【10個の質問で性格診断】ビッグファイブ理論を組織に生かす方法
職場の人間関係を見直しながら、組織の生産性を高めたいとお考えではありませんか。
ビッグファイブ理論は現在の科学領域で信頼性のある性格診断のもとになっており、性格を客観視するための有力なツールです。
個々の性格特性を明確に把握すると、適切なマネジメント方法を見つけたり、強みと弱みを効果的に生かせたりできるかもしれません。
本記事では、ビッグファイブ理論の特徴や活用法、メリットとデメリット、さらに実際の性格特性チェックの方法も解説します。
部下の性格をより深く理解し、生産性を高める具体的なアクションを取るために、ぜひ参考にしてみてください。
ビッグファイブ理論の特徴
ビッグファイブ理論は、心理学における性格の5つの主要な特性を示すモデルです。
これらの特性は、多くの研究によって、人々の性格を理解するための信頼性の高い方法として確立されています。
以下に、5つの因子の特徴を箇条書きにしました。
外向性(Extraversion)
- 社交的:エネルギッシュな活動に引かれる傾向があり、他人との関わりを好む
- 積極的:新しい経験や活動に対して積極的に取り組む
- 自己主張:自分の意見や考えをはっきりと表現する
協調性(Agreeableness)
- 親切:他人に対して親切で思いやりがある
- 同情的:他人の感情や状況に対して共感しやすい
- 協力的:チームワークを重視し、他人と協力して物事を進める
誠実性(Conscientiousness)
- 責任感:自分の行動や言動に対して責任を持ち、計画性がある
- 注意深い:細部に注意を払い、慎重に行動する
- 自己制御:感情や衝動をコントロールし、冷静に対処する
神経症傾向(Neuroticism)
- 不安や心配:気分の浮き沈みが激しく、ストレスに対する耐性が低い
- 否定的な感情:怒り、悲しみ、嫉妬、罪悪感などの否定的な感情を頻繁に経験する
- 自己意識過剰:他人の評価や意見に敏感で、自分に対して厳しい
開放性(Openness)
- 好奇心旺盛:新しい経験や知識に対して強い興味を持つ
- 創造的:独創的なアイデアや未知の領域に挑戦することを楽しむ
- 柔軟性:新しい考え方や価値観を受け入れることができる
ビッグファイブ理論3つの活用法
ビッグファイブの特性は、個人の性格や行動の理解に利用でき、職場でのコミュニケーションの活性化やチームワーク向上に効果があります。
具体的な活用法をそれぞれ説明します。
活用法①:自己理解
自分の特性を知ることは、自己成長に役立ちます。
自分の強みや弱みを把握できれば、自己成長の方向性を見つけられるからです。
ビッグファイブの特性を知ることで、自分の性格や行動傾向を理解し、自分に合った適切なアクションができるでしょう。
たとえば、神経症傾向が高い場合、ストレス管理や感情のコントロールが自分の行動にプラスになると気づくかもしれません。
活用法②:人間関係の改善
他人の特性を理解できるようになると、コミュニケーションの質が向上します。
ビッグファイブの5つの特性を理解すれば、他人とのコミュニケーションや対人関係を改善できるきっかけになるでしょう。
たとえば、外向性が低い人は独立的である可能性が高いため、 一人で仕事をするのが得意なことが多く、その人が集中できるようなコミュニケーションの仕方を心がけるのがおすすめです。
他人の特性を知り、さらなる良好な人間関係構築につなげてみてください。
活用法③:チームビルディング
チームメンバーそれぞれの特性を理解すれば、チームパフォーマンスの向上が期待できます。
メンバーの特性を知って、役割分担や協力体制を最適化することで、チーム作業の効率を高められるでしょう。
そのためには、 特定のビッグファイブ特性を持つ人を採用するだけでなく、チームメンバーのバランスが重要です。
たとえば、外向性や開放性が高いメンバーだけで構成されたチームでは、意見が多すぎてまとまりがなくなる可能性があります。その場合、誠実性や協調性が高いメンバーを加えることで、意見の調整やプロジェクトの実行がスムーズに進むでしょう。
以上の活用法は、ビッグファイブ理論を実践する際の一助となります。
