「精神的にしんどい」悩みを持つ従業員の兆候と企業ができる取り組み
「精神的にしんどい」と感じる従業員は決して少なくありません。
従業員の「精神的にしんどい」状況を放置することで、メンタルヘルスの悪化による休職者増加につながったり、会社の業績に悪い影響をもたらしたりする可能性があることが示唆されています。
今回は「精神的なしんどさ」をかかえる従業員の理由や兆候、会社としての対応策について、事例も併せてご紹介します。
社員のメンタルヘルス対策に取り組んでいる企業責任者や人事担当者は、ぜひ最後までお読みください。
「精神的なしんどさ」とは? ~理由・影響・兆候~
従業員は、どういった理由から「精神的なしんどさ」を抱えるようになるのでしょうか。
そして、従業員の「精神的なしんどさ」は会社に対してどのような影響を与えるのでしょうか。
精神的なしんどさを見分けるための兆候やサインについて解説していきます。
「精神的しんどさ」を抱える理由
「精神的しんどさ」を抱える理由について、厚生労働省が令和5年にまとめた過労死等防止対策白書を参考に説明します。
令和5年版過労死等防止対策白書によれば、「仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じる」と回答した従業員が挙げた理由は以下の通りです。
- 仕事の量
- 仕事の失敗、責任の発生等
- 仕事の質
- 対人関係(セクハラ・パワハラ含む)
- 会社の将来性
- 役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換等)
- 顧客、取引先からのクレーム
- 雇用の安定性
上図から、「仕事や職業生活に関する強い不安・悩み・ストレスを感じる」を「精神的しんどさ」と関連させると、仕事の量に対して精神的しんどさを感じる人が最も多く、2番目に仕事の失敗や責任の発生などの対人関係が高いです。
仕事の量的負担ややりがいのなさ、仕事のミスや失敗に対する恐れなど、それぞれの会社ごとで精神的しんどさの原因を追求するうえで参考にしてみてください。
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企業の業績に与える影響
社員が感じる精神的しんどさは、企業の業績にも影響を与えます。
従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績について調査したある論文では、メンタルヘルス休職者数の上昇は中長期的な売上高利益率を低下させる悪影響が示されています。
また、研究の対象となった従業員全体に占めるメンタルヘルス休職者の比率は平均1%未満です。
そのため、直近の休職者発生数が少なくても、事業所全体の休業者比率が1%以上の場合には労働環境や職場管理に改善点があることを疑う先行指標として活用できる場合があります。
参考:独立行政法人経済産業研究所「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績 -企業パネルデータを用いた検証」
「精神的しんどさ」を抱える従業員の兆候・サイン
精神的なしんどさを抱える社員には次のような兆候やサインが現れることがあります。
- 集中力の低下:ミスが多い
- 生産性の低下:以前より業務に時間がかかる
- 欠勤や遅刻の増加:突発的な欠勤の遅刻が生じる
- 仕事の興味の低下:やる気や熱意が低い
- 気分の変動:些細なことでイライラしたり不安になる
- 社交的な活動を避ける:コミュニケーションを避ける
- 身体的な不調の訴え:頭痛、胃痛、疲労感など
- 睡眠障害:寝つきが悪かったり寝過ぎたりする
上記のような従業員の兆候・サインに気付けるよう、上長や同僚が綿密なコミュニケーションを取れるような職場環境を調整できるようにぜひ調整してみてください。
企業としての対応策
メンタルヘルスケアに対する企業の取り組み内容
職場での精神的しんどさは、職場におけるメンタルヘルスケアによって軽減することが可能です。
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所は以下のような取り組みをしています。
- メンタルヘルス対策の担当者選任
- ストレスチェックテストの年度実施
- 集団分析などによる職場環境の評価及び改善
- メンタルヘルス不調の社員に対する配慮の実施
- メンタルヘルスに関する事業所内での相談体制の整備
- 事業場内外の産業保健スタッフによる高ストレス者などへフォロー
- 事業場内でのセルフケアやラインケアに関する教育研修・情報提供
参考:厚生労働省「令和5年版過労死等防止対策白書」 ※一部SUGARで改変
多くのケースでストレスチェックの実施や、職場環境の評価・改善を通じて、従業員の状況を把握しています。
その上で、相談体制の構築、産業保健スタッフによる保健指導などを実施しています。
まずは、手軽に始められるストレスチェックテストで職場の状況を知ることから始めて、各種相談体制の設置に向けて対応を行っていきましょう。また、労働者や管理監督者に対する教育研修や情報提供なども重要です。
関連サービス:SUGAR「ストレスチェックテストサービス」
メンタルヘルスケア対策の取り組み事例
厚生労働省の「こころの耳」に掲載されている企業の例より、実際の取り組み事例を2社紹介します。
①株式会社中央コーポレーション (岩手県花巻市)
株式会社中央コーポレーションでは、社員の喫煙率の高さをきっかけに社長自らが情報収集を行い、結果的に「健康経営優良法人(中小規模法人部門)ブライト500」の認定を受けています。
職場のメンタルヘルス改善にも力を入れています。
たとえば、社員の誕生日にギフトとともに社長室で1on1をする「誕生日ミーティング」の取り組みをしたり、残業時間を減らすための行動計画を立て、勤怠システムの導入による残業状況の把握などの取り組みをすることで、残業時間の削減に成功しています。
社長自らが主導する健康経営に対する数々の取り組みが、社員のメンタルヘルス不調の予防、および退職者の減少につながった事例です。
参考:厚生労働省 こころの耳 「株式会社中央コーポレーション 事例より」
②大阪ガス株式会社(大阪府大阪市)
大阪ガス株式会社では、従業員の健康に向けた取り組みをわかりやすく発信するために「ヘルシー7」という行動指針を策定し、周知しています。
<行動指針 ヘルシー7>
健康経営宣言に基づき、従業員の健全な生活習慣を担保するための行動指針「ヘルシー7」を策定し、周知する。
- 体重:健康習慣を身に付け、適正体重を目指し、維持しましょう
- 食事:朝食から3食抜かずに食べる等の正しい食事習慣を身につけましょう
- 運動:適度な運動を継続する習慣をつけ、体力づくりとリフレッシュを図りましょう
- 飲酒:過度な飲酒を控えましょう(お酒はたのしくほどほどに)
- 喫煙:就業時間内は喫煙を控え、タバコによる病気を防ぎ、受動喫煙もなくしましょう
- 睡眠:ワークライフバランスを図り、十分な睡眠時間を確保しましょう
- ストレス:ストレス状態を把握して、適切に対処しましょう(一人で悩まず、相談を)
引用:「Daigasグループ健康経営宣言・行動指針ヘルシー7」
メンタルヘルス対策の取り組みについては、ストレスチェックが法制化された2015年に先駆けて2007年から健康診断に合わせて調査を実施してきました。
高ストレス者に対しては、面接指導に加えて申し出がなかった方に対しても電話やメールのフォローや検診時のフォローなどプロアクティブな対応を行っています。
また、高ストレス者が多い部署をピックアップして、現場とともに対策を考える体制を積極的に整えています。
参考:厚生労働省 こころの耳 「大阪ガス株式会社様 事例より」
「精神的しんどさ」を解消することで社員が活力を持ち働きやすくなる
従業員の精神的しんどさをメンタルヘルス対策で解消することにより、魅力ある企業へ変えていくことができます。
さらには企業業績の向上につながる可能性もあります。
SUGARは各種メンタルヘルス対策についてご支援しています。お困りのことがありましたらぜひお気軽にご相談ください。
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