リワークの効果的な進め方|社外資源を上手に活用する3つのポイント

リワークの効果的な進め方|社外資源を上手に活用する3つのポイント

リワークは、休職社員のスムーズな復職の実現や再休職を予防するために、企業にとって重要な取り組みです。しかし多くの企業において、自社内でリワークを実行するのが難しい現状があります。

休職者がリワークを希望した場合や主治医からリワークを提案されたとき、企業にはどのような対応が必要でしょうか。本記事では、リワークの必要性とそのメリット、リワーク提供施設の種類、施設選択のポイントについて解説します。

下記の記事では、リワークプログラムの具体例について説明しています。あわせてご覧ください。

関連記事:【企業担当者向け】リワークプログラムの代表例8つと活用事例を紹介

リワークはなぜ必要か

休職者にとって、復職は大きなハードルです。離職期間が長ければ、それだけ不安も大きくなります。このような不安を解消し、スムーズな復職を目指すのがリワークの目的の一つです。

リワークとは|定義

リワークは「return- to- work」の略語で、主に精神疾患が原因で休職している社員に対して提供されるリハビリテーション・プログラムを指します。

リワークの目的

リワークの目的は大きく分けると円滑な職場復帰と再休職予防の2点です。

①病状を改善する 

施設により支援スタッフの専門性は異なりますが、精神科医や看護師など医療系スタッフ、臨床心理士などの心理系スタッフ、精神保健福祉士などの福祉系スタッフが症状の安定に向けてサポートします。

②生活リズムを整える

安定した就労のために、生活リズムを規則正しく整える必要があります。保健師や看護師などの医療スタッフが、適切な食事や運動、睡眠についてのアドバイスをします

③業務遂行能力を向上する

簡単なパソコン作業やグループワーク、模擬プレゼンテーションなど、復職後の業務を考慮したプログラムが用意されています。

④コミュニケーションスキルを向上する

グループワークを通じて、コミュニケーションやチームワークスキルを学びます。休職の原因がコミュニケーションである場合、復職後の病状再燃や症状悪化の予防に寄与します。

⑤再発・再休職予防のためのセルフケアスキルの向上

復職後はさまざまなストレスに直面するため、ストレスケアマネジメントの学習やセルフケアスキルの習得、問題解決スキルなどの実践的なトレーニングをします。

リワークを利用するメリット

リワークでは職業スキル系や心理学系、運動系など、多種多様なプログラムが提供されます。各プログラムは休職者の不安軽減や、ソーシャルスキル向上に貢献します。そして最終的には、「休職期間の短縮」「復職率の向上」「職場定着率の向上」「再休職率の低下」というメリットがもたらされるのです。

参考:厚生労働科学研究成果データベース「2013年度うつ病患者に対する復職支援体制の確立 うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究 | 厚生労働科学研究成果データベース (niph.go.jp)

参考:産業衛生学雑誌「2012年メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援プログラムの効果 (jst.go.jp)

リワークの進め方

施設によっては、リワークの利用申し込みからプログラム参加まで、数日〜2カ月の期間を要する場合があります。そのため、企業は休職者の発生前より近隣のリワーク施設をリサーチし、各施設の特徴を把握しておくことが大切です。

①リワーク施設のリサーチ

リワーク提供施設を選ぶ際、さまざまな要素を考慮する必要があります。リワーク提供施設、プログラムの内容、申し込みからプログラム参加までの期間、プログラム終了までの期間をあらかじめリサーチしておき、各施設の特徴について情報収集します。

企業担当者が施設見学や説明会へ参加するのも良い方法です。

②休職者の同意・主治医からの許可

リワークプログラム参加のためには、①企業担当者、②休職者、③主治医の三者の同意が必要です。

とくに②休職者の同意は重要です。休職者の理解が得られないまま開始すれば、リワークプログラムからの脱落の可能性が高くなります。

施設によって、③主治医の同意ではなく、リワーク施設の医師の同意が参加の条件とされている場合もあります。

③説明会への参加

説明会開催日時は、各リワーク施設のホームページで確認できます。利用者本人だけでなく、企業担当者の参加が可能な施設もありますので、詳細はホームページで確認したり、施設へ直接問い合わせます。

