健康診断は会社の義務|罰則・対象者・受診拒否まで現役産業医が解説

この記事のポイント
- 健康診断は労働者を1人でも雇えば会社の義務。未実施は50万円以下の罰金の対象になるうえ、実務上はそれより重い安全配慮義務違反(損害賠償)のリスクがあります。
- 義務の本丸は「実施」ではなく実施後。医師の意見聴取(3か月以内)から就業上の措置までの事後措置5ステップを、有所見率59.4%(令和6年・全国)時代の優先順位づけとともに現役産業医が解説します。
- パート・派遣社員の対象基準や再検査費用の負担、受診を拒否する従業員への対応、50人以上の労働基準監督署報告(電子申請が原則化)、2027年4月施行の検査項目見直しまで実務の論点を網羅。
「健康診断は何人の会社から義務になるのか知りたい」
「パートやアルバイトも受けさせる必要があるのか」
「健診結果に所見がある社員に、会社として何をすべきか分からない」
「受診を嫌がる社員がいるが、放置してよいのか」
従業員数が増えてきた中小企業の人事労務担当者・経営者から、こうした相談を頻繁にいただきます。
会社の健康診断とは、労働安全衛生法第66条第1項にもとづき、事業者が労働者に対して実施を義務付けられている医師による検査のことです[1]。
先に、この記事の要点を2つに絞ってお伝えします。
① 従業員を1人でも雇っていれば、健康診断の実施は会社の義務(規模の下限はありません)
② 従業員が50人以上になると、定期健康診断結果の労働基準監督署への報告も義務
健康診断費用は事業者の負担です。違反した場合は50万円以下の罰金(労働安全衛生法第120条)の対象になります。
ただし、本当に重いのは罰金ではありません。健診結果を把握しながら対応を怠った会社に、約3,200万円の損害賠償を命じた裁判例があります(詳細は本文で解説します)。
本記事では、健康診断の種類と対象者、パート・派遣の取り扱い、再検査費用の負担、受診を拒否する従業員への対応を解説します。
さらに、実施後の事後措置、労働基準監督署への報告、2027年4月に施行の検査項目見直しまでを現役産業医の視点で整理します。
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監修:佐藤将人
合同会社SUGAR 代表・産業医
医師・博士(医学)/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/臨床心理士/中小企業診断士
企業の健康管理体制づくり、健診後の事後措置、メンタルヘルス、休復職・両立支援、健康経営を支援しています。
📚 「産業保健はじめの一歩」シリーズ
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健康診断は会社の義務 ― 法的根拠の全体像
【結論】 健康診断の実施は、労働安全衛生法第66条第1項で定められた事業者の義務です。従業員数の下限はなく、1人でも雇用していれば対象になります。費用は事業者負担で、未実施は50万円以下の罰金(第120条)の対象です。
まず、企業に課せられた健康診断の義務の全体像を整理します。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 実施義務者 | 事業者(会社) | 労働安全衛生法第66条第1項 |
| 対象 | 常時使用する労働者(パート・アルバイトは要件あり) | 労働安全衛生規則第43条・第44条 |
| 費用負担 | 事業者が全額負担 | 昭和47年9月18日 基発第602号 |
| 労働者側 | 受診義務あり(会社指定医以外の医師でも可) | 労働安全衛生法第66条第5項 |
| 罰則 | 50万円以下の罰金 | 労働安全衛生法第120条 |
| 50人以上の追加義務 | 定期健康診断結果報告書を労働基準監督署へ提出 | 労働安全衛生規則第52条 |
ここで重要な点が2つあります。
- 実施義務そのものに「50人以上」の線引きはない(1人でも雇えば義務)
- 50人以上になると「定期健康診断結果の労働基準監督署への報告」が追加で義務になる
「50人を超えたから健康診断が義務になる」という誤解が現場には少なくありませんが、50人の壁で変わるのは定期健診の報告義務であり、実施義務は会社の規模を問いません。
50万円の罰金より重い「安全配慮義務違反」のリスク
