実は知らないパニック障害?診断分類の解説と職場で必要な配慮を紹介

実は知らないパニック障害?診断分類の解説と職場で必要な配慮を紹介

慌てたり、混乱したりしたときに、「パニックになった」「パニクった」という言葉を使うことがあります。芸能人が「パニック障害」になったというニュースを耳にしたこともあるでしょう。

パニック障害(パニック症)は、100人に1人くらいの割合で発生すると言われており、決して珍しい病気ではありません。一方で、「パニック障害」の医学的な定義は、世間一般的に使われている「パニック」とは、少し意味合いが異なります。

今回の記事では、パニック障害について、医学的な観点から解説を行い、パニック発作で悩んでいる人に必要な配慮を紹介します。

関連記事:パニック障害で仕事に行けない?対処法と本人ができる工夫を解説

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「パニック症 / パニック障害

パニック障害とは?

パニック障害とは?

精神疾患に関する国際的な診断基準の最新版、DSM-5では、パニック障害は「パニック症/パニック障害(Panic Disorder)」として分類されています。

パニックに関する言葉では、「社交恐怖」や「広場恐怖」という言葉もよく登場します。これらは「社交不安症」「広場恐怖症」として、パニック障害とは別の病気として分類されています。

ここではパニックに関連する疾患について、DSM-5の分類に沿って解説します。

参考:医学書林「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引」

パニック発作

パニック発作とは、パニックに関連する疾患で見られる症状です。激しい恐怖や強烈な不快感が急激に高まり、以下のような症状がいくつか起こります。

  • 動悸、心拍数の増加
  • 発汗
  • 震え
  • 息苦しさ
  • 胸の痛み
  • 吐き気
  • めまい
  • 寒気、熱っぽい感じ
  • 感覚の麻痺
  • 現実ではない感じ

「焦る」「慌てる」「混乱する」といった状態は、パニック発作の症状には含まれません。

パニック症 / パニック障害

パニック症(パニック障害)は、パニック発作が「予期せずに突然」、繰り返し起こります。社交不安や広場恐怖、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のように、特定の状況や対象に反応して生じるものは、別の診断名がつきます。

「また突然パニックが襲ってくるのではないか」「このままどうにかなってしまうのではないか」という心配を抱きやすくなります。パニック発作が起きそうな行動や不慣れな状況を回避することもあります。

限局性恐怖症

特定の対象や状況に対して、実際の状況とは釣り合わないような恐怖や不安を、ほぼ毎回、感じてしまう病気です。「クモや虫、犬などの動物」「高所や水などの自然環境」「注射針や血液などの医療処置」などが、恐怖を与える対象として知られています。

恐怖や不安は、嫌というレベルにとどまらず、社会的や職業的に求められる行動がとれないため、生活に支障が生じてしまいます。「注射の採血が恐怖で、健康診断を受診できない」「飛行機が恐怖で、東京から沖縄までフェリーで移動する」などの例があります。

社交不安症 / 社交不安障害(社交恐怖)

「人から見られること」「人とやりとりすること」「人前で何かすること」について、著しい恐怖や不安を感じます。否定的な評価を受けるのではないか、恥をかくのではないか、迷惑をかけるのではないかという怖れにとらわれます。

雑談などの社交的なやりとりをしたり、知らない人に会ったりすることができないため、働ける場面が限られます。食べたり飲んだりするところを見られることも不安に感じるため、昼食の時間も苦痛になります。

広場恐怖症

複数の広い場所や囲まれた場所、人が多く集まる状況で、ほぼ毎回、恐怖や不安に襲われます。具体的な場所や状況として、次の5つがあげられます。

  • 電車やバス、飛行機などの公共交通機関
  • 駐車場や公園、橋などの広い場所
  • お店やホール、映画館などの囲まれた場所
  • 行列や群衆の中
  • 1人でいる屋外

