産業医面談とは?目的や内容、企業の義務まで徹底解説【産業医監修】

産業医面談とは?目的や内容、企業の義務まで徹底解説【産業医監修】

この記事のポイント

  1. 産業医面談とは、従業員の心身の健康を確認し、安全に働けるよう支援する面談です。
  2. 長時間労働者や高ストレス者などが主な対象となり、法律で企業の実施義務が定められています。
  3. 産業医には厳格な守秘義務があり、相談内容が本人の同意なく会社に共有されることはありません。

導入

「会社から産業医面談の案内が来たけれど、何を話せばいいのだろう?」「面談で話した内容が、評価に影響しないか心配…」

産業医面談と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。しかし、産業医面談は、従業員が心身ともに健康で働き続けるための重要なサポート制度です。

この記事では、産業医面談の基本的な目的から、対象となるケース、面談の具体的な流れ、そして企業に課せられた法的義務まで、全体像を網羅的に解説します。

この記事を読めば、産業医面談をご自身や従業員の健康を守るための心強い機会として活用できるようになるでしょう。

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産業医面談とは?従業員と企業を守るための専門的な対話

産業医面談が従業員と企業の双方にメリットをもたらすことを示す図

産業医面談とは、産業医が従業員の心身の健康状態を把握し、専門的な助言を行う個別面談です。面談を行う産業医は、労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場などで選任が義務付けられている、労働者の健康管理等を行う医師のことです。

産業医面談は、単に体調を確認する場ではありません。従業員と企業の双方を守るための、専門的な対話の機会です。

主な目的は「健康障害の予防」「職場環境の改善」「安全配慮義務の履行」の3点に集約されます。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」

産業医面談の3つの目的

産業医面談の3つの目的

目的 具体的な内容
①健康障害の未然防止(予防) 長時間労働や強いストレスが原因で起こる、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調といった健康障害を未然に防ぎます。
②職場環境の改善 個々の面談を通じて、特定の部署の業務負荷など職場に潜む構造的な課題を把握し、より働きやすい環境への改善につなげます。
③企業の安全配慮義務の履行 企業が従業員の健康と安全に配慮する法的義務を、具体的に果たすための重要な手段となります。

産業医面談の目的の詳細

産業医面談は、法律に基づき、従業員と企業の双方にメリットをもたらすことを目的として設計された制度です。

健康障害の未然防止(予防)に重点を置くことが特徴です。近年、社会問題化しているメンタルヘルス不調や過労といった事態を避けるため、専門家が早期に介入し、従業員の心と身体のケアを行います。

また、面談から得られた情報は、個人が特定されない形で集約・分析され、職場全体の環境改善へとつなげられることもあります。

産業医面談から把握した情報をリスク管理に生かすことは、企業が従業員に対して負う「安全配慮義務」を果たす上で重要です。

産業医の役割と中立性

産業医は企業に所属しつつも、専門家として独立した立場を保ちます。特定の従業員や会社の味方をするのではなく、あくまで中立的な立場から、医学的知見にもとづき従業員の健康と企業の健全な運営を支援することが特徴です

そのため、産業医には医師として課せられる一般的な守秘義務に加え、労働安全衛生法においても厳しい守秘義務が定められています。

面談で話されたデリケートな情報が、本人の明確な同意なく上司や人事部に共有されることは原則としてありません。

参考:e-Gov法令検索「医師法第19条」

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産業医面談の対象となる5つの主なケースと法的根拠

産業医面談の対象となる主要な5つのケース

産業医面談は、主に5つのケースで実施されます。

とくに「長時間労働」と「ストレスチェック」については労働安全衛生法で企業の実施義務が定められており、残りのケースも従業員の健康を守る上で重要な機会となります。

産業医面談がどのような時に行われるのか、具体的な5つのケースを見ていきましょう。

産業医面談を実施する主なケース

産業医面談を実施する主なケース

面談ケース 法的根拠 主な目的
①長時間労働 義務(労働安全衛生法) 脳・心臓疾患、メンタルヘルス不調の予防
②ストレスチェック後 義務(労働安全衛生法) メンタルヘルス不調の早期発見・介入
③健康診断後 努力義務(※) 生活習慣病の重症化予防、治療と仕事の両立支援
④休職・復職時 安全配慮義務 円滑な職場復帰と再発防止の支援
⑤本人からの希望 安全配慮義務 心身の不調や職場に関する悩みへの個別相談

