不安障害はセロトニン不足が原因?効果的な食事・生活習慣などを解説
不安障害はセロトニンが相対的に不足すると起こりやすく、業務の遂行やコミュニケーション上の問題につながります。
この記事では、セロトニン不足を解消し不安障害を予防するため、以下のポイントについて詳しく解説します。
- セロトニン不足を解消するオフィス環境
- 必要なスタッフのサポート
- 不安障害になったときの治療方法
セロトニン不足による不安障害を予防し、従業員の心の健康に配慮した職場環境づくりを推進していきましょう。
不安障害とセロトニンの関係
不安障害はセロトニンの分泌量が相対的に減少すると起こりやすくなると考えられています。
不安障害とセロトニンは、どんな関係があるのでしょうか?
以降では、セロトニン不足が不安障害につながるメカニズムを解説します。
不安障害とは?
人は緊張や不安を感じると、心拍数の上昇や発汗などが起こります。不安障害は、日常生活に支障をきたすほど強い不安や恐怖を感じる状態です。
たとえば、人前で話すときや将来の心配などから極度の緊張を感じて、息切れやめまい、動悸(どうき)などの身体症状が表れて、仕事が遂行できなくなるといった状態になります。
気持ちの持ち方やものごとの見方を変えるなどでは改善はしません。そのため、明らかに不安障害が疑われる場合には、医療機関の受診と治療が必要です。
セロトニンとは?
セロトニンとは神経伝達物質の一種で、脳や胃腸、血小板などに多く存在し、恐怖や怒りなどを感じさせるノルアドレナリン、喜びや快楽を感じさせるドーパミンといったホルモンの分泌に関わります。つまり、精神状態に強く関わる物質です。
そのほかにも、体内リズムを整えるメラトニンの材料でもあり、心身のコンディションに影響を与えます。
セロトニンの増減と不安障害
セロトニン不足になると、不安障害につながる可能性があります。
セロトニンが不足すると脳が適切に機能せず、ノルアドレナリンなどの感情に関わるホルモンの分泌量が過剰になったり、十分に合成できなかったりすると考えられます。
そのため、ちょっとしたことで強い緊張や不安を感じて、同僚や友人とのコミュニケーションがうまくいかない・仕事がスムーズに行えないなど、日常業務の遂行に悪影響が出てくることがあります。
セロトニン不足の症状
セロトニンが不足すると以下のような症状が表れます。
- 不眠症
- めまいや頭痛
- 攻撃性が高まる
- 慢性的なストレス
- 意欲や集中力の低下
- イライラ感が大きくなる
- 気分の落ち込みやうつ症状
- 不安や恐怖の感情が強くなる
- 疲れやすさや倦怠(けんたい)感
- 自律神経の乱れ(動悸、息切れなど)
いずれも、感情のコントロールや体内リズムが整わないことによるストレス・疲労感から起こると考えられるものです。放置すると、仕事に対して悪影響が出てしまうでしょう。
また、腹痛や下痢を伴う過敏性腸症候群もセロトニンの分泌異常が原因の一つと考えられています。セロトニンを生成する細胞の約9割は腸に存在し、ストレスを感じると腸内のセロトニンが過剰に分泌され、腹痛や下痢を引き起こします。
セロトニンと過敏性腸症候群の関係については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:過敏性腸症候群とセロトニンの関係は?原因や職場での関わり方を解説
セロトニン不足を確認する方法
セロトニン不足かどうかは、医療機関で医師の診察により判断されることが多いです。長期的に大きなイライラや不安を感じたり、元気が出ないような症状があれば、専門医の診察を受けましょう。
また、セロトニンの分泌は生活習慣によって大きく影響を受けます。日光を浴びる時間が少なかったり、運動習慣がなかったり、栄養バランスの悪い食事が続いたりする悪い生活習慣を持っている人は、セロトニン不足が疑われる場合があります。
日常生活でできるセロトニン不足の解消法
セロトニン不足の解消に大切なのは、日常生活の習慣です。とくに、日中に明るい光を浴びたり、タンパク質を十分にとったり、日頃から運動したりすることが役立つことがあります。
日常でできるセロトニン不足の解消につながりうる行動を知って、不安障害を予防することがおすすめです。
午前中に明るい光を浴びる
セロトニンはセロトニン神経から分泌され、光を浴びることで活性化されて分泌量を増加させられます。
