心の病気かも…病気の種類や診断、症状について解説
内閣府の調査では、精神疾患(精神障害)者の数は、2002年から2017年までの15年間で150万人以上増加しています。心の病気にかかる人は年々増えており、身体の病気と同様に身近な健康問題だといえるでしょう。
参考:内閣府「令和3年度 障害者白書」(PDF)
働く中でストレスを抱えていても、心の病気といえるレベルなのか自己判断が難しいものです。この記事では、心の病気の種類と診断方法、具体的な症状について解説します。心が疲れているのではないかと感じている人は、ぜひ参考にしてください。
心の病気とは?
心の病気とは、ストレスや遺伝などさまざまな要因によって脳内の機能が変化した状態を指します。
心の病気の診断はこれまでの経過や症状の持続期間、日常生活の支障の程度などさまざまな情報から医師が総合的に判断します。
心の病気は脳に何らかの原因があるとされていますが、症状形成のプロセスが詳しく判明していない部分も多いです。そのため、症状を丁寧に聞き取り、診断基準に当てはまるかどうかで診断することが特徴だといえます。
代表的な心の病気の種類
では、心の病気にはどのような種類があるのでしょうか。厚生労働白書によると、外来に通院する精神障害者のうち、以下の3つの精神疾患の割合が多いことがわかっています。
- 気分障害
- 神経症性障害およびストレス障害
- 統合失調症
代表的な心の病気として、WHOが定める診断基準であるICD-10をもとに、上記の3疾患について解説します。
1.気分障害
気分障害とは、気分の浮き沈みに異常がみられる精神疾患です。楽しい出来事があれば気分は高揚し、つらい状況に陥ると気分が落ち込むというように、通常は状況に応じて変化します。しかし、理由もなく気分が上下する場合は、気分障害の可能性があります。
気分障害は、気持ちが沈む「うつ病」と、沈んだ状態と高揚した状態を繰り返す「双極性障害」に大別されます。
うつ病
うつ病は、興味や喜びの感情が失われてやる気がなくなるなど、気分が落ち込み無気力になる病気です。「自分のせいだ」「生きる価値がない」と罪悪感が強く否定的に考えてしまうといった、思考の変化もみられます。
初期には、食欲の低下や倦怠感、頭痛などの身体症状が目立つ場合が多く、症状に気づくきっかけになるでしょう。
身近な人の死や、過度な業務負担といったストレスが発症の引き金になりますが、誘因なく発症する場合もあります。
双極性障害(躁うつ病)
双極性障害とは、気分の落ち込む状態と「躁状態」と呼ばれるエネルギッシュな状態を繰り返す精神疾患です。躁状態では、頭がさえて口数が増えたり、自信に満ちあふれた気持ちになったりと、活動性が高まった状態です。
活動的すぎると、「怒りっぽくなる」「必要のない買物をする」など、トラブルにつながる行動を起こしやすくなります。一方で、うつ状態に切り替わると何もできなくなってしまうというように、生活状況が不安定になりやすいことが特徴です。
2.神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害とは、ストレスによって心が疲弊した状態を表す精神疾患の種類です。従来は「神経症」と呼ばれたカテゴリーであり、症状は非常に多岐にわたります。代表的な疾患としては以下のようなものが挙げられます。
- 不安障害
- 適応障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 身体表現性障害
上記の4つの病気の症状に関して解説します。
不安障害
不安障害とは、過度な不安や恐怖によって日常生活に支障をおよぼす精神疾患です。突然、強い動悸や息切れに襲われるパニック障害、ささいな物事が不安で落ち着かない全般性不安障害などが代表的です。
不安や恐怖は、脅威となる刺激を知らせてくれる人間の活動には欠かせない感情ですが、その感情の程度が過剰な場合、日常生活に支障をおよぼします。
適応障害
適応障害とは、環境にうまく適応できずに気分が沈む、体調が悪くなるなど、さまざまな症状を引き起こす精神疾患です。「仕事でミスをして落ち込む」というように、生活を送る上ではストレスは避けられません。
しかし、出社できないほどストレスに圧倒されていると生活に支障をきたします。
適応障害は、ストレスに強く反応して日常生活を送る上での支障がみられる場合に診断されます。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSDとは、生命が脅かされるような出来事に遭遇し、怖い思いをした記憶が整理されず、日常生活に支障をきたす精神疾患です。自分の意思に関係なく記憶が想起されたり、警戒心からさまざまな物事に過敏になったりするといった症状が特徴です。
さらに、出来事に関連する場所を避けたり、現実感がなくなったりする場合もあります。
身体表現性障害
痛みやしびれ、吐き気などの身体症状を自覚しているにもかかわらず、検査をしても異常が見つからない状態を指す精神疾患です。また、「自分は病気なのではないか」と過度に心配することもあります。
自覚する身体症状の多くは、ストレスによるものだと考えられています。しかし、心の問題だと気づかず、内科をはじめとする一般科を受診するため、治療が長期化することが多いといえます。
3.統合失調症
統合失調症とは、考えのまとまりや現実的な感覚に異常がみられる精神疾患です。「だれかが自分の悪口を言っている」という幻聴、「だれかが自分を見張っている」という妄想など、現実的でない体験が生じます。
幻聴や幻覚などの非現実的な体験が活性化する陽性症状と、意欲の低下を示す陰性症状を繰り返し、長期にわたる傾向にあります。
心の病気の原因とは?
心の病気は、こころの脆弱性とストレスが複合的に絡み合って生じるという「ストレス脆弱性モデル」という考え方が主流です。
こころの脆弱性は、精神疾患にかかりやすい体質や環境を指します。具体的には、遺伝子や幼少期の経験、経済状況など、個人にすでに備わった性質により決まります。
素因にストレスが加わることにより、精神疾患が発症するとされます。上記で紹介した精神疾患のうち、気分障害や統合失調症は素因、神経症性障害はストレスの割合が大きいと考えられています。
心の病気の治療方法は?
心の病気の治療方法としては、薬物治療や生活習慣の安定、カウンセリングといった方法を主体として行います。
薬物治療では、精神疾患により崩れた脳内神経伝達物質のバランスを整えます。たとえば、うつ病はセロトニンの減少が原因の一つとして挙げられています。そのため、セロトニンを増やす抗うつ薬を用いて、脳機能を正常化させることが現代の治療法の一つです。
また、精神症状で乱れた生活習慣の改善も必要です。決まった時間に就寝し、起床時に日光を浴びて睡眠リズムを整えたり、デイケアやリワークへ通所しリハビリをしたりします。さらに、カウンセリングを通して、ストレスへの対処能力を高め再発を予防することも大切です。
まとめ:つらいときは迷わず受診を考えましょう
心の病気は目に見えないため、自覚症状から推測することが難しい場合があります。
紹介した症状や病気に当てはまる場合は、精神科や心療内科などの専門科への受診がおすすめです。
症状に当てはまらなくても、精神的につらい場合には我慢せず、一度受診を検討してください。