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オンライン産業医面談の注意点5つ|メリット・デメリットも解説

この記事のポイント
- オンライン面談は場所を選ばず相談しやすいメリットがある一方、通信環境や非言語情報の伝わりにくさというデメリットもあります。
- オンライン産業医面談の注意点は、①プライバシーが守れる「場所」の確保、②安定した「通信環境」の準備、③表情が見える「カメラON」での対話、④「緊急時対応」の事前共有です。これらに加え、企業側には⑤衛生委員会での審議といった「導入準備」が不可欠です。
- 企業側は、セキュリティが担保されたツールを選定し、従業員が安心して話せる環境と安全体制を整える配慮が求められます。
導入
「最近はリモートワークが中心だけど、産業医面談もオンラインで受けられるのかな?」
「自宅から面談を受けるのは便利だけど、会社の会議室と違って、なんだか落ち着かない…」
働き方の多様化にともない、産業医面談もオンラインで実施されるケースが急速に増えています。場所を選ばずに専門家のサポートを受けられる便利な仕組みですが、対面とは異なる特有の注意点が存在するのも事実です。
この記事では、オンライン産業医面談のメリット・デメリットを整理するとともに、従業員・企業双方が知っておくべき5つの重要な注意点や、状況に応じた対面面談との使い分けについて解説します。
▼ そもそも産業医面談の全体像を知りたい方は、まずこちらの記事をご覧ください。
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目次
オンライン産業医面談のメリットとデメリット

オンライン産業医面談は、場所を選ばない利便性がメリットです。一方で、画面越しでは表情や声色が伝わりにくく、通信環境に左右されるというデメリットもあります。
オンライン産業医面談のメリットとデメリットを理解し、効果的な面談を行いましょう。
| 側面 | 具体的な内容 |
|---|---|
| メリット |
|
| デメリット |
|
メリット:場所を選ばず、相談のハードルが下がる
2020年11月の厚生労働省の通達により、一定の要件下でオンラインによる産業医面談が正式に認められました。
産業医面談をオンラインで行うことで得られるメリットは以下のとおりです。
- アクセスの向上:リモートワーク中の従業員や、遠隔地の事業所に勤務する従業員も、本社にいる専門性の高い産業医の面談を気軽に受けられます。
- 日程調整のしやすさ:移動時間が不要なため、多忙な従業員や産業医でもスケジュールを合わせやすくなります。
- 心理的ハードルの低下:普段使い慣れた自宅など、リラックスできる環境から相談できるため、対面よりも緊張せずに本音を話しやすいと感じる人もいます。
参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」
デメリット:情報量の制限と環境への依存
オンライン面談には利便性がある一方で、特有の課題も存在します。
- 非言語的情報(ノンバーバル・コミュニケーション)の不足:画面越しでは、表情の細かな変化、声のトーン、仕草、姿勢といった言葉以外の情報が伝わりにくく、産業医が相談者の状態を正確に把握しにくくなります。
- 通信環境への依存:映像や音声が途切れると、スムーズな対話が妨げられ、重要な内容が伝わらないリスクがあります。
- 緊急時の対応の難しさ:万が一、面談中に相談者の心身の状態が急変したり、強い希死念慮が語られたりした場合に、対面で迅速に対応することが難しくなります。
【従業員・企業共通】オンライン面談 5つの注意点

効果的なオンライン面談のためには、「導入準備」「場所」「通信」「カメラ」「緊急時対応」の5つの準備が不可欠です。
従業員はプライバシーが守れる静かな場所と安定したネット環境を確保し、企業側は導入前の手続きを適切に行い、セキュリティの高いツール選定と万が一に備えた安全体制を構築する必要があります。
オンライン・対面を問わず、そもそも産業医面談で何を話せばよいか不安な方や、事前に準備しておきたい方は、まずこちらの記事で基本を押さえておくと安心です。
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参考:独立行政法人労働者健康安全機構「オンラインによる医師の面接指導を実施するにあたっての留意事項」
参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」
| 注意点 | 従業員側のポイント | 企業側のポイント |
|---|---|---|
| 注意点1: 導入準備 |
会社のルールを確認し、ツールの準備や相談内容の整理をしておく。 | 衛生委員会などで審議し、実施方法を規程化・周知する。 |
| 注意点2: 場所 |
一人になれる個室を確保する。第三者がいる場所は避ける。 | 事前にプライベートな空間を確保するよう依頼し、必要に応じて場所を手配する。 |
| 注意点3: 通信 |
