第一種衛生管理者の選任義務がある業種は?資格取得方法も紹介!

労災事故を防止するために企業の安全衛生管理体制の整備を求めるのが、労働安全衛生法です。同法では、一定条件の事業所に「衛生管理者」の選任を義務付けています。
衛生管理者には一種と二種があり、事業所によっては一種の選任が必要です。
この記事では、第一種衛生管理者の選任義務がある業種について解説します。一種と二種の違いや資格取得方法も紹介するので、労務担当者の基礎知識として確認しておきましょう。
衛生管理者とは?
一定規模または特定業種の事業所では、事業所内の安全や衛生に関する総責任者である統括安全衛生管理者の下に、具体的な管理業務を行う衛生管理者と安全管理者を置くことが義務付けられています。
まずは、衛生管理者の主な役割と安全管理者との違いについて解説します。
なお、衛生管理者や安全管理者は、企業単位ではなく事業所単位で選任しなければなりません。
衛生管理者の主な役割
衛生管理者とは、事業所内の作業環境や従業員の健康状態の管理者です。安全衛生法(第12条)では、次に関する事項について、衛生面の管理を行うように定められています。
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
- 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- 上記以外で、労災防止のため必要な業務で厚生労働省令で定めるもの
また、衛生管理者は「少なくとも週1回以上の作業場の巡視」をしなければならず、設備や作業方法、衛生状態に有害のおそれがあるときは、必要な措置を講じることが求められます。
参考:労働安全衛生法第12条
安全管理者との違い
衛生管理者と安全管理者は、前述の5項目に関して分担して管理します。衛生管理者は衛生面の管理を、安全管理者は安全面の管理を行います。
共通する部分も多いですが、作業環境や作業内容が従業員の健康に悪影響を及ぼさないように衛生面を管理するのが衛生管理者、労災事故などが起きないように安全面を管理するのが安全管理者です。
労災リスクの高い特定業種は第一種衛生管理者の選任義務あり
衛生管理者には一種と二種があり、一種が上位資格になります。都道府県労働局長の一種免許を取得した人が第一種衛生管理者、二種免許を受けた人が第二種衛生管理者です。医師や産業衛生コンサルタントなども衛生管理者に選任できますが、一種と二種の区分はありません。
業務上の一種と二種の違いは、労災などのリスクが高い特定業種の衛生管理者になれるかどうかです。次の業種については、一種免許のある人は衛生管理者に選任できますが、二種免許の人はできません。
- 農林畜水産業
- 鉱業
- 建設業
- 製造業
- 電気業やガス業、水道業、熱供給業
- 運送業
- 自動車整備業や機械修理業
- 医療業や清掃業
労働者数に応じて一定人数の選任が必要
労働者数50人以上の事業所では、業種に関わらず衛生管理者の選任が必要です。また、労働者数が増えると必要な衛生管理者数も増加します。
(労働者数と衛生管理者の選任数)
事業所内の労働者数 | 衛生管理者の選任数 |
50人以上200人以下 | 1人以上 |
200人超500人以下 | 2人以上 |
500人超1,000人以下 | 3人以上 |
1,000人超2,000人以下 | 4人以上 |
2,000人超3,000人以下 | 5人以上 |
3,000人超 | 6人以上 |
また、労働者数が1,000人超の事業所などでは、選任の衛生管理者を選任しなければなりません。
第一種衛生管理者の資格を取得するには?
第一種衛生管理者の資格を取得する方法は、「安全衛生技術試験協会」が実施する試験に合格することです。受験資格の一例は、以下の学歴や実務経験を有する人です。
- 大学または高等専門学校卒で労働衛生の実務経験1年以上
- 高等学校卒で労働衛生の実務経験3年以上
- 中学校卒で労働衛生の実務経験10年以上
また、二種の資格取得者にも一種の受験資格があります。詳細については、安全衛生技術試験協会のホームページで確認しましょう。
まとめ:衛生管理者の選任は従業員を守るための企業の義務
企業は、各事業所の従業員数や業種などによって一定人数以上の衛生管理者を選任しなければなりません。
衛生管理者は、作業場を巡視するなどして従業員の健康状態や作業環境、作業内容に問題がないかを確認し、必要な対策を講じる役割を担います。
衛生管理者の選任は、法律で定められているから仕方なくやるのではなく、従業員の健康を守るための企業の義務だと認識しましょう。社外の人材を活用し自社にないノウハウを得たり、社内の人材を育成するなど、自社にあった衛生管理体制を構築してみてください。