未実施の直接のペナルティは50万円以下の罰金ですが、実務上の本当のリスクは別のところにあります。事業者には、労働者が生命・身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮する安全配慮義務があります(労働契約法第5条)[2]。
健康診断を実施していない、あるいは結果を放置していた状態で、従業員が脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調で倒れたとします。この場合、会社は健康状態を把握する機会を自ら欠いていたことになり、損害賠償請求において会社側に不利に働くおそれがあります。
実際の裁判例を1つ紹介します。健康診断で高血圧の所見を毎年把握していながら、結果を本人に伝えるだけで業務の軽減を行わず、長時間労働を続けさせていた会社の事案です。
その従業員は脳出血で亡くなり、会社には遺族へ約3,200万円の損害賠償が命じられました(システムコンサルタント事件・東京高裁平成11年7月28日判決)[3]。「実施して結果を渡すだけ」では会社を守れない、という事後措置の重要性を示す判例として知られています。
健康診断と事後措置は、罰金を避けるためではなく、従業員の健康と会社の経営をともに守る防波堤として位置付けることをお勧めします。
🩺 産業医の視点①:「実施して終わり」が最も多い落とし穴
支援先の事業場では、健診を毎年実施し、結果を個人に配って終わり、というケースが少なくありません。
しかし法律上の義務は実施だけではなく、結果にもとづく医師の意見聴取(3か月以内)と就業上の措置まで続きます。ここが抜けたまま労災や訴訟になると、安全配慮義務(労働契約法第5条)の観点で会社側に不利に働く可能性があると考えられます。
「実施率100%」よりも先に、「実施後の流れが設計されているか」を確認することをお勧めします。
一般健康診断の5種類 ― 雇入時・定期・特定業務従事者ほか
【結論】 すべての業種に共通する一般健康診断は5種類あります。実務で特に重要なのは、雇入時・定期・特定業務従事者の3つ(労働安全衛生規則第43条・第44条・第45条)です。
一般健康診断とは、労働安全衛生法にもとづいて義務付けられた問診や血液検査などの基本的な検査です。一般健康診断には以下の5つの種類があります。
【一般健康診断の種類】
| 種類 | 対象 | 実施時期 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者 | 雇入れの際 | 労働安全衛生規則第43条 |
| 定期健康診断 | 常時使用する労働者 | 1年以内ごとに1回 | 労働安全衛生規則第44条 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 深夜業など特定業務の従事者 | 配置替えの際および6か月以内ごとに1回 | 労働安全衛生規則第45条 |
| 海外派遣労働者の健康診断 | 6か月以上の海外派遣者 | 派遣前・帰国後 | 労働安全衛生規則第45条の2 |
| 給食従業員の検便 | 事業に附属する食堂等の給食従業員 | 雇入れ・配置替えの際 | 労働安全衛生規則第47条 |
雇入時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)
採用時に実施する健康診断です。法定11項目がすべて必須で、定期健康診断と異なり医師の判断による項目の省略はできません(喀痰検査は除く)。
ただし、入社前3か月以内に医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出した場合は、該当項目を省略できます。採用選考の段階で実施するものではなく、雇入れが決まった労働者の適正配置と健康管理の起点として行うものです。
定期健康診断(労働安全衛生規則第44条)
1年以内ごとに1回、定期的に実施する健康診断です。一般に「会社の健康診断」と呼ばれるものはこれを指します。
定期健康診断の法定11項目は次のとおりです。
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無の検査
- 身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査
- 胸部エックス線検査および喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量・赤血球数)
