メンタル不調で休職する男性の特徴は?円滑な復職支援について解説
うつ病をはじめとしたメンタルヘルス不調による休職者は、増加傾向にあります。従業員の心の健康を守り、生き生きと働ける環境を整えることは、企業にとって経営上の課題ともいえるでしょう。
本記事では、男性に焦点を当てて、メンタルヘルス不調で休職する男性の特徴や復職支援の方法について解説します。男性は女性に比べて悩みを抱えやすく、相談行動に消極的です。それゆえに、管理職やメンタルヘルス担当者にとっては、対応が難しいのではないでしょうか。
本記事は、男性が抱えやすいメンタルヘルス上の問題を具体的に理解し、適切な対処方法がわかる内容ですので、ぜひ参考にしてください。
働く男性が抱えるメンタルヘルス不調の3つの問題
男性は、働く上でどのようなメンタルヘルス上の問題を抱えやすいのでしょうか。3つの問題から解説します。
問題①:相談せずに悩みを隠してしまいやすい
男性は女性よりも、悩みを相談することを避ける傾向があります。「弱音を吐くのは男らしくない」「弱みを見せたくない」などと、弱点をさらけ出すことに抵抗がある人が多いからです。
そのため、メンタルヘルス不調の兆候がみられる場合でも、病院への受診を勧めると抵抗される可能性があります。直属の上司など密接な関係性があるほど、相談しにくいことがあるでしょう。産業医などの専門家から勧めてもらう方が、受け入れられやすい場合が多いです。
また、「最近悩んでいるの?」とストレートに聞かれると抵抗感を持たれやすいかもしれません。身体的な不調や遅刻の増加など、客観的にわかる不調のサインを糸口にして「最近体調どう?」などと気軽に関わるとよいでしょう。
問題②:飲酒や喫煙などにストレス解消を求めやすい
悩みや不満があるとき、女性は他人に話して思いを共有することでストレスを解消する傾向があります。一方で、男性は悩み自体を自分で解決しようとすることが多いでしょう。
しかし、すべての問題が解決できるわけではありません。解決困難なとき、男性は外的なものに解消を求める傾向があり、アルコールや煙草などで気分を紛らわせようとしやすいです。実際に、アルコール依存症の患者は男性の割合が多いとされています。
男性はストレスをため込み、飲酒や喫煙に頼って依存を生みやすいことが、メンタル不調でありがちなパターンといえます。
問題③:キャリアに関する焦りを感じやすい
厚生労働省の調査によると、仕事においてストレスを感じている事柄に男女差がみられます。会社の将来性にストレスを感じている割合は、全体で20.8%ですが、男性26.1%、女性14.8%と差があります。「長期的に働ける」という点を男性は重視しているといえるでしょう。
長期的に働きたいという意識を持つ男性にとっては、休職期間はキャリアパス上の障害につながり、焦りを生みやすいといえます。そのため、「休職しても以前のように働けるのか」「同期に遅れをとってしまうのではないか」という悩みを抱えやすいでしょう。
参考:厚生労働省「令和3年度労働安全衛生調査」(PDF)
男性の職場復帰支援をスムーズに進める3つのステップ
では、男性の職場復帰を支援する担当者として、どのように関われば復職をスムーズに進められるのでしょうか。休職開始の時期、復職前、復職後の3つのステップに分けて解説します。
参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
休職開始:休養に専念できるように必要な情報を伝える
従業員が医療機関を受診し、主治医による休職診断書が提出されると、休職がスタートします。企業としては、従業員が休養に専念できるよう、以下のような情報を過不足なく伝えることが求められます。
- 休職に関する社内制度や必要な手続き
- 休職中の連絡方法、担当者
- 経済的な補償制度(傷病手当金など)
- 職場復帰のプロセス(産業医面談の頻度、復職可否を判断する面談の有無とタイミングなど)
- 休職の最長期間
男性の場合、家計の収入の中心を担っていることが多いでしょう。経済的な不安があると休養に専念しにくいため、傷病手当金などの保障制度についてわかりやすく伝えておくことが重要です。
復職前:多面的な情報から復職の可否を判断する
病状が回復し、従業員から復職の希望が出されると、企業から主治医に復職できるかどうかの判断を仰ぎます。復職可能であれば、働く上でどのような配慮が必要かを具体的に記載してもらうように依頼します。
ただし、主治医による判断は、「生活リズムが整い意欲が回復してきた」と病状の回復を主とすることが多い傾向があります。職場が求める業務遂行能力とは異なる場合があるため、産業医にも確認してもらい、総合的に判断するとよいでしょう。
その他には、リワークなどの休職期間に通っていた施設や家族からの情報を収集します。さまざまな情報を集めて、産業保健スタッフが中心となり復職の可否を判断します。
復職後:復職後のフォローを欠かさない
復職が決定した後も、復職後のフォローを欠かさず行うことが大切です。メンタルヘルス不調から復職したのち、5年以内に再度病休となる割合は47.1%とされています。1回目よりも2回目の休職期間が長引く傾向もみられるため、復職後もフォローして再休職を防ぐことが重要です。
企業としては、以下のような内容を含めた職場復帰支援プランを作成し、社内で共有しながら従業員をフォローしていきます。
- 職場復帰日
- 管理監督者による就業上の配慮(業務量・内容の変更、サポート方法、残業しないなどの就業制限
- 人事労務上の対応など(配置転換や異動、時短勤務などの勤務体系の変更)
- 産業医などによる医学的見地から見た意見
- フォローアップ(就労制限や勤務体系の変更をいつまでに見直すか)
- その他:試し出勤制度を利用するかどうか、社外の相談窓口の活用
キャリアを意識する男性ほど、休職中の遅れを取り戻そうと焦ることが少なくありません。「復職後3カ月間の時間外勤務制限」「1カ月間の時短勤務」などの就業制限の配慮を取り、働きすぎを防止することが大切です。
また、周囲に相談しにくい男性従業員に対しては、個別面談の機会を定期的に設けることを決めておくのも有効です。
参考:厚生労働省「病休と復職支援に関する調査と分析」(PDF)
まとめ:休職と復職は働き方を見直す機会として関わりましょう
男性が抱えやすいメンタルヘルスの問題は、一人で抱え込みやすく、周囲に知られないまま悪化していることも少なくありません。企業として、従業員の健康を守るために不調のサインを見逃さず、適切な対策を実行することが大切です。
メンタルヘルス不調は、豊かな人生を送る上での障害となるような、ネガティブなイメージを抱かれがちです。しかし、これまでの頑張り方では無理が生じていることを知らせるサインでもあります。休職期間は働き方を振り返り、見直していく時期でもあります。
男性の復職者が抱えがちな不安や悩みを理解し、従業員が豊かに働けるよう、企業として必要なサポートを行いましょう