高ストレス者面談ガイド|企業の義務から流れ、従業員の不安解消まで

この記事のポイント

  • 高ストレス者面談の法的義務から、準備、実施、事後措置までの実務フローをステップ形式で完璧に理解できる。
  • 従業員が抱くプライバシーや人事評価への不安を解消し、安心して面談に臨める具体的なQ&Aを提示。
  • 面談を個人のケアで終わらせず、集団分析を通じて組織全体の「職場環境改善」につなげる戦略的な活用法がわかる。

現代の企業経営において、従業員のメンタルヘルス対策は、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略です。メンタルヘルス対策の中核となるのが「高ストレス者面談」です。

しかし、「法的な義務はどこまでかわからない」「従業員が面談を希望しない」といった悩みを抱える人事担当者の方もいるでしょう。

また、高ストレス者と判定された従業員の方も、「面談で何を話せばいいのか」「評価に影響しないか」などの不安を感じているかもしれません。

この記事では、産業医・労働衛生コンサルタントの専門的知見に基づき、高ストレス者面談に関するあらゆる疑問に答えます。

人事担当者向けの実務フローから、従業員が抱えがちな不安を解消するQ&A、さらには面談を組織の生産性向上につなげる戦略的活用法まで、網羅的に解説します。

最後まで本記事を読むことで、企業と従業員双方にとっての「価値ある投資」として、自信を持って推進できるようになるでしょう。

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目次

高ストレス者面談とは?ストレスチェック制度における目的と法的根拠

ストレスチェック制度における高ストレス者面談の位置づけと目的の図解

高ストレス者面談とは、ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員が希望した場合に、会社が設定し医師が行う面接指導のことです。

高ストレス者面談を行うことで、従業員のメンタルヘルス不調予防や、職場環境課題の可視化、企業の安全配慮義務の履行につながります。

高ストレス者面談の根幹をなす定義、目的、そして法的根拠について、以下の表の通り解説します。

面談指導の概要
項目 概要
定義 ストレスチェック後の、医師による「専門的な健康相談」。個人の気づきを行動へつなげる橋渡しの役割を担う。
目的1 個人の不調予防:セルフケアの助言や専門医療への接続を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ。
目的2 職場環境の改善:面談から得られた情報(本人の同意のもと)を基に、組織の構造的な課題を特定し改善する。
目的3 リスク管理:企業の「安全配慮義務」を具体的に履行し、労務リスクを回避する。
法的根拠 労働安全衛生法 第66条の10:従業員の申し出があった場合の面談実施、事後措置などを企業の義務として規定。

定義:高ストレス者面談を簡単に言うと?

高ストレス者面談とは、ストレスチェックで課題が示唆された従業員に対し、専門家である医師が「健康相談」を行う機会です。

従業員自身の「不調への気づき」を具体的な「行動変容」へとつなげ、ストレスチェック制度の要となるプロセスです。

単に話を聞くだけでなく、個人のセルフケア支援から企業へ職場環境改善の提言までを行う、メンタルヘルス対策の実効性を高めるものといえます。

目的1:個人の不調を未然に防ぐ(一次予防)

高ストレス者面談の最も重要な目的は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。

面談を通じて、従業員は医師から客観的な評価と、自身の状況に合ったセルフケアの方法について具体的な助言を得られます。

必要であれば専門の医療機関へつなぐことで、早期治療のきっかけにもなります。

目的2:職場環境の課題を可視化し改善する

高ストレス者面談で明らかになる従業員のストレス要因は、組織が抱える課題を明らかにする貴重な情報です。

従業員のストレス原因が過重労働や職場の人間関係にある場合、本人の同意のもと、医師を通じて会社にフィードバックされます。

会社は職場環境の改善点が明らかになり、高ストレス者を生み出しにくい組織づくりを進められます。

目的3:企業の安全配慮義務を履行しリスクを管理する

従業員の心身の健康を守り、安全に働ける環境を整えることは、企業が負うべき「安全配慮義務」です。

高ストレス者面談の実施は、安全配慮義務を果たすための具体的なアクションの一つとして位置づけられています。

高ストレス状態の従業員を放置し、メンタル不調による休職や離職に至った場合、企業は安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