- 肝機能検査(AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GT(γ-GTP))
- 血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(糖・蛋白)
- 心電図検査
一部の検査は、年齢などの基準に該当し、かつ医師が必要でないと認める場合に省略できます。主な省略基準は次のとおりです(厚生労働大臣が定める基準による)。
| 検査項目 | 医師の判断により省略できる対象 |
|---|---|
| 身長 | 20歳以上の者 |
| 腹囲 | 40歳未満の者(35歳を除く)ほか |
| 貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図 | 40歳未満の者(35歳を除く) |
| 胸部エックス線 | 40歳未満の者(20・25・30・35歳を除く)のうち、結核に係る定期健康診断の対象施設等で働いていない者 |
| 喀痰 | 胸部エックス線検査で病変・結核発病のおそれがないと診断された者など |
重要なのは、省略の可否を判断するのは医師であるという点です。「34歳以下は血液検査を一律カット」のように、コスト削減を目的に会社主導で一律に省略する運用は、法令の要件を満たさず違反となります。会社や本人の希望で省略できるものではありません。
特定業務従事者の健康診断(労働安全衛生規則第45条)
労働安全衛生規則第13条第1項第3号に定める特定業務に常時従事する労働者には、配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。
特定業務には、主に次のようなものがあります。
- 深夜業を含む業務(22時〜翌5時の業務を含む勤務)
- 坑内における業務
- 多量の高熱物体を取り扱う業務・著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務・著しく寒冷な場所における業務
- 土石・獣毛等のじんあいや粉末を著しく飛散する場所における業務
- ボイラー製造など強烈な騒音を発する場所における業務
- 有害放射線にさらされる業務、異常気圧下の業務、重量物の取扱いなど
このうち実務で最も多いのは深夜業です。交替制勤務で深夜帯にかかる従業員がいる場合、年2回ペースの健診が必要になります。年1回の定期健診だけでは不十分ですので、注意しましょう。
胸部エックス線検査と喀痰検査は、1年以内ごとに1回でよいとされています。
特殊健康診断 ― 有害業務に従事する労働者への義務
【結論】 有機溶剤・鉛・特定化学物質・電離放射線などの有害業務に常時従事する労働者には、一般健診とは別に特殊健康診断(労働安全衛生法第66条第2項)が義務付けられています。雇入れ・配置替えの際と、原則6か月以内ごとに1回実施します。
特殊健康診断の対象となる主な業務と記録の保存年限は次のとおりです。
| 対象業務の例 | 根拠法令 | 記録の保存年限 |
|---|---|---|
| 有機溶剤業務 | 有機溶剤中毒予防規則 | 5年 |
| 鉛業務 | 鉛中毒予防規則 | 5年 |
| 特定化学物質業務 | 特定化学物質障害予防規則 | 5年(特別管理物質は30年) |
| 電離放射線業務 | 電離放射線障害防止規則 | 30年 |
| 石綿業務 | 石綿障害予防規則 | 40年 |
| 粉じん業務 | じん肺法 | 7年 |
保存年限が長いのは、職業性疾病の中に長い潜伏期間を経て発症するものがあるためです。
自社に該当業務があるかどうかの判断に迷う場合は、産業医や労働基準監督署に確認することをお勧めします。製造業・建設業では「気づかないうちに対象業務だった」という相談が一定数あります。
パート・アルバイト・派遣社員はどこまで対象か
【結論】 パート・アルバイトは次の2つを両方満たす場合、健康診断の実施が義務になります[1]。
- 雇用期間の定めがない(または1年以上の雇用見込みがある)
- 週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上
健康診断の義務対象として、パート・アルバイト・派遣社員はどこまで対象となるかを以下の表にまとめました。
【パート・アルバイト・派遣社員の一般健康診断の実施義務】