④利用の申し込み

利用するリワーク施設が決定したら、必要書類を準備します。各施設で必要書類は異なりますが、主治医の診断書の提出を求められる場合が多いため、事前に確認が必要です。

⑤診察・面談・リワークプログラムの立案

医師の診察や支援スタッフによる面談を受けます。プログラムへの参加が可能な状態であるかの確認や課題の整理、方針の確認、目標の共有などを経て、リワークプログラムが立案されます。

⑥リワークプログラムの利用

プログラムが開始されると同時にプログラム離脱が起こらないよう、定期的な個人面談や評価のフィードバックなど、支援スタッフからのさまざまなフォローがあります。

施設と企業間で連携がある場合は、対象者のプログラム進捗状況や欠席数、遅刻数、心身の状況などについて報告があります。

⑦職場復帰とフォローアップ

職場定着率向上と再休職予防のため、多くのリワーク施設では 復職後のフォローアップを実施しています。通所型リワークの場合は、職場復帰後も一定期間、復職者用のプログラムに参加することが可能です。

リワークプログラムを提供している施設

リワークプログラムを提供している施設は、大きく分けて4種類あります。各施設で異なるアプローチやサービスを提供しており、参加者や企業のニーズ、状況に応じて選択します。

医療機関・クリニック|医療リワーク

医療機関やクリニックが提供するリワークプログラムの目標は、病状の改善と再休職予防です。健康保険を利用し、主に休職者を対象としていますが、企業との連携が可能な施設も多くあります。

地域障害者職業センター|職リハリワーク

障害者職業センターのリワークの目標は安定した就労です。労働保険を利用しており、支援対象は、休職者と企業です。主治医との連携はありますが、病状が安定している人向きです。

企業・ EAPリワーク|職場リワーク

企業やEmployee Assistance Program(EAP)主体のリワークは復職判断や再休職予防が目的で、休職者が対象です。

現職場で自社やEAPの立案したプログラムを実施したり、EAP提携先の施設に通所したり、オンラインで受講するなど、さまざまなサービスが提供されています。企業が利用費を負担します。

就労移行支援事業所リワーク

就労移行支援事業所が主体となり、休職者が対象です。再休職予防と安定した就労が目的で、リワーク以外に転職の支援も可能です。

利用するためには、受給者証(市町村発行の障害福祉サービス給付証明書)を取得する必要があり、病状が安定している人向きです。

リワーク施設の選び方|3つのポイント

リワーク施設を選ぶ際には、以下の3つのポイントを考慮することが重要です。

リワーク利用の目的を明確にする

最初に、リワーク施設を利用する目的を明確にします。たとえば、企業とリワーク施設との連携の有無、症状緩和優先か仕事スキル向上優先か、現職場復帰予定か転職予定かなどです。

利便性を考慮する

リワーク施設の立地や交通アクセス、プログラムの受講方法などの利便性を考慮します。

具体的には「施設が自宅や会社の近隣か」、「利用料金は希望に合うか」、「プログラム開始と終了までの期間」、「通所かオンラインか」などを検討します。

雰囲気や相性

リワーク施設の雰囲気や提供されるサービス、プログラム、支援スタッフや医師との相性も重要です。休職者や企業のニーズに合った雰囲気や相性の良い施設を選ぶことで、リワークがより効果的に作用します。

まとめ|リワークは事前のリサーチが大切

復職者に対して、リワークプログラムを自社で立案し提供することは企業にとって難しい取り組みといえます。

しかし社外リワーク施設との連携を通じて、企業は負担を最小限に抑えながらも、休職者のスムーズな復職と再休職予防を実現できるのです。

そのために企業担当者は、休職者が発生する前の段階から、リワーク施設についての情報収集を始める必要がありますまずは、近隣のリワーク施設からチェックしてみることをおすすめします。

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