妊娠安定期まで言わないのはなぜ?流産リスクと報告の最適タイミング

妊娠報告の最適なタイミングについて考え、安心している夫婦のイメージ

この記事のポイント

  • 妊娠報告を安定期まで待つ主な理由は、妊娠初期(12週未満)の高い流産リスクに備え、万が一の際の精神的負担を避けるためです。
  • つわりがつらい場合、安定期前でも「母性健康管理指導事項連絡カード」を使い、法的に業務軽減(時差出勤など)を求める権利があります。
  • 職場への報告は「直属の上司」が最初です。相手や状況に応じたタイミングと伝え方(例文あり)が、その後の関係性を左右します。

妊娠という喜ばしい出来事を、いつ誰に、どのように伝えるべきか。

多くの人が「安定期に入ってから」という言葉を耳にしますが、その具体的な理由や個々の状況に応じた最適なタイミングについては、悩みを抱える人も少なくありません。

特に、心身ともに不安定な妊娠初期は、喜びと同時にさまざまな不安がよぎる時期です。

「流産のリスクが怖い」「つわりがつらいが、まだ報告できない」「万が一のことを考えたら、今言うべきではないかもしれない」

この記事では、「妊娠安定期まで言わないのはなぜか」について医師および労働衛生コンサルタント監修のもと、医学的なデータや法律の専門知識に基づき、その背景にある理由をお伝えします。

さらに、職場の上司や同僚、両親、友人といった相手別の最適な報告タイミングと、具体的な伝え方の例文を網羅しました。

この記事を読めば、安心して最適なタイミングで報告することができるでしょう。

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目次

妊娠報告を「安定期」まで待つ2つの理由

妊娠安定期という節目を意識し、精神的な安堵を得ている妊婦のイメージ

妊娠報告のタイミングとして「安定期」が一つの目安とされるのは、主に「医学的リスク」「心理的・社会的背景」の2つの理由があります。

一般的に、妊娠報告を「安定期」まで控えるのは、妊娠12週未満に多い自然流産のリスクが大幅に減少する時期を待つためです。これにより、万が一の際の精神的負担を軽減し、周囲への配慮を行う目的があります。

理由1:医学的根拠|妊娠初期の流産率は約15%

流産は決して稀なことではなく、全妊娠の約15%で起こるとされています。

その発生時期は妊娠初期に集中しており、全流産の約80%~85%が妊娠12週未満に発生します。妊娠初期の流産は、胎児の染色体異常など、偶発的なものが主な原因です。

流産率は母体の年齢と相関関係があり、年齢が上がるにつれてその確率は上昇します。例えば、35~39歳では25.8%、40歳代では40%~50%に上るとのデータも報告されています。

データが示すように、妊娠12週という「安定期」の入り口は、医学的に見ても妊娠継続の確度が高まる重要な節目です。

参考:日本産科婦人科学会(JaSOG) 一般の皆様へ「流産・切迫流産」

参考:American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) “Early Pregnancy Loss” (FAQ)

参考:日本産科婦人科学会 ARTデータブック(2023年度版)(PDF)

参考:Nybo Andersen, A. M., et al. (2000). “Maternal age and fetal loss: a population-based register linkage study.” BMJ (Clinical research ed.), 320(7251), 1708–1712. (PubMed)