| 雇用形態・条件 | 一般健康診断の義務 | 備考 |
|---|---|---|
| 正社員 | 義務 | 雇入時・定期とも対象 |
| パート(週所定労働時間が通常の4分の3以上) | 義務 | 1年以上の雇用見込みが前提 |
| パート(同2分の1以上4分の3未満) | 義務ではない | 実施が望ましいとされる |
| 派遣社員の一般健診 | 派遣元の義務 | 雇用主が実施責任を負う |
| 派遣社員の特殊健診 | 派遣先の義務 | 有害業務を行わせる側が実施 |
派遣社員は「一般健診は派遣元・特殊健診は派遣先」と責任が分かれる点が重要です。派遣先として有害業務に就かせている場合、特殊健診の実施漏れは派遣先の法令違反になります[4]。
健康診断の「実施後」が本番 ― 健診結果の事後措置5ステップ
【結論】 健康診断の義務は実施で終わりません。結果の本人通知、異常所見者についての医師からの意見聴取(3か月以内)、就業上の措置、保健指導、記録の5年保存までが一連の義務です。
全国の定期健康診断では、何らかの所見がある労働者の割合(有所見率)が59.4%に達しています(令和6年・厚生労働省「定期健康診断結果報告」)[5]。項目別の有所見率は次のとおりで、生活習慣に関わる項目が上位を占めます。
- 血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪):31.2%
- 血圧:18.4%
- 肝機能検査(AST・ALT・γ-GTP):16.2%
- 血糖検査(空腹時血糖・HbA1cなど):13.1%
血糖検査は、空腹時血糖・HbA1c(ヘモグロビンA1c)・随時血糖のいずれか1つで法定の要件を満たします。各項目が何を見ているか、そして所見が出た方への就業判定の進め方は、このあとの事後措置で解説します。
宮城県の有所見率は65.0%と、全国平均をさらに上回っています[5]。当社が支援する仙台圏の事業場でも、事後措置は一部の例外対応ではなく、過半数の従業員に関わる本丸の実務といえます。
【5ステップ】健康診断結果の事後措置
| ステップ | やること | 期限・根拠 |
|---|---|---|
| ① 結果の本人通知 | 健診結果を遅滞なく労働者に通知する | 労働安全衛生法第66条の6 |
| ② 医師の意見聴取 | 異常所見者について就業上の意見を医師から聴く | 健診後3か月以内(労働安全衛生法第66条の4・安衛則第51条の2) |
| ③ 就業上の措置 | 就業場所の変更・労働時間短縮など必要な措置を講じる | 労働安全衛生法第66条の5 |
| ④ 保健指導 | 有所見者への医師・保健師による保健指導に努める | 労働安全衛生法第66条の7(努力義務) |
| ⑤ 記録の保存 | 健康診断個人票を作成し保存する | 5年(労働安全衛生規則第51条) |
②の意見聴取は、50人以上の事業場では選任している産業医に依頼するのが基本です。50人未満で産業医がいない場合は、地域産業保健センターを無料で活用できます。
③の就業上の措置とは、たとえば残業の制限、深夜業の回数の減少、就業場所の変更などです。本人の不利益にならないよう、措置の必要性と内容は医師の意見を踏まえて慎重に判断します。
人事担当者が医学的知識のないまま、健診の数値だけを見て独自に配置転換を決めることは、不利益取り扱いと評価されるおそれがあるため避けてください。
あわせて、健診結果は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に当たる機微な情報です。閲覧できる担当者を限定し、上司への共有は就業上の措置に必要な最小限の範囲にとどめるなど、取り扱いルールをあらかじめ定めておくことが大切です。
有所見者への就業判定・就業上の措置(就業配慮)の具体的な進め方は、以下の関連記事で詳しく解説しています。
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健康診断 産業医 就業判定【SUGAR記事作成(シングルエンティティモデル)】
🩺 産業医の視点②:有所見率6割時代は「優先順位づけ」が鍵
有所見者が過半数を占める現在、全員に同じ濃度でフォローしようとすると、実務が止まってしまう事業場が多いと感じます。
私が支援先でお勧めしているのは、次の順で対応する優先順位づけです。
- 就業判定で「要就業制限・要休業」とされた方
