更年期で仕事をしたくない社員のつらさに寄り添う適切な支援の方法

更年期で仕事をしたくない社員のつらさに寄り添う適切な支援の方法

閉経前の5年間と閉経後の5年間、合わせて10年間を「更年期」といいます。また、更年期に表れるさまざまな症状を「更年期症状」、その中でも症状が重く、日常の生活に支障をきたす状態を「更年期障害」といいます。

更年期症状のある社員は「仕事を続けるのがつらい」と感じることが多く、最悪の場合、退職につながるケースもあります。しかし、「更年期だから仕方ない」と本人があきらめてしまうことがないよう、会社が社員への適切な支援体制を整えることが大切です。
本記事では、更年期の社員の体や心の変化を理解し、無理なく働き続けられるサポートの具体策を紹介します。社員一人ひとりが安心して力を発揮できる環境づくりのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

更年期の社員が「仕事をしたくない」と感じる理由

更年期の社員が「仕事をしたくない」と感じる理由

更年期の身体的な不調や精神的なストレスは、ホルモンバランスの変化が原因です。その結果、集中力や意欲が低下し、仕事に対するモチベーションが減少することがあります。

この章では、実際の調査をもとにした「仕事をしたくない」主な理由を解説します。

仕事への支障があるが相談しにくい

更年期の社員は、体調や気持ちの変化が原因で仕事に支障をきたす場合があります。

こうした悩みを職場で相談するのは簡単ではありません。職場の理解が足りなかったり、上司が異性だったりする場合は、「理解してもらえないのでは」と相談しづらいこともあるでしょう。

集中力や判断力の低下、意欲がわかないなどの問題を解決できないと、今まで通りに業務が進まなくなるかもしれません。

人間関係で迷惑をかけてしまう

さらに、感情のコントロールが難しくなり、周囲の人にイライラをぶつけてしまうこともあります。

自分で抑えられない気持ちから、無意識にきつい言葉を使ってしまい、その結果「迷惑をかけてしまった」と落ち込むケースも少なくありません。こうした悪循環が続くと、仕事への意欲がどんどん失われ、「仕事をしたくない」と感じてしまいます。

社員の意欲低下を防ぐには、職場が更年期の悩みに理解を示し、相談しやすい環境が必要です。気軽に話し合える空気をつくり、社員が安心してサポートを受けられるようになれば、問題の解消につながるでしょう。

更年期症状の5つの特徴

更年期症状の5つの特徴

「更年期症状」は更年期のホルモンバランスの乱れによって起こる心身の不調です。以下に更年期症状の特徴を解説します。

【症状①】ホットフラッシュ(ほてり・発汗)

ホットフラッシュとは突然の体温上昇や多量の発汗が起こる、更年期の代表的な症状です。見た目や汗の匂いなど周囲の視線が気になり、仕事に支障をきたす場合があります。

【症状②】疲労感・倦怠感

十分な睡眠をとっても疲れが抜けず、通常の業務をこなす気力が低下することがあります。慢性化すると家事や育児なども苦痛に感じ日常生活にも支障をきたす場合もあります。

【症状③】精神的な不安やうつ症状、不眠

急な気分の不安感やイライラ、気分の落ち込み、ときには不眠が生じ、集中力の低下などにより日中の仕事に悪影響が出る場合があります。

【症状④】腰痛・肩こり・頭痛・関節痛などの身体症状

痛みによる動きの鈍さや作業効率の低下で休職につながるケースもあります。関節リウマチや椎間板ヘルニアと混同しやすいことがあります。

【症状⑤】めまい・耳鳴り

更年期症状としてのめまいは精神的ストレスや睡眠不足が原因で起こることがあります。結果として判断力や集中力が低下し、ミスが発生しやすくなります。人とのコミュニケーションが難しくなる場面もあります。メニエール病や脳の疾患の可能性もあります。

更年期症状を理解するためのポイント4つ

更年期症状を理解するためのポイント4つ

次に、更年期症状を理解するための4つのポイントをまとめました。

ホルモン変化の影響

女性では女性ホルモン、男性では男性ホルモンの減少が、心身の健康に影響を与えます。

女性の更年期

女性では40代前半~50代前半にかけて、ホルモンバランスから月経周期の乱れが見られ、更年期症状が出現することがあります。

男性の更年期

男性に閉経はありませんが、加齢に伴い男性ホルモンが減少し、40代以降に心身の不調(疲労感、集中力低下など)を感じることがあります。

症状の個人差

不調の程度や種類には大きな個人差があります。軽度で済む人もいれば、日常生活に支障をきたす人もいます。

参考:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果 (2022 年7月 26 日)(PDF)

更年期症状を和らげる4つのセルフケアと医療機関の利用

更年期症状は、ご自身のケアで症状が和らぐ場合や医療機関で治療が必要なケースがあります。困っている社員へのアドバイスとして、以下に、効果的な4つのセルフケアの実践方法と医療機関の利用について解説します。