理由2:心理的・社会的背景|「悲しみの再生産」の回避と他者への配慮

「安定期まで待つ」という慣習の背景には、当事者の心理的な防衛と社会的な配慮という目的があります。

精神的な自己防衛

万が一、流産した場合、報告した人全員に改めて説明する精神的負担は大きいでしょう。

そのため、人によっては改めて説明することを避けるために、報告を遅らせます。

社会的な配慮

不妊治療中であったり、過去に流産を経験したりした友人など、デリケートな状況にある人たちへの配慮が目的な場合もあります。

つまり、安定期を待つことで相手に与えるかもしれない影響を抑える社会的なエチケットとしての側面も考慮されます。

「報告のパラドックス」とは?安定期前に言うべきか、隠すべきかのジレンマ

妊娠初期の体調不良と仕事の板挟みになる「報告のパラドックス」というジレンマ。

「報告のパラドックス」とは、体調が最もつらい妊娠初期に、流産リスクと周囲への報告の負担という二重のストレスにさらされるジレンマのことです。

「安定期まで待つ」ことには合理的な理由がある一方で、妊娠した女性はしばしば深刻なジレンマに直面します。

メリット・デメリット比較表

早期に報告するか、安定期まで待つ(遅らせる)か。それぞれのメリットとデメリットは表裏一体です。具体的なメリット・デメリットを以下にまとめました。

妊娠報告のメリット・デメリット
報告方法 メリット デメリット
早期に報告する(安定期を待たない) 母体の健康が守られる
つわりがつらい時期に、時差出勤や業務軽減といった法的な保護(母性健康管理措置)を受けられる。
精神的負担が大きい
流産のリスクが最も高い時期であり、万が一の際の精神的負担が大きい。マタハラの標的になるリスクも懸念されます。
報告を遅らせる(安定期まで待つ) 精神的平穏を保ちやすい
流産のリスクが比較的低下し、周囲に過度な心配をかけずに済む。
一人で抱え込むつらさ
心身ともに最もつらい妊娠初期を、職場の誰にも頼れず一人で乗り切らなければならないという精神的負担があります。

このジレンマは、女性が「自身の健康と安全」と「キャリアと精神的平穏」を天秤にかけることを強いる社会構造的な課題ともいえます。

つわりがつらいときは?安定期前でも使える「母性健康管理指導事項連絡カード」

結論から言えば、つわりがつらい場合、安定期まで報告を待つ必要は全くありません。母体の健康が最優先です。

日本の法律(男女雇用機会均等法)は、妊婦が医師の指導に基づき、時差出勤や業務軽減など必要な配慮(母性健康管理措置)を求める権利を定めています。

この権利を行使する際に役立つのが「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です。

安定期前でも、このカードを活用して直属の上司に相談しましょう。

つわりと仕事の具体的な両立の工夫や、母健連絡カードの詳細な使い方、休職の基準については、以下の記事で詳しく解説しています。

▼あわせて読みたい

参考:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」(第13条)

【実践ガイド】妊娠報告、誰に・いつ・どう伝える?相手別プランニング・サマリー

妊娠報告をする相手別のタイミングと伝え方のプランニング

妊娠報告は、相手(パートナー、両親、職場、友人)との関係性や状況に応じ、伝えるタイミングと内容を変える計画性が重要です。

ここでは、誰にいつ、何を伝えるべきかの全体像を表にまとめます。

妊娠報告の相手とタイミング
報告相手 推奨タイミング 伝えるべき要点 伝え方のポイント・配慮事項
パートナー 妊娠検査薬で陽性が出た直後 喜びの共有、今後の協力体制の確認 直接会って伝えるのが理想。2人で分かち合う最初の瞬間を大切にされることが推奨。
自分の両親 病院で胎児の心拍が確認できた後 出産予定日、体調、里帰り出産など今後の希望 妊娠の確実性が高まってから伝え、安心させる。里帰りを望むなら早めに相談する。
義両親 自分の両親と同じか、少し後 出産予定日、体調、今後の関わり方についての希望 夫婦で一緒に報告するのが基本です。パートナーと事前に伝え方を相談しておく。
直属の上司 安定期(12週~)が基本。ただし体調不良や業務調整が必要なら早期(16週~)など早期に 出産予定日、産休・育休の希望、復帰意思、業務で配慮してほしい点 「相談」という形で時間を確保してもらう。今後の計画を具体的に伝え、安心感を与える。
同僚・チーム 安定期に入り、上司と相談した後 出産予定日、産休に入る時期、引き継ぎのお願い、感謝の気持ちを伝える。 業務への影響を考慮し、上司の許可を得てからが推奨される。サポートをお願いする姿勢
親しい友人 安定期(16週~)以降 喜びの共有、今後の変わらぬ付き合いのお願い グループ内では報告に時間差が出ないように配慮する。喜びを分かち合う。
配慮が必要な友人 安定期以降、相手の状況を見極めて 事実を簡潔に伝える SNSでの一斉報告は避け、個別に、相手が返信しやすい方法で伝える。相手の気持ちを最優先する。