- 血圧・血糖などが重症域の数値の方
- 前年から急激に悪化した方
産業医との月1回の定例で「次回フォローする社員」を決めるだけでも、事後措置は確実に回り始めると考えています。
従業員50人以上は労働基準監督署への報告が義務
【結論】 常時50人以上の労働者を使用する事業場には、定期健康診断結果報告書(様式第6号)の提出義務があります(労働安全衛生規則第52条)[6]。提出先は所轄の労働基準監督署で、実施後に遅滞なく提出します。
【定期健康診断結果報告書提出のポイント】
- 対象:常時使用する労働者が50人以上の事業場(会社単位ではなく事業場単位)
- 様式:定期健康診断結果報告書(様式第6号)[7]
- 提出時期:定期健康診断を実施したら遅滞なく(明確な日数の定めはなく、実務上はおおむね1か月以内が目安とされます)
- 提出方法:2025年(令和7年)1月から電子申請(e-Gov)が原則[8]。電子申請に必要な端末を所有していないなど、困難な場合は経過措置として書面でも提出可能[9]
50人のカウントには、常態として使用しているパート・アルバイト(健康診断の対象になるかどうかとは関係ありません)や派遣労働者も含まれます。「正社員だけなら50人未満」という数え方は通用しない点に注意してください。
報告書には受診者数や有所見者数などの集計値を記載します。個人の健診結果そのものを提出するわけではありません。
特殊健康診断は、実施した事業場の規模にかかわらず結果報告書の提出が必要です。50人未満でも報告義務がある点が定期健診と異なります。
なお、派遣労働者の一般定期健康診断とその結果報告(様式第6号)は派遣元の義務であり、派遣労働者は派遣元側でカウント・報告します(派遣先の様式第6号には算入しません)。
派遣労働者を50人に算入するのは、衛生管理者の選任・衛生委員会・職場巡視・特殊健康診断など派遣先が実施する義務についてです。
50人以上で発生する義務の全体像は、以下の関連記事で整理しています。
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定期健康診断結果報告書の電子申請手順【2025年1月より義務化】
2025年1月より、労働安全衛生法関連の申請手続きの一部について、電子申請が義務付けられました。定期健康診断結果報告書の提出も電子申請が原則義務化されています。
厚生労働省の「労働安全衛生法関係の 届出・申請等帳票印刷に係る 入力支援サービス」を利用すれば、画面の指示に従うだけでスムーズに電子申請が可能です。具体的な手順は以下の通りです。
- アカウントの準備:次のいずれかのアカウントを準備します。
- e-Gov:メールアドレスを仮登録し、届いたURLからパスワードを設定し本登録します。
- GビズID:代表者がマイナンバーカードでオンライン申請するか、印鑑証明書などを郵送して作成します。
- Microsoftアカウント
- ログイン・手続き選択:ログイン後、メニューから「定期健康診断結果報告」を選択します 。
- 情報の入力:画面の書式に沿って、労働保険番号や健診結果などを入力します 。
- 確認と申請:入力内容を確認し、「申請する」ボタンを押せば完了です 。
過去の申請データを読み込んでの再利用も可能なため、次年度以降の負担も軽減できます 。
費用は会社負担 ― 受診時間の賃金はどうなるか
【結論】 法定の健康診断の費用は、実施義務を負う事業者の負担です。受診時間の賃金は、一般健診では労使協議で定めることが望ましく、特殊健診では労働時間として賃金の支払いが必要です(昭和47年9月18日 基発第602号)[10]。
健康診断費用負担の一般的な見解
| 項目 | 一般健康診断 | 特殊健康診断 |
|---|---|---|
| 費用 | 事業者負担 | 事業者負担 |
| 受診時間の賃金 | 労使協議で定める(支払いが望ましい) | 労働時間として支払いが必要 |
| 考え方 | 一般的な健康確保措置 | 業務遂行に直接関連する措置 |
人間ドックの追加項目・婦人科検診などのオプション検査を任意で受ける場合は、本人負担が一般的です。福利厚生として会社が補助する場合は、対象と上限を社内規程で明確にしておくとトラブルを防げます。
再検査・精密検査の費用は誰が負担するか
健診で異常所見が出たあとの「再検査・精密検査」の費用は、労使間で揉めやすい論点です。整理すると次のようになります。