面談制度の適切な運用は、労務トラブルやリスクを回避するためにも不可欠です。

法的根拠:労働安全衛生法が定める事業者の義務の範囲

高ストレス者面談に関する事業者の義務は、労働安全衛生法第66条の10に定められています。

企業の義務
項目 義務
ストレスチェックの実施 50人以上の事業場は、年1回必ず実施する。
(※50人未満は努力義務)
医師による面接指導 本人から申し出があった高ストレス者には、必ず面接を実施する。(※本人への強制は原則的に不可)
事後措置 医師の意見に基づき、必要な就業上の措置を講じる。
不利益取扱いの禁止 申出などを理由とした不利益な取扱いは、一切禁止。

義務範囲を正しく理解し、高ストレス者面談をルールに則って実施しましょう。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

高ストレス者面談をはじめとした産業医面談について知りたい場合は、以下の関連記事もご覧ください。

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【担当者向け】高ストレス者面談の実践フロー|準備から事後措置まで8ステップ

高ストレス者面談の実施フローをチェックリストで確認する人事担当者

高ストレス者面談を適切に実施するためには、法令で定められた手順を理解し、各ステップを実行することが求められます。

人事・労務担当者が実務で対応する一連の流れを、8つのステップに分けて解説します。

面談指導の流れ
Step1:高ストレス者の選定
  • 実施者(産業医など)が選定し、事業者は関与しない。
Step2:結果通知と面談の勧奨
  • 実施者が結果を通知し、高ストレス者へ丁寧に面談を勧奨する。
  • 通知時のプライバシー保護を徹底する。
Step3:面談の申出受付と日程調整
  • 本人の申し出にもとづき、事業者が日程を調整する。
  • 申出から1ヶ月以内の就業時間内に設定し、記録を残す。
Step4:医師への情報提供
  • 事業者は本人の同意を得て、勤務状況や健診結果などを医師に提供する。
Step5:面談の実施
  • プライバシーを確保した個室で医師が実施する(オンラインも可)。
Step6:医師からの意見聴取と記録
  • 事業者は医師の意見を聴取し、面談記録を作成して5年間保存する。
Step7:就業上の措置の検討と実施
  • 医師の意見を参考に、本人と合意の上で事業者が措置を決定する。
  • 措置実施後の継続的なフォローアップが不可欠。
Step8:労働基準監督署への報告
  • 事業者は、実施状況を年に一度、労働基準監督署へ報告する義務がある。

Step 1:高ストレス者の選定

ストレスチェックの集計後、まずは「高ストレス者」を選定します。高ストレス者の選定はは、守秘義務を負う「実施者」(産業医、保健師など)が行い、事業者は関与しません。

選定基準は、厚生労働省の指針に基づき、「心身のストレス反応」が高い者などが該当します。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度実施マニュアル」

Step 2:結果通知と面談の勧奨

実施者は、全受検者に結果を直接通知します。封書やパスワード付きメールなど、プライバシーに最大限配慮する方法で行う必要があります。

高ストレス者と判定され、実施者が「面接指導が必要」と判断した従業員には、面談を受けるよう「勧奨」します。心理的ハードルを下げる丁寧な言葉がけを意識することで、面談実施率を高められます。

Step 3:面談の申出受付と日程調整

従業員本人から面談を受けたいと申し出があった場合、事業者は「遅滞なく」(概ね1ヶ月以内)面談を実施する義務があります。

申出は書面やメールなど記録に残る形で受け付けます。 

日程は原則として就業時間内に設定し、従業員が調整しやすいよう柔軟に対応することが望ましいです。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」

Step 4:医師への情報提供【面談の質を高める重要ステップ】

面談の質を決定づける重要な準備が、実施する医師への事前情報提供です。医師は多角的な視点から評価を下すことが可能になります。

提供すべき情報は主に以下の通りです。

  • ストレスチェックの結果(本人の同意のもと)
  • 勤務状況に関する情報(直近1ヶ月の労働時間、業務内容・役割の変化など)
  • 定期健康診断の結果(心身の健康状態と過去のストレス状況など)
  • 職場環境に関する情報(職場巡視の結果など)