※上表の妊娠報告のタイミングについては、あくまで目安です。個々のケースに応じて適切なタイミングをご計画ください。

パートナー・自分の両親・義両親への推奨タイミングと伝え方

家族への報告は、喜びを分かち合い今後のサポート体制を築くための第一歩です。

  • パートナー: 妊娠検査薬で陽性が判明した直後に、2人で喜びを共有しましょう。今後の健診スケジュールや、つわり中の家事分担など、協力体制についても話し合い始めます。
  • 自分の両親: 病院で胎児の心拍が確認でき、妊娠が確実になってから報告すると安心させられます。里帰り出産を希望する場合は、このタイミングで早めに相談するのがよいでしょう。
  • 義両親: 自分の両親への報告と同時期か、少し後が一般的です。パートナーと2人で一緒に報告するのが基本です。事前に「どこまで伝えるか(体調の詳細など)」を夫婦ですり合わせておくとスムーズです。

職場(直属の上司・同僚)への推奨タイミングと伝え方

職場への報告は、体調が安定する「安定期(12週~)」が基本です。

しかし、つわりが重い場合や、立ち仕事・力仕事など身体的負担が大きい業務の場合は、母体を守るために心拍確認後(6週~)など早期に直属の上司へ相談することが推奨されます。

同僚やチームへの報告は、上司と相談し産休までの業務引き継ぎのめどが立ってから(安定期以降)が一般的です。

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友人(親しい友人・配慮が必要な友人)への推奨タイミングと伝え方

友人への報告は、相手の状況に配慮することが最も重要です。

親しい友人へは安定期(16週~)に入り、自分自身の気持ちも落ち着いてからで良いでしょう。

不妊治療中や流産経験のある友人へは、特に繊細な配慮が必要です。

SNSでの一斉報告は避け個別に、相手の負担にならないよう簡潔に伝えます(詳細は後述します)。

【職場編】上司・同僚への報告「伝え方」完全マニュアル

職場への妊娠報告は、その後の働きやすさやキャリアを左右する、最も重要なコミュニケーションの一つです。

妊娠報告と今後の働き方について、直属の上司に個別に相談している女性従業員

鉄則:報告は「直属の上司」が絶対最初。伝えるべき5つのポイント

報告の順番は「直属の上司」が最初です。

同僚から噂が広まったり、上司がまた聞きで知ったりする事態は、信頼関係を損なうため絶対に避けましょう。

報告の際は、以下の5点を明確に伝えられるよう、事前にメモなどにまとめておくとスムーズです。

  1. 妊娠の事実と現在の週数
  2. 出産予定日
  3. 産休・育休取得の希望と、職場復帰の意思
  4. 現在の体調と、業務上配慮してほしいこと(例:つわりによる時差出勤の相談など)
  5. 今後の業務引き継ぎに関する計画や相談

同僚への報告は、業務への影響や引き継ぎの段取りが決まってからの方がスムーズです。

いつ、どのように伝えるかは、必ず上司と相談して決めましょう。

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成功のコツ:「権利の主張」ではなく「相談と感謝」の姿勢

法律で守られた権利を行使するのは当然ですが、それを振りかざすような態度は周囲の反感を買いかねません。

円滑なサポート体制を築くためには、伝え方が重要です。気をつけるとよい伝え方のポイントは以下のとおりです。

  • 「相談」の姿勢で臨む: 「今後の働き方についてご相談したいことがあります」と切り出すことで、上司も話を聞く姿勢を整えやすくなります。
  • 感謝と謙虚な気持ちを忘れない: 産休・育休中の業務は、周囲の同僚がカバーすることになります。「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」という感謝と協力をお願いする姿勢が、円滑な人間関係を築きます。
  • 復帰への意欲を示す: 復帰の意思を明確に伝えることで、上司や会社は長期的な視点で人員計画を立てることができ、安心感につながります。

【例文集】上司・同僚への具体的な伝え方(口頭)

1. 上司への報告(安定期前・体調不良で相談する場合)

「〇〇部長、今少しよろしいでしょうか。今後の働き方について、早急にご相談したいことがあります。

実は、妊娠していることが分かりました。現在〇週でまだ安定期前ではあるのですが、つわりがつらくなってきたため業務についてご相談したく、早めにご報告させていただきました。

