パワハラによるストレスとは?防止のために企業がすべきことを解説!

パワハラによるストレスとは?防止のために企業がすべきことを解説!

パワハラとは、職場での優位な立場を利用した嫌がらせや業務範囲を超えた言動などを指します。2022年6月から、すべての企業にパワーハラスメント防止策を講じることが義務化されました。

職場でのパワハラは従業員のメンタルヘルスに影響します。企業として対応しなければならないと理解しつつも、具体的な対策がわからない人事労務担当者の人も多いのではないでしょうか。

本記事では、パワハラが引き起こすストレス症状や職場への影響を踏まえた上で、パワハラ防止のための具体的な対策を解説します。パワハラを受けた従業員のケアについても紹介しますので、パワハラ対策を一から理解したい人は参考にしてみてください。

パワハラとは?定義と種類

パワハラとは?定義と種類

パワハラとは、職場における地位や権力を利用した、いじめや嫌がらせなどです。

職場の優位な立場によるものだけでなく、たとえば部下から上司に対する言動もパワハラになる可能性があります。正社員か非正社員かではなく、全員が加害者になる可能性があるものです。

パワハラには、以下のような6つの種類があります。

  • 精神的な攻撃:同僚の前での叱責、メールで罵倒など
  • 身体的な攻撃:たたく、殴る、蹴るなど
  • 過大な要求:他人の仕事まで押し付けられるなど
  • 過小な要求:嫌がらせのため仕事を与えないなど
  • 人間関係からの切り離し:集団で無視をして孤立させるなど
  • 個の侵害:従業員のプライバシーに関する情報を職場内で勝手に話すなど

適正な業務の範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、職場環境を悪化させる行為です。

参考:厚生労働省「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

パワハラが引き起こすストレス症状

パワハラが引き起こすストレス症状

パワハラが引き起こすストレス症状には以下の3つのタイプがあります。

  • うつ症状
  • 身体症状
  • 急性ストレス障害

パワハラが引き起こすストレス症状を知ることは、防止策を検討する際の参考になります。

1.うつ症状

パワハラにより持続的な悲しみや無力感、集中力の低下が起こり、自己否定的な考えが強まり、抑うつ状態に陥りやすくなります。

また「自分には価値がない」という自責の念や、将来への希望が持てなくなるといった思考の歪みも特徴的です。

2.身体症状

精神的なストレスは、自律神経系のバランスを崩し、さまざまな身体症状を起こします。具体的には以下のような症状があげられます。

  • 頭痛
  • 肩こり
  • 胃の不調
  • 動悸や呼吸困難
  • 過度の発汗

とくに、出社時に症状が悪化する傾向があります。これらの症状は休養だけでは改善せず、長期化する場合もあるでしょう。

3.急性ストレス障害

強い精神的衝撃を伴うパワハラの場合には、通常のストレス症状よりも強い、急性ストレス障害があらわれることがあります。

急性ストレス障害とは、自然災害や事故など悲惨なできごとが心の傷となり、フラッシュバックや過度の緊張が生じることです。

パワハラを受けたことを繰り返し思い出したり、不安や緊張が強くなって落ち着かなくなったりします。また、パワハラの加害者や職場を連想させる状況を極端に回避しようとする行動も特徴です。

参考:一般社団法人 日本女性心身医学会「急性ストレス障害・PTSD」

パワハラが及ぼす職場への影響

パワハラが及ぼす職場への影響

パワハラは従業員への精神的な影響だけでなく、職場全体の生産性低下や、労災リスクなどの悪影響を及ぼします。職場へ以下のような影響を与えます。

1.職場環境悪化による生産性低下

パワハラのある職場では、従業員の心理的安全性が損なわれ、自由な発言、創造的な提案が抑え込まれてしまいます。パワハラを目撃した従業員の間でも不安や緊張が高まり、チームワークが悪くなるでしょう。

優秀な人材の流出や転職希望者の増加にもつながり、組織全体の生産性や競争力が著しく低下することになります。

2.精神障害発症による労災リスク

パワハラによって従業員が精神障害を発症すると、労災認定される危険性もあります。うつ病などの精神疾患による労災認定件数は年々増加中です。

労災認定されると社会的な注目を集めやすく、企業の評判や信用に大きなダメージを与え、人材採用や取引関係にも深刻な影響を及ぼすことになります。

参考:厚生労働省「令和5年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

企業が守るべき「パワハラ防止法」

企業が守るべき「パワハラ防止法」

2020年6月に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行され、事業主にパワハラ防止措置の実施が義務化されました。

2022年4月1日からは中小企業も義務化の対象となり、全ての企業でパワハラ防止対策が求められています。

パワハラ防止の措置として、企業には以下の事項が義務付けられています。

  1. 方針の明確化と周知・啓発        
  2. 相談に応じ適切に対応するために、社内の体制整備をする 
  3. パワーハラスメントがあった場合には、迅速かつ適切に対応する
  4. 相談のあった場合には、プライバシーに配慮し、相談したことなどを理由に不当な扱いはしないことなどを周知・広報する

