男性の育児休業とは?取得条件や期間、企業に求められる対応を解説!

「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性育児休業取得率は前年より約13%増えて30%を超えました。
少子高齢化対策として男性の育児参加が求められる中、企業はどのように対応するべきか検討している人もいるでしょう。
本記事では、男性の育児休業について解説します。育児休業の取得条件や期間、企業に求められる対応も紹介するので、男性の育児休業取得を推進して働き方改革を進めましょう。
男性の育児休業とは
男性が取得できる育児休業には、男女共通の「従来の育児休業」と2022年10月に新設された「産後パパ育休」の2種類があります。それぞれについて解説します。
男女共通の「従来の育児休業」
従来の育児休業は、原則1歳未満の子どもを養育する法律上の父母が取得できる男女共通の休業制度です。所定の要件を満たせば育児休業給付金が受け取れるため、経済的な負担を軽減できます。
また、2022年10月の育児・介護休業法改正により、2回に分割して育児休業を取得できるようになりました。
男性専用の「産後パパ育休」
2022年10月の改正では、男性が育児休業を取得しやすいように「出生時育児休業制度(通称、産後パパ育休)」が新設されました。産後パパ育休は、通称の通り父親が取得する休業で男性専用のものです。
産後パパ育休は子どもの出生から8週間以内(母親の産後休業期間)に最大4週間まで取得でき、従来の育児休業と併用できます。
また、仕事の都合で長期の休みが取れない場合を想定して、2回に分割取得できます。2種類の育児休業を併用した場合、分割取得できる回数は最大4回です。
(産後パパ育休を活用した育児休業の分割取得)
男性育休の制度内容
男性の育児休業の取得条件や取得期間について解説します。
取得条件
従来の育児休業と産後パパ育休は、原則1歳未満の子どもを養育する法律上の父母が勤務先に休業取得を申し出れば取得可能です。法律上の父母には、特別養子縁組した父母や里親も含まれます。企業は育児休業の申し出を拒否することはできません。
ただし、契約社員など有期雇用の従業員については、「出生日から8週間経過する日の翌日から6カ月以内に雇用契約の満了が明らかでないこと」が条件です。雇用契約が更新される可能性があれば条件を満たしたものと判断されます。
また、一定要件を満たす労使協定で「雇用期間が1年未満の従業員は育児休業を取得できない」と定められている場合、該当する従業員は育児休業を取得できません。
取得期間
育児休業の取得期間は原則次の通りです。
- 従来の育児休業:養育する子どもが1歳になるまで
- 産後パパ育休:子どもの出生から8週間以内(取得できるのは4週間)
従来の育児休業については、保育園が見つからないなど、子どもの養育が困難な場合は「子どもが1歳6カ月になるまで」延長できます。
また、子どもが1歳6カ月の時点で同様の状況の場合、「2歳になるまで」延長可能です。
男性育休中の生活保障
育児休業中は、「ノーワーク・ノーペイの原則」により無給であるのが一般的です。休業中の生活保障として設けられた制度などについて解説します。
育児休業給付金
育児休業中の主な生活保障は育児休業給付金です。次の要件を満たせば受給できます。
- 休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上(または賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上)ある月が12カ月以上あること
- 一支給単位期間(育児休業開始日から1カ月ごとの期間)中の就業日数が10日以下(または就業時間数が80時間以下)であること
給付金は1カ月単位で支給され、支給金額の計算方法は次の通りです。「休業開始時賃金日額」は休業開始前の6カ月の賃金を180日で割って計算します。
- 休業開始180日以内:休業開始時賃金日額✕支給日数(30日)✕67%
- 休業開始181日目以降:休業開始時賃金日額✕支給日数(30日)✕50%
ただし、休業開始時賃金日額には次の限度額(毎年8月更改)が設けられています。2024年8月時点の上限額は1万5,690円、下限額は2,869円です。限度額に該当しなければ、休業開始後半年の収入は休業前の2/3、後半の半年は半分です。
社会保険料・税金の免除
育児休業中は、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料は免除されます。健康保険料を支払わなくても、医療費の3割負担など健康保険の給付が受けられます。
また、将来受け取る公的年金は、休業開始前と同様の保険料を支払ったものとして計算されるので安心です。
所得税については、給与が支給されないためかかりません。育児休業給付金も課税対象とならないため所得税は不要です。ただし、賞与が支給された場合は課税されることもあります。住民税は前年の所得に対して課税されるため、収入がなくても納税が必要です。
給与・賞与と有給休暇
育児休業中は給与を支給しない企業が大半ですが、企業が任意で給与を支給しても問題ありません。
ただし、育児休業給付金は支給されない、または減額されます。賞与は査定期間と支給時期がずれることが多いため、育児休業中に支給されることもあります。給与規定などで確認しましょう。
従業員が希望すれば、育児休業の代わりに有給休暇を取得しても問題ありません。従業員の主なメリットは給与が支給されることで、主なデメリットは有給休暇が減ってしまうことです。
なお、有給休暇の付与条件である出勤率の計算では、育児休業の期間は出勤したものとして取り扱います。
企業が対応すべき男性の育休取得推進
2020年5月29日に閣議決定された「少子化社会対策大綱」では、男性の育児休業取得や育児参加が不十分であることが少子化の一因だと考え、企業に男性の育児休業取得の推進を求めています。企業に求められる対応について解説します。
男性の育休取得の現状と目標
男性の育児休業取得は近年急速に進み、取得率は10年前(2.03%)と比較して約15倍の30.1%まで上昇しました。
(育児休業取得率の推移)
引用:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査・事業所調査 結果の概要」
これまで、男性の育児休業取得率の政府目標を30%(2025年まで)としていましたが、2023年6月に発表された「こども未来戦略方針」では次の通り目標を大幅に引き上げました。
- 2025年:公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%
- 2030年:公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%
2022年法改正による企業の義務
男性の育児休業取得率目標の達成に向けて、2022年4月の育児・介護休業法改正では企業に次の義務が課されました。
- 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備:休業制度に関する研修の実施、相談窓口の設置、育児休業取得事例の収集と提供 など
- 該当者への個別の周知・意向確認の措置:育児休業申し出のあった従業員に対し個別に育児休業制度などについて周知し、休業取得の意思確認を行う など
また、2023年4月の改正により、従業員数1,000人超の企業には「育児休業等の取得の状況を年1回公表する」ことが義務付けられました。
まとめ:働き方改革の一環として男性の育休取得を推進しよう
男性の育児休業には、男女共通の「従来の育児休業」と2022年10月に新設された「産後パパ育休」の2種類があります。
両休業を併用すると、男性は4回に分割して育児休業を取得できるため、業務への影響を抑えつつ休業が取りやすくなります。
法律上の義務に従って男性の育児休業取得を進めるだけでなく、企業は働き方改革の一環として積極的に取り組み、従業員が働きやすい職場づくりを目指しましょう。