隠れ貧血が仕事の不調の原因?集中力低下・だるさを改善する対策

この記事のポイント
- 健康診断では見つかりにくい「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)」の正体と、セルフケア・チェック方法を解説します。
- 隠れ貧血が、出社はしているが生産性が低い状態「プレゼンティーズム」の原因であることを説明します。
- 食事や栄養の工夫による具体的な改善策と企業ができる健康経営の取り組みを紹介します。
「健康診断の血液検査は、いつも異常なし」
「病気じゃないはずなのに、なぜか常にだるくて仕事に集中できない」
原因不明の不調につらい思いをしていませんか。
つらい不調の正体は、もしかしたら血液検査の一般的な項目では見つかりにくい「隠れ貧血」かもしれません。
この記事では、多くのビジネスパーソン、とくに女性を悩ませる「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)」について、サインや原因、明日からできる対策を解説します。
原因不明の不調が改善できることを知り、失われたエネルギーを取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
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目次
その不調、隠れ貧血かも?まずは5秒でセルフチェック
隠れ貧血の症状は多岐にわたります。まずはご自身の状態を知るために、隠れ貧血の症状がないかチェックしてみましょう。
【隠れ貧血のセルフチェックリスト】
- □ 理由なく体がだるい、疲れやすい
- □ 仕事への集中力や意欲が続かない
- □ ささいなことでイライラしたり、気分が落ち込んだりする
- □ 朝、すっきりと起きられない(睡眠の質が悪い)
- □ 肩こりや頭痛が以前よりひどくなった
- □ 抜け毛が増えたり、肌が荒れたりする
- □ 爪が割れやすい、スプーンのように反り返る
以上のうち、3つ以上当てはまるものがあれば、隠れ貧血かもしれません。
3つ以上に当てはまらない場合でも、症状がつらく生活や仕事に支障が生じているなら、医療機関を受診することが大切です。
※隠れ貧血のセルフチェックリストは、貧血などの諸症状をもとにSUGARがオリジナルで作成したものです。そのため、科学的根拠に基づくチェックリストではないことにご留意ください。
隠れ貧血とは?通常の貧血との決定的な違い
「隠れ貧血」は、一般的な健康診断で指摘される「貧血」とは似て非なる状態です。血液中のヘモグロビン値は正常でも、体内に貯蔵されている鉄分(フェリチン)が枯渇している状態を指します。
例えるなら、財布の中にお金はあっても、銀行預金がゼロになっているようなものです。
参考:日本内科学会雑誌「鉄代謝と鉄欠乏性貧血 ―最近の知見」
参考:厚生労働省「女性の健康と栄養について 隠れ貧血の問題」
隠れ貧血を理解する3つのポイント
隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)とは
| トピック | 内容 |
|---|---|
| ①「鉄の貯金」の枯渇 | ヘモグロビン値は正常でも、体内の貯蔵鉄が尽きかけている状態。 |
| ②指標は「フェリチン」 | 貯蔵鉄の状態は「フェリチン」という項目で測定され、通常の健康診断では測られない。 |
| ③女性に多い原因 | 月経や妊娠・出産などで、男性よりも鉄の貯金を失いやすい。 |
ヘモグロビンは正常でも「鉄の貯金」はゼロの状態
一般的な健康診断で測定される「貧血」は、ヘモグロビン(Hb)の値を基準に判断されます。
一方、「隠れ貧血」はヘモグロビン値は正常範囲内ですが、体内に貯蔵されている「鉄分」がすでに枯渇しかけている状態です。
ヘモグロビンを作るための材料が底をつきかけているため、本格的な貧血になる一歩手前といえます。
体の鉄分貯蔵庫を示す指標「フェリチン」とは?
体内の「鉄の貯金」の状態を示すのが、「フェリチン」という血液検査の項目です。
隠れ貧血は、フェリチン値が基準値を下回っている状態で、医療機関で詳しい検査を受けなければ見つかりません。
学会や検査機関によって基準は異なりますが、一般的に血清フェリチン値が12ng/mL未満の場合、体内の貯蔵鉄が枯渇している状態(隠れ貧血)が強く疑われます。
ただし、フェリチンは体内に炎症がある場合にも数値が上昇する性質(急性期反応性タンパク質)があるため、単独の数値だけで判断が難しいケースもあります。そのため、医療機関では多くの場合、炎症の有無を示す指標(CRPなど)とあわせて総合的に診断します。
なぜ女性は隠れ貧血になりやすいのか?
