寒暖差と体調不良の関係は?基本知識と企業ができる4つの対策を解説

職場で社員が次のような会話をしているのを、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「季節の変わり目は疲れやすい」
「悩みはないけど気分が落ち込んでいる」
「職場が寒すぎ(暑すぎ)て体調が良くない」
季節の変わり目や冷暖房の使用により生じる寒暖差は、体調不良の原因となる場合があります。
社員の体調不良に関して企業がすべき対策を怠っていると、将来的に生産性の低下や経済的損失、企業のイメージダウンのリスクを高めるでしょう。健康経営の観点からも社員の健康を「個人の問題」とせず、積極的な予防対策を実施することが望まれます。
本記事では、寒暖差が体調不良を起こす原因やその症状、予防法について解説します。企業ができる予防対策も紹介していますので、企業の経営や人事に携わっている人はぜひ参考にしてみてください。
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寒暖差はなぜ体調不良を引き起こす?
寒暖差は体温調節を担う自律神経に大きな影響を与えます。寒暖差により自律神経のバランスが乱れる状態が寒暖差疲労です。
生活習慣が不規則な人は特に注意が必要といえます。
寒暖差疲労とは
寒暖差疲労とは、気温の変動により生じる体調不良です。気圧や気温、湿度の変化により、自律神経のバランスが乱れる場合があります。その結果生じた体調不良は、総称して「気象病」と呼ばれることもあり、寒暖差疲労は「気象病」の一種ともいわれています。
私たちの体温が常に一定なのは、自律神経のおかげです。交感神経と副交感神経の2つがバランスよく働くことで、体温はいつもほぼ同じ温度にコントロールされています。ところが、寒暖差が大きい環境下では自律神経が温度差に適応しようと過剰に働きます。
寒暖差が解消されない状況が長期に続くと、自律神経のバランスが崩れさまざまな体調不良が生じます。自律神経が乱れるとされる目安は寒暖差±5℃〜±7℃以上です。
寒暖差疲労の症状
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、それぞれの役割は、アクセルとブレーキに例えられます。この2つの神経は全身の臓器や血管に分布しており、両者のバランスが乱れると体や心にさまざまな不調が生じます。
体にあらわれる症状は疲労感や倦怠(けんたい)感、頭痛、めまいなどです。
心の症状は気分の落ち込みやイライラ、不安、不眠などです。
参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「自律神経失調症:用語解説」
寒暖差で体調不良になりやすい人
だれでも寒暖差疲労が生じる可能性はありますが、自律神経が乱れやすい人は特にリスクが高いでしょう。
たとえば、次のような人です。
- 運動不足の人
- ストレスが多い人
- シフト勤務などで生活が不規則な人
- 更年期でホルモンバランスが乱れている人
普段から自律神経に負担をかけるような生活を続けていると、寒暖差の影響をより受けやすいとされています。春や秋など季節の変わり目で寒暖差が大きい時期や、冷暖房の効いた屋内と屋外を頻繁に行き来する場合は注意が必要です。
寒暖差疲労を予防する3つの方法

寒暖差疲労の予防で大切なのは、自律神経を整えることです。
どのような生活習慣が自律神経に良い影響を与えるのでしょうか。3つの方法をご紹介します。
バランスの良い食事
自律神経を整えるために、バランスの良い食事はとても大切です。脳と腸は自律神経でつながっているため、腸内環境の良し悪しが自律神経のコンディションに影響します。
大豆などのたんぱく質、納豆などの発酵食品、野菜などの食物繊維を意識的にとりいれましょう。食事は毎日同じ時間に食べ、ゆっくりとよくかんで食べます。早食いや満腹になるまで食べるのは避けましょう。
腸内環境を良好に保つことで自律神経が整います。
規則正しい生活
1日を規則正しいリズムで過ごすことで、自律神経に良い影響があります。
毎日同じ時間に起床し、日光を30分〜1時間程度浴びましょう。さらに朝食をとることで、体内時計がリセットされます。
日中は、運動やストレッチなどをして適度に体を動かし、同じ時間に寝ます。長時間の残業や就寝前のスマホ操作、寝酒、喫煙は、睡眠の質が下がってしまうので控えましょう。
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ストレスコントロール
気分転換やリラックス法を生活に取り入れることで、自律神経を整えることができます。
たとえば、軽いランニングなどの運動や好きな音楽を聞く、歌を歌う、深呼吸をするのも良いでしょう。
また、入浴で体を温めれば体の緊張がほぐれてリラックスでき、副交感神経が優位となります。
参考:国立環境研究所「2013年度|体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 -札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-」
寒暖差疲労対策で企業ができる4つの対策