客観的データを産業医に共有することで、より的確な診断と具体的な指導につながります。

Step 5:面談の実施

面談は、第三者に会話が漏れることのない、プライバシーが完全に保たれる個室で実施しましょう。

近年では、セキュリティ対策やプライバシー確保といった条件を満たせば、オンラインでの実施も認められています。

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「オンライン産業医面談の注意点5つ|メリット・デメリットも解説」

https://sugarllc.co.jp/online-occupational-physician-interview-precaution

Step 6:医師からの意見聴取と記録

面談終了後、事業者は遅滞なく医師から就業上の措置に関する意見を聴取しなければなりません。

意見聴取とは、医師が医学的観点から「通常勤務で問題ないか」「休業が必要か」といった具体的な意見を述べるものです。

事業者は、医師の意見を含む面談結果の記録を作成し、これを5年間保存する義務があります。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

Step 7:就業上の措置の検討と実施

医師の意見を参考に、必要な措置を検討・実施します。

措置の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 通常勤務可(就業上の措置不要)
  • 労働時間に関する措置:労働時間の短縮、時間外労働の制限、深夜業の制限、シフト(交代制勤務)の調整など 
  • 業務負荷に関する措置:業務内容の変更(難易度や責任の範囲を一時的に縮小)、業務量の調整、出張の制限、当面の間の配置転換など 
  • 職場環境に関する措置:テレワークの活用、騒音や視線の少ない座席への移動、通勤負担の軽減措置(時差出勤など) 
  • 休業:療養に専念するための休暇・休職

【ポイント】主治医との連携 

従業員がすでに医療機関に通院している場合、本人に同意を得た上で主治医と連携することで、より適切な措置の実行につながります。

その上で、産業医から主治医へ情報提供依頼書を送り、治療状況や就業上配慮すべき点について意見を求めることで、治療と仕事の両立を効果的に支援できます。

措置を決定する際は、必ず事前に本人と十分に話し合い、理解と同意を得ることが重要です。

また、措置は「実施して終わり」ではなく、継続的なフォローアップが不可欠です。措置開始後も定期的に産業医や上司との面談を設定し、措置内容が本人の負担軽減につながっているか、業務遂行に支障はないかなどを確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。

Step 8:労働基準監督署への報告

ストレスチェックおよび面接指導の実施状況は、年に一度、所轄の労働基準監督署長に報告書を提出する必要があります。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

【従業員向け】面談への不安を解消|プライバシー・話す内容・メリット

ストレスチェックで「高ストレス」と判定され、医師との面談を勧められても、不安や戸惑いを感じるのは当然です。

従業員が抱える疑問や懸念を解消し、安心して面談に臨めるよう、Q&A形式で解説します。

高ストレス者面談で安心して相談し、悩みが解消された従業員

Q1. 面談を受けるメリットは?専門家と話して何が得られる?

高ストレス者面談は、懲罰や評価の場ではありません。むしろ、ご自身の健康状態を専門家とともに見つめ直し、より快適に働き続けるための機会です。

主に以下のようなメリットがあります。

従業員のメリット
メリット 内容
客観的な状況把握 医師という専門家と対話することで、ご自身のストレス状況を冷静に評価してもらえます。
具体的なセルフケアの助言 ご自身の状況に合わせた、ストレスへの対処法や生活習慣の改善に関する実践的なアドバイスを得られます。
専門医療への橋渡し 必要であれば、適切な医療機関を教えてもらい、早期治療につながります。
職場環境改善のきっかけ あなたの声が、医師の専門的な提言を通じて、職場環境を改善するきっかけになる可能性があります。

Q2. プライバシーは守られる?会社に内容が筒抜けにならない?