| 検査の種類 | 費用負担 | 備考 |
|---|---|---|
| 法定の健康診断(雇入時・定期・特殊) | 会社負担 | 実施義務を負う事業者の経費 |
| 一般健診後の再検査・精密検査 | 本人負担が原則 | 疾病の診断・治療(医療行為)と整理され、健康保険を使って受診 |
| 特殊健診後の再検査 | 会社負担 | 規則上、実施が事業者に義務付けられているものがある |
| 二次健康診断等給付 | 無料(労災保険) | 血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに異常所見がある場合、1年度につき1回 |
| オプション検査 | 本人負担 | 会社補助は任意(社内規程で明確化) |
注意したいのは、「費用負担義務がない」ことと「再検査を放置してよい」ことはまったく別だという点です。有所見者への再検査の受診勧奨は、厚生労働省の指針で事業者が行うよう求められており[11]、安全配慮義務の観点からも勧奨の記録を残すことが会社を守ります。
脳・心臓疾患のリスクが重なっている方には、労災保険の二次健康診断等給付を案内すると、本人の費用負担なく精密な検査と保健指導につなげられます。
健康経営に取り組む企業では、再検査費用の補助や、再検査のための通院を就業時間扱いにする例もあります。
従業員が健康診断の受診を拒否したらどうするか
【結論】 労働者にも健康診断の受診義務があります(労働安全衛生法第66条第5項)[1]。「本人が嫌がっているから」と未受診を放置すると、義務違反に問われるのは会社の側です。理由の確認 → 環境整備と代替案 → 書面での勧奨と記録 → 就業規則上の対応、の4ステップで進めます。
押さえておきたい前提が2つあります。第一に、労働者には健康診断の受診義務がありますが、労働者個人への罰則はありません。未実施の罰則(50万円以下の罰金)は事業者に向けられています[1]。
第二に、同条のただし書きにより、会社指定の医師による健診を希望しない労働者は、自分で選んだ医師の健診を受けて結果を証明する書面を提出する方法が認められています[1]。つまり「会社指定の病院」は拒否できても、健康診断そのものは拒否できません。
受診を拒否する従業員への対応は、次の順序で進めることをお勧めします。
① 理由を確認し、義務と目的を説明:業務多忙・医療機関への抵抗感・無関心など、拒否の背景によって打ち手が変わる。
② 受診環境を整え、代替案を示す:就業時間内に受診できるよう業務を調整したり、かかりつけ医など他の医師による受診と結果提出の選択肢を案内したりする。
③ 文書で受診を勧奨し、記録を残す:期限を定めた通知・メール履歴など、会社が再三勧奨した客観的な記録が有効。
④ それでも応じない場合は、就業規則にもとづく対応を検討:戒告など段階的な処分から。専門家への相談を推奨する。
④について、健康管理上必要な検診の受診命令に従わなかった労働者への戒告処分を有効とした最高裁判例があります(電電公社帯広局事件・最高裁昭和61年3月13日判決)[12]。ただ、受診拒否のみを理由とした解雇は、無効と判断されるリスクが高いため避けるべきです。
未受診のまま放置すると、本人の健康リスクに加えて、会社としても安全配慮義務を尽くしていないと評価されるおそれがあります。後日その従業員が脳・心臓疾患などで倒れた場合、「本人が拒否していた」という事実だけでは会社の責任は免れないと考えられます。受診勧奨の経緯を記録に残すことが、会社を守ることにもつながります。
🩺 産業医の視点③:受診率は「仕組み」で上がる
受診率が伸びない事業場には、共通する背景があると感じます。業務多忙な時期に健診日程が重なっている、中途入社や休職復帰のタイミングの方が案内から漏れている、といった仕組みの問題です。
対応としては、次の3点が効果的だと考えています。
- 受診状況を一覧管理する台帳をつくる
- 健診機関の予約枠を複数月に分散する
- 未受診者に人事から個別に日程を提示する
「受けてください」の声かけだけで受診率100%を達成するのは難しく、仕組みで受けやすくする発想が大切です。
2027年4月から定期健康診断の検査項目が変わる
一般健康診断の検査項目の見直しが決まり、2027年(令和9年)4月1日に施行されます(改正省令は2026年4月公布)。変更点は「検査項目の変更」と「表記の変更」の2つに分かれます。
変更点①:検査項目の変更