寒暖差疲労対策で大切なのは生活習慣を整えることです。社員は自身の生活習慣を見直し、企業は社員のセルフケアを下支えしましょう。
以降で紹介する対策のように、個人と企業の両輪で取り組むのがポイントです。
セルフケアへの対策
企業は社員に対し、セルフケアができるよう教育や研修を行いましょう。寒暖差疲労の概要やその原因、症状、予防法について社員へ情報提供します。
スポーツジム料金の補助など、生活習慣改善のために利用できる福利厚生制度があれば積極的に紹介しましょう。
無料健康アプリやオンラインフィットネス、宅配食サービスについての情報提供もおすすめです。体調不良に気づいた場合の対処法も伝えましょう。
管理監督者による対策
管理監督者は、職場環境や社員の体調を日常的に把握するのが役割です。
屋外と職場内との温度差が極端にならないよう、温湿度計を設置するなどして以下の温湿度を目安に冷暖房を適切に管理します。
- 温度:18〜28℃
- 湿度:40〜70%
クールビズやウォームビズの推進、ポータブル扇風機、暖房機器、ひざ掛け、カイロの常備などもおすすめです。体調管理アプリやストレスチェック、長時間労働の状態などから、社員の健康状態を日常的に把握しましょう。
体調不良が認められた場合は個別で相談に応じ、必要があれば情報提供や相談窓口の紹介を行います。管理監督者は社員の健康状態に関心を持ち、体調不良者の早期発見と早期対応に努めましょう。
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社内産業保健スタッフなどによる対策
産業医や産業保健師、衛生管理者はそれぞれの専門知識を用いて役割分担をします。
衛生管理者は職場巡視を行い、産業医とともに社内の職場環境を把握します。巡視先では該当職場の社員に対し、温度環境や体調などを直接ヒアリングすることも大切です。
産業保健師がいる場合は健康教室や健康イベントの開催、保健だよりの発行などで正しい知識の普及とセルフケア支援を行います。就業開始前や昼休み中のラジオ体操やストレッチなど、軽い運動習慣の導入を依頼するのもよいでしょう。
社員の健康状態把握のため、ストレスチェックを定期的に実施します。体調不良者や高ストレス者を把握し、相談しやすい社内相談窓口を設置しましょう。
社外資源を利用した対策
社内に産業医などの産業保健スタッフがいない場合は、社外の機関を利用することも可能です。
社員のセルフケアを支援する施策として、出張健康セミナーやオンラインセミナーの開催が挙げられます。
健保組合や健診施設、産業保健総合支援センター、地域産業保健センターなどで開催されている場合があります。ホームページなどでセミナー情報を定期的に確認するのがおすすめです。
寒暖差疲労による体調不良を訴える社員に対しては、勤務状況に配慮し近隣医療機関への受診を促すことが大切です。
そのため、企業は健保組合や利用中の健診施設の保健サービス、近隣の医療機関についてあらかじめ情報収集して、相談先や受診先を取り決めておくとスムーズな対応が可能です。
参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」
参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「地域産業保健センター(地さんぽ)」
まとめ:寒暖差による疲労予防は生活習慣の改善が有効!社員のセルフケアを支援しよう

寒暖差により自律神経のバランスが乱れ、寒暖差疲労とよばれる体調不良を生じる場合があります。寒暖差疲労を予防するためには、生活習慣を整え自律神経のバランスを良好に保つことが大切です。
規則正しい生活やバランスの良い食事、適度な運動、ストレスコントロールができるよう企業は社員のセルフケアを支援しましょう。専任者の確保が難しい場合は、産業保健総合支援センターなど社外の仕組みを利用することもおすすめです。
健康アプリやオンラインフィットネスなども検討しつつ、寒暖差に悩む社員にぜひ寄り添う支援をご提供ください。
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