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ストレスチェックで高ストレスと診断…面接指導の流れと注意点を解説
常時50人以上の従業員を使用する事業場では1年に1回、ストレスチェックが義務付けられています。
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員から申し出があれば、企業は面接指導をしなければなりません。
しかし、ストレスチェックが制度化されて数年経った今でも、「高ストレス者の判定が難しい」「高ストレス者の面接指導がスムーズにできない」という事業場は少なくありません。
本記事では、高ストレス者対応の不安を解消したい企業責任者や人事担当者に向けて、高ストレス者の定義、高ストレス者への面接指導の流れ、注意点について解説します。ぜひ最後までお読みください。
関連記事:ストレスチェックとは?制度概要、義務項目と流れを簡単解説!
「高ストレス者」の定義とは?
ストレスチェックの主な目的は、「従業員のメンタル不調を未然に防止すること」と「職場環境を改善すること」です。そのためには、高ストレスを抱えている人を早期発見することが重要な課題となります。
では、「高ストレス者」はどのような人のことを指すのでしょうか。厚生労働省発行の「ストレスチェック制度導入マニュアル」では、「自覚症状が高い人や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い人」を高ストレス者だと表現しています。
ストレスチェックの結果から高ストレス者を判定する基準や方法について、具体的に見ていきましょう。
参考:厚生労働省「数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法」(PDF)
高ストレス者の判定基準は?
判定基準を決めるのは企業です。ストレスチェック実施前に、ストレスチェック実施者(医師など)の意見を参考にし、衛生委員会で審議して判定基準を設定します。ストレスチェック後、高ストレス者を判定するのはストレスチェック実施者です。
高ストレス者を判定する方法には、従業員が記入した調査票の回答から合計点数を出す方法などがあり、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改定)」によると、下記のいずれかの要件を満たす人を高ストレス者と判定します。
- 「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計点が高い人
- 「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計点が一定以上であり、かつ「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」に関する項目の評価点が著しく高い人
参考:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改定)(PDF)
参考:数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法(ストレスチェック制度実施マニュアルの解説)(PDF)
高ストレス者は全体の約10%が目安?
厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルに沿った判定基準では、高ストレス者の割合はストレスチェックを受けた従業員の10%程度が目安とされています。
ただし、業種や職種、状況によって高ストレス者の割合は異なり、10%はあくまで目安です。
集団分析も大事
職場環境改善につなげるためには、部署や職種単位でのストレス傾向を把握することも重要です。上司や同僚のサポートが不足していないか、仕事の負荷は高くないかなど、高ストレスの原因となっている点を洗い出すことで、改善ポイントが見えてきます。
集団分析は、「量ーコントロール判定図」と「職場の支援判定図」という2つの判定図によって、単位ごとのストレス状態を分析します。
集団分析は努力義務ですが、職場をより良くするためのヒントになる有意義な手段です。できる限り実施するよう努めましょう。
集団分析についての詳細は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:ストレスチェックの集団分析とは?分析や判定図について解説!
「高ストレス者」への面接指導を実施する流れ
ストレスチェックの結果、高ストレス者であると判定したら、速やかに面接指導を実施することが大事です。どのような流れで対応すればよいか、順番に解説します。
- 本人からの申し出
- 医師による面接指導の実施
- 医師に意見聴取
- 就業上の措置
- 労働基準監督署に面接結果を報告
対応①:本人からの申し出
ストレスチェックの結果については、ストレスチェック実施後、高ストレス者を含むすべての受検者に遅滞なく通知をします。通知するのはストレスチェックの実施者です。
高ストレス者に対しては、面接指導を積極的に申し出るように推奨しましょう。
通知後、高ストレス者本人からの申し出があった場合、産業医など医師による面接指導を実施しなければなりません。申請は結果通知後1カ月以内に行うことが目安です。
対応➁:医師による面接指導の実施
面接指導は申し出から1カ月以内に行う必要があります。なお、面接指導の費用は企業が負担します。
面接指導を担当できるのは医師です。事業所の産業医や、産業保健活動に従事しており社内の状況を把握できる医師が面接指導を担当することが厚生労働省より推奨されています。
周囲の目を気にせず安心して受けられる場所や時間を設定するなど、工夫をしてください。
面接指導の際には、ストレスチェックの結果のほか、勤務の状況や心理的な負担の状況などを確認するためカウンセリングをします。
2020年11月の労働安全衛生法改正により、面接指導はオンラインで実施することも認められました。オンラインでの実施に関しては、下記に留意事項が示されています。