関連記事:チームビルディングとは?定義や目的、会社が取り組む意義を解説
部下のビッグファイブを知るメリットとデメリット
部下のビッグファイブを把握するメリットとデメリットは、以下のとおりです。
ビッグファイブのメリット
メリット①:採用活動
一つめは、 適性に応じたポジション選定が可能な点です。
外向性が高い人は営業に、調和性が高い人はチームワークが求められるポジションに適しています。
ビッグファイブの評価を活用すると、採用した人材の適材適所の配置が実現できるでしょう。
メリット②:マネジメント
二つめは、部下の特性に基づいた管理ができる点です。誠実性が高い人は計画的に仕事を進める傾向があり、外向性が高い人はコミュニケーションスキルに優れているため、チームの士気を高める役割を担えます。
部下それぞれの特性を理解すると、より効果的なマネジメントが可能です。
メリット③:相性診断
三つめは、パートナー選びやチーム編成に役立つ点です。ビッグファイブの評価を生かせば、ビジネスパートナーの選定やプロジェクトチームの編成時に、より効果的な組み合わせを見つけられます。
たとえば、調和性が高い人と外向性が高い人を組み合わせることで、円滑なコミュニケーションと強固な協力体制が期待できるでしょう。
ビッグファイブのデメリット
デメリット①:単一因子に依存していない
ビッグファイブ理論は、人間の性格を5つの主要な因子で捉えます。しかし、各因子が独立して存在するわけではなく、これらが複雑に組み合わさって個人の性格を形成しています。
そのため、1つの因子だけに注目すると、他の因子との関連性や影響を見落とすかもしれません。個人の性格を正確に理解するには、複数の因子の組み合わせを考慮する必要があります。
デメリット②:特定の特性の優越性はない
ビッグファイブの各因子には、それぞれ高低がありますが、これが必ずしも「良い」や「悪い」と直結するわけではありません。
たとえば、高い外向性は社交的であることを示しますが、状況によっては内向性が有利になる場合もあるでしょう。
つまり、どの因子が優れているかを一概に決めることはできず、全体的なバランスを考慮する必要があります。個々の因子の高さや低さを評価するだけでなく、総合的な視点で性格を理解することが重要です。
日本語版ビッグファイブとは
日本語版ビッグファイブと言われる「TIPIーJ」は、たった10個の項目でビッグファイブの代替えができます。ビッグファイブ理論による性格特性を測定するのに活用されるのが「NEOーPIーR」です。ただし、質問項目が多く、実施に30〜40分ほどを要します。
短縮版のTIPIーJなら、5〜10分程度で簡易的に性格傾向を把握できるため、職場においても取り入れやすいでしょう。簡単に実施できるTIPIーJについて紹介しますので、性格傾向をチェックしてみましょう。
簡易版ビッグファイブといえるTIPIーJ
「TIPIーJ」は、ビッグファイブの5因子に対してそれぞれ2項目ずつの質問の合計10項目で構成されています。「簡易版ビッグファイブ」ともいえる「TIPIーJ」は、パーソナリティ研究の論文として発表されたものです。実際に「TIPIーJ」を使って性格の特性をチェックしてみましょう。
実施に当たっては、原著論文や尺度使用マニュアルを参考にして行ってみてください。
*メモ用紙と筆記用具の準備をお願いします(電卓もあれば)。
10分ほどで各因子の得点がわかります。
下の枠内の1〜7の数字でもっとも適切なものを各項目のカッコ内に記入してください。
全く違うと思う | おおよそ違うと思う | 少し違うと思う | どちらでもない | 少しそう思う | まあまあそう思う | 強くそう思う |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
私は自分自身のことを…
項目1 | ( ) 活発で外交的だと思う |
項目2 | ( ) 他人に不満をもち、もめごとを起こしやすいと思う |
項目3 | ( ) しっかりしていて、自分に厳しいと思う |
項目4 | ( ) 心配性で、うろたえやすいと思う |
項目5 | ( ) 新しいことが好きで、変わった考えをもつと思う |
項目6 | ( ) ひかえめで、おとなしいと思う |