- 血清クレアチニン検査の法定項目化:腎機能を調べる検査で、慢性腎臓病(CKD)対策として追加されます(40歳未満は、医師が必要でないと認めるときは省略可)
- 喀痰検査の除外:法定の検査項目から削除される
変更点②:肝機能検査の名称変更
肝機能検査の名称が、医療現場で用いられる国際的な標準名称に統一される予定です。詳細は以下の通りです。
- GOT→AST
- GPT→ALT
- γ-GTP→γ-GT
健診結果票の項目名が変わるため、年度をまたいだデータ管理では新旧名称の対応付けが必要になります。施行までに、健診機関との契約内容やオプション項目の整理、結果データの管理項目の見直しを進めておきましょう。
続報は厚労省の検討会資料と省令の公布内容を確認のうえ、本記事でも更新する予定です。
健康診断の年間スケジュール例
【結論】 健診は「実施月の前後」に実務が集中します。意見聴取の3か月期限から逆算して年間の流れを設計しておくと、事後措置の漏れを防げます。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 健診2〜3か月前 | 健診機関と日程調整・対象者リスト作成 | 中途入社・休職者の漏れを確認 |
| 健診月 | 受診・未受診者の把握 | 予約枠を分散し受診しやすくする |
| 健診後1か月 | 結果回収・本人通知・有所見者の整理 | 重症域の数値は早期に対応 |
| 健診後3か月以内 | 医師の意見聴取・就業上の措置 | 労働安全衛生法第66条の4の期限 |
| 通年 | 労働基準監督署報告(50人以上)・記録保存・保健指導 | 衛生委員会で進捗を確認 |
健康診断の事後措置の進捗管理は、衛生委員会の年間議題に組み込むと確実に回ります。衛生委員会の設置や調査審議の実効性を高めるポイントは以下の関連記事で解説しています。
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会社の健康診断に関してよくある質問(FAQ)
Q1. 健康診断は何人の会社から義務になりますか?
A.従業員数の下限はありません。常時使用する労働者を1人でも雇用していれば実施義務があります。50人以上になると、労働基準監督署への結果報告義務が追加されます。
Q2. パート・アルバイトにも健康診断が必要ですか?
A.雇用期間の定めがない(または1年以上の雇用見込みがある)方で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば実施義務があります。2分の1以上4分の3未満の方にも、実施することが望ましいとされています。
Q3. 健康診断の費用は誰が負担しますか?
A.法定項目の費用は事業者の負担です。労働者に負担させることはできません。
人間ドックのオプション検査など法定外の項目は、本人負担または会社補助を社内規程で定めるのが一般的です。
Q4. 健診を受けている時間の賃金は支払う必要がありますか?
A.一般健康診断の受診時間は、労使協議で定めることが望ましく、円滑な実施のため支払うことが望ましいとされています。
特殊健康診断は業務に直接関連するため、労働時間として賃金の支払いが必要です。
Q5. 従業員が受診を拒否した場合はどうすればよいですか?
A.労働者にも受診義務があります(労働安全衛生法第66条第5項)。本人が選んだ医師の健診結果を提出する方法も可能です。まず選択肢を案内し、それでも拒否する場合は勧奨の記録を残したうえで就業規則上の対応を検討します。
Q6. 派遣社員の健康診断は派遣元・派遣先のどちらの義務ですか?
A.雇入時・定期などの一般健康診断は、雇用関係にある派遣元の義務です。
有機溶剤や石綿など有害業務に従事させる場合の特殊健康診断は、実際に作業を管理する派遣先の義務になります。費用負担も同じ区分です。
Q7. 再検査・精密検査の費用は会社負担ですか?
A.一般健康診断のあとの再検査・精密検査は、疾病の診断・治療にあたるため本人負担(健康保険適用)が原則です。
ただし特殊健康診断では再検査の実施が事業者に義務付けられているものがあり、この場合は会社負担です。
血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに異常所見がある場合は、労災保険の二次健康診断など給付を無料で利用できます[13]。
Q8. 人間ドックで会社の健康診断の代わりにできますか?
