【医師監修】気圧の不調(気象病)原因と対策|個人と企業の改善方法

この記事のポイント

  • 気圧による体調不良(気象病)は、内耳が気圧の変化を感知し、自律神経が乱れることで発生します。
  • 個人でできる対策には、耳マッサージなどの即時的なケアと、生活習慣を見直す根本的な体質改善があります。
  • 企業では、従業員の生産性維持のために、テレワークやフレックスタイム制度の導入といった健康経営の視点での対策が有効です。

「雨が降る前になると、決まって頭がズキズキ痛む」

「台風が近づくと、体がだるくて何もやる気が起きない」

「季節の変わり目は、めまいや気分の落ち込みがひどい」

天候の変化に伴って現れる原因不明の体調不良は、「気象病」や「天気痛」と呼ばれるものかもしれません。

決して「気のせい」や「甘え」ではなく、多くの人が同じような悩みを抱える心身の反応です。不調が起こる背景には、科学的なメカニズムがあります。

この記事では、気圧による体調不良の根本原因から、個人ですぐに実践できる具体的な対策、さらには企業担当者様向けの「健康経営」アプローチまで、専門家の監修のもと網羅的に解説します。

天気に影響されずご自身の力で体調をコントロールするために、確かな知識と具体的な手法を見つけてください。

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目次

もしかして気象病?あなたの不調の原因をセルフチェック

気象病のリスク確認している様子のイラスト

気圧による体調不良は、一般的に「気象病」や「天気痛」と呼ばれます。

不調が気象病に関連しているかは、症状のパターンや身体的特徴、生活習慣に関する項目をセルフチェックすることで、ある程度の傾向を把握することが可能です。

【気象病セルフチェックリスト】

気象病セルフチェックリスト

気象病セルフチェックリスト

ご自身の体調と天候の関係をチェックしてみましょう。

症状のパターン

身体的な特徴

生活習慣

【注意点】

このセルフチェックは、特定の疾患の診断基準として確立されたものではありませんが、気象病を専門とする医師の臨床知見や、気象病の主な原因と考えられている「内耳の敏感さ」「自律神経の乱れ」「痛みの既往歴(片頭痛など)」といった関連する代表的な項目をもとに作成されています。ご自身の症状の傾向を把握するための参考情報であり、医学的な診断を下すものではありません。正確な診断には、医師による問診や検査が必要です。

当てはまる項目が少なかったり、全く当てはまらなかったりした場合でも、天候の変化に伴って特定のつらい症状(頭痛、めまい、倦怠感など)が繰り返し起こる場合は、我慢せずに医療機関へご相談ください。

セルフチェック項目は、気圧の変化を感知する「内耳」の機能や、体調をコントロールする「自律神経」のバランスと深く関わっています。

次の章では、なぜこれらの特徴が気圧による不調につながるのか、その科学的なメカニズムを詳しく見ていきましょう。

気象病(天気痛)とは?気圧が体に影響する科学的メカニズム

気圧の変化を内耳が感知し、自律神経のバランスが乱れる気象病の科学的メカニズムを示した図解イラスト

気圧による体調不良は、気のせいではなく、体内で起きる生理的反応によるものです。背景には、私たちの体に備わっている精巧なセンサーと、全身をコントロールする神経の働きが関与しています。

なぜ気圧の変化が頭痛やめまいを引き起こすのか、科学的なメカニズムを解説します。

参考:PAIN RESEARCH「気象関連性疼痛のメカニズム」

参考:日本頭痛学会「頭痛診療ガイドライン2021」

天気痛の概要
主なポイント 解説
定義 気象の変化で起こる不調の総称(症候群)であり、正式な病名ではない
気圧センサー 耳の最も奥にある「内耳」が、気圧のわずかな変化を敏感に感知する
根本原因 内耳からの情報で脳が混乱し、「自律神経」のバランスが崩れること
症状の発生 自律神経の乱れが三叉神経の興奮や感覚のミスマッチを引き起こし、頭痛やめまいなどを誘発する。

気象病は正式な病名ではない

まず知っておくべき重要な点は、「気象病」が国際的な疾病分類において、独立した疾患として正式に認められてはいないということです。

気象病とは特定の病気ではなく、気圧、気温、湿度といった気象条件の変化で生じる、心身のさまざまな不調の総称(症候群)として捉えられています。

正式な病名がないため、症状を訴えても周囲から「気のせい」や「甘え」と誤解されたり、職場での理解が得にくかったりといった苦しさにもつながりやすいです。

体の“気圧センサー”は「内耳」にある

では、私たちの体はどのようにして気圧の変化を察知しているのでしょうか。

気圧の変化を察知するのに大切な役割を果たすのが、耳の最も奥にある「内耳」です。内耳は、音を聞き取る「蝸牛(かぎゅう)」と、体のバランスを保つ「前庭(ぜんてい)」から成り立っています。