結論から申し上げると、プライバシーは法律と倫理によって固く守られます。

面談を担当する医師には、労働安全衛生法および医師法にもとづく「守秘義務」が課せられています。

本人の明確な同意なく、面談での具体的な会話内容が会社や上司に伝わることは決してありません。

産業医に課せられた守秘義務について知りたい場合は、以下の関連記事を参考にしてみてください。

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参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

参考:e-Gov法令検索「刑法」

Q3. 当日は何を話せばいい?医師からの質問例と準備のポイント

「うまく話せるか不安」と感じる必要は全くありません。ありのままの状況を話すことが重要です。

医師は主に「勤務状況」「心身の状態」「今後の希望」などについて質問します。事前にご自身の状況をメモしておくと、スムーズに伝えやすくなるでしょう。

面談で話すことのポイント
カテゴリ 質問例 準備のポイント
勤務状況 「最近1ヶ月の残業時間はどのくらいですか?」
「業務内容に変化はありましたか?」
勤務記録やカレンダーを見返しておく。ストレスを感じ始めた時期と業務の変化を関連付けて考えてみる。
心身の状態 「最近、よく眠れていますか?」
「気分が落ち込んだり、イライラすることはありますか?」
睡眠時間や身体的な症状(頭痛、胃痛など)も正直に伝える。以前楽しめていた趣味が楽しめなくなった、といった変化も重要な情報。
今後の希望 「職場の環境で改善してほしい点はありますか?」
「どのような働き方ができれば、負担が軽くなると思いますか?」
「残業を減らしたい」「業務量を調整してほしい」など、具体的な要望を考えておくと、医師が会社に伝えやすい。

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Q4. 面談を断ることはできる?拒否しても大丈夫?

はい、断ることは自由です。

高ストレス者面談の申出は、法律で定められた労働者の「権利」であり、「義務」ではありません。申出をしなかったことで、会社から不利益な扱いを受けることは一切ありません。

ただし、高ストレスという結果はご自身の心身が助けを求めているサインかもしれません。ご自身の健康を守るための機会として、前向きに検討されることをお勧めします。

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Q5. 面談後の「就業上の措置」は不利益な扱いではない?

就業上の措置は「保護措置」であり、懲罰ではありません。

高ストレス者面談の結果、会社が労働時間の短縮などを講じることがあります。適切な就業上の措置が講じられることで、健康状態の悪化を防ぎ、安全に働き続けられるようにするためのサポートです。

医学的な専門家の意見にもとづき、従業員の健康を最優先に考えて行われるものであり、一方的に決定されたり、人事考課に影響することはありません。

なぜ面談の利用は進まない?実施率向上の障壁と心理的安全性

人事評価やプライバシーへの不安から高ストレス者面談をためらう従業員

高ストレス者と判定されても実際に面談を申し出る従業員の割合は、厚生労働省の調査によると5%未満の事業場が多く、極めて低いのが現状です。

「必要性」と「実際の行動」のギャップを埋めなければ、制度は形骸化してしまいます。

従業員が面談をためらう深層心理と、その対策を解説します。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」

従業員が面談をためらう6つの深層心理

従業員が面談をためらう背景には、キャリアや人間関係に対する深刻な懸念が存在します。

従業員が面談をためらう理由
懸念の種類 具体的な内容
人事評価への懸念 「精神的に弱い」と評価され、昇進などに悪影響が出るのではないかという恐怖。
プライバシーへの不安 話した内容が外部に漏れてしまうのではないかという心配。
レッテル貼りへの危惧 「高ストレス者」や「要面談者」という不名誉なレッテルを貼られることへの抵抗感。
効果への疑問 面談を受けても、職場環境などの根本的な問題は解決しないだろうという諦め。
時間的制約 日々の業務が多忙で、面談のための時間を確保すること自体が困難。
産業医への不信感 産業医は結局のところ会社側の人間であり、中立ではないのではないかという警戒心。

