブ層に応じたテーマを設定する
コーチングセッションでは、経営やマネジメントに関するテーマを設定します。思考の整理や言語化を通してアクションプランを決めて、実行・振り返りを繰り返していきます。具体的なテーマ例は以下の通りです。
テーマ例①:経営課題
- 経営理念の社員への浸透
- 企業としてのビジョン設定、課題の整理
- 後継者や幹部候補の育成
- リーダーやマネージャーの育成
- 社員の定着率、離職率
テーマ例②:マネジメント
- チームビルディング
- 部下の主体性を高めるコミュニケーション
- 部下との価値観の調和
テーマ例③:個人の悩みや課題
- リーダーとしての成長
- 思考力、判断力の向上
- レジリエンスの強化
3.1on1やグループなどさまざまな実施形態がある
エグゼクティブコーチングは、基本は1on1の個人形式で実施されることが一般的です。ただ、関係者を含めて、コーチングの内容を共有したい場合はグループ形式で行われることがあります。また、エグゼクティブコーチが社内の研修やコーチ育成に携わるケースもあります。
形態①:1on1形式
エグゼクティブコーチングの一般的な実施形式です。対面やオンラインを通して行い、じっくり対話できることが特徴です。
エグゼクティブコーチングで扱うテーマは、経営課題を始めとした機密情報を含みます。そのため、1on1形式なら安心して相談できるでしょう。
形態②:幹部や社員を含めたグループ形式
経営者だけでなく、幹部を交えたグループ形式では、個人が抱えている課題や悩みを共有できるというメリットがあります。他のメンバーの価値観や考え方を聞くことで、新たな気づきや互いの目線合わせにつながるでしょう。
また、一般社員を交えたグループ形式もあります。セッションの中で、コーチの力を借りて経営者のビジョンや理念を言語化し、社員への理念浸透を図るために有効な方法です。
形態③:コーチングに関する研修や育成
後継者や幹部、マネジメント層に対して、コーチングをベースにしたマネジメント研修を行うこともあります。外部講師よりも自社の課題を正確に把握しているため、課題解決につながる最適な教育ができるでしょう。
さらに、エグゼクティブコーチが社内コーチの育成に携わるケースもあります。社員がコーチングを受けやすくする体制をつくることで、満足度の高い職場を築くことに役立つでしょう。
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まとめ:エグゼクティブコーチングで組織改善
エグゼクティブコーチングは、経営者が一人で抱えがちな課題を解決へと導くための方法です。気づきを促すことで、過去に縛られず、新しいアプローチを推進していく経営者へと成長できるでしょう。
そして、経営層の変化は企業全体へと波及し、変化に対応できる強い組織へと成長していきます。
エグゼクティブコーチングを取り入れて、経営者や幹部層の意識変革や成長を促し、強い組織を築いていきましょう。
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