新入社員の気分がすぐれない?不調を予防する企業の取り組みとは
仕事や新しい環境に適応しようとするストレスから、新入社員が体調を崩してしまうことは珍しくありません。
新入社員の体調不良は単なる個人の問題にとどまらず、組織全体へ影響を及ぼす可能性があります。
そのため、新入社員の体調不良に対する適切な対応策が、企業には求められるのです。新入社員はなぜ体調を崩しやすいのか、その原因と対処法、企業が取り組むべき対策のポイントについて解説します。
新入社員に起こる環境の変化
新入社員が直面する環境変化は、新社会人だけでなく転職者にも同様におとずれます。これらの変化は、心身に大きな負担を与える場合があります。
新社会人と転職者の環境変化に対する心身の影響について、以降で具体的に説明します。
新社会人の環境変化
学業中心だった学生生活から社会人になる過程において、新社会人は大きな環境の変化を経験します。
たとえば、通い慣れた学校から会社へと活動拠点が変わり、人によっては、引っ越しによる居住環境の変化や初めての一人暮らし、ラッシュ時の長時間の通勤などにストレスを感じることもあるでしょう。
また、日中の主な活動が個人での勉強から、チームや組織で取り組む仕事へと変わります。職場では、幅広い年代の同僚や上司、顧客などと良好な人間関係を保ち、新たな信頼関係を構築しなければなりません。
このような、ライフスタイルの変化や不慣れな仕事にうまく適応できないとストレスが発生し、新社会人は心身に大きな負担を感じる可能性があります。
転職による環境変化
希望していた会社への転職は喜ばしい出来事である一方、転職者も新社会人と同様に大きな環境の変化に直面します。新しい環境への適応が心身の負担となり、ストレスを感じる場合もあります。
たとえば、組織文化や風土、職場のルールが異なるため、転職者にはまず、新しい職場の雰囲気や価値観への適応が求められます。転職先の業界や業種が異なる場合は、仕事の性質や業界特有のルールにも慣れていく必要があります。
さらに、業務内容や担当、役割、責任範囲が転職前と異なる場合は、新たなスキルや知識を身に付ける必要もあるでしょう。このように、転職者も新社会人と同じく、新たな職場環境や人間関係に適応しなければなりません。
新入社員の体調不良が職場で引き起こす問題
新入社員が体調不良になった場合、実際の職場ではどのような問題が発生するのでしょうか。
具体的な問題点について以降で説明します。
パフォーマンスの低下
体調がすぐれないまま業務につくと、集中力やモチベーションの低下による業務の遅れやミスが発生します。
個人のパフォーマンス低下は、結果的にチームや組織全体のパフォーマンスの低下につながる恐れがあります。
休職・離職
慢性的な体調不良が続いた場合、メンタル不調などを理由に新入社員が休職や離職、転職を検討する可能性があります。
新入社員の休職や離職は、企業にとって人材流出や採用コストの増加といった問題を引き起こすでしょう。
ほかのメンバーの業務量増加
新入社員が体調不良となり、パフォーマンスの低下や欠勤、休職などが発生した場合、チーム内のほかのメンバーが、新入社員分の労働力を補わなくてはなりません。
ほかのメンバーの業務量が増加することで、チーム内に過重労働や新たなストレスが発生する可能性があります。
組織の生産性低下
個人の体調不良が継続すると、業務が円滑に遂行できなくなり、業務プロセスに遅れや混乱が生じます。
チームの生産性低下は組織全体の生産性低下につながり、最終的には企業の業績や成果に大きな影響を及ぼす可能性があるでしょう。
新入社員の体調不良の原因
入社後、新入社員は生活環境や労働環境に大きな変化が生じます。
新たな環境へうまく適応できなかった場合は心身に大きな負荷がかかるため、そのストレスから適応障害という状態を引き起こす恐れがあります。
以降では、適応障害の原因や症状、治療について具体的に説明します。
適応障害とは
適応障害とは、環境の変化にうまく対応できないことがストレスとなり、心や体にさまざまな症状が現れている状態を指します。ストレスの原因が明らかであることが特徴です。
適応障害の症状
適応障害の症状は、憂うつな気分や抑うつ、不安感、胃痛、食欲不振、頭痛、めまい、不眠などさまざまです。学業や仕事、対人関係、社会生活に支障をきたします。
適応障害の治療
ストレス源から距離を置き、まずはメンタル不調を回復させます。薬物療法が必要な場合もありますが、精神療法や心理療法などのカウンセリングによる治療が優先です。