出産予定日は〇月〇日です。体調を見ながら産休までは勤務したいと考えております。

つきましては、医師の指導(母健連絡カード)に基づき、時差出勤(または在宅勤務)をさせていただくことは可能でしょうか。

業務の引き継ぎについても、前倒しでご相談させてください。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします

2. 上司への報告(安定期・通常報告の場合)

「〇〇部長、今少しよろしいでしょうか。今後の働き方についてご相談したいことがあり、お時間をいただきました。

実は、このたび新しい命を授かりました。現在妊娠〇週で、安定期に入りました。出産予定日は〇月〇日です。

産前は規定通り〇月頃まで勤務し、その後産休・育休をいただきたいと考えております。職場復帰の意思もあります。

体調は今のところ問題ありませんが、今後の健診などでご迷惑をおかけすることもあるかと思います。

業務の引き継ぎについては、〇月頃から具体的にご相談させていただけますでしょうか。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

3. 同僚・チームへの報告(上司と相談後)

「皆さん、私事でお時間をいただき恐縮です。このたび、妊娠いたしました。

出産予定日は〇月〇日で、〇月頃から産休に入らせていただく予定です。

産休に入るまではこれまで通り業務に励みますが、体調によってご迷惑をおかけすることもあるかもしれません。

引き継ぎについては、〇〇さん(後任者)を中心にお願いすることになります。詳細は追ってご相談させてください。

皆さんのサポートが必要になる場面も多いかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」

【応用編】より繊細な配慮が必要なケース(友人・流産経験者)

不妊治療中の友人へ、最大限配慮しながら妊娠報告をしているイメージ

画一的な「安定期ルール」が当てはまらない、より繊細な配慮が求められるケースも存在します。

不妊治療中・流産経験のある友人への伝え方

最も慎重な配慮が求められるのが、不妊治療を続けている友人や、つらい流産を経験した友人への報告です。

タイミングと方法:

SNSなどでの一斉報告は絶対に避けましょう。

安定期に入り、心身ともに落ち着いてから個別に伝えるのがマナーです。

直接会うと相手に「おめでとう」と言うことを強制してしまう可能性があるため、相手が自分のタイミングで気持ちを整理できるチャットやメールでの報告が望ましいとされています。

伝える内容:

喜びを過度に表現したり、妊娠に至るまでの経緯を詳細に話したりするのは避けます。

事実を簡潔に、そして「大切な友人だから、伝えておきたかった」という相手を尊重する気持ちを添えて伝えましょう。

重要な一言

「返信は気にしないでね」「お祝いの言葉なども無理しないでね」という一言を添えることが重要です。

これにより、相手は「おめでとうと言わなければ」というプレッシャーから解放されます。

自身が過去に流産を経験している場合の妊娠報告

過去に流産を経験している場合、次の妊娠報告には大きな不安と恐怖が伴います。

「また同じことになったらどうしよう」という気持ちから、報告をためらうのは当然のことです。報告の際には、以下の点を大切にしてみてください。

  • 自分の心を最優先に: 無理に早く報告する必要は全くありません。自分が「安心できる」と感じるタイミング、例えば安定期を過ぎ、健診で赤ちゃんの順調な成長が確認できた後など、自分の心の準備が整うのを待ちましょう。
  • 医学的な事実を支えに: 一度の流産が、次の妊娠の成功率に影響することはほとんどない、というのが医学的な見解です。流産の多くは胎児側の偶発的な原因によるものであり、自分を責める必要はありません
  • 信頼できるサポーターを見つける: パートナーや、事情を理解してくれるごく親しい友人、両親など、信頼できる人にだけ先に打ち明けておくことで、精神的な支えを得ることができます。

