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中小企業も健康経営が必要!取り組み手順や事例を紹介

中小企業も健康経営が必要!取り組み手順や事例を紹介

働き方改革の推進により、「健康経営」が企業の経営課題として注目を集めています。

大手企業の取り組みがメディアでよく取り上げられますが、実は中小企業にとっても非常に大切なテーマです。

本記事では、中小企業で健康経営がなぜ必要なのか、具体的な取り組み手順、そして成功事例をいくつかご紹介します。健康経営に関心のある中小企業の経営者や人事部の方は、ぜひ最後までお読みください。

なお、大企業の健康経営については、下記の記事をご覧ください。

関連記事:健康経営の役割とは?3つの効果と取り組み方、大企業の導入事例も紹介

健康経営とは

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康管理や健康増進のための取り組みを投資と捉え、経営的な視点で戦略的に実践する経営手法を指します。

健康経営の考え方が生まれた歴史とその背景、中小企業の健康経営の実態についてみていきます。

健康経営の背景

「健康経営」は、アメリカの経済心理学者、ロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)が『The Healthy Company』(1992年出版)で提唱した概念だとされています。「健康な従業員こそが収益性の高い企業を作る」という主張が基礎となっています。

アメリカでは労働災害が増加する中、公的医療保険がないため、企業が負担する従業員の医療費が深刻な問題となりました。そのため、1990年代ごろから、従業員の健康促進を投資と考えて積極的に健康管理をする動きが広まり始めました。

一方、日本では、2006年からNPO法人健康経営研究会が啓発活動で「健康経営」という言葉を使い始めました。過労死や労働人口の減少といった背景を受けて、中小企業でも健康経営の重要性が認識されるようになりました。

参考文献:『The Healthy Company』(Robert H. Rosen)

中小企業の健康経営の実態

中小企業における健康経営の実態をみると、大企業に比べて取り組みが遅れているという課題があります。

健康経営の認知度についての調査(中小企業経営者10,065社へのアンケート)によると、2017年3月調査では、「健康経営の意味や内容を知っている」(10%)、「言葉だけは聞いたことがある」(42%)、「聞いたことがない、知らない」(48%)であったのに対し、2021年9月調査では、順に22%、47%、31%となっています。

認知度は確実に上がっていますが、健康経営の意味や内容まで把握している中小企業の経営者は低い水準だといえるでしょう。

参考:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年6月)

中小企業に健康経営が必要な理由

中小企業に健康経営が必要な理由

大企業に比べ中小企業では健康経営の取り組みが遅れています。たしかに、中小企業は、資源や知識の限界から取り組むことが難しい場合もあるでしょう。しかし、中小企業こそ健康経営を取り入れることが求められています。その理由を解説します。

理由①企業全体の生産性に直結

健康経営は、企業の生産性向上につながります。従業員の健康が向上すると、仕事の効率が上がり、ミスの発生が減少します。また、健康な従業員は創造性や改革力が高まり、企業の競争力を強化します。

従業員がお互いカバーし合える大企業と異なり、中小企業では従業員が一人いないだけでも業務が滞ることがあり、一人ひとりの健康の重要性が大きいです。

中小企業では、従業員一人のパフォーマンスが企業全体の生産性に影響するといえるでしょう。従業員が健康に働ける環境を整えるためにも健康経営の取り組みが重要です。

理由②離職率・欠勤・休職率の低下

健康経営に取り組むことで、離職率や欠勤率、休職率の低下が期待できます。従業員が心身共に健康であれば、長期的な雇用関係が築かれ、企業としての安定性が向上します。

また、疾病やストレスによる長期の欠勤や休職が減少すれば、従業員の医療費削減にもつながるでしょう。

理由③人材確保につながる

少子高齢化が進む中、経営資源が豊富にある大企業に比べ、中小企業では人材不足がより深刻な問題です。

健康経営により従業員にとって働きやすい環境を提供し、従業員を大切にする企業だと認識されることで、人材が集まりやすくなるでしょう。良い人材の確保と定着は企業の成長にとって不可欠な要素です。

中小企業の健康経営取り組み手順

中小企業の健康経営取り組み手順

中小企業が健康経営を進めるには、以下のような手順を踏むことが良いでしょう。

  • 健康経営宣言
  • 環境整備
  • 具体的な対策
  • 取り組みを評価

参考:経済産業省「中小企業の経営者、人事・労務担当者の皆さま『健康経営』を始めましょう!」

①健康経営宣言

まず、健康経営に取り組むという企業としての決意を社内外に示すために、「健康経営宣言」を行いましょう。

経営陣の関心を高め、社内全体の意識を高めるために、健康経営の重要性を明確にしましょう。健康経営宣言は経営理念の一部に組み込むことで、企業の信頼性とブランドイメージを向上させる効果もあります。

