【企業担当者向け】リワークプログラムの代表例8つと活用事例を紹介

【企業担当者向け】リワークプログラムの代表例8つと活用事例を紹介

メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰をサポートする方法の一つとして、リワークプログラムがあります。復職に向けた病状回復だけでなく、再休職を防ぐアプローチとしても効果的とされています。

リワークプログラムは、実施される施設によって以下の4つに分けられることが特徴です。

  • 医療リワーク(病院やクリニック)
  • 福祉リワーク(就労移行支援事業所)
  • 職リハリワーク(障害者職業センター)
  • 企業リワーク(企業主体)

4つの領域やそれぞれの施設において、多種多様なリワークプログラムが実施されています。目的に応じて利用できる反面、休職者に対して利用をすすめるプログラムに迷ってしまうかもしれません。

本記事では、代表的な8つのリワークプログラムや復職に活用するための事例について解説します。職場復帰を支援するための方法としてリワーク利用を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

リワークの概要や進め方については、以下の記事もご覧ください。

関連記事:リワークの効果的な進め方|社外資源を上手に活用する3つのポイント

8つの代表的なリワークプログラム

リワークで実施されているプログラムは多岐にわたりますが、主に以下の4つに分けられます。4つの領域に沿って、8つのプログラムの特徴を解説します。

  • 自己理解や疾病理解
  • ストレス対処
  • 対人スキルの獲得
  • リハビリテーション

1.自己理解や疾病理解

リワークでは、自分自身や疾患に対して理解を深めるプログラムが行われます。たとえば、休職の原因となった疾患について学ぶ心理教育、復職後の働き方を考えるキャリアデザインなどのプログラムがあります。

心理教育

心理教育とは、疾患について学習し理解を深めるアプローチです。疾患の再発を予防し、症状をセルフコントロールできるよう取り組みます。

うつ病であれば、抗うつ薬や睡眠薬の効果、再発の危険性、うつ状態のときの考え方などを学びます。

知識を深めることで、服薬や治療に対するモチベーションを維持したり、精神状態の悪化を招く習慣を見直したりできるでしょう。

キャリアデザイン

自己分析やキャリアビジョンを明確にすることで、復職後の働き方を考えるプログラムです。休職理由や自分の適性を分析し、今後はどのような強みを生かして活躍していくかを考えます。個人的な内容を含むため、スタッフと個別で行うことが多いでしょう。

休職に至った理由として、自分の強みを生かせていなかったり、やりがいを感じられなかったりするケースがあります。どのような環境や周囲との関わり方なら、自分の強みを生かせるかを考え、復職後も円滑に働けることを目指します。

2.ストレス対処

メンタルヘルス不調による休職の背景には、過度なストレスが影響していることが少なくありません。ストレスが生じるパターンを整理し、復帰後はストレスを軽減できるように取り組むことが重要です。

リワークでは、認知行動療法やストレスマネジメントなどの手法を用いて、ストレスを自分で対処できることを目指します。

集団認知行動療法

認知行動療法とは、物事の捉え方やその結果起こる行動を理解し、自分で問題を解決することを目指す心理療法の一つです。うつ病の治療として、薬での治療と同様に、有効性のある治療法とされています。

バランスの取れた考え方を目指す認知再構成法や、意欲の低下で落ちた活動量を増やす行動活性化技法が代表的です。

リワークでは、グループ単位で行う集団認知行動療法として実施されるケースが多いです。個人で行うよりも、同じ症状や思考パターンをもつ人がいると安心できるでしょう。また、ほかの参加者の考え方を知り、思考の幅が広がることがメリットといえます。

参考:日本うつ病学会「日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ.大うつ病性障害」(PDF)

ストレスマネジメント

ストレスマネジメントとは、ストレスに対してどのように対処するかを考え、実行していくことを指します。リワークでは、休職に至ったストレスのパターンを分析することで、悪化のサインに早く気づき、不調を予防する方法を身につけます。

また、休職前のストレス対処がうまくいっていなかった場合、対処行動を変えることも大切です。たとえば、「飲酒量が増える」「食べ過ぎてしまう」などの不健康な対処行動が多い場合、健康的な対処に変えていきます。

3.対人スキルの獲得

休職に至る原因として、コミュニケーション不足や対人関係の問題が関係しているケースもあります。仕事のストレスを乗り越えていくためには、周囲からのサポートや良好な関係の維持が欠かせません。

リワークでは、対人関係に焦点を当て、対人スキルの獲得を目的としたプログラムを行います。

グループワーク

グループ単位で、メンバー同士が協力して取り組むワークです。特定の作業課題やワークを行い、自分のコミュニケーションパターンや人間関係上の葛藤に気づくことを目的とします。

具体的なプログラム例として、ディスカッションやコミュニケーションゲームが挙げられます。役割分担をしながら課題を解決したり、ある情報を言葉だけで伝えたりするものがあります。

ワークやゲームを通して、どういったやり取りにストレスを感じやすいかが理解できるでしょう。

アサーショントレーニング

アサーショントレーニングとは、自分にも相手にも配慮したコミュニケーションを身につけるスキルトレーニングです。

たとえば、「頼まれた仕事を断れない」という悩みをもつ休職者には、相手を配慮しながら依頼したり断ったりするスキルの獲得に役立ちます。また、「周囲に強く当たりすぎてしまう」という場合も、適度な主張方法を身につけ、トラブルを回避しやすくなります。