1.バランスの取れた食生活

更年期の不調を軽減するためには、栄養バランスの取れた食事が大切です。
女性では女性ホルモンの減少による骨の弱まりや体調不良に備えるため、カルシウムやビタミンDを含むきのこ類などの食品を積極的に取りましょう。

また、大豆製品に含まれるイソフラボンはホルモンバランスを整える働きがあり納豆や豆腐、豆乳などが効果的です。

加えて、血糖値を安定させるため、野菜や玄米などの低GI食品を心がけ、過度に甘いものや脂質の多い食事を控えることをおすすめします。

2.睡眠と運動

質の良い睡眠の確保は、自律神経の乱れを整える効果が期待できます。寝る1時間前にはスマホやPCの使用を避け、入浴や読書などリラックスできる習慣を取り入れましょう。

また、適度な運動も効果的です。ウォーキングや軽いストレッチなどを定期的に行うと血行が良くなり、肩こりや頭痛の緩和に役立ちます。さらに運動はストレスの解消や、質の高い睡眠の確保にもつながります。

3. リラクゼーション(ヨガ・瞑想・深呼吸など)

リラクゼーションは心と身体のバランスを整えるために有効です。

ヨガや瞑想などの呼吸法は自律神経が整い、イライラや不安感が軽減します。1日数分でも瞑想や深呼吸をする習慣を持つと、ストレスが和らぎリフレッシュできます。

4.サポートネットワークの活用

自分の気持ちを共有できればストレスが軽減され、安心感が得られます。まずは家族や友人、難しければ、オンラインコミュニティやサポートグループを活用するのも一つの方法です。

また、職場での理解を得るために上司や同僚に自分の状態を伝えることも検討してみてください。周囲からのサポートによって、精神的な負担を減らし前向きな気持ちで過ごせます。

5. 医療機関の受診と治療

更年期世代で、心身の不調がある場合は、無理をせず女性は婦人科、男性は内科・泌尿器科を受診しましょう。また、更年期症状だと思っていたらほかの病気が見つかるケースもありますので、症状をがまんせずに早めの受診がおすすめです。

更年期障害の治療はホルモン補充療法と漢方治療がメインです。ホルモン補充療法は性ホルモンを補うことで、更年期症状を緩和する治療法です。精神的な症状や不眠が強い場合は安定剤や睡眠剤を使うこともあります。

更年期の症状と仕事を両立させるために会社ができること

更年期の症状と仕事を両立させるために会社ができること

更年期に悩む社員が安心して働き続けるためには、本人の工夫に加えて、会社のサポートが不可欠です。以下は効果的な支援策の具体例です。

1.フレキシブルな勤務制度の導入

体調に合わせて勤務時間を調整できる「フレックスタイム」や「在宅勤務」が利用できれば、無理せず働けます。必要なときに休みやすい環境も大切です。

2. 健康相談窓口や専門医のサポート体制

健康に不安を感じたときに気軽に相談できる窓口や婦人科医の紹介制度があると安心感が増します。早期の相談が症状の悪化を防ぎ、長期的な健康管理にもつながるでしょう。

3.更年期に関する啓発と上司のトレーニング

上司が更年期について正しく理解することで、適切な声かけやサポートが可能になります。研修や啓発活動を行い、職場全体でヘルスリテラシーの向上に努めることが重要です。

4. 社内コミュニティや勉強会の開催

同じ悩みを持つ社員同士で情報交換できる場があると、心の負担が軽くなります。勉強会や座談会を開くことで知識を深め、交流の場を設けることも有用です。

5.業務内容や評価基準の見直し

体調の変化で一時的に成果が出なくても、長い目で評価できる仕組みが必要です。また、仕事内容を無理なく調整することも、本人の力を引き出す鍵になります。

6.リラクゼーションスペースの設置

社員が一息つけるリラクゼーションスペースを設けることで、心身のリフレッシュが促されます。リラックスできる空間は、ストレス軽減とパフォーマンス向上につながります。

これらの取り組みによって、更年期の社員が自信を持って働き続けられる職場環境をつくることが、会社全体の成長と社員のモチベーション向上に貢献します。

まとめ:更年期症状を正しく理解し無理なく働き続けられる職場づくりを

まとめ:更年期症状を正しく理解し無理なく働き続けられる職場づくりを

更年期は誰にでも訪れる可能性がある身体の変化です。経験豊富な人材を離職させないためにも適切なケアと周囲のサポートが必要です。

企業としても支援体制を整えることは、単に更年期の社員への対応だけでなく、すべての従業員にとって働きやすい職場環境の実現につながります。

結果として、社員の経験とスキルを最大限に生かし、社員のモチベーションと生産性を維持し、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

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