方針や対処の内容を就業規則などの文書に規程するほか、相談窓口の設置、再発防止なども必要です。

参考:厚生労働省「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

パワハラ防止のために企業ができる4つのこと

パワハラ防止のために企業ができる4つのこと

パワハラのある勤務先の特徴について、以下のものが多いことが報告されています。

  • ハラスメント防止規程が制定されていない
  • 残業が多い、もしくは休暇を取りづらい
  • 上司と部下のコミュニケーションが少ない、もしくはない
  • 他部署や外部との交流が少ない
  • 従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる

参考:厚生労働省「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

参考:厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点」

ほかにも、アンコンシャス・バイアス長期にわたってつくられた企業文化など要因として挙げらます。

これらの特徴や要因を踏まえて、パワハラを生み出しにくい組織への調整や解消方法について次に説明します。

1.ハラスメント防止規程の制定

企業がハラスメント防止に本気で取り組む姿勢を示すため、明確な規程の整備が不可欠です。

防止規程には、パワハラの定義や具体例、禁止行為をはっきり示し、相談窓口の設置や対応フロー、違反時の処分基準などを盛り込みます。

ハラスメント防止にかかわる具体的な基準を就業規則に組み込み、社内研修やイントラネットを通して全従業員に周知します。

2.長時間労働や人手不足の解消

過重な業務負担や人手不足は、上司のイライラ、部下への過度なプレッシャーを生み、パワハラの温床となりえます。

業務の棚卸しや効率化、適切な人員配置を図ることで、長時間労働を解消し、パワハラを防止します。

同時に「早く帰ることは悪いことではない」という意識の改革も大切です。残業時間の可視化と上限設定、時間外労働の事前申請制、有給休暇の取得促進など、働き方改革を推進する仕組みを整えます

関連記事:長時間労働の原因と企業に与える影響は?長時間労働対策5選!

3.職場のコミュニケーション改善

良好な職場環境づくりの基本は、上司と部下、同僚間の円滑なコミュニケーションです。

定期的な1on1ミーティングの実施、オープンな意見交換の場の設定、多様な価値観を認め合う組織文化の醸成が重要です。

とくに管理職には、傾聴スキルやアンガーマネジメント研修を実施し、部下との建設的な対話ができる能力を養成する仕組みづくりが求められます。

4.研修を通した企業文化の刷新

企業文化に潜むハラスメントの根は深く、アンコンシャスバイアスが原因となることも少なくありません。

アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みや偏見を指す言葉です。パワハラを行う意識がなくても、意図せず相手を傷つける言動につながります。

とくに、長年根付いた企業文化により、「当たり前」とされている言動や風潮がパワハラだと気づかないケースもあります。

外部講師による研修やロールプレイなど、アンコンシャスバイアスに気づくための教育が重要です。企業文化を刷新する地道な取り組みが、健全な職場づくりの第一歩となります。

関連記事:アンコンシャスバイアスとは?男女における職場での例と対策を解説

パワハラを受けた従業員への対応方法

パワハラを受けた従業員への対応方法

パワハラを防止する職場づくりだけでなく、実際にパワハラが発生した際の対応方法も具体的に決めておく必要があります。

パワハラがあった事案に正しく対処することで、従業員は必要以上のストレスを受けずに済む可能性があるでしょう。

具体的には、以下の3つに注意して対応することが求められます。

  • 聞き取りをし事実関係を確認する
  • 証拠を残してもらう
  • 自分だけで抱え込まない

1.聞き取りをし事実関係を確認する

被害者と加害者の心理的安全性に最大限配慮しながら、両者から丁寧な聞き取りを実施することが重要です。まず、プライバシーが確保された場所を用意し、同意を得た上で、複数の担当者で面談をします。

いつ、どこで、誰が、何をという事実を時系列で整理し、記録に残します。感情を考慮し心情を受け止めつつも、安易な約束や判断は避けるよう注意が必要です。

2.証拠を残してもらう

客観的に把握するため、可能な範囲で証拠の保存を被害者に依頼します。具体的には、問題となる言動があった日時・場所・状況・目撃した人などのメモ、メールやチャットのやり取り、音声データなどの記録です。

パワハラが原因で通院の場合には診断書も証拠になります。また、提出された証拠は厳重に管理し、情報漏洩を防ぐ必要があります。

3.自分だけで抱え込まない

一人で抱え込まず、周囲に相談するよう、従業員に促しましょう。また被害者の孤立を防ぐため、社内外の支援体制について具体的に説明します。

具体的には社内の相談窓口、産業医との連携、外部の専門機関(労働局や精神保健福祉センターなど)を紹介します。

必要に応じて休職制度の活用も検討し、職場復帰に向けては、段階的な業務復帰計画を立て、きめ細かなサポート体制を整えることが重要です。

まとめ:パワハラによるストレスを防いで、働きやすい職場環境を整えよう!

まとめ:パワハラによるストレスを防いで、働きやすい職場環境を整えよう!

パワハラとは、職場での優位な立場を利用した嫌がらせなどです。

すべての企業でパワーハラスメント防止策を講じる必要があります

防止規程を策定したら、長時間労働や人手不足、コミュニケーションが少ないなどの特徴に該当しないか確認してみましょう。

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