参考:日本産科婦人科学会(JaSOG) 一般の皆様へ「流産・切迫流産」

パートナー(夫)の報告タイミングと注意点

妊娠した本人だけでなく、パートナー(夫)も「いつ、誰に言うか」という問題に直面します。パートナー(夫)が報告の際に気をつけるポイントは以下のとおりです。

  • 妻と足並みをそろえる: 最も重要なのは、必ず妻と報告のタイミングを相談し、足並みをそろえることです。妻が「安定期まで職場や友人に言わないで」と望んでいる場合、その意向を尊重してください。
  • 自分の両親(義両親)への報告: 妻が自分の両親に報告するタイミングと合わせるのが基本です。妻の体調や意向を確認せず、フライングで報告して妻を傷つけることがないよう注意しましょう。
  • 自分の職場への報告: 妻の体調が安定し、夫婦で「報告しよう」と決めたタイミング(安定期など)で報告するのが一般的です。ただし、妻のつわりが重く、看病などで自身の業務調整(早退や休暇)が必要になる場合は、事情を説明し、直属の上司にだけ早期に相談することも検討しましょう。

【組織・人事編】妊娠報告を受ける側の法的義務と体制構築

労働衛生コンサルタントの視点:妊娠報告を受けた企業側が法的義務とサポート体制を確認している。

企業(上司・人事)は、妊娠報告を受けたら「おめでとうございます」と祝福を伝えた上で、法律(均等法・労基法)に基づく措置を講じる義務があります。

ここからは、労働衛生コンサルタントの視点に基づき、従業員から妊娠報告を受けた企業・管理職側の対応について解説します。

企業が遵守すべき法的保護措置(一覧表)

企業が遵守すべき、働く妊婦のための主要な法的保護措置は以下のとおりです。

これらは妊娠報告があった時点から適用されます。

妊娠中の権利と措置
保護・権利の種類 具体的な内容 関連法規
健康診査のための時間確保 法定の頻度(例:妊娠23週まで4週に1回)で、妊婦健診のための時間を確保する義務。 男女雇用機会均等法 第12条
医師の指導に基づく措置 母健連絡カード」などで医師の指導があった場合、通勤緩和、休憩時間の延長、勤務時間の短縮、作業の制限などの措置を講じる義務。 男女雇用機会均等法 第13条
危険有害業務の就業制限 重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所での業務など、妊産婦に有害な業務への就業を禁止。 労働基準法 第64条の3
軽易業務への転換 妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる義務。 労働基準法 第65条第3項
時間外・休日・深夜業の制限 妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、深夜業(22時~5時)をさせてはならない。 労働基準法 第66条
産前・産後休業 産前6週間(多胎14週間)は本人の請求により、産後8週間は原則として就業禁止。 労働基準法 第65条
不利益取扱いの禁止 妊娠・出産、産休取得、母性健康管理措置の利用などを理由とする解雇、降格、減給等の不利益な取扱いを禁止。 男女雇用機会均等法 第9条

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」(第64条の3、第65条、第66条)

参考:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」(第9条、12条、13条)

ハラスメントを防止し、心理的安全性を確保する体制づくり

法令に基づく制度の整備だけでなく、従業員が安心して妊娠を報告し、制度を活用できる「心理的安全性」の高い職場風土の醸成が大切です。

従業員が安心できる職場風土づくりのポイントは以下のとおりです。

  • 祝福と傾聴: 報告を受けたら、まずは「おめでとうございます」と祝福の意を伝え、本人が安心して話せる雰囲気をつくります。本人の体調や不安な点について、丁寧に耳を傾けることが第一歩です。
  • プライバシーの厳守(アウティングの禁止): 妊娠は極めてパーソナルな医療情報です。本人の許可なくその情報を第三者に漏らしてはなりません。本人の意図しない形で暴露する「アウティング」は、プライバシーの深刻な侵害であり、絶対に許されません。
  • 管理職への研修: マタニティハラスメントの具体例や関連法規、部下から報告を受けた際の適切な対応方法について、管理職向けの研修を定期的に実施します。
  • 相談窓口の設置: 人事部門などに専門の相談窓口を設け、ハラスメントや不利益な扱いを受けた従業員が相談できる体制を整えます。

心理的安全性の向上の取り組みは、妊娠した従業員個人を守るだけでなく、組織全体の生産性向上と優秀な人材の定着にもつながる経営課題です。

特に、つわりなど妊娠初期の体調不良者への具体的なサポート体制や両立支援の詳細は、以下の記事もご参照ください。

▼あわせて読みたい

参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策」関連指針(PDF)

妊娠報告に関するFAQ(よくある質問)

妊娠報告に関するよくある質問(FAQ)

