産業医面談は拒否できる?義務と従業員の権利、応じないリスクを解説

産業医面談を受けるかどうかの選択に悩む従業員のイメージ

この記事のポイント

  1. 高ストレス者面談など、従業員の「申し出」が要件の面談は拒否できます。
  2. 長時間労働者への面談は企業の「義務」であり、安全配慮の観点から業務命令となる場合があります。
  3. 正当な理由なく面談を拒否し続けると、適切な健康配慮を受けられず、最終的に不利益につながるリスクがあります。

導入

「産業医面談の案内が来たけれど、あまり気乗りしない。これって拒否してもいいのだろうか?」

会社からの案内に、戸惑いや抵抗感を感じる人もいるでしょう。

産業医面談はケースによって拒否できる場合と、そうでない場合があります。

しかし、正しく理解せずに安易に拒否してしまうと、ご自身の健康を守る機会を失うだけでなく、思わぬ不利益につながる可能性もゼロではありません。

この記事では、産業医面談を拒否できるケースとできないケースの法的な違い、そして面談に応じなかった場合に起こりうるリスクについて、専門家の視点からわかりやすく解説します。

ご自身が納得して判断できるよう、一緒に確認していきましょう。

▼ そもそも産業医面談の全体像を知りたい方は、まずこちらの記事をご覧ください。

▼ YouTubeチャンネルでは代表医師の産業医が本音と経験も踏まえて動画で解説!

結論:産業医面談はケースによって拒否できる

産業医面談を拒否できる場合とできない場合の比較

産業医面談を拒否できるかどうかは、法的根拠によって異なります。

ストレスチェック後のように従業員の「申し出」が前提の場合は拒否できますが、長時間労働者のように企業の「義務」として実施される場合は、原則として拒否できず応じる必要があります。

産業医面談の拒否の可否
ケース 拒否の可否 主な法的根拠
従業員の「申し出」が要件 可能 従業員の権利
企業の「義務」が要件 原則不可 企業の義務(労働安全衛生法、安全配慮義務)

従業員の「申し出」が要件の面談は拒否できる

ストレスチェック後の高ストレス者面談が該当します。

労働安全衛生法では、高ストレス者と判定された従業員から「面談を希望する申し出があった場合」に、企業は面談を設定する義務があると定められています。

つまり、申し出なければ面談は実施されず、会社から勧められた場合でも拒否することが可能です。

同様に、法律で定められていない従業員の任意による健康相談も、当然ながら強制されるものではありません。

参考:e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」

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企業の「義務」による面談は原則として応じるべき

長時間労働者への面接指導は、企業の義務として法律で定められています。

特に、時間外労働が月100時間を超える研究開発者などに対しては、本人の申し出がなくても企業が面談を実施する義務があります。

また、上記以外の場合でも、企業には従業員の健康と安全を守る「安全配慮義務」があります。

たとえば、従業員の様子が明らかにふだんと異なり、安全な業務遂行が難しいと会社が客観的に判断した場合、業務命令として産業医面談を指示することがあります。

同様に、心身の健康問題で休業している従業員が復職を希望する場合も、産業医面談が重要な役割を果たすケースの一つです。厚生労働省の手引きに基づき、最終的な復職決定の前に産業医が面談を行い、職場環境等を考慮した上で意見を述べることが推奨されています。

復職前面談も企業の安全配慮義務の一環であり、円滑な職場復帰のために原則として応じるべき面談といえるでしょう。

産業医面談を拒否できる正当な理由とは?

業務命令として指示された産業医面談を正当な理由なく拒否すると、就業規則違反とみなされる可能性があります。

「正当な理由」とは、単に「行きたくない」という感情的なものではなく、別の通院日と重なっているなど社会通念上やむを得ないと判断される理由を指します。

具体的には、「指定された日時が、自身の通院日や家族の介護など、外せない予定と重なっている」「面談を依頼された産業医と過去にトラブルがあり、信頼関係が築けないため、別の産業医による面談を希望する」といったケースが考えられます。

産業医面談を拒否する場合には、理由が正当であるかどうかについても確認することが推奨されます。もし、産業医面談を拒否する理由が正当な理由ではない場合、まずは一方的に拒否するのではなく、日程の再調整を依頼するなど、建設的な対話を試みることが重要です。

参考:e-Gov 法令検索「労働契約法」

参考:厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」

参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

産業医面談を拒否した場合に起こりうる3つのリスク

産業医面談を拒否することに伴う3つの潜在的リスク

産業医面談を拒否すると、健康状態の悪化や必要な業務上の配慮を受けられない、万が一の労災認定で不利になる、といったリスクが生じるおそれがあります。

健康とキャリアを守る上で、無視できないリスクです。

面談を拒否するリスク
リスクの種類 具体的な内容
リスク1:
健康状態の悪化
専門家による早期介入の機会を失い、自覚しにくい不調のサインを見過ごし、重症化させてしまう。
リスク2:
適切な配慮を受けられない
会社が健康状態を把握できず、業務量の調整など必要な配慮を行えないため、無理な状態で働き続けることになる。
リスク3:
労災認定等での不利益
業務が原因で健康問題が発生した際、会社からのサポートの機会を自ら断ったと見なされ、不利な状況になる可能性がある。

リスク1:自身の健康状態が悪化する

最も大きなリスクは、専門家による早期介入ができずご自身の健康問題が悪化してしまうことです。

産業医面談は、自覚しにくい不調のサインに気づき、重症化する前に対処するために重要です。

自分では「問題ない」と考えていても、専門的な観点からはすでに健康状態が悪化しているケースもあります。

法律上の義務ではありませんが、判例で示されている考え方として、従業員は就業に支障が生じないように自身の心身の体調をセルフケアする「自己保健義務」という考えもあるため、産業医に健康状態を確認してもらい、業務への支障発生のリスクへ備えることが推奨されます。