以上のような懸念は、組織における心理的安全性が低下しているために生じることが多いでしょう。

心理的安全性を高め、安心して相談できる職場環境を構築することが求められます。

対策1:経営層からの強力なメッセージ発信

従業員の不安を払拭する最も効果的な方法は、経営層がトップダウンで制度の安全性を保証することです。

全社集会や社内報などを通じて、経営者自らが次のようなメッセージを繰り返し発信することが求められます。

【発信すべき経営層からのメッセージ例】

「高ストレス者面談は、皆さんの健康を守るための正当な権利です。面談の利用によって人事評価等で不利益な扱いをすることは一切ないと、私が約束します」。

対策2:産業医の「見える化」と信頼関係の構築

従業員にとって産業医が「得体の知れない存在」である限り、不信感は払拭されません。

産業医に社内報で健康コラムを執筆してもらったり、衛生委員会で講話を行ってもらったりするなど、専門性や人柄に触れる機会を意図的に作りましょう。 

「会社の回し者」ではなく「健康の専門家であり、従業員の味方」という認識を広めることが重要です。

対策3:複数回の丁寧な勧奨と相談窓口の多様化

文化醸成と並行して、短期的な戦術も重要です。一度の案内で終わらせず、申し出がない高ストレス者に対し、実施者から再度、丁寧な勧奨メールを送る仕組みを構築します。

また、「いきなり医師との面談はハードルが高い」と感じる従業員のために、社内の保健師や外部のEAP(従業員支援プログラム)など、より気軽に相談できる窓口を複数用意することも有効です。

個人のケアで終わらせない!集団分析と職場環境改善への戦略的活用

集団分析の結果をもとに、職場環境改善について議論する経営層と産業医

高ストレス者面談が個人の不調を防ぐ「対症療法」であるなら、ストレスチェックの結果を用いた「集団分析」は、高ストレス者を生み出す職場そのものの問題を解決する「根本治療」と言えます。

集団分析の活用が、制度の価値を最大化する鍵です。

集団分析とは?高ストレス者を生み出す組織課題の特定

集団分析とは、個人のストレスチェック結果を、部や課といった集団ごとに集計・分析し、職場ごとのストレス傾向を可視化する手法です。

たとえば、特定の部署で高ストレス者の割合が突出して高い場合、該当部署が抱える業務量やマネジメントといった構造的な課題を示唆します。

個人の問題ではなく、組織の課題として位置付けることが可能になり、一丸となって取り組みやすくなるでしょう。

「仕事のストレス判定図」の読み解き方と活用法

集団分析で一般的に用いられるのが「仕事のストレス判定図」です。「仕事の量的負担」を横軸、「仕事のコントロール度や支援」を縦軸とし、全国平均と比較して部署がどの位置にあるかを評価します。

【仕事のストレス判定図の例】

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」

とくに「仕事の負担は大きいのに、裁量権も周囲のサポートも少ない」という領域に位置する部署は、健康リスクが最も高く、早急な介入が求められます。

ストレスチェックの集団分析について、分析や判定図の見方の詳細は、以下の関連記事もご覧ください。

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職場環境改善の具体的なアクションプラン例

集団分析で課題が明らかになったら、具体的なアクションプランを実行します。

  • 「仕事の量的負担」が高い場合:業務プロセスの見直し、人員配置の適正化
  • 「仕事のコントロール度」が低い場合:従業員への権限移譲、研修機会の提供
  • 「上司・同僚のサポート」が不足している場合:管理職向けのコミュニケーション研修(ラインケア研修)、メンター制度の導入

職場環境改善の施策は一度実施して終わりではなく、定期的に効果を検証し、改善を加えていくことが重要です。

健康経営への接続:ストレス対策を経営戦略に昇華させる

ストレスチェック制度の活用は、より広範な「健康経営」へつながります。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

ストレスチェックの集団分析結果は、自社の健康経営の進捗を測る重要なKPI(重要業績評価指標)として活用できます。従業員の健康を守る取り組みは、最終的に企業価値の向上に直結する「攻めの経営戦略」です。

高ストレス者面談に関するよくある質問(FAQ)

高ストレス者面談に関するよくある質問

高ストレス者面談に関して、人事労務担当者が抱えがちな疑問を、Q&A形式で解説します。

Q. 面談の費用は誰が負担しますか?

A. 全て事業者(会社)が負担します。

ストレスチェックの実施から、その後の高ストレス者面談に至るまで、一連の費用を従業員に負担させることは認められていません。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度関係 Q&A」