※ただし、健康診断に異常があるものについては、産業医面談とは別に、医師や産業医などの意見を聴取することは義務

1.長時間労働が認められる場合

労働安全衛生法第66条の8にもとづき、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合、企業は面談(面接指導)を実施する義務があります。

特に、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度対象者などは、時間外・休日労働が月100時間を超えた場合、本人の申し出がなくても企業は面談を実施しなければなりません。

参考:厚生労働省「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」

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2.ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された場合

年に1回以上の実施が義務付けられているストレスチェックで、「高ストレス者」と判定された従業員が希望した場合、企業は面談を設定する義務があります。

ただし、企業側から面談を強制することはできず、希望しない場合は面談を受ける必要はありません。

参考:厚生労働省「医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル」

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3.健康診断で「異常の所見」があった場合

定期健康診断の結果、血圧や血糖値などに異常の所見があった従業員に対して行う面談です。産業医が就業を継続する上で問題がないか現状を確認したり、必要な保健指導を行ったりするために面談が実施されます。

労働安全衛生法では、異常所見のあった従業員について、健康保持に必要な措置について医師の意見を聴くことが「企業の義務」と定められています。

その上で、結果をもとに必要に応じて保健指導を行うことは「努力義務」とされています。

参考:厚生労働省「健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう」

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

4.休職・復職を検討している場合

病気や怪我で休職に入る前や、休職から職場復帰する際に、その可否を専門的見地から判断するために面談が行われます。

とくに復職時の面談は、主治医の診断書だけでは判断できない職場への適応能力を見極め、円滑な職場復帰を支援する上で非常に重要です。

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5.従業員本人が希望した場合

以上のケースに当てはまらなくても、従業員が自身の心身の不調や職場環境に関する悩みについて、以下のような事項を踏まえて自ら産業医との面談を希望することも可能なことが多いです。

  • メンタル不調を含めた心身の不調
  • ハラスメント
  • 治療・看護・介護・妊娠・出産・育児・家庭などと就業との両立支援
  • キャリアを含めたプライベートな悩み など

産業医面談は、考え方によっては企業に所属している従業員の特権であり、福利厚生の一つのいう見方もできます。

そのため、心身の不調など健康面以外でも、誰かに話したいけれどなかなか話したり相談したりできないことがあれば、守秘義務のある産業医面談で相談してみてください。

「面談で何を話せばいいか分からない」と感じる方は、こちらの記事もご覧ください。

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産業医面談の一般的な流れと進め方

産業医面談は、対象者の特定に始まり、日程調整、面談の実施、産業医からの意見書提出、そして会社による事後措置という5つのステップで計画的に進められます。

なお、すべてのプロセスで従業員のプライバシー保護が最優先されます。

一般的な産業医面談において、具体的には以下のような流れで進められます。

産業医面談の流れ

産業医面談の流れ

会社による対象者の特定と案内

人事労務担当者が長時間労働やストレスチェックの結果などの情報から対象者を把握し、他の従業員に知られないよう配慮しながら個別に面談を案内します。従業員から面談の同意を得た上で、面談に必要な情報を収集します。

日程と場所の調整

従業員の業務都合を考慮して日程を調整します。場所は会話の内容が外部に漏れないよう、プライバシーが確保された会議室などが用いられます。近年では、在宅勤務者も利用しやすいオンラインでの実施も増えています。決定した日程や場所は従業員と産業医、同席者に案内します。

産業医による面談の実施

原則として産業医と従業員の1対1で行われます。業務の状況、心身の自覚症状、睡眠などの生活習慣についてヒアリングが行われ、時間は通常20分から30分程度です。

産業医から会社への意見作成・提出

面談後、産業医は従業員の健康を守るために必要な配慮(就業上の措置)について意見書を作成し、会社に提出します。この際、本人の同意なく診断名などが記載されることはありません。産業医から提出された意見書をもとに、企業が従業員に対する配慮の要否を確認します。