A.法定11項目をカバーしていれば、人間ドックの結果提出で定期健康診断に代えることができます。
結果の写しを会社に提出してもらい、医師の意見聴取など事後措置は通常どおり行います。
Q9. 健診結果は何年保存する必要がありますか?
A.健康診断個人票として5年間の保存が義務です(労働安全衛生規則第51条)。特殊健康診断は対象物質により7年・30年・40年と長期の保存義務があります。
Q10. 労働基準監督署への報告はいつ・どの様式で行いますか?
A.常時50人以上の事業場は、定期健康診断の実施後に遅滞なく、定期健康診断結果報告書(様式第6号)を所轄労働基準監督署へ提出します。
2025年1月からe-Govによる電子申請が原則義務化されました。未提出は50万円以下の罰金の対象です。
まとめ:健康診断は「実施」から「事後措置」までが義務
本記事では、会社の健康診断義務について、種類・対象者・事後措置・労働基準監督署報告・最新の法改正動向までを解説しました。
- 健康診断の実施義務:労働者1人から。雇入時・定期(年1回)・特定業務(6か月ごと)・特殊健診。未実施は罰金に加えて安全配慮義務違反のリスク
- パートは「1年以上見込み+週所定労働時間4分の3以上」で義務。派遣は一般健診=派遣元・特殊健診=派遣先
- 事後措置:本人通知→医師の意見聴取(3か月以内)→就業上の措置→保健指導→5年保存。再検査は本人負担が原則でも受診勧奨は会社の務め
- 受診拒否には「理由確認→環境整備と代替案→書面勧奨と記録→就業規則上の対応」の4ステップ
- 50人以上:定期健康診断結果報告書(様式第6号)を労働基準監督署へ遅滞なく提出(2025年1月から電子申請が原則)
- 2027年4月施行:血清クレアチニンの法定項目化・喀痰検査の除外・AST/ALT/γ-GTへの表記変更
(※なお、女性の健康課題に関する問診や歯科に関する項目などは、今回の改正省令には含まれず、厚生労働省の検討会で引き続き検討が進められている事項です。)
健康診断は、リスク管理・人的資本経営・経営判断の3軸で会社を支える基礎インフラです。とはいえ、ここまでの内容をすべて一度に完璧に整える必要はありません。
まずは、自社の健診が「実施して終わり」になっていないか、意見聴取(3か月以内)と未受診者の有無だけでも振り返ってみてください。
ひとつでも気になる点が見つかれば、それは改善の余地が見つかったということ。今日からできる小さな一歩が、従業員の健康と会社の安心につながります。
健診の事後措置・就業判定や、産業医の意見聴取・衛生委員会の運営について相談先をお探しの場合は、合同会社SUGAR(仙台拠点)の産業保健サービスやオンライン産業医もご利用いただけます。お気軽にご連絡ください。
参考文献
[1] e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(第66条・第66条の4〜第66条の7・第103条・第120条)
[2] e-Gov法令検索「労働契約法」(第5条)
[3] 全国労働基準関係団体連合会「システムコンサルタント事件」
[4] 厚生労働省「第4章派遣先が留意すべき事項」(19ページ)
[5] 厚生労働省「定期健康診断結果報告」(有所見率の統計)
[6] e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第43条〜第45条の2・第47条・第51条・第52条)
[7] 厚生労働省「定期健康診断結果報告書様式」
[8] 厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」
[9] 厚生労働省「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令の公布について」(第3 細部事項)
[10] 厚生労働省「労働安全衛生法および同法施行令の施行について(昭和47年09月18日基発第602号)」
[11] 厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(健康診断結果措置指針)
[12] 全国労働基準関係団体連合会「電電公社帯広局事件」
[13] 厚生労働省「労災保険給付の概要」(二次健康診断等給付)