②環境整備

次に、健康経営の取り組みを実施するための環境整備が必要です。経営陣全体で取り組みの必要性について共有し、プロジェクトチームをつくります

その際、企業の人事担当者のみで取り組むのではなく、さまざまな部署や年齢層のメンバーを人選し、役割を決めてチームで取り組むようにすることが望ましいです。

それと同時に、健康経営に対する社内研修も行い、従業員の理解と参加意欲を高めることが大切です。

③具体的な対策

具体的な対策を立てるにあたり、産業医や保健師、労働組合などとも連携し、企業の現状や従業員の健康状態を把握することも大事です。自社の課題や予算に合わせ、取り組み内容や目標を決め、計画を立てていきます。

中小企業では、トップダウンの印象を与えない内容や従業員が自主的に取り組める内容にすることが効果的です。

④取り組みを評価

実践した後は、定期的に取り組みを評価しましょう。健康経営の取り組みはすぐに結果が出るものではなく、継続的な評価が必要です。

チームで定期的に集まり、取り組みの成果や従業員の声などを分析し、改善点を把握します。成果を可視化することで、経営層や従業員のモチベーションを高め、持続的な取り組みを促します。

中小企業の健康経営5つの取り組み事例

中小企業の健康経営5つの取り組み事例

中小企業の健康経営の成功事例を5つご紹介します。

事例①株式会社ケィテック(専門・技術サービス業)

健康経営を導入したきっかけは、客先での技術エンジニアリング業務による過重労働やメンタル不調の従業員が多かったためです。

「1日3食」「睡眠時間」「ウォーキングチャレンジ」「有給休暇取得」「健康セミナーの視聴」「禁煙」など10項目の具体的な健康目標を設定し、達成ごとに各人にポイントを付与する取り組みを実施しました。

その結果、1日3食、有給取得、禁煙の項目で80%以上の従業員が目標を達成し、社内コミュニケーションが促進されました。

事例②日美商事株式会社(卸売業)

メンタルヘルスで入院してしまった従業員が出たことをきっかけに、健康経営に取り組み始めました。

従業員数が少ない企業なので集団で感染症にかかった場合、仕事への影響が大きいということで、インフルエンザ予防接種の費用を全額企業負担にして接種率向上を図りました。2021年度は65%だったのが2022年度は75%と改善が見られました。

健康経営優良法人として認定されたことで、人材採用に対してもプラスの影響をもたらしました。

事例③株式会社アロー(娯楽業)

従業員同士の交流を促進するため、部活を発足したり会社の屋上をランチの場所として開放したりしました。また、健康診断の後にスポーツイベントを行ったり、オンライン環境下では他社や地域住民とも一緒に体力テストを行うなど、従業員の健康意識を高める取り組みを実施しました。

これによって、従業員同士の一体感が強まり、「何でも相談できる、信頼できる上司がいる」と言う人が、以前の60%から80%に上昇しました。また、健康経営優良法人として認定されたことで、健康経営に関する企業からの依頼案件が増加し、業績向上につながりました。

事例④株式会社新井精密(製造業)

従業員のストレス管理に重点を置き、高ストレス者だけでなくストレス指数が高い従業員とも面談を実施する取り組みを開始しました。さらに、24時間の健康相談ダイヤルを周知し、従業員のメンタルサポートを強化しました。

ストレスチェック後の高ストレス者、ストレス指数が高い人へのフォローアップは100%達成。そのうち67%の人から「フォローアップ後の面談で良くなった」との報告があり、従業員の満足度が高まりました。

事例⑤アイデアル株式会社(情報通信業)

「睡眠の質が悪い」と感じている従業員が62%いることが判明し、運動習慣による睡眠の質の向上の取り組みを実施しました。具体的には、全従業員が参加してチーム対抗で「1日平均8,000歩」を目指す歩数チャレンジを実施したところ、全チームが目標をクリアしました。

実施後は81%が「運動習慣に改善がみられた」と回答し、「睡眠の質が悪い」と感じている人は28.4%まで減少しました。

まとめ:中小企業の健康経営は、身近なできることから始めましょう

まとめ:中小企業の健康経営は、身近なできることから始めましょう

中小企業にとって健康経営は非常に重要なテーマです。従業員の健康が企業の生産性や競争力に直結するため、身近な取り組みから始めることが大切です。

健康経営宣言や環境整備、具体的な対策の立案、定期的な評価を行いながら、従業員の健康意識を高め、持続的な取り組みを進めていくことが成功の鍵です。

なかなか一歩が踏み出せなかった中小企業経営者の方も、他社の取り組み事例を参考にして、難しく考えすぎず実践できることから取り組んでいきましょう

健康経営を実践することで、従業員の働きやすさや企業イメージの向上につながります。ぜひ健康経営を取り入れ、企業の成長につなげてください。

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