特に女性は、男性に比べて隠れ貧血に陥りやすい傾向があります。日本女性の約4割が鉄欠乏性貧血もしくは隠れ貧血といわれています。
月経による定期的な出血や妊娠・出産によって、意識しないうちに「貯蔵鉄」を大量に消費してしまうためです。過多月経を引き起こす子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科系の疾患が背景に隠れている場合も少なくありません。
また、過度な食事制限によるダイエットも鉄分摂取不足の原因となります。さらに、男女を問わず、胃潰瘍や痔、あるいは消化管のがんなどの自分では気づきにくい慢性的な出血が原因となっている可能性もあり、注意が必要です。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」
参考:働く女性の心とからだの応援サイト「貧血・かくれ貧血 | 女性特有の健康課題」
プレゼンティーズムの正体?仕事のパフォーマンスを奪う隠れ貧血の症状
隠れ貧血は、ビジネスパーソンにとって最も重要な「仕事のパフォーマンス」を静かに、しかし確実に奪っていきます。
この状態は、欠勤はしていないものの、不調により生産性が低下している「プレゼンティーズム」の大きな原因の一つと考えられています。
隠れ貧血が奪う3つのパフォーマンス
隠れ貧血がもたらす影響
| 影響 | 具体的な症状 |
|---|---|
| ①思考力を奪う | 集中力低下、物忘れ、判断ミスなど、知的生産性が著しく低下する。 |
| ②意欲を削ぐ | 倦怠感、無気力、気分の落ち込みなど、メンタル面の不調を引き起こす。 |
| ③見た目に現れる | 肌荒れ、抜け毛、目の下のクマなど、セルフケアでは改善しにくいサインが出る。 |
思考力を奪う症状:集中力低下、物忘れ、判断ミス
脳は、体の中で最も多くの酸素を消費する臓器の一つです。
鉄不足によって脳への酸素供給が滞ると、集中力や思考力が著しく低下します。
「重要な会議で頭が働かない」「簡単なミスを連発する」といった事態は、隠れ貧血が引き起こしている可能性があります。
意欲を削ぐ症状:倦怠感、無気力、気分の落ち込み
原因不明の倦怠感や気力の低下は、精神的なストレスを増大させます。
症状がうつ病と似ているためメンタルヘルスの問題と誤解され、根本的な原因が見過ごされることも少なくありません。
見た目にも現れる症状:肌荒れ、抜け毛、目の下のクマ
鉄分は、コラーゲンの生成や皮膚の新陳代謝にも深く関わっています。
そのため、鉄不足は肌荒れや抜け毛、爪の異常、目の下のクマなどの外見上のサインとしても現れることがあります。
隠れ貧血を改善し、仕事のパフォーマンスを取り戻す3つの対策
隠れ貧血は、適切な対策を講じれば改善が見込める状態です。失われたパフォーマンスを取り戻すための、3つの具体的なアクションを紹介します。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」
隠れ貧血 改善のための3つの対策
隠れ貧血への対策
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| ①食事によるセルフケア | 吸収率の高い「ヘム鉄」を意識し、「鉄の貯金」を増やす。 |
| ②栄養素の組み合わせ | ビタミンCやたんぱく質をセットで摂取し、鉄の吸収率を高める。 |
| ③専門家への相談 | 自己判断でのサプリメント摂取は危険。必ず医療機関で正確な診断を受ける。 |
対策① 食事で「鉄の貯金」を増やす(ヘム鉄・非ヘム鉄)
基本となるのは、日々の食事です。
吸収率の高い「ヘム鉄」(レバー、赤身の肉など)と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」(ほうれん草、大豆製品など)をバランス良く食事に取り入れることが鍵となります。
対策② 鉄の吸収を助ける栄養素をセットで摂る
鉄分は吸収を助ける栄養素と一緒に摂ることで、体内での利用効率が格段にアップします。
吸収を助ける栄養素として、ビタミンC(ピーマン、柑橘類など)や、たんぱく質(肉、魚、卵など)が挙げられます。
食事の際には、「赤身肉に合わせて、デザートとして柑橘類を食べる」などと組み合わせるのが効果的です。
対策③ それでも改善しない場合は医療機関や専門家へ相談!専門家への相談が必須な理由(鉄過剰のリスク)
セルフケアを続けても不調が改善しない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
鉄は、不足しても過剰でも体に不調をきたすミネラルです。不足すれば貧血症状につながりますが、過剰に摂取された鉄は体内で活性酸素の発生を促します。細胞を傷つけて肝臓に負担をかけるなど、健康被害のリスクとなることが知られています。
そのため、「不調が全く改善しない原因は鉄分不足が続いているから。サプリで継続して補おう」という自己判断は危険です。
不調の根本原因を明らかにしてご自身の体に必要な鉄分の量を把握するためにも、まずは医師に相談することが不可欠です。