会社による事後措置とフォローアップ

会社は産業医の意見を尊重し、時間外労働の制限や業務内容の変更といった具体的な措置を検討・実施します。措置の実施後も、状況に変化がないか継続的にフォローアップします。

面談を打診された際の対応に迷う場合は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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企業と従業員双方にとってのメリット

産業医面談は、企業には「リスク管理と生産性向上」、従業員には「健康維持と安心感の醸成」というメリットがあります。

従業員のウェルビーイングが企業の成長に直結するという、まさにWin-Winの関係を築くための重要な仕組みです。

産業医面談がもたらす企業と従業員のWin-Winの関係
産業医面談のメリット

産業医面談のメリット

対象者 メリット 具体例
企業側 法的リスクの低減 安全配慮義務を履行し、労災リスクを低減する。
生産性の向上 従業員の不調による生産性低下(プレゼンティーイズム)や休職を防ぐ。
人材の定着 健康経営の推進により、エンゲージメントを高め離職率を低下させる。
従業員側 健康問題の早期発見・対処 専門家である産業医に無料で健康相談ができ、不調の早期発見につながる。
プライバシーの保護 守秘義務が守られた環境で、デリケートな悩みも安心して相談できる。
職場環境への働きかけ 個人では声を上げにくい問題も、専門家を通じて改善を働きかけることが可能。

企業側のメリット

企業にとって、産業医面談は単なるコストではなく、未来への戦略的投資です。従業員のメンタルヘルス不調による休職や離職は、企業にとって大きな損失となります。

産業医面談による早期介入は、メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、人材定着を促します。また、従業員の健康を守る姿勢は健康経営推進につながり、企業の社会的評価やブランドイメージの向上にも貢献するでしょう。

従業員側のメリット

従業員にとっては、専門家である産業医に無料で健康相談ができる点です。通常であれば医療機関を探し、費用を払って受ける専門的なアドバイスを、企業の制度として受けられます。

守秘義務が守られた安全な環境で、上司や同僚には話しにくい心身の悩みや職場環境の問題を相談できることは、大きな安心感につながります。

一人で問題を抱え込むことなく、産業医面談が相談できる場所として機能します。

まとめ:産業医面談は健康に働くための権利でありパートナー

産業医面談は、健康に働き続けるためにすべての従業員に与えられた権利です。もし面談の機会があれば、ご自身の心と身体を見つめ直す絶好の機会と捉えましょう。

一人で抱え込まず、専門家というパートナーを積極的に活用してみてください。

合同会社SUGARでは、休職・復職面談や高ストレス者面談など、医師の面談が必要となった場合にスポット相談を提供しています。お気軽にお問い合わせください。

  1. 産業医面談はどのような人が対象になりますか?

    主に、月80時間以上の長時間労働者、ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された方、健康診断で異常所見があった方が対象です。また、心身の不調を理由に本人から希望があった場合や、休職・復職の際にも実施されます。

  2. 産業医面談で話した内容は会社に報告されますか?

    いいえ、原則として報告されません。産業医には厳格な守秘義務があり、本人の同意なく個別の健康情報や相談内容を会社に伝えることは法律で禁じられています。会社へは、業務上必要な配慮(例:時間外労働の制限)に関する意見のみが伝えられます。

  3. 産業医面談は拒否できますか?

    本人の申し出が要件となっている場合(高ストレス者面談など)は拒否できます。ただし、長時間労働者の面談など会社の義務となっているものや、安全配慮義務の観点から業務命令として実施される場合もあります。まずは面談の目的をよく確認することが重要です。

  4. 産業医面談の費用は誰が負担しますか?

    費用はすべて会社が負担します。労働安全衛生法に基づく会社の義務の一環であるため、従業員に費用が請求されることはありません。また、面談は原則として勤務時間内に行われ、その間の賃金も支払われます。

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