笑いはストレス解消になる?笑顔の健康効果と職場での対処法を解説

忙しい日々が続くと、知らないうちにストレスが積み重なっていることがあります。一般的なストレス解消法としては、適度な運動や十分な睡眠が良いとされていますが、実は「笑い」も効果的な方法の一つです。
笑顔を増やすことは、心身の健康に良い影響を与え、ストレス軽減や免疫力向上に役立ちます。
本記事では、笑顔が心と体に与える効果や、職場での具体的な対処法について解説します。
日々を健やかに過ごすためにも、笑いの効果を日常生活に取り入れてみてください。
笑顔の驚くべき健康効果5選
笑顔には、以下のようにさまざまな健康効果があるとされています。
- ストレスを軽減する
- 痛みを緩和する
- 認知機能が向上する
- 腹式呼吸で血行が促進される
- 免疫力をアップする
それぞれのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。
ストレスを軽減する
笑顔は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑え、心にリラックス効果をもたらす力を持っています。笑うことで、脳内ではエンドルフィンやセロトニンが分泌され、自然と気分が高まり、前向きな気持ちがわきやすくなるのです。
これらのホルモンは「幸せホルモン」として知られ、精神的な安定を促し、ストレスを和らげる効果があることがわかっています。
また、心理的な評価として使われる「POMS(Profile of Mood States:気分プロフィール検査)スコア」でも、笑いが「緊張・不安」「抑うつ」「疲労」「混乱」などを低減させる効果が示されており、気分の改善をもたらすことが確認されています。
痛みを緩和する
笑顔や笑いには、痛みを和らげる効果も期待できます。
笑うことで交感神経が活性化され、「エンドルフィン」や「ドーパミン」といった神経伝達物質の分泌が促進されるためです。エンドルフィンは、「脳内モルヒネ」とも呼ばれる自然の鎮痛物質であり、痛みを和らげる作用を持ちます。
また、笑うことで血行が改善され、筋肉の緊張がほぐれるため、肩こりや頭痛といったストレスに関連する不調の緩和にもつながります。職場での慢性的な疲れや痛みを和らげるためにも、意識的に笑顔を取り入れることは有効です。
参考:高柳 和江, 補完代替医療としての笑い, 日本補完代替医療学会誌, 2007, 4 巻, 2 号, p. 51-57, 公開日 2007/07/19
認知機能を向上する
笑顔には、記憶力や思考力といった認知機能を高める効果があるとされています。ある実験では、笑うことで脳への血流が増加し、集中力と注意力が向上することが確認されました。
たとえば、ひらがなのみで書かれた物語の意味を理解して母音を拾う「かなひろいテスト」では、笑った後に前頭前野が活性化して集中力が高まり、拾える文字数が増加しました。
また、大笑いをした後は、柔軟な思考力が促され、新しいアイデアを生み出す力も高まります。こうした認知機能の向上は、職場での作業効率や円滑なコミュニケーションに役立つでしょう。
腹式呼吸で血行が促進される
笑うと自然に腹式呼吸となり、血行促進に効果的です。大笑いをすると、腹筋が使われて呼吸が深まり、酸素が体内に十分に取り込まれます。
また、笑いにはリラクゼーション効果もあるため、心身のリフレッシュに役立ちます。とくに「笑いヨガ」では、笑いを取り入れた呼吸法や体操を組み合わせ、有酸素運動とリラックスの両方を得られるのが魅力です。
ある実験では、腹式呼吸によって緊張や不安が和らぎ、気分の改善も見込めるとされています。デスクワークが多い方も、笑顔が絶えない職場環境によって、健やかな心と体を保てるでしょう。
参考:松浦 和文, 山崎 文夫, 緩徐な腹式呼吸はストレス反応を軽減するか, 理学療法科学, 2021, 36 巻, 2 号, p. 175-180, 公開日 2021/04/20
免疫力をアップする
笑顔には免疫機能を高める効果もあります。
笑うことで脳が刺激され、免疫機能を活性化する神経ペプチドが全身に分泌されます。神経ペプチドによって活性化されるNK(ナチュラルキラー)細胞は、ウイルスや病原菌を攻撃する働きを持つため、健康の維持に貢献します。
ある研究によると、大笑いだけでなく「作り笑い」でも、NK細胞が活性化し、免疫力が向上することが確認されています。
職場で笑顔を意識することは、風邪や体調不良の予防にもつながります。日常に笑いを取り入れて免疫力を高め、健康的な毎日を目指してみてください。
なぜ良いの?笑いが職場環境にもたらす影響
笑顔や笑い声は、その場の雰囲気を明るくするだけでなく、以下のように職場に良い影響を与えます。
