健康経営と業績向上はつながっている!その理由と企業の事例も紹介
健康経営に取り組む企業は増えてきました。取り組む目的はさまざまですが、「企業の業績向上につなげたい」と考えている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、健康経営と企業業績の関係性、健康経営を実践すべき企業、そして、健康経営の取り組みで業績向上につながった企業事例を紹介します。
健康経営に関心があり業績向上を目指す企業の経営者や人事部の方は、ぜひ参考にしてみてください。
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健康経営と企業業績の関係性
健康経営を実施すれば社員の体と心の健康につながって、モチベーションが高まり、業務パフォーマンスも上がるため、たしかに業績の向上にもつながるだろうという構図はイメージできるでしょう。
では、実際に健康経営と企業業績には相関関係があるのでしょうか。実は、複数の調査から、健康経営施策と企業業績向上には正の相関関係があるというデータが示されています。
経済産業研究所「健康経営銘柄と健康経営施策の効果分析」(2021年8月)によると、健康経営を経営理念に掲げて施策を実施することは、企業の利益率と相関性があることがわかりました。
また、「スマートワーク経営研究会」中間報告によると、健康経営施策・実施の少し後に利益率が上昇しています。
参照:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年)(PDF)(p41~47)
健康経営で業績が向上する3つの理由
健康経営への取り組みが業績向上につながるのには理由があります。主な3つの理由を紹介します。
①生産性が向上する
1つ目の理由は、生産性が向上することです。
心身に不調を感じている社員が増加すると、プレゼンティーズム(心身の疾患や不調を抱えながら出勤し、業務を行っている状態)やアブセンティーズム(心身の不調により仕事を休業している状態)といった問題が発生します。
このような社員の体調不良は、労働生産性の低下にもつながります。
健康経営に取り組み社員の健康の質を高めれば、ミスも減少し生産性の向上に結びつくでしょう。社員が健康で生き生きと働く環境は、業績向上にもつながります。
ただ、健康経営に取り組めばすぐに業績が向上するというわけではありません。社内に健康意識が浸透し変革が起こるためには地道に取り組んでいくことが必要です。
企業の発展を願うなら、社員の心身の健康を大切にすることは不可欠だといえます。
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②離職率が低下し、定着率が上がる
2つ目の理由は、離職率が低下し、定着率が上がることです。
企業にとって、人材は大切な財産です。優秀な人材が離職しない環境づくりは大事です。健康経営に取り組み社員を大切にしている企業は、社員にとって「働きやすい」と感じる一つの要素になるでしょう。
健康経営度の高い企業は離職率が低いというデータ結果も出ています。さらに、健康経営に積極的に取り組み離職率が低い企業は、企業イメージが向上するため、優秀な人材の採用にもつながります。
参照:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年)(PDF)(p38)
③組織が活性化する
3つ目の理由は、組織が活性化することです。
従業員の健康増進に取り組めば、社員のモチベーションが上がり、社内のコミュニケーションも活発になります。社内の雰囲気も明るくなるため、組織全体の活性化につながります。
そのような環境の企業は、自然と社員のエンゲージメントも高くなり、結果的に企業の業績向上にもつながります。
また、組織が活性化すると、創造力が高まり新しい事業を創出することも期待できます。そして、企業の競争力強化にもつながるでしょう。
健康経営を実践すべき企業
健康経営は、業績向上にもつながるということを解説しました。
健康経営に取り組んでいる、もしくはこれから取り組もうとしている企業は増えていますが、とくに、健康経営を実践することで大きな効果を得られることが考えられる企業についてみていきます。
欠勤・休職率が高い企業
欠勤や休職率が高い企業は、さまざまな原因が考えられますが、なぜ社員が欠勤や休職をしなければならない状況になるのかを見直すことが必要でしょう。
ふだんから社員の健康増進に注力し、疾病やストレスを予防するための取り組みや、一部の社員に業務の負担がかからないような体制作りなども必要かもしれません。
欠勤や休職者を減少させることを目標に、健康経営に取り組むことも効果的でしょう。
労働環境が悪い企業
深夜残業や休日出勤が常態化している企業は、たとえ欠勤率が高くないとしても、疲弊している社員が潜んでいる可能性があります。