具体的には、自分の感情を相手に押しつけないIメッセージ、4つのステップで表現を言い換えるDESC法などが代表的です。グループ単位でロールプレイも行い、実際の場面を想定した練習もできます。

アサーションについては、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:アサーションを職場に取り入れるには?実践方法やメリットについて解説

4.リハビリテーション

復職後にストレスなく働けるスキルを身につけるだけでなく、復帰できる状態に回復させることも重要です。リワークでは、運動や認知トレーニングを通して、身体と頭のリハビリテーションを目的としたプログラムを行います。

運動系プログラム

休養によって、外出したり食事をしたりするくらいに意欲が回復しても、働けるようになるには、もう少しリハビリテーションが必要です。リワークでは、有酸素運動やウォーキングなどの軽い運動を中心としたプログラムが実施されます。

うつ病治療の選択肢の一つとされているほど、回復のためには定期的な運動が重要です。復職後、安定して働ける体力を回復させるために、運動系プログラムが必要といえるでしょう。

認知トレーニング

うつ病の症状として思考力の低下が挙げられます。体力が回復しても仕事ができるレベルまで集中力が回復していないケースがあります。体力だけでなく、集中力や判断力などの認知機能の回復も、復職のためには必要です。

リワークで実施される認知トレーニングでは、PCを用いて瞬時の判断力や集中力を持続させるトレーニングを行います。

また、プレゼン資料の作成など実際の仕事場面を想定した作業課題に取り組むこともあります。復帰後にどれだけ業務がこなせるかを判断する目安にもなるでしょう。

リワークプログラムの事例

リワークプログラムでは、実際にどのようなプログラムが行われているのでしょうか。施設別にプログラム事例を紹介します。

医療リワーク

精神科や心療内科での医療リワークでは、看護師や精神保健福祉士、公認心理師などの専門職が在籍し、プログラムを行います。複数の専門職が関わるため、精神面だけでなく身体面も含めたケアを受けられます。

医療リワークは、精神科デイケアの枠組みで実施されるため、利用時間が決まっているところが多いでしょう。たとえば、9時~16時というように、実際の労働時間に合わせて組まれることが一般的です。

治療の一環として実施されるため、病状の安定と再休職の予防に焦点を当てて行われることが医療リワークの特徴です。

障害者職業センターでの職リハリワーク

都道府県単位で設置されている障害者職業センターでは、職リハリワークが実施されています。円滑な職場復帰を支援することに加え、復職後のフォローアップも行います。公務員を除く雇用保険に加入している労働者が対象で、無料での利用が可能です。

医療リワークとの違いは、本人と企業、主治医の3者同意のもと行われる点です。同意のもと、12~16週のプログラムを実施します。企業とも連携できるため、社員についての助言や支援を受けやすいことが大きなメリットです。

たとえば、復職支援計画の策定や復職にあたっての詳しい留意事項などが共有され、リワークでの社員の情報を活用できます。復職後にどのような業務を割り振ればよいのかなど、休職者の病状に合わせたサポートを、復帰先の現場で考える参考になります。

職リハリワークは、社員の職場復帰と適応をサポートするとともに、企業に対する支援も実施していることが特徴です。

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「宮城障害者職業センター 職場復帰支援(リワーク支援)ごあんない」

スムーズな復職を促進するリワークプログラムの活用方法

スムーズな復職を促進するリワークプログラムの活用方法

企業として、リワークプログラムをどのように活用すれば、円滑な復職を促進できるのでしょうか。2つのポイントを紹介します。

事例①:復職可否の判断材料にする

リワークは復帰後の再休職を予防する目的もありますが、慣らし出勤としての側面もあります。リワークでの社員の様子を見て、復職できるレベルまで回復しているかを確認する判断材料とすることも有効です。

そのためには、リワークの出席状況や作業への集中力、意欲の回復度などを情報共有できるとよいでしょう。リワーク施設を選ぶ際に、情報共有の方法について確認しておくことがおすすめです。ただし、社員本人の同意を得るなどの配慮は行いましょう。

事例②:復職後のフォローアップも実施

再休職を防止するため、復職後のアフターフォローとしてもリワークを活用できます。リワークによっては、復帰後のプログラムとしてアフターリワークが実施されている施設があります。月1回程度休日の参加が一般的であるため、仕事を続けながら取り組むことができます。

復帰後ならではの悩みを参加者同士で共有したり、再発予防についての対策を一緒に考えたりすることで、再休職を防止できます。

まとめ:社員に合ったリワークプログラムを選びましょう

まとめ:社員に合ったリワークプログラムを選びましょう

リワークは、再休職を防止し安定的に働ける状態を維持することが目的です。休職に至った原因は人それぞれであり、休職者の病状や特性に合わせたリワークプログラムを選択することが重要となります。

そのためには、施設で実施されるプログラムの特徴や活用方法を理解すると、よりよい復職支援につながります。今回紹介した代表的なプログラムの特徴を理解し、休職者がスムーズに復職できるよう、サポートしましょう。

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