内科や婦人科で「フェリチン値」を測定してもらい、正確な診断を受けることが確実です。
参考:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「ヘモクロマトーシスの実態調査と診断基準作成」
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」
参考:独立行政法人国民生活センター「海外事業者の鉄サプリメントの長期使用により鉄過剰症を発症」
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【企業向け】従業員の不調は経営課題。健康経営として取り組む隠れ貧血対策
従業員の隠れ貧血は、個人の問題であると同時に、企業の生産性に直結する経営課題です。
企業ができる隠れ貧血対策
企業が取り組むべきこと
| トピック | 内容 |
|---|---|
| ①「見えないコスト」の認識 | プレゼンティーイズムによる生産性低下は、企業の経営に直接的な損失を与える。 |
| ②具体的な支援策 | 健康リテラシー向上のための研修や栄養相談窓口の設置が有効。 |
| ③全体像の理解 | より深刻な貧血に進む前に、ピラー記事で全体像を把握する。 |
見えないコスト「プレゼンティーズム」による生産性低下のリスク
従業員の「原因不明の不調」を放置することは、見えないコスト「プレゼンティーズム」を増大させます。
経済産業省のレポートでも、健康経営に取り組む上での大きな課題として、プレゼンティーズムによる生産性の損失が指摘されています。
参考:厚生労働科学研究成果データベース「プレゼンティーイズムの生産性への影響と賃金損失の推定」
企業ができる具体的な支援(健康リテラシー向上セミナー、栄養相談窓口の設置)
企業ができる具体的な支援としては、以下の3つが挙げられます。
- 健康リテラシー向上のためのセミナー実施
- 専門家へ匿名で相談できる窓口の設置
- 社員食堂での鉄分豊富なメニューの提供
保健師や看護師、産業医などが中心となって潜在的な不調の早期発見と改善を促すマネジメントも重要です。
貧血による症状から、業務に支障が出てしまっている場合は、就業制限や配慮が必要な場合もあります。
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より深刻な貧血に進む前に。まずは全体像の理解を
より深刻な貧血に進む前に問題の全体像を把握したい方は、こちらの記事も併せてご参照ください。
企業としての対策を考える上でも、全体像の理解は不可欠です。
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まとめ:原因不明の不調と諦めず、積極的なケアで仕事の活力を取り戻そう
原因不明の倦怠感や集中力の低下は、能力や意欲の問題ではなく、隠れ貧血のサインかもしれません。
「隠れ貧血」は、フェリチン値の測定や医師の診断のもと行う治療、食事療法で改善可能です。
まずはご自身の体が発している小さなサインに気づき、セルフケアから始めてみてください。
そして、企業が健康経営の一環として隠れ貧血の改善に取り組めば、従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すことにつながります。
その上で、貧血の対策などでお困りの場合には、SUGARへお気軽にお問い合わせください。
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隠れ貧血かどうかは、会社の健康診断で分かりますか?
いいえ、一般的な企業の健康診断では分からないことが多いです。隠れ貧血の診断には、体内の貯蔵鉄量を反映する「フェリチン」という項目を測定する必要がありますが、これは通常の血液検査には含まれていないことがほとんどです。気になる症状がある場合は、医療機関で「フェリチン値も調べてほしい」と相談することをおすすめします。
鉄分のサプリメントを自分で買って飲んでも良いですか?
自己判断でのサプリメント摂取は、鉄分の過剰摂取による肝機能障害などのリスクがあるため非常に危険です。特に、貧血の原因が鉄不足でない場合に鉄サプリを摂取すると、他の病気の発見を遅らせる可能性もあります。必ず医療機関で正確な診断を受け、医師の指導のもとで適切な治療(食事療法、鉄剤の内服など)を開始してください。
隠れ貧血は、放置するとどうなりますか?
隠れ貧血を放置すると、体内の鉄の貯金が完全に尽きてしまい、血液中のヘモグロビンも作れなくなって、本格的な「鉄欠乏性貧血」に移行します。そうなると、倦怠感や集中力低下といった症状がさらに悪化し、日常生活や仕事に深刻な支障をきたすようになります。また、原因不明の不調による精神的ストレスも増大するため、早期発見・早期対策が非常に重要です。
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