企業が取り組む新入社員へのサポート
新入社員が職場環境に適応し、心身共に健康な状態で業務に取り組めるよう、企業はさまざまなサポートに取り組む必要があります。
研修や教育制度の拡充
新入社員は不慣れな環境で、悩みや不安、孤立感を抱きやすい状況にあります。新たな職場にうまく適応できるよう、教育や研修で不調の対応方法などを教育したり、サポート体制を整備して個人ごとに適したサポートができる仕組みづくりをしたりすることが必要です。
①新入社員研修
新卒の新入社員に対しては、学生から社会人へ立場が変わったという意識づけが大切です。そして、企業文化や組織風土の理解、仕事やコミュニケーションスキルの獲得、キャリア開発支援、ワークライフバランスなどの内容を含めた、新入社員研修を実施します。
業務に必要なスキルやマナー、コミュニケーション能力を向上させることで、新たな環境への適応が円滑に進むようサポートを行います。
②メンター制の導入
新入社員に経験豊富な先輩社員をサポート役につけたり、管理者や上長との定期的な面談やフィードバックを実施したりします。定期面談は新入社員の悩みや不安、仕事の進捗状況、現在の課題、体調について把握できる良い機会です。
管理者が現状を理解し、業務量の微調整をしたり適切に責任を分散させたりすることで、新入社員の負担やストレス、孤立感、不安感が軽減し、職場への適応が促進されます。
新入社員同士で情報共有や交流できる場を設けたり、職場やチーム内でのレクリエーションやイベントを開催したりすることも、孤立感や不安感の解消に効果的です。
メンタルヘルスケアの推進
新入社員が職場環境にスムーズに適応するため、企業の取り組みとして重要視されているのが、メンタルヘルスケアの推進です。
①ストレスチェックの活用
ストレスチェックの目的は、①ストレスの程度を把握する、②ストレスへの気づきを促す、③職場環境を改善することです。
①~③により、社員のメンタルヘルス不調の予防や早期発見、早期対応が可能となるため、社員が50人未満の企業であっても、ストレスチェック制度の導入をおすすめします。
参考カテゴリー:ストレスチェックテスト
参考記事:ストレスチェックとは?制度概要、義務項目と流れを簡単解説!
②管理監督者による配慮
管理監督者は、「いつもと違う」新入社員の様子に気づくことが大切です。普段との違いに気づいたら、話を聴く、相談に乗る、職場環境を改善するなどの対応を行います。
心の健康問題が疑われる場合は、事業場内産業保健スタッフなどとの連携や、事業場外資源への相談や受診も検討します。相談しやすい職場環境や雰囲気づくりも、管理監督者の役目です。
参考記事:ストレスでノイローゼになりそう…診断方法と症状について解説
③専門職による相談体制づくり
産業医や保健師、専門のカウンセラー、心理師などが、新入社員の悩みやストレスに対応するための相談窓口を設置します。より安心して相談できる環境を整えるためには、複数の相談先の確保とさまざまな連絡ツールの利用がポイントです。
たとえば、社外にも相談窓口を設置したり、メール相談や電話相談の整備をしたりすることが挙げられます。
④個人情報への配慮
企業は個人情報やストレスチェックの結果などについて、正当な理由なく他者に漏らしてはいけません。新入社員が安心して悩みや不安、ストレスについて相談でき、不利益な取り扱いを受けない職場環境が、メンタルヘルス推進において非常に重要です。
まとめ 新入社員の不調は予防が肝心
新入社員は、生活環境や労働環境に大きな変化を経験します。新しい環境に適応しようとする過程でストレスが発生し、気分がすぐれない原因となる場合があります。不調の原因として代表的な症状が、適応障害です。
憂うつな気分や頭痛などの症状により、社会生活に支障をきたしますが、ストレス源から離れることで症状の改善が期待できます。企業は、新入社員がスムーズに新しい環境へ適応できるよう、教育や研修などのサポート体制の充実を図ることで、適応障害を予防することができます。
また、不調の早期発見と予防・改善のために、ストレスチェックの導入や社内外相談窓口の設置など、メンタルヘルスケアの推進も重要なポイントです。
どこから手をつけていいかわからない場合は、ストレスチェックやメンタルヘルス相談サービス、産業保健サービスなどを提供している社外資源のリサーチから始めることをおすすめします。