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健康経営はなぜ採用につながる?その理由と企業の取り組み事例を紹介

健康経営はなぜ採用につながる?その理由と企業の取り組み事例を紹介

人材採用に苦戦している企業や、コストと時間を投資して採用しても離職する人が後を絶たないと嘆いている企業も多いのではないでしょうか。

健康経営に取り組むと、企業はさまざまなメリットを享受します。その一つに、「人材確保と定着」があるといわれています。すなわち、健康経営は人材採用につながるということです。

本記事では、企業が採用に強くならなければいけない背景、健康経営の取り組みが採用につながる理由などについて解説します。また、健康経営への取り組みによって採用や定着に良い効果が出ている企業の事例も紹介します。

採用活動に頭を抱える経営者や人事部の方は、ぜひ最後までお読みください。

関連記事:「健康経営の役割とは?3つの効果と取り組み方、大企業の導入事例も紹介」

関連記事:「中小企業も健康経営が必要!取り組み手順や事例を紹介」

企業が採用に強くならなければならない背景

企業が採用に強くならなければならない背景

企業の採用力はいつの時代も強いに越したことはありません。しかし近年は、採用に強い企業になることが以前にもまして重要となっています。

労働力不足

まず、周知のとおり、日本では少子高齢化が否応なく進んでいます。内閣府の推計によれば、2022年の生産年齢人口(15~64歳)は7,421万人で総人口に占める割合は59.4%。この先、高齢者が増加する一方で労働力が減少していくことが予測されています。

また、2022年に日本商工会議所が行った調査によれば、中小企業の64.9%は「人手が不足している」と回答しています。業種別でみると、「建設業」(77.6%)、「運輸業」(76.6%)で「人手が不足している」の回答が多くなっています。

参照:内閣府「令和5年版高齢社会白書」(PDF)

参照:日本商工会議所「人手不足の状況および新卒採用に関する調査」(2022年)(PDF)

離職率が高い

せっかく採用しても離職してしまい、人材が定着しないことに悩む企業も多いでしょう。

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は、新規大卒就職者が32.3%、新規高卒就職者が37.0%、新規中卒就職者は52.9%。事業所の規模が小さいほど3年以内の離職率が高いです。

また、厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和4年の転職入職者において、離職理由として「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、「職場の人間関係が好ましくなかった」、「給料等収入が少なかった」などが多く挙げられています。

参照:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」(PDF)

参照:厚生労働省「令和4年雇用動向調査」(PDF)

健康経営に向けた国や政府の動向

健康経営に向けた国や政府の動向

近年、国や政府が、健康経営に関する顕彰制度により、優れた健康経営に取り組む法人を評価する環境が整備されています。

健康経営銘柄

経済産業省と東京証券取引所が2014年より実施しているのが「健康経営銘柄」。優れた健康経営に取り組んでいる企業を選ぶ認定制度です。対象は、東京証券取引所の上場企業で、1業種につき1社を選定しています。

長期的に企業価値の向上に注目する投資家や取引先から、高い評価を得られることにもつながっています。

健康経営優良認定制度

経済産業省と日本健康会議が2016年から実施している制度が、「健康経営優良認定制度」です。健康課題に積極的かつ効率的に取り組んだ企業を選びます。大規模企業・法人が対象の「大規模法人部門」と、中小企業・法人が対象の「中小規模法人部門」に分けられています。

2020年から大規模法人の上位500社を「ホワイト500」、中小規模法人の上位500社を「ブライト500」と認定しています。

健康経営関連の助成金

健康経営に取り組むには、内容によってはある程度の金額がかかりますので、助成金をうまく活用して取り組んでいる企業もあります。助成金の一部を紹介します。

  • 働き方改革推進支援助成金:長時間労働の見直しを目的として、労働時間の短縮や有給休暇の促進に取り組む中小企業事業主に、費用の一部を助成
  • 業務改善助成金:事業場内最低賃金引き上げを目的とした助成金。生産性を向上させるために設備投資を行った場合に費用の一部を助成
  • 受動喫煙防止対策助成金:受動喫煙防止のため、分煙室・喫煙室の設置など設備整備を行った場合の助成金
  • 両立支援等助成金:働きながら子育てや介護をする労働者が雇用を継続できるように、職場環境整備に取り組む事業主に対して支給される助成金
  • キャリアアップ助成金:非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成

健康経営はなぜ採用に強い?

健康経営はなぜ採用に強い?

健康経営に取り組むことで、採用や定着につながるといわれているのはなぜでしょうか。その理由としては、主に次の4つがあります。

  • 企業イメージが向上する
  • ホワイト企業をアピールできる
  • 求職者が重視している
  • 離職率低下・定着率向上

企業イメージが向上する

先ほど紹介した「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に認定されると、企業ホームページやSNSで発信しやすくなります。また、メディアから取り上げられることが多くなり、求職者にアピールする機会が増えます。

実際、社員の健康維持に積極的に取り組んでいる企業として、企業イメージが向上し、採用力につながったという企業もあります。

ホワイト企業をアピールできる

多くの求職者は当然ながら「ブラック企業は避けたい」と思っています。ホワイト企業を見分ける目安として、認定制度が増えてきました。先ほど紹介した「健康経営優良法人認定制度」のほか、厚生労働省が実施している「安全衛生優良企業公表制度(ホワイトマーク)」、「くるみん認定(子育て支援)」、「えるぼし認定(女性活躍推進)」などです。