リスク2:適切な就業上の配慮を受けられない

会社は、産業医の意見をもとに従業員の健康状態に合わせた業務量の調整や配置転換などの配慮(就業上の措置)を行います。

具体的には、産業医は「就業制限(時間外労働の禁止、出張の制限など)」や「要休業」といった区分などで意見を述べる産業医意見書を作成し、会社はこの産業医意見書を参考に業務量の調整、作業内容の転換、勤務時間の短縮、配置転換などを検討・実施します。

面談を拒否すると、会社は健康状態を正確に把握できません。そのため、必要な配慮が受けられず、結果的に無理をしながら働き続けなければならない可能性があります。

リスク3:労災認定などで不利になる可能性がある

健康問題が原因で労働災害が発生した場合、労災認定で不利になる可能性があります。

会社が面談を勧めたにもかかわらず、従業員が拒否していたという事実は、労災認定の過程で不利な要素として考慮される可能性があるためです。

参考:厚生労働省「『精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会』の報告書を公表します」

どうしても面談を受けたくない場合の対処法

産業医面談の悩みについて人事担当者に相談するイメージ

産業医面談に抵抗がある場合、まずは受けたくない理由を人事担当者に伝えてみることが大切です。

また、かかりつけ医がいる場合は主治医の意見書を提出するという選択肢もあります。

一方的に拒否するのではなく、対話の姿勢を持つことが解決の糸口になります。

もし、「産業医面談で何を話せばいいかわからない…」という理由で受けたくない場合は、以下の「産業医面談で話す内容」を解説した記事もご覧ください。

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面談に抵抗がある場合の対処法
対処法 具体的なアクション 期待できること
理由を正直に伝える 人事担当者に、なぜ面談に抵抗があるのか(例:プライバシーの不安)を伝える。 不安が解消されるような説明を受けたり、別の産業医を手配してもらえたりする可能性がある。
主治医の意見書を提出 かかりつけ医に相談し、現在の健康状態に関する意見書を作成してもらい、会社に提出する。 産業医面談の代替として、自身の健康状態を会社に伝えることができる場合がある。

なぜ受けたくないのか理由を正直に伝える

まずは、人事担当者になぜ面談に抵抗があるのかを伝えてみましょう。

「話した内容が漏れるのが不安」「特定の産業医とは相性が悪い気がする」といった理由であれば、会社側が配慮し、不安を解消するための説明をしてくれたり、別の産業医を手配してくれたりする可能性があります。

なお、産業医には法律で厳格な守秘義務が課せられています。面談内容のうち、個人のプライバシーに関わる情報が本人の同意なく会社の人事担当者や上司に詳細に報告されることは決してありません。

大切なのは、一人で抱え込まずに相談することです。

産業医に課せられている守秘義務について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▼あわせて読みたい

参考:e-Gov 法令検索「刑法」

参考:e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」

主治医(かかりつけ医)の意見書を提出する

もし、別の医療機関に通院しているのであれば、主治医に相談し、現在の健康状態や就業に関する意見を診断書や意見書として作成してもらい、会社に提出するという方法もあります。

ただし、主治医は職場の具体的な状況を把握していないため、産業医の判断とは異なる場合がある点には注意が必要です。

まとめ:産業医面談は権利。しかし義務の側面も理解し、建設的な対話を

産業医面談を受けることは、基本的には従業員の権利です。

しかし、ご自身の健康と安全を守る必要性や会社が法的義務を果たすという観点から、原則として受けておくことが望ましいでしょう。

産業医面談の重要性を理解しつつも、面談を拒否したいと感じることがあるかもしれません。理由が「不安」や「不信感」からくるものであれば、まずはその気持ちを会社に伝えてみることが解決の糸口になるでしょう。

合同会社SUGARでは、従業員の方が安心して相談できるような、信頼関係に基づいた産業医サービスを提供しています。「自社に相談できる産業医がいない」「急な休職者や不調者が発生し、面談対応が必要になった」という場合は、スポット相談サービスをご利用ください。

企業様のニーズに応じて、必要な時に必要な回数だけ、経験豊富な産業医によるオンライン面談を提供します。まずはお気軽にお問い合わせください。

▼あわせて読みたい

  1. 産業医面談は法的な義務ですか?断ると罰則はありますか?

    従業員側には、面談を受けることを直接義務付ける法律や罰則はありません。しかし、企業側には長時間労働者などに対して面談を実施する義務が法律で定められています。安全配慮義務の観点から会社が業務命令として面談を指示した場合、正当な理由なく拒否すると就業規則違反に問われる可能性があります。

  2. 産業医面談を拒否したら、解雇されることはありますか?

    産業医面談を一度拒否したことだけを理由に、直ちに解雇される可能性は極めて低いです。しかし、健康上の問題で業務に支障が出ているにもかかわらず、会社の業務命令である面談を再三にわたって正当な理由なく拒否し続ける場合、最終的には懲戒処分の対象となるリスクがあります。

  3. 面談を拒否できる「正当な理由」とは何ですか?

    例えば「指定された日時が、自身の通院日と重なっている」など、社会通念上やむを得ないと判断される理由が考えられます。単に「行きたくない」という理由だけでは、正当な理由とは認められにくいでしょう。まずは日程の再調整などを会社に相談することが重要です。

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