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健康診断における生活習慣病の措置意見書とは?

健康診断における生活習慣病の措置意見書とは?

労働安全衛生法によると、健康診断を行うことは事業者の義務とされています。事業者が労働者の健康状態を把握することは、労働者が安全に働けるよう配慮するために必要だからです。

近年増加している生活習慣病は、脳血管障害や心筋梗塞といった大きな病気につながりやすい疾患です。労働者が健康診断において生活習慣病と判定された場合、事業者から就業の制限を言い渡される可能性があります。

どのような場合に就業が制限されるのか、や、制限の内容はどのようなものなのかをご紹介します。健康診断の事後措置の一般的な流れについてもご紹介しますので最後までご覧ください。

生活習慣病などの異常所見があると就業判定が必要

生活習慣病などの異常所見があると就業判定が必要

生活習慣病とは、生活習慣が原因となって起こる疾患の総称です。具体的には、高血圧や高脂血症、糖尿病などが該当します。健康診断において血圧や脂質、血糖値などに異常所見があると、産業医から就業判定を受けます。

就業判定とは、労働者がこれまでと同じ条件で働き続けることが可能かどうかを産業医が判断することです。労働者の安全と健康に配慮するため、現在の健康状態で労働を行うのに支障がないかどうかをチェックします。

厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」には次のように示されています。

産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。

引用元:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(PDF)

出典:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

就業上の措置における3つのケース

就業上の措置における3つのケース

就業判定は、通常勤務や就業制限、要休業の3つの就業状態ケースに分けられます。健康診断結果の経年変化や労働者の就業環境、労働時間なども考慮して決定されます。

従業員が50人未満で産業医を選任していない場合であっても、労働者の健康管理を行う必要があることに変わりありません。就業上の措置に関して、医学に関する知識がある医師から意見を聴くことが適当とされています。

就業上の措置における3つのケースの内容は以下のとおりです。

ケース①通常勤務

就労自体に問題がない場合は通常勤務の区分です。健康診断で異常所見があったとしても、著しく悪化しているケース以外は通常この区分になります。

実務を行う上では全く問題がないとみなされますが、異常所見に対して従業員が対策を取れるよう配慮が必要です。再検査や通院のための受診時間の確保や、保健指導を勤務時間内に受けられるような配慮があるとよいでしょう。

ケース②就業制限

勤務による負荷を軽減する必要がある場合は就業制限の区分です。労働時間の短縮や残業の制限、出張の制限、就業場所の変更などの措置を講じ、就業を制限します。

出張の制限や就業場所の変更措置などは規模の大きな企業でないと実施が難しい場合が多く、実際は残業の制限などで対応される場合が多いです。

ケース③要休業

療養のために勤務を休む必要がある場合は要休業の区分です。一定期間勤務をさせず、回復のため休暇を取らせたり休職させたりする措置を講じます。客観的なデータだけでなく、従業員本人の希望や気持ちにも十分配慮して措置を決定する必要があります。

健康診断事後措置の流れ

健康診断事後措置の流れ

就業判定は健康診断の結果を基に行われます。ここで、健康診断の事後措置全体の流れを確認しましょう。一般的な流れは次のようになります。

【健康診断後の流れ】

  • 結果の受領
  • 結果を労働者へ通知

異常所見がある場合、以下を実施

  • 保健指導や受診勧奨の実施
  • 産業医の就業判定
  • 就業上の措置を決定

結果を労働者へ通知する

事業者が労働者の健康診断結果を受領した後、結果を労働者へ通知しなければなりません。これは事業者の義務です。異常所見がある場合は、保健指導もしくは受診勧奨を行います。

保健指導の実施

健康診断の結果によって、保健指導を実施します。労働衛生法第66条の7で次のように定められています。

事業者は、(略)健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。

引用元:労働安全衛生法第66の7

保健指導の実施は努力義務であり、必ず実施しなければならないものではありません。しかし、体重、血圧、血糖、肝機能などは、健康診断において生活習慣が数値に大きく影響します。

保健指導は生活習慣を見直す機会となり、服薬などの治療が必要となる前に数値を改善できる可能性があります。労働者自身の健康管理意識を高めることも期待できるため、実施が望ましいでしょう。

受診勧奨の実施

健康診断の結果で受診勧奨判定値を超えると、健康状態に何らかの問題がある、またはその可能性が高いと判断されます。

二次検査や精密検査については事業所の義務ではありませんが、積極的に対応することで、労働者の健康が守られます。放置して業務に支障が出る状態になってしまうと事業所の業績にとってもマイナスとなるため、できるだけ必要な受診ができるよう受診勧奨を行うことが大切です。

二次検査の受診費用は事業所負担の義務はありませんが、費用を事業所が持つと受診のハードルが下がる可能性があります。また、受診時間を確保しやすいよう有給取得しやすい雰囲気をつくることも有効でしょう。

異常所見があった場合は、このように保健指導や受診勧奨を経て、産業医による就業判定が行われます。そして、就業判定の結果をもって、事業者が最終的な就業上の措置を決定します。この際、労働者本人からの話も十分に聞き、双方が納得のいく措置となるよう配慮します。

まとめ:生活習慣病などの異常所見があった場合は医師の指導に従ってください

まとめ:生活習慣病などの異常所見があった場合は医師の指導に従ってください

健康診断で高血圧や糖尿病などの生活習慣病と判定された場合、就業が制限される可能性があります。今まで通りの労働環境で就業を続けられる健康状態かどうか、産業医によって就業判定が実施され就業上の措置が決定します。

生活習慣病は運動や食事などの生活習慣が大きく影響している疾患です。悪化してしまうと脳血管障害や心筋梗塞など重大な疾患を招きかねません。労働者の健康問題は、本人の問題だけではなく、事業者にとっても業務に支障が出る可能性がある重要な問題です。産業医の意見のもと、健康診断の事後措置を丁寧に行い、労働者の健康を守りましょう。

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