項目7 | ( ) 人に気をつかう、やさしい人間だと思う |
項目8 | ( ) だらしなく、うっかりしていると思う |
項目9 | ( ) 冷静で、気分が安定していると思う |
項目10 | ( ) 発想力に欠けた、平凡な人間だと思う |
出典:日本語版 Ten Item Personality Inventory(TIPI−J)作成の試み 小塩真司・阿部晋吾・カトロ−ニ ピノ (2012). パ−ソナリティ研究, 21, 40−52をもとにSUGARで一部改変
文章全体を総合的に見て、自分にどれだけ当てはまるかを評価してみてください。得点化の方法は以下のとおりです。
得点化の方法 外向性 = (項目1 + (8 – 項目6))/2協調性 = ((8 – 項目2) + 項目7)/2勤勉性(誠実性) = (項目3 + (8 – 項目8))/2神経症傾向 = (項目4 + (8 – 項目9))/2開放性 = (項目5 + (8 – 項目 10))/2 |
出典:尺度使用マニュアル <尺度名> 日本語版 Ten Item Personality Inventory (TIPI−J) <測定概念> Big FiveをSUGARで一部改変
ビッグファイブの強さと弱さによる部下のマネジメント方法
ビッグファイブは「5つの因子の強弱」という視点からも、部下のマネジメントに生活かすことができます。
①外向性
「外向性」のスコアが高い人には、プロジェクトやプレゼンテーションの機会を与え、コミュニケーションのバランスを取るよう指導するのが有効です。
一方、外向性のスコアが低い人(内向的な人)には、こちらから話し合うきっかけをつくると関係性が良好に保てるでしょう。
②協調性
「協調性」のスコアが高い人は優れた共感力の持ち主で、周囲からも信頼されます。このタイプの部下は、プロジェクトの担当リーダーに適しているといえるでしょう。
一方、協調性のスコアが低い人は、理詰めで素早く物事を判断する能力を備えており、仕事力が高い場合は、カリスマ性のあるリーダーになる可能性を秘めています。
③誠実性
「誠実性」のスコアが高い人は、長期的な計画をたてて遂行するのも得意なため、公私とも安定感があり信頼される存在となり得ます。
一方、誠実性のスコアが低いと衝動的な部分が見られると同時に、行動力も兼ね備えているため、新規開拓や新規事業に力を発揮してもらうのもよいでしょう。
④神経症傾向
「神経症傾向」のスコアが高い人には、安定したサポートを提供し、ストレスマネジメントの技術を教え、ポジティブなフィードバックを多用するのが効果的です。
一方、神経症傾向のスコアが低い人は、物事に動じず冷静な判断ができるためタフな状況に頼もしい部下といえます。そのため、変革が必要なプロジェクトのリーダーに抜擢されると、仕事にやりがいを感じるでしょう。
⑤ 開放性
「開放性」のスコアが高ければ、感性が刺激される創造的なもの物や芸術的なものへの関心が強くなります。新しいものを求めるタイプなので、担当の職務に適した要素が含まれているかどうか次第では、仕事がつまらなく感じるかもしれません。
一方、開放性のスコアが低いほど、安定志向で保守的な傾向が見られます。ルーティンの担当には向いていますが、適度なチャレンジを促すことも必要です。
以上のように、ビッグファイブは自社の事業成功に欠かせない因子やチームの目標達成のために優先度の高い因子を見つけるきっかけとなるでしょう。
まとめ:ビッグファイブで組織の人間関係を見直そう
ビッグファイブ理論は、自分や部下の性格を冷静に分析するために有効な手段です。
個々の特性を客観的に捉えながら、それぞれの強みや弱みを最大限に発揮して組織の発展に生かすのが理想でしょう。
日頃の何気ないコミュニケーションにおいて、パーソナリティ特性を把握することで相手を深く理解するのもおすすめです。
ビッグファイブの実践を取り入れながら、事業やチームのさらなる進化を目指してみてください。
弊社では、ビッグファイブ理論に関する研修を提供しております。性格把握のための検査、テストも行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。