妊娠報告に関するよくある疑問(つわりがつらいとき、報告の順番、友人への配慮、アウティング被害)についてお答えします。

Q. つわりがつらいのですが、安定期まで報告を待つべきですか?

A. いいえ、待つ必要はありません。母体の健康が最優先です。

男女雇用機会均等法に基づき、医師の指導があれば勤務時間の短縮や業務の軽減を求める権利があります。

安定期前でも「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用し、上司に相談しましょう。

参考:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」(第13条)

参考:厚生労働省「女性にやさしい職場づくりナビ」(母健連絡カード)

Q. 職場には誰から順番に報告するのがマナーですか?

A. まず直属の上司に最初に報告するのが鉄則です。

その後、上司と相談のうえで人事部やチームメンバーに伝えるのが一般的な流れです。

同僚から上司の耳に入ることがないよう、順番には注意しましょう。

Q. 不妊治療中の友人への妊娠報告で気をつけることは何ですか?

A. 相手の気持ちに最大限配慮することが重要です。

SNSなどでの一斉報告は避け、個別にチャットやメールなど相手が自分のペースで確認できる方法で、事実を簡潔に伝えましょう。

相手の負担を軽減するため、「返信は気にしないでね」と一言添えることを推奨します。

Q. 妊娠の事実を勝手にアウティング(暴露)されました。

A. 妊娠は極めてデリケートな個人情報であり、本人の意図しない暴露(アウティング)はプライバシーの深刻な侵害です。

企業にはハラスメントを防止し、従業員のプライバシーを守る義務があります。人事部門や社内の相談窓口に相談してください。

まとめ:妊娠報告に「絶対の正解」はない。自分に最適なタイミングを選ぼう

妊娠報告のタイミングに正解はありません。

「安定期まで言わない」という選択には、妊娠初期の高い流産リスクに備え、万が一の際の精神的負担を回避するという合理的な理由があります。

しかし、つわりで体調がつらいときに、法的に守られた権利(業務軽減など)を行使するために早期報告することも、同様に合理的な選択です。

最も大切なのは、医学的なデータや法律の知識を正しく理解したうえで、ご自身の体調、職場の環境、そして大切な人たちとの関係性を考慮し、「自分にとって最適なタイミング」を安心して選択することです。

この記事が、不安を少しでも和らげ、喜びに満ちたマタニティライフへの第一歩を、穏やかな気持ちで踏み出すための一助となれば幸いです。

職場のメンタルヘルスや健康経営に関するご相談はSUGARへ

合同会社SUGARでは、医師および労働衛生コンサルタントの専門的知見に基づき、職場のハラスメント防止研修や、従業員の健康とキャリアを両立させるための体制構築コンサルティングを行っています。

「妊娠報告を受けたが、どう対応すればよいか」「心理的安全性の高い職場をどうつくればよいか」など、人事労務に関するお悩みは、ぜひお気軽にお問い合わせください。

  1. つわりが辛いのですが、安定期まで報告を待つべきですか?

    いいえ、待つ必要はありません。母体の健康が最優先です。男女雇用機会均等法に基づき、医師の指導があれば勤務時間の短縮や業務の軽減を求める権利があります。安定期前でも「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用し、上司に相談しましょう。

  2. 職場には誰から順番に報告するのがマナーですか?

    まず直属の上司に最初に報告するのが鉄則です。その後、上司と相談の上で人事部やチームメンバーに伝えるのが一般的な流れです。同僚から上司の耳に入ることがないよう、順番には注意しましょう。

  3. 不妊治療中の友人への妊娠報告で気をつけることは何ですか?

    相手の気持ちに最大限配慮することが重要です。SNSなどでの一斉報告は避け、個別にチャットやメールなど相手が自分のペースで確認できる方法で、事実を簡潔に伝えましょう。相手の負担を軽減するため、「返信は気にしないでね」と一言添えることを推奨します。

  4. 妊娠の事実を勝手にアウティング(暴露)されました。

    妊娠は極めてデリケートな個人情報であり、本人の意図しない暴露(アウティング)はプライバシーの深刻な侵害です。企業にはハラスメントを防止し、従業員のプライバシーを守る義務があります。人事部門や社内の相談窓口に相談してください。

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