また、2016年より一般財団法人日本次世代企業普及機構が実施している「ホワイト企業認定」があります。ホワイト企業の要件として、70の設問を7つの項目に分けて総合的に評価しています。その中に、「健康経営」という項目が含まれています。すなわち、健康経営はホワイト企業である一つの条件ということです。

ホワイト企業アワードを受賞した効果の一つとして、全ての受賞企業から「新卒者や中途採用者へのリクルート効果を感じられた」という声があがっています。

求職者が重視している

求職者が、健康経営を行っている企業に注目するようになってきました。「健康経営」という言葉があまり知られていなかったころとは違い、今は健康経営に取り組む企業が増えてきました。

そのため、経済産業省の調査でも、就活生やその親も就職先に望む勤務条件として「従業員の健康や働き方への配慮」を重視する人が多いという結果が出ています。その数字は「企業の知名度」や「企業の規模」を抜いています。

さらに、健康経営の具体的な取り組みにも関心を寄せる求職者が増えています。「社員をどのように大切にしてくれる企業なのか」という点は、求職者にとって非常に大事なポイントであるのが現状です。具体的には、ハラスメントやいじめがない、円滑なコミュニケーションがある、過労の問題がない、メンタルヘルス研修が行われているなどです。

参照:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年) (PDF)p52

離職率低下・定着率向上

健康経営に取り組むことで、社員が働きやすい職場になれば、離職率は低下し、定着率が向上します。企業にとって大事なのは、優秀な人材を採用し定着してもらえることです。

健康経営度調査によると、健康経営度の高い企業は離職率が低いという結果が出ています。全国の一般労働者離職率の平均が10.7%であるのに対し、2022年健康経営銘柄では2.5%、2022年健康経営優良法人では4.9%となっています。

参照:経済産業省「健康経営の推進について」(令和4年) (PDF)p38

人材採用・定着につながった企業の取り組み事例

人材採用・定着につながった企業の取り組み事例

最後に、健康経営の取り組みにより、人材採用・定着につながった企業の取り組み事例をご紹介します。

事例①キリンホールディングス株式会社

社員対象の健康リテラシーチェックを実施し、社員の健康意識を向上させることを課題としました。

ストレスチェック時に2種類の方法でプレゼンティーズムを測定し、調査結果を分析して、フィードバックとコンサルタントによる個別報告を実施しました。また、飲酒習慣を社員がセルフチェックし、適正飲酒の啓発研修も開催しています。適正な飲酒実施者の割合が毎年向上し、2019年77.1%から2021年84.6%に向上しました。

健康経営の推進により社外からの高い評価を得ることができ、企業価値向上につながっています。さらに、従業員のエンゲージメント向上やリクルートでも良い影響をもたらしているということです。

事例②ダイヤ工業株式会社

特定の社員に業務が偏っているという課題があり、残業時間を見える化し、メンタルヘルスの研修を実施することで部門長の意識改革も促しました。

具体的な取り組みは、月に1回社員が自身の運動器年齢をチェックすることで健康意識が高まり、全社平均で運動器年齢が2020年の30歳と比べ、2022年には29.1歳に。残業時間も削減されました。

健康経営優良法人認定で、ワークライフバランスの取り組みをアピールすることで、就活生への強い訴求点となっている感触を得ているとのことです。

事例③株式会社美警

警備サービスを提供する同社では、交通警備スタッフの高齢化が進み、健康経営に取り組むことにしました。

定期健康診断の結果をもとに独自の「個人カルテ」を作成し、健康アドバイザーによるLINE健康相談をしています。また、健診の結果をもとに各自が食生活や睡眠時間などを見直す気づきを持つきっかけとしています。減量にチャレンジした6人の社員が12~28kgの減量を達成しました。

「ブライト500」に2年連続認定され、社員の健康を大切にしている活動が新規入職者に評価されているそうです。

事例④A’s社会保険労務士法人

女性社員がほとんどなため、女性特有の健康課題に関心を持つよう、婦人科検診受診率100%を目標としました。女性の健康に関するセミナーの開催や婦人科検診受診の金銭補助を行った結果、対象者全員が婦人科検診を受診しました。

また、子育てとの両立がしやすい職場づくりの一環として、年次有給休暇を入社時より付与するなどさまざまなことに取り組んでいます。社員の離職防止につながり、大手企業とは差別化された人材採用効果を感じているということです。

その他にも、さまざまな業種で独自の取り組みが行われています。皆さんの会社・職場に似た事例を探してみると、取り組みのアイデアとなるでしょう。

参考:日本経済新聞社「ACTION!健康経営・中小規模法人部門」

まとめ:健康経営で、人が集まり離れない企業づくりを

まとめ:健康経営で、人が集まり離れない企業づくりを

少子高齢化による労働力不足、労働環境や人間関係を理由とした離職率の高さなど、多くの企業が人材採用と定着に悩んでいます。

求職者が「入りたい」と思う企業、「辞めたい」と思わない企業づくりをしていくことが求められています。

今、「社員の健康を守る」企業であるかどうかが、企業を選ぶ求職者の重要ポイントの一つになっています。健康経営に取り組むことで、経営陣を含めた社員の意識改革をしていくことは、人を大切にする企業づくりの一歩となるでしょう。

健康経営と業績との関係性については、こちらの記事で紹介します。

関連記事:健康経営と業績向上はつながっている!その理由と企業の事例も紹介(近日公開)

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