参照:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について(令和2年11月19日付け基発1119第2号)(PDF)
対応③:医師に意見聴取
面接指導後、企業は面接指導を行った医師から、就業上の措置について1カ月以内に確認することと定められています。
医師は、面接指導をした従業員について、「通常勤務可能」「時間外勤務の制限など就業制限の必要がある」「休業の必要がある」などのいずれにあたるかを伝える必要があります。
また、企業による適切な措置につなげるため、医師は企業に情報を提供しますが、伝えるのは従業員の健康確保のために必要のある情報のみです。
意見提出については、従業員への十分な配慮が必要だということを忘れないでください。
対応④:就業上の措置
企業は、医師から聞いた意見に沿って、必要な場合は労働時間の短縮や就業場所の変更、仕事内容の変更などの措置を行います。従業員と十分話し合って本人の了解を得てから行いましょう。
事後措置を行わなかった場合には、その旨とその理由を面接指導を行った医師に報告しなければなりません。
措置を実施する場合は、産業医や産業保健スタッフ、人事労務部門とも連携することが大切です。該当する従業員の職場の管理監督者にも理解が得られるよう、細やかな連携が必要となります。
就業上の措置を行わないと、労働安全衛生法上の義務違反になる可能性があります。また、高ストレス者のメンタル不全が悪化したり、高ストレス者が増えて、仕事のパフォーマンスが下がり、業績ダウンに陥る可能性もあります。
従業員一人ひとりの健康を守り、職場環境を改善することは企業の大切な務めです。
対応⑤:労働基準監督署に面接結果を報告
面接指導の結果は、事業所で5年間保存しなければなりません。
ストレスチェックの結果は、所管の労働基準監督署への報告が義務付けられています。義務を怠ると安全配慮義務違反とみなされ、最大で50万円の罰金が課せられる場合がありますので、忘れずに報告してください。
参考:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則第52条の18」「労働安全衛生法第120条の5」
「高ストレス者」への対応における3つの注意点
高ストレス者と判定された人の中には、「結果を人に知られたくない」「高ストレス者ということで、企業から不当な扱いをされるのではないか」とセンシティブになる場合があります。人事考課への影響を理由に面接を申し出ない人も出てくるでしょう。
厚生労働省の調査(2021年8月~9月調査)によると、高ストレス者のうち実際に面接指導を申し出る人の割合が5%未満である事業所が76.8%と大半です。
高ストレス者の対応で企業が注意すべき点を見ていきましょう。
参照:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)(PDF)
注意点①:個人情報の取り扱いに注意
ストレスチェックの結果を従業員へ通知するときは、ほかの人に結果が知られないよう封書またはメールで個別に直接知らせるなど工夫をしてください。
従業員の同意がなければ、ストレスチェックの結果が企業に提供されることがあってはなりません。第三者に結果が漏えいすることは法律で禁止されています。
ストレスチェックや面接指導で個人の情報を取り扱った人は、法律で守秘義務が課されます。
個人のストレスチェックの結果の保存場所や保存期間の設定、セキュリティの確保などにも気を付け大切に扱いましょう。
注意点②:本人に不利益がないように注意
労働安全衛生法第66条の10第3項の規定に基づき、企業は従業員が面接指導の申し出をしたこと、また申し出をしないこと、そしてストレスチェックの結果のみで、不利益な取り扱いをしてはいけません。
面接指導の結果を理由として次のような措置を行うことが禁じられています。
- 解雇すること
- 間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと
- 退職勧奨を行うこと
- 不当な動機・目的による配置転換や職位(役職)の変更を命じること
- その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること
面接指導にあたって、「不利益な取り扱いをすることはない」ということを説明し、本人に安心感を与えるようにしましょう。
注意点③:面接指導のメリットの伝え方に注意
面接指導に対して身構えてしまう人も少なくありません。面接指導によって何が変わるのか、自身のストレスが緩和されるのかなど、期待より不安の方が大きい可能性があります。
面接指導への不信感をぬぐうためにも、面接指導のメリットについてしっかり伝えることが大切です。
面接指導では、ストレスに対する日々のセルフケアについて相談することができ、医療が必要な場合は医療的なケアにつなげるきっかけにもなります。また、周りのサポートを得られるようになるなど、職場環境の改善につなげることができます。
そのようなメリットについてストレスチェック実施前に伝え、高ストレス者が安心して面接指導を受けられる環境づくりから始めることが望ましいでしょう。
それでも面接指導を申し出ない高ストレス者も多いでしょう。普段からメンタル研修を行い、セルフケアの大切さを伝えたり、社内や社外の相談窓口に気軽に相談できるような環境づくりにも努めてください。
まとめ:社員をメンタル不調から守るため、高ストレス者への適切な対応を
企業内の連携を強化し、高ストレス者から申し出があった場合、慌てないでスムーズに面接指導につなげましょう。
事前にストレスチェックについて丁寧な説明をするなど、高ストレス者が安心して面接指導を受けることができるようにしましょう。面接指導を受けたくない高ストレス者のためにも、安心できる環境づくりやメンタルヘルス研修を行い、健康経営に向けて職場環境の改善に努めてください。