満員電車に乗るとパニック発作が起こり、通勤できなくなるといった症状は、広場恐怖症に該当する可能性があります。

その他

パニック発作は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や、さまざまな不安症、中毒物質の使用によっても起こることがあります。身体面で心臓や呼吸器、胃腸などに疾患があるときも、パニック発作が生じることがあります。

パニック発作を伴う疾患は多いため、自己判断せずに医師の診断を受けることが大切です。

パニック発作の仕事への影響

パニック発作の仕事への影響

パニック障害や、パニック発作がある人は、仕事でどのような苦労や悩みを抱えているのでしょうか。

ここからは、パニック発作やパニック発作に伴う不安が及ぼす仕事などへの影響について、場面を分けて紹介します。

屋外での発作

満員電車で発作が起きたり、犬のいる家の前を通れなかったりすることで、出勤時間や約束の時間に遅刻することがあります。パニック発作が起きたために、知らない場所に赴いて、社交的なやりとりをする営業の仕事ができなくなることもあるでしょう。

屋外では見ず知らずの人が多いため、突然パニックになったらどうしようと不安になり、外出する機会が減ることもあります

職場での発作

ホールやエレベーターなど、閉じられた空間で発作が起きる人がいます。人の多さが発作の原因となる場合は、大人数での朝礼や、集合研修、社員食堂なども発作を誘因する環境となります。人間関係に起因する発作や、仕事のプレッシャーから出現する発作もあります。

そのため、コミュニケーションを必要とする仕事や、プレッシャーのかかる仕事を、本人や周囲が避けるようになります。まわりの上司や同僚が何も知らない場合には、突然の発作に驚き、心配することもあるでしょう。

うつ症状と休職

パニック発作を繰り返し発症するうちに、2次疾患として、うつ症状が出現することもあります。発作や不安の程度が改善されず、働けない状況が続く場合には、休職を検討することも1つの方法です。

休職期間は人によりさまざまです。恐怖や不安、パニック発作が出現する頻度を見ながら、主治医や上司と相談のうえ、休職期間や復職の時期を決定します。

パニック発作がある人への職場の配慮

パニック発作がある人への職場の配慮

パニック発作がある人が職場で働いている場合、上司や同僚にどのような配慮が求められるのでしょうか。

職場で必要な配慮と、パニック発作で悩んでいる人が安心して働ける方法を紹介します。

病気の症状の把握

パニック発作がある人の伝え方として大切なことは、正直に症状を伝えることです。伝える相手は、上司が望ましいですが、難しければ、産業医や人事関係者でも構わないので、安心できる人に相談します。

相談を受けた人は、パニック発作がある人の恐怖や不安を想像しながら話を聞き、一緒に対策を話し合う姿勢が大切です。

どういうときにどのような発作が起きるのか、発作が起きたらどうすればよいのかについて、主治医の意見も含めて把握を行います。

発作で不安にならないために

パニック発作がある人への必要な配慮の内容は、その人その人で変わります。満員電車で発作が起きる人には通勤時間をずらす、社員食堂で発作が起きる人には個室での食事を認めるなどの配慮が考えられます。

仕事内容や、作業量、依頼するタイミングなどについて事前に話し合い、必要に応じて業務調整を行います。発作が起きたときの対応や、同僚などへの症状の伝え方についても確認します。

パニック発作による疾患の治療は、服薬や心理療法が中心です。休職時には、医療機関や地域障害者職業センターで、復職に向けたリワークプログラムを受けることができます。

パニック発作による疾患で、休職や離職期間が長くなってしまった場合には、障害者手帳を取得して、障害福祉サービスの就労支援を受けることを検討してもよいでしょう。

まとめ:対話を通じて必要な配慮を

まとめ:対話を通じて必要な配慮を

パニック障害(パニック症)について、パニック発作を伴う疾患とともに解説しました。

症状がその人その人で違うため、十分な対話を通じて、それぞれに特化した配慮を行うことが大切です。「発作がまた起こるかもしれない」という恐怖や不安は、周囲の理解によって、「発作が起きても大丈夫」という安心に変わっていきます。

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