Q. オンラインでの面談は可能ですか?注意点は?

A. はい、可能です。

ただし、情報通信機器を用いて面談を行う場合は、厚生労働省の指針に基づき、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 情報セキュリティとプライバシーの確保
  2. 円滑なコミュニケーションの確保
  3. 実施場所の指定

参考:厚生労働省「情報通信機器を用いた面接指導の実施について」

Q. 産業医がいない場合、誰が面談を担当するのですか?

A. 産業医以外の医師でも担当可能です。

労働安全衛生法では「医師」による面接指導を定めており、必ずしも事業場と契約している産業医である必要はありません

地域の医師会や、メンタルヘルス対策を支援する外部機関などに相談し、医師に依頼することができます。

ただし、産業医資格があって高ストレス面談の経験がある医師がより望ましいです。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

Q. 面談の記録はどのくらいの期間、保存が必要ですか?

A. 5年間です。

事業者は、高ストレス者面談の実施日時、対象者、担当医師、医師の意見などを記録し、その記録を5年間保存する義務があります。

Q. 高ストレス者と判定されませんでしたが、不調を感じるので相談したいです。

 A. 企業の相談窓口を利用できます。 

ストレスチェックの結果にかかわらず、心身の不調を感じる場合は、遠慮なく会社の相談窓口を利用してください。

多くの企業では、産業医や保健師による健康相談、人事労務部門の相談窓口、外部のEAP(従業員支援プログラム)機関などが用意されています。

相談窓口は、全従業員が利用できるセーフティネットであり、不調の悪化を防ぐには早期の相談が重要です。

まとめ:高ストレス者面談は、企業と従業員双方の未来を守る「戦略的投資」です

高ストレス者面談は、単なる義務やコストではありません。従業員の健康を守り、組織の潜在的リスクを回避し、生産性を向上させるための極めて重要な「戦略的投資」です。

個人のケアで終わらせず、集団分析を行って組織全体の改善につなげることで、その価値は最大化されます。

しかし、ストレスチェックの計画から面談の実施、そしてデータに基づいた組織改善までを自社だけで効果的に運用し、継続していくことは容易ではないかもしれません。

合同会社SUGARでは、「ストレスチェックの計画・実施」から「高ストレス者面談」まで、専門家が一気通貫でサポートします。

私たちは、制度を単に実行するだけでなく、集団分析の結果を詳細に読み解き、貴社の具体的な課題を可視化します。その上で、来年度に向けた職場環境の改善策をご提案し、実効性のあるPDCAサイクルとして定着するよう伴走支援することが可能です。

「ストレスチェックを形骸化させたくない」「データにもとづいた本質的な職場改善を進めたい」といった企業のお悩みやニーズに、私たちは医学的知見と経営学的視点の両方からお応えします。

貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案しますので、ぜひ一度、合同会社SUGARへお気軽にお問い合わせください。

  1. 高ストレス者面談は企業の義務ですか?罰則はありますか?

    はい、ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員から「面談を希望する」という申し出があった場合、企業が面談を実施することは労働安全衛生法で定められた義務です。ただし、申し出がない場合に面談を実施しなくても、それ自体に直接的な罰則はありません。しかし、安全配慮義務違反を問われるリスクがあるため、従業員が申し出やすい環境を整えることが重要です。

  2. 面談で話した内容は、会社や上司に報告されてしまうのでしょうか?

    いいえ、報告されません。面談を担当する医師には厳格な守秘義務が課せられており、本人の同意なく面談の具体的な内容を会社や上司に伝えることは法律で固く禁じられています。会社に報告されるのは、あくまで「労働時間の短縮が必要か」といった、健康を確保するための就業上の措置に関する医学的な意見のみです。

  3. 高ストレス者面談を拒否することはできますか?

    はい、できます。面談を受けるかどうかは従業員本人の意思に委ねられており、面談の申し出は「権利」であって「義務」ではありません。したがって、面談を希望しない場合は断ることが可能です。断ったことを理由に企業が不利益な取り扱いをすることも禁止されています。

  4. 面談の費用は誰が負担しますか?

    面談にかかる費用は、すべて事業者(会社)が負担することが法律で定められています。従業員が費用を負担することは一切ありません。

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