安定したインターネット接続を確認する。可能であれば有線LANを利用する。 | セキュリティが担保された安定性の高いツールを指定し、機材のサポートを行う。 |
| 注意点4: カメラ |
原則カメラをONにし、表情が見える状態で対話する。 | カメラONをルールとして周知し、円滑なコミュニケーションを促す。 |
| 注意点5: 緊急時対応 |
緊急時に連絡がとれる電話番号などを事前に共有しておく。 | 緊急時の対応プロトコルを策定し、産業医と連携体制を構築する。 |
注意点1:導入前の準備と周知【企業側の重要事項】
【従業員側】
オンラインで産業医面談を受ける場合には、事前に会社のルールを確認し、ツールの準備や相談内容をメモなどで整理をしておくことが推奨されます。
【企業側】
オンラインでの面接指導を導入する際は、事前に実施方法について衛生委員会等で調査審議することが不可欠です。厚生労働省が示す留意事項でも、衛生委員会等での調査審議が必要とされています。
審議を経て定めた実施方法やルールは、社内規程として明文化し、全従業員に明確に周知する必要があります。具体的には、以下の点などを網羅的に定めると良いでしょう。
- 本人確認の方法: なりすましを防ぐため、面談開始時に社員証や健康保険証などで本人確認を行うルールを定めます。
- 費用負担のルール: 面談時の通信費や、従業員が自宅で適切な場所を確保できない場合に外部の個室などを利用する際の費用を誰が負担するのかを明確にします。
- 記録の保管とプライバシー: 面談内容の録画・録音の可否、議事録等の記録の保管方法、アクセス権限などを定め、プライバシー保護を徹底します。
これらのルールを整備し周知することで、従業員は安心してオンライン面談を利用でき、企業としての安全配慮義務を適切に果たすことにもつながります。
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注意点2:プライバシーが完全に確保できる「場所」を選ぶ
【従業員側】
面談内容は極めてプライベートなものです。
家族や同居人に会話が聞こえないよう、一人になれる個室を確保してください。
カフェやコワーキングスペースなど、第三者がいる場所での面談は避けるべきです。
【企業側】
従業員に対し、事前にプライベートな空間を確保するよう明確に周知することが重要です。
もし、従業員が自宅で適切な場所を確保できない場合は、会社がサテライトオフィスの個室ブースなどを手配する配慮も求められます。その際の費用負担のルールについても、事前に明確にしておくと従業員は安心して利用できます。
産業医面談で配慮すべき守秘義務については、以下の記事もご覧ください。
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注意点3:安定した「通信環境」を準備する
【従業員側】
面談前には必ず、使用するPCやスマートフォンのインターネット接続が安定しているかを確認しましょう。
可能であれば、途切れやすい公衆Wi-Fiではなく、有線LAN接続や安定した自宅のWi-Fi環境を利用することが望ましいです。
【企業側】
会社として、セキュリティが担保された安定性の高いビデオ会議ツール(Microsoft Teams、Google Meet、Zoomなど)を指定し、必要であれば従業員にヘッドセットを貸与するなどのサポートを行います。
注意点4:お互いの表情が見えるよう「カメラをON」にする
【従業員側・産業医側】
オンライン面談のデメリットである「非言語的情報の不足」を少しでも補うため、原則としてお互いにカメラをONにして、表情や顔色が見える状態で対話することが重要です。
お互いの表情が確認できることで、信頼関係を築きやすくなり、より深いコミュニケーションが可能になります。
また産業医側も、画面越しの限られた情報から状態を正確に把握するため、対面以上に傾聴や質問のスキルを駆使して対話を進行します。
【企業側】
面談のルールとして、カメラをONにすることを事前に定めておくとスムーズです。
もちろん、従業員の体調など、やむを得ない事情がある場合は柔軟に対応することも必要です。
注意点5:緊急時の対応フローを事前に定めておく
オンライン面談の重要な課題の一つに、万が一の事態への迅速な介入の難しさがあります。
面談中に相談者の心身の状態が急変したり、強い希死念慮や自殺企図が打ち明けられたりした場合に備え、緊急時の対応方法を事前に明確にしておくことが不可欠です。
【従業員側】
万が一に備え、緊急時に連絡が取れる電話番号などを事前に産業医や会社担当者と共有しておきましょう。
【企業側】
企業は、産業医と連携し、以下の点を含む緊急時対応フローを策定・周知しておく必要があります。
- 面談中に緊急事態が発生した場合の連絡体制(産業医→人事→上長など)。
- 従業員の緊急連絡先(電話番号、家族の連絡先など)の事前確認と、同意に基づく産業医との共有。
- 必要に応じて、近隣の医療機関や地域の相談窓口と連携できる体制の構築。
【判断基準】オンラインと対面、どう使い分ける?