光の明るさの目安としては、おおよそ2,500〜3,000ルクス程度の明るさが必要です。
明るい光を浴びる対策として、通勤などで徒歩や自転車通勤を奨励したり、リモート勤務の職員には散歩を推奨するなど工夫するとよいでしょう。
また、セロトニンが日中、適切に分泌されると、夜には体内リズムを整えるホルモンであるメラトニンに変化し、体をリラックスさせます。変化するまでに時間がある程度必要なため、午前中にできるだけ明るい光に当たるとよりよいでしょう。
参考:厚生労働科学研究成果データベース「健康増進に向けた住宅環境整備のための研究 住居環境と疾病に関する文献調査:うつ病発症と日照度の関連に関する文献レビュー」(PDF)
タンパク質を十分にとる
セロトニンを体内で生成するためには、トリプトファンというアミノ酸が必要です。
トリプトファンはタンパク質を構成するアミノ酸の一種で、タンパク質を摂取することで体内に取り込むことができます。そのため、日常の食事で、タンパク質を多く含む食品である大豆やミックスビーンズなど豆を含む食品を積極的に食べるとよいでしょう。
参考:独立行政法人 農畜産業振興機構「タンパク質と脳の栄養~うつ病とタンパク摂取~」
軽い運動を行う
運動をすると、日常動作よりも筋肉を強く伸び縮みさせたり、強く呼吸をさせたりするため、神経活動が活性化します。神経活動が活性化するとセロトニンの分泌量が増加するため、セロトニン不足に良い影響があると考えられます。
健康維持のために必要な運動量は、以下のような有酸素運動が適しているとされています。最初は激しい運動でなくても問題ありませんので、習慣に取り入れてみましょう。
- 軽く汗ばむ程度のウォーキングやジョギング
- 1週間に60分程度
参考:スポーツ庁 Web広報マガジン「数字で見る! スポーツで身体に起こる気になる「6」つのデータ」
不安障害の治療法
不安障害になってしまったら、専門医の指示のもとに治療を行うのが何よりも大切です。実際にはどのような治療が行われるのかを知って、回復を妨げないように留意することがおすすめです。
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)
認知行動療法とは心理療法の一つで、現在の患者の問題点について、考え方や行動を変化させて問題解決を目指す実践的な治療法です。
たとえば、患者が行った仕事について、上司から「ここは、うまくいってなかったからこうした方がよかったね」というような、少しネガティブなフィードバックがあったとします。
上司としては、「次から直してくれれば特に問題ない」くらい思っているかもしれませんが、本人は「自分はそんなことにも気が回らないダメな人間だ」と考えすぎ、頭痛などの体調不良につながってしまうことがあります。
しかし、考え方にアプローチをし「次から直せば特段上司は気にしないから切り替えればOK」「フィードバックをくれることは自分を必要としてくれている証拠」というような考えに気づければ、気持ちが楽になり症状が和らぐかもしれません。
薬物療法
不安障害の薬物療法には、主に抗不安薬とSSRI(Selective serotonin reuptake inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬 )を用います。
抗不安薬は強い不安や緊張を和らげる薬です。即効性があり、急な不安発作にも効果的です。一方で、眠気やふらつきなどの副作用もあり依存性リスクもあるため、適切な処方が大切です。
SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬の略で、脳内でセロトニンの働きを増強する作用があります。抗不安薬にくらべると効果がゆっくりと出るため、長期にわたる治療に使われるケースが多いでしょう。
薬物療法と並行しながら、不安障害の症状が起こる原因やメカニズムに関する教育やカウンセリングを行います。
参考:精神神経学雑誌「不安障害の薬物療法」(PDF)
セロトニン不足からの不安障害に適切に対処しよう
不安障害は気持ちの問題ではなく、セロトニン不足など体内で明らかに異常が生じて発生します。
セロトニン不足にならないようにするためには、職場環境を整えたり、運動や栄養についてサポートをするとよいでしょう。
改善されないならば速やかに専門医へ受診させ、適切な治療を受けさせるようにすることがおすすめです。