とくに、内耳の前庭器官が気圧のわずかな変化を敏感に感知する「気圧センサー」として機能していると考えられています。

乗り物酔いをしやすい人が気象病になりやすい傾向があるのは、内耳がもともと敏感であるためです。

自律神経の乱れが多様な不調を引き起こす

内耳が気圧の変化を感知すると、その情報は脳へと伝達されます。情報を受け取った脳は、体をストレスから守ろうとして、自律神経系に影響を与えます。

自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の2種類があります。気圧が低下すると自律神経のバランスが崩れ、とくに交感神経が過剰に活発になることがあります。

自律神経のバランスが崩れることで、頭痛やめまい、だるさ、気分の落ち込みなどの症状を引き起こす原因と考えられています。

なぜ頭痛・めまい・だるさが起きるのか?症状別のメカニズム

自律神経が乱れると、なぜ気象病の症状が生じるのでしょうか。代表的な症状を例に見てみましょう。

主な症状とメカニズム
症状 主なメカニズム
頭痛(特に片頭痛) ① 気圧の変化などが引き金となり、脳の「三叉神経」が刺激される。
② 痛み物質(CGRPなど)が放出される。
③ 脳の血管が拡張し、その周囲に炎症が起きて拍動性の痛みが発生する。
自律神経の乱れが、この一連の反応のきっかけになるとされている。
めまい ① 内耳は「気圧が変化し、体のバランスが崩れた」という情報を脳に送る。
② 目からの視覚情報は「周囲は揺れていない」と伝える。
脳がこの情報の不一致(ミスマッチ)によって混乱し、めまいや吐き気を引き起こす。
だるさ・倦怠感 ① 気圧の低下というストレスに対し、体が過剰に防衛反応を示す。
交感神経が興奮し続け、エネルギーを無駄に消耗してしまう。
③ 全身の倦怠感や「やる気が出ない」といった症状につながる。

気象病の症状は、はっきりとした科学的メカニズムにもとづいて発生します。

原因を正しく理解することで、より効果的な対策へつなげられます。

【即時対策】症状が辛い時にすぐできる!気象病のセルフケア

気象病の即時対策である耳マッサージ、ツボ押し、漢方薬のセルフケアをイメージしたイラスト

つらい症状が現れたときには、内耳の血行を整える「耳マッサージ」や症状を緩和する「ツボ押し」、「薬や漢方薬」の活用という3つのアプローチが有効です。

症状を一時的に和らげるための即時的なセルフケアとして、場所を選ばず手軽に実践できます。

1. 内耳の血行を整える「くるくる耳マッサージ」

対策の種類
1. 耳マッサージ
主な目的と方法
気圧センサーである内耳の血行を促進し、過敏な反応を和らげる。耳をゆっくり引っ張ったり、回したりする。
対策の種類
2. ツボ押し
主な目的と方法
東洋医学の知見を活用し、めまいや頭痛などの各症状に対応するツボ(内関・完骨など)を刺激する。
対策の種類
3. 薬・漢方薬
主な目的と方法
症状に応じて鎮痛薬や酔い止め薬を活用する。体内の水分バランスを整える漢方薬「五苓散」も有効。

気圧センサーである内耳の機能を安定させるには、耳周りの血行を促進することが最も効果的です。

以下のマッサージは、仕事の合間や移動中でも手軽に行えます。

  1. 両耳を軽くつまみ、上・横・にそれぞれ5秒ずつ、ゆっくり引っ張ります。
  2. 耳を軽く横に引っ張りながら、後ろ方向にゆっくりと5回まわします。
  3. 耳全体を包むように、前方にパタンと折り曲げ、5秒間キープします。
  4. 手のひらで耳全体を覆い、後ろ方向に円を描くようにゆっくりと5回まわします。

また、蒸しタオルや温かいペットボトルなどで耳の周りを直接温めるのも、血行が促進され、リラックス効果も期待できるのでおすすめです。

2. 症状を和らげる効果が期待できるツボ

東洋医学の観点から、症状緩和に役立つツボ押しも有効な手段です。痛気持ちいいくらいの強さで、ゆっくりと押してみてください。

頭痛やめまいに効くツボ
ツボの名前 効果 場所
内関(ないかん) めまい、吐き気 手首の内側のしわから、指3本分ひじ側。
完骨(かんこつ) 頭痛、首こり 耳の後ろにある出っ張った骨(乳様突起)の下のくぼみ。
百会(ひゃくえ) 自律神経を整える 頭のてっぺん、両耳を結んだ線と顔の中心線が交わる場所。

3. 薬や漢方薬の上手な使い方

セルフケアで改善