「自分が休むわけにはいかない」という責任感から追い詰められ、メンタル不調を感じながらも出勤している社員がいるかもしれません。
ストレスチェックが義務付けられていない職場もストレスチェックを実施し、社員の健康チェックをすることをおすすめします。健康経営に取り組み、社内全体の健康意識を高めて労働環境の改善をしていくことが大事です。
コミュニケーションが希薄な企業
日常的にコミュニケーションが取りにくく、意見や提案を言葉にしにくい社風の企業は、仕事のミスやトラブルの発生につながります。
コミュニケーションが活発な職場は、社員同士の関心も深まるため、「部下は、最近顔色が良くないようだから話を聴いてみよう」「ミスが多いようだけど、何か困っていることがあるのかな」といった、気づきが得られるでしょう。
そのような積み重ねが、企業の生産性向上・業績向上にもつながっていくでしょう。
健康経営で業績アップにつながった企業事例
健康経営に取り組み、実際に業績向上につながった企業の取り組み事例を紹介します。自社のヒントになりそうな取り組みが見つかるかもしれません。
事例①SCSK株式会社
情報・通信業のSCSK株式会社は、健康経営銘柄に10年連続選定され、健康経営優良法人「ホワイト500」に8年連続認定されています。同社は2015年より「健康経営の理念」を就業規則に明記し、組織全体でその実践に励んでいます。
以前は業界柄残業や休日出勤が続く労働環境、優秀な技術者が仕事を抱え込んでしまう状況がありました。
そこで、抜本的な健康課題への対策として2013年より「スマートワーク・チャレンジ」、「どこでもWORK」、「健康わくわくマイレージ」という3つの取り組みをすることになりました。
「スマートワーク・チャレンジ」は月平均残業時間の軽減、年次有給休暇取得率100%を目指す取り組みです。
「どこでもWORK」はコロナ禍以前から在宅勤務やサテライト勤務を推奨する取り組みです。
「健康わくわくマイレージ」では健康リテラシーを向上させるため、良い行動習慣や健診結果に対するインセンティブ支給をするなどの取り組みです。
これらの取り組みにより、業績面においても連続して増収増益を達成しているということです。
事例②コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタ株式会社は、国内のグループ会社12社が2022年健康経営優良法人に認定され、また、健康経営銘柄に2018年から5年連続で選ばれています。
受動喫煙対策として、禁煙サポートプログラム参加の呼びかけをし、2020年4月から国内グループ会社全体で、構内での就業時間内全面禁煙化に踏み切りました。
喫煙率が年々低下し、喫煙のための離席損失が減少して、年間約5,600万円相当の生産性向上につながったということです。
女性活躍推進・健康支援強化の観点で、2021年度から女性特有の健康課題へのプログラムを導入し、専門家による「女性のカラダ知識講座」を開催。男性社員にも参加を促しました。
プログラム導入後、月経・更年期による不調が改善されました。検証データより、仕事における生産性にも良い影響が出ていると推測されています。
事例③株式会社長田(おさだ)工業所
福井県の建設業長田工業所は、2023年度、健康優良法人ブライト500に認定されました。
健康をテーマにした朝イチ研修や健康経営の取り組みについてのSNS発信などをしています。
また、食の福利厚生事業として、置き型社食「オフィスおかん」を導入。栄養バランスが良くおいしいお惣菜がいつでも手軽に食べられるサービスで、社員の食生活を支援。
総労働時間などを分析したところ、2021年と2022年を比べると生産性が14.7%改善。コロナ禍でも生産性が向上しているとのことです。
事例④高木建設株式会社
長野県の建設業高木建設は、2023年度、健康優良法人ブライト500に認定されました。
2021年、地域も業種も異なる中小企業4社が集まって4社合同健康研究会を設立。禁煙プロジェクトや女性の健康プロジェクトを実施することで喫煙率が下がり、アブセンティーズム0日が42.1%から80.1%まで改善しました。
現場が休みなく回るようになり、生産性が向上したことを実感しているという成果が表れています。
まとめ:健康経営で社員の健康を守り、業績アップにもつなげよう
健康経営の一環として、労働時間や禁煙、食事面などさまざまな面から社員の健康増進のための取り組みをすることで、生産性や業績向上につながっている企業の事例を紹介しました。
近年、過労やメンタル不全の問題が浮き彫りになっていますが、企業の業績を向上させるには社員の健康あってこそです。
良い効果を生み出している企業の事例も参考にして、それぞれの企業に合った取り組みを検討し、業績向上に向けて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。