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ストレスチェックとは?制度概要、義務項目と流れを簡単解説!
ストレスチェックは、2015年10月より義務化された制度です。制度化から数年が経った令和2年度でも、ストレスチェックを導入した事業所は全体の84.9%にとどまっています。
「ストレスチェック制度は複雑で導入出来ていない」「実施しているが面倒だ」という人もいるのではないでしょうか。
本記事では、企業の人事や総務部門、従業員の健康関連の業務に携わる人に向けて、ストレスチェック制度を簡単に解説します。ストレスチェック制度の具体的な流れを把握し、正しく実施していきましょう。
ストレスチェックとは?
2015年に一定の要件を満たす企業に義務化されたストレスチェックですが、具体的にはどのような目的で行うのでしょうか。義務化の対象や実施時期についても合わせて解説します。法令で規定された義務に関しては、厚生労働省「ストレスチェックに関連する法令」を参考に説明します。
目的:メンタルヘルス不調の未然防止
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止を目的としています。メンタルヘルス不調の予防には、従業員に現在の状態の気づきを促すことが不可欠です。ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員には医師の面接指導を勧奨し、重症化を防ぎます。さらに、メンタルヘルス不調を招きやすい職場環境を改善するため、部署ごとにストレス傾向を判定する集団分析も欠かせません。
メンタルヘルス不調を予防するために、従業員個人と環境面に働きかける仕組みがストレスチェックだといえます。
関連記事:ストレスチェックはなぜ実施する?目的と効果について解説!
対象:50人以上の従業員を有する事業場
ストレスチェックは、50名以上の従業員を雇用している事業場が対象です(労働安全衛生規則第52条の21)。事業場は、1つの拠点を1つの事業場とカウントします。例えば、本社に50名、支社に20名の対象者がいる場合、本社はストレスチェックの対象ですが、支社は努力義務です。
また、雇用期間の定めがなく正社員の4分の3以上の時間を働いている従業員は、正社員でなくともストレスチェックの対象です。そのため、パートやアルバイト従業員も対象に含まれるケースもあるため、注意が必要だといえます。
参考:厚生労働省「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令等の施行について(心理的な負担の程度を把握するための検査等関係)」
実施時期:年1回以上の実施義務
ストレスチェックは年1回以上の実施が義務付けられています(労働安全衛生規則第52条の9)。メンタルヘルス不調の原因を特定しやすくするため、毎年同じ時期に行うことがお勧めです。例えば、前年は閑散期に行い今年は繁忙期に行うなど時期をずらすと原因が特定しにくいです。
メンタルヘルス不調に対処しやすくするためにも、年1回以上かつ定期的に実施する必要があるといえます。
関連記事:ストレスチェック制度はどこまでが義務?目的や罰則を詳しく解説!
ストレスチェック実施までの5つのステップ
では、ストレスチェックは具体的にはどのような流れで行うのでしょうか。企業が行うべき業務範囲に焦点を当てて解説します。
ステップ①:社内方針の決定と従業員への説明
ストレスチェックを実施する前に、「従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止するために行う」という目的を従業員に示します。その後、衛生委員会で具体的な実施事項を決定し、従業員へ周知し、受検を勧奨(メンタルヘルスの見直しや改善に有用であると勧めること)します。
衛生委員会の体制や実施事項の決定
具体的な実施体制や方法を決定するため、衛生委員会で審議を行います。決めておく必要がある事項は以下の通りです。
- ストレスチェックの対象者と実施時期
- ストレスチェックに用いる質問票
- 高ストレス者の選定方法
- 面接指導の申し出先
- 面接指導を依頼する医師
- 集団分析の方法
- ストレスチェック結果の保存方法と責任者
- 実施体制と役割分担(統括者、実施者、実施事務従事者、面接指導担当医師)
従業員への周知
衛生委員会で決定した事項は、書面にまとめて従業員に周知し、ストレスチェック受検を勧奨します。周知においては、ストレスチェックによって評価が下げられるなど、従業員にとって不利益にならないことを伝えましょう。
ステップ②:ストレスチェックの実施
ストレスチェックの準備が整ったら、従業員にストレスチェックを実施します。質問票は、一般的には職業性ストレス簡易質問票が用いられます。以下の内容が含まれていれば、企業独自で調査票を作成可能です(労働安全衛生規則第52条の9)。
- 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
- 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
- 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
なお、年1回のストレスチェックとは別に、メンタルヘルス施策として独自でストレスチェックを行う場合もあるでしょう。労働安全衛生法で定めるストレスチェックの定義に該当する場合、個人情報の保護や実施者の役割など法令に準じた実施が必須です。
ステップ③:ストレスチェック結果の評価
ストレスチェックを実施した後は、結果を処理し適切な評価を行う必要があります。結果は、「従業員個人への通知」「高ストレス者の判定」「集団分析」という3つの目的で活用されます。
従業員個人への通知
ストレスチェックの結果を従業員へ通知し、メンタルヘルス不調への気づきを促します。個人情報保護の観点から、結果は実施者から通知され、企業への通知は従業員の同意が必須です。そのため、結果を知りたい場合、労働者から書面やデータでの同意をとることが求められるため、注意が必要です(労働安全衛生規則第52条13の1)。
高ストレス者の判定
メンタルヘルス不調を防止するためには、高ストレス者を判定し、面接指導の勧奨を行うことが重要です。高ストレス者の選定基準は、衛生委員会での審議により、事業者が決定します。
質問票のうち、「心身のストレス反応」が高い従業員を高ストレス者と判定するよう推奨されています。しかし、自社の組織的特徴や業種の特性などを加味して決定することが必要です。
関連記事:ストレスチェックの結果はどう見ればいい?見方と活用方法を解説
集団分析
ストレスチェック結果を部署ごとに分析し、職場環境の改善に生かす集団分析を行います。客観的な視点から環境の改善点をあぶり出し、従業員が働きやすい環境作りに生かすことが目的です。
関連記事:ストレスチェックの集団分析とは?分析や判定図について解説!
ステップ④:高ストレス者の面接指導
高ストレス者と判定された従業員から、面接指導の申出があれば、速やかに面接指導の設定が必要です。申出から1か月以内に行うことが推奨されています(厚生労働省ストレスチェック導入マニュアルより)。
面接指導後は、働く上で必要な配慮や措置について、医師の意見を聞き、必要な措置を行います。例えば、長時間労働がメンタルヘルス不調を引き起こしていると判断された場合、業務量の配慮や配置転換などの配慮が必要です。
さらに、面接指導の結果は5年間の保存が義務付けられています(労働安全衛生規則第52条の1)。指導結果をもとに、記録を作成し保存しておく必要があります。
ステップ⑤:労働基準監督署への報告
ストレスチェックの実施は、所管の労働基準監督署への報告が義務付けられています。義務を怠ると、最大で50万円の罰金が課せられる場合があるので、忘れずに報告することが大切です。
なお、年1回の実施に加えて、独自に実施しているストレスチェックがある場合は、報告を行わなくても義務違反にはなりません。
まとめ:ストレスチェックを正しく実施しましょう
ストレスチェックは、関連する法令や実施フローが複雑であり、企業担当者にとっては何を行えば良いか分かりにくいといえます。本記事で紹介した実施フローを参考に、具体的な実務に取り組んでいきましょう。