- コミュニケーションが円滑になる
- 作業効率が上がる
それぞれの影響について解説します。
コミュニケーションが円滑になる
笑顔が絶えない職場では、コミュニケーションが自然と円滑になります。笑顔は信頼の象徴であり、心理的安全性を高めることで、部下や同僚が気軽に話しかけやすい雰囲気が生まれます。
チームにおける心理的安全性とは、メンバーが自由に意見を述べても批判や拒絶を心配せずに過ごせる状態のことで、自分の考えを伝えやすくなり、職場内で安心して交流ができます。
また、口角を上げた「作り笑顔」でも、周囲の気分をポジティブに変え、親しみやすい印象を与えるでしょう。笑顔を意識することで、職場にも笑顔が広がり、互いに助け合うチームワークが自然と育まれる環境が整います。
関連記事:心理的安全性とは?注目される背景や組織にもたらす効果を解説
作業効率が上がる
緊張が解けることで、作業効率の向上が期待できます。笑いによって脳がリラックスすると、冷静な判断がしやすくなり、集中力や判断力が高まります。
会議やミーティングの始めに笑顔を交えたアイスブレイクを取り入れると、初対面同士でもスムーズにコミュニケーションが始まり、早い段階から協力体制が整いやすくなるでしょう。
また、適度な笑いが増えることでチーム全体がリラックスし、意見交換が活発になりやすい環境がつくられます。
フィードバックの場面やプロジェクトの進捗共有の場でもユーモアを取り入れると、建設的なやり取りがしやすくなり、新しいメンバーも自信を持って取り組めるようになるでしょう。
このように、笑顔を活用することで職場全体のパフォーマンス向上が期待できます。
社員の笑顔がなくなったときのメンタルヘルス対策
社員のメンタル面に不調の兆しがある場合、以前よりも社員の笑顔が減った、表情が暗いといった様子が見られることがあります。
以下のような職場での支援や、健康状態のチェックを通じて、社員が働きやすい環境を整えましょう。
- 信頼できる上司と1対1で話す機会をつくる
- ストレスチェックを実施する
- 産業医と連携して面談やカウンセリングを促す
それぞれの対策について解説します。
信頼できる上司と1対1で話す機会をつくる
部下が気軽に悩みを話せる時間は、メンタルケアにおいて重要です。プライバシーが確保された落ち着いた場での対話は、本音やストレスを共有する貴重な機会となります。孤立感も軽減され、上司との信頼関係が深まるきっかけにもなります。
社員によっては、直接悩みを伝えるのが難しい場合もあるため、事前にアンケートを行い、話しやすい方法を確認しておくことも一つの方法です。
話を聞く際には、相手の話をさえぎらずにしっかりと耳を傾け、解決策を急がずに寄り添う姿勢が大切です。「頑張って」といった励ましがかえってプレッシャーになることもあるため、安心して相談できる雰囲気を心がけましょう。
ストレスチェックを実施する
職場や日常生活で感じるストレスを把握するために、「ストレスチェック」は役立ちます。ストレスチェックは、仕事や人間関係などの心理的負担の度合いを確認するもので、特に企業では一定規模以上の職場で年1回の実施が義務づけられています。
毎年同じ項目のチェックに負担を感じる方も多いかもしれませんが、体調や感情の変化など社員自身が振り返る指標として、定期的なストレスチェックの実施は有効です。
業務が忙しい時期にストレスチェックが重なる場合もあるため、実施時期を長めに設定するか、必要に応じて日程の見直しを行うなどの対応も重要です。
産業医と連携して面談やカウンセリングを促す
ストレスチェックで高ストレスと判定された場合、産業医との面談や適切なカウンセリングを受けることが重要です。
ただし、ストレスチェックは自己記入式であるため、実際のストレス度合いと異なる結果が出ることもあります。そのため、普段から職場の健康相談窓口や外部の相談先を伝え、安心して相談できる環境を用意するとよいでしょう。
また、産業医との面談によって、必要に応じた医療機関への受診をすすめることができます。休職や部署異動などの提案もできるため、社員は心身の回復に専念することが可能となり、早期治療にもつながります。
まとめ:笑いを取り入れて心身ともに健康的な職場環境づくりを
笑いは職場の雰囲気を明るくし、社員のストレス軽減に役立つ大切な要素です。
普段から自然に笑顔が生まれるような話題を心がけることが、心地よい職場環境の構築につながります。
社員の様子に変化がみられた場合は、ストレスチェックや産業医との面談を通じて、早めにケアを行うことも大切です。社員一人ひとりが安心して働ける職場を目指してみてください。
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