オンライン面談は利便性が高い一方、万能ではありません。
従業員の状況や面談の目的に応じて対面での面談と適切に使いわけることが、産業保健の質を担保する上で重要です。
オンラインか対面かを選ぶ以前に、「そもそも産業医面談は拒否できないのだろうか?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。面談の義務や従業員の権利については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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| 面談の種類 | オンライン面談が適している場合 | 対面面談を優先すべき場合 |
|---|---|---|
| 定期・ フォロー |
|
|
| 緊急・ 重要 |
(原則として対面を推奨) |
|
対面が望ましい理由
休職からの復職判定など、従業員のキャリアに影響を与える判断が求められる場面では、とくに対面での面談が望ましいとされています。
オンラインでは把握しきれない表情の細かな変化、雰囲気、姿勢といった非言語的情報を評価し、より慎重な判断を下す必要があるためです。
また、身体的な不調が主訴である場合、オンラインでは身体診察ができないため、対面での評価が不可欠となります。
参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」
まとめ:準備を万全に、オンラインの利点を最大限に活用しよう
オンライン産業医面談は、適切に準備し注意点を守ることで、対面と遜色のないサポートを受けられます。場所の制約なく専門家とつながれるというメリットを活かすためにも、プライバシーの確保と安定した通信環境の準備を心がけましょう。
しかし、オンライン産業医面談の質は提供者によって大きく異なります。とくに、従業員50~300名規模の企業で、人事・総務を兼務されている多忙なご担当者様にとって、単に法令を遵守するだけの面談では、本質的な課題解決につながりにくいでしょう。
合同会社SUGARは、そのような「悩める人事担当」の皆様に寄り添う「専門家パートナー」です 。
私たちのサービスは、単なる面談の実施にとどまりません。詳細な事前問診と厚生労働省の推奨基準を超える実践的な意見書の作成を通じて、画面越しでも最大限の情報を引き出し、人事担当者様が具体的ですぐに実行できるアドバイスを提供します。
産業医面談の品質を支えるのが、独自の厳格な基準と研修プロセスを経た「SUGAR認定産業医制度」です 。ピアレビューを含む多角的な評価制度によって 、すべての認定産業医がSUGAR標準の高い品質を維持しており、安心してご相談いただけます。
「今の産業医は形式的な対応しかしてくれない」
「メンタル不調者への対応で、法的に問題がないか不安だ」
「復職支援のプロセスで、的確な医学的アドバイスが欲しい」
このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、合同会社SUGARにご相談ください。貴社の「守りの人事」を、専門医が強力にサポートします。
オンライン産業医面談は、法律的に認められているのですか?
はい、認められています。2020年11月の厚生労働省からの通達により、情報通信機器を用いた産業医面談が正式に可能となりました。ただし、従業員と産業医双方のプライバシーが確保され、円滑に対話できる環境であることが条件とされています。
自宅に一人になれる部屋がない場合、どうすればよいですか?
その場合は、まず正直に会社の人事担当者に相談してみてください。会社によっては、近隣のレンタルオフィスやサテライトオフィスの個室ブースを費用負担で手配してくれる場合があります。プライバシーが守られない環境で無理に面談を受けることは避けるべきです。
面談中に通信が切れてしまったら、どうなりますか?
多くの場合は、再度接続を試みるか、電話などの代替手段でコミュニケーションをとることになります。万が一に備え、事前に緊急連絡先(電話番号など)を産業医や人事担当者と交換しておくと安心です。通信トラブルも想定し、少し余裕を持った時間設定がされていることが一般的です。
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