欠勤が続く社員がいる…精神科に行った方がいい人のチェック方法は?
「体調が優れず、欠勤が続いている社員がいる…」
「受診をすすめるべきか迷う…」
メンタルヘルス不調が疑われる社員がいても、精神科受診が必要かどうかを迷う人も多いのではないでしょうか。現在生じている変化が症状とされるほどのものなのか、専門家でなければ判断しにくいことがあります。
とくに、仕事のどの側面に症状があらわれるかを理解していないと、症状が出ているかどうかを見分けるのが難しいでしょう。
本記事では、精神科受診をすすめる場合の目安となる症状や、業務上の変化について解説します。スムーズに受診をすすめるための3つのポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
精神科に行った方がいい人の症状や目安は?
メンタルヘルス不調の兆候を見逃すと、症状が進行し、業務への支障や生産性の低下につながる可能性があります。さらに、重症化すると治療が長期間に及び、企業にとっても貴重な人材を失うことにもなるでしょう。
そのため、不調のサインを見逃さず、早期受診を促すことが必要です。しかし、心の病気は目に見えないものであるため、不調のサインがわかりづらいことがあります。どのような症状がみられれば、精神科受診をすすめた方がよいのでしょうか。
以下に、早期受診をすすめるときの目安となる精神面(メンタル)と身体面(フィジカル)の症状を紹介します。元気な状態に比べて悪化しており、気分の落ち込みが2週間以上続く場合は、精神疾患の症状が生じている可能性があります。
【精神面】うつ症状や強い不安が2週間以上続くとき
心理面の症状としては、憂うつ感や意欲低下、不安などがよくみられます。気分の落ち込みがひどく、業務に支障をきたすレベルであれば精神科受診をすすめた方がよいでしょう。
【精神面の症状例】
- 気分が落ち込む
- 疲れやすく、やる気が出ない
- 罪悪感が強く、自分を責めてしまう
- これまで興味があったことを楽しめない
- イライラして落ち着かない
- 人前に出ると強く緊張する
- 不安で自分の判断に自信が持てない
- 否定的な考えで頭がいっぱいになる
【身体面】不眠や身体の多様な不調に注意
精神面の症状よりも、身体面に表れる症状の方が気づきやすいといえます。また、精神疾患が発症している場合でも、初期段階では「体調の悪さ」として表現されることが多いです。「眠れているか」「原因のはっきりしない体調不良がないか」といった変化に注意しておくとよいでしょう。
【身体面の症状例】
- 体がだるく、寝ても疲れがとれない
- 就寝しても寝つけなくなった
- 熟睡感がなく、何度も夢を見る
- 夜中に何度も目が覚める
- 肩や背中、腰などの痛みがある
- めまいや耳鳴り、頭痛がひどい
- 胃がムカムカしたり、下痢が増えた
- 通勤中の電車で強い動悸(どうき)に襲われた
勤務時の様子から精神科受診の必要性を判断する3つのポイント
メンタル不調が疑われる症状は勤務時の様子にどのように表れるのでしょうか。具体的には、以下の3点を意識してチェックすると、メンタルヘルス不調の兆候を把握しやすくなります。
- 出勤状況と身だしなみ
- 職場内のコミュニケーション
- 仕事ぶり
ポイント①:出勤状況と身だしなみ
遅刻や欠勤の増加は、代表的なメンタルヘルス不調のサインです。不眠が原因で、起床できず遅刻するパターンや、通勤時にパニック発作が起きて途中下車するパターンなど背景要因は複数あります。出勤状況の変化に注意し、遅刻や欠勤の理由について把握しておきましょう。
身だしなみの変化にも注意が必要です。うつ症状から意欲が低下すると、身だしなみに気を使えず、服装が乱れたまま出勤してくるケースがあります。
ポイント②:職場内のコミュニケーション
同僚や上司との職場内でのコミュニケーションに変化がないか、という点も重要な判断基準です。意欲の低下により、あいさつができなくなったり、思考力が低下して報告すべき事項が抜けてしまったりすることがあります。
また、イライラして常にあせっているような状態が頻繁にみられている場合も、注意が必要です。以前の様子から比べて、口調がきつくなっていたり、不自然なことで怒りだしたりすることがないか、チェックするとよいでしょう。
ポイント③:仕事ぶり
うつ病は、判断力や思考力の低下を引き起こすため、業務に支障をきたすことがあります。そのため、仕事ぶりに変化がないかチェックしておくとよいでしょう。
支障が出やすい変化としては以下のような様子が挙げられます。
- ケアレスミスが増える
- 何かを決めるのに時間がかかる
- 優先順位をつけられない
- 午前中は調子が悪いが夕方から改善するなど、パフォーマンスにムラがある
企業として精神科受診をすすめるときの3つの注意点
メンタルヘルス不調が疑われる社員がいたら、企業には安全配慮義務の観点から、早期受診を促す必要があります。しかし、精神科に対して抵抗感がある人も多く、受診をすすめても難色を示されることが少なくありません。
精神科受診をすすめるときには、どのように対応すればよいのでしょうか。
注意点①:心の病気だと決めつけない
メンタルヘルス不調のサインがみられたとしても、心の病気だと決めつけずに話し合う姿勢が不可欠です。「欠勤が続いているのはうつ病だと思うから、一度受診してみたら」と決めつけてしまうと、反発されることが多いでしょう。
心の病気以外にも、家庭内の人間関係や育児負担などのストレス、作業環境の悪さにより、症状が生じている可能性があります。ほかの原因はないか、まずは確認してみることが大切です。
注意点②:客観的な事実をもとにすすめる
精神科受診をすすめるとき、仕事にどのような支障が起こっているのかを具体的に共有することが大切です。
遅刻が続いている社員から、遅刻の理由として「眠れない」という訴えがあったとします。その場合、次のように質問してもよいでしょう。
- 「眠れていないことで、効率が下がっていませんか?」
- 「眠れなくて、以前よりも資料提出が期限に間に合わないことが増えていますか?」
- 「眠くて、日中ぼんやりとしてつらくないですか?」
上記のような状態に該当するような場合には、「一度、精神科などを受診してみはどうですか?」と伝えてみることが好ましいです。
このように、「仕事への支障」と「改善のイメージ」を伝えると、納得されやすいでしょう。
注意点③:無理に精神科受診をすすめない
いきなり精神科を受診することはハードルが高いと感じる人が多いかもしれません。
そのため、無理に精神科受診をすすめると、抵抗されて結果的に受診が遅れてしまいます。
まずは、身体症状を診てもらうという建前で、内科などのかかりつけの医療機関を受診するようにすすめるとよいでしょう。身体的に異常がなければ、精神科を紹介されるので、受診につなげられます。
まとめ:業務に支障が出ていたら早期受診をすすめましょう
メンタルヘルス不調の兆候となる症状は、専門家でなければ見分けが難しいといえます。
症状がないかチェックするよりも、業務にどのような支障が生じているかをチェックすると不調のサインをつかみやすいでしょう。
メンタルヘルス不調が疑われる社員を早期受診につなげることができれば、社員個人の健康を守るだけでなく、企業の利益も守られます。社員の様子が少しおかしいなと感じたら、産業医や保健師などの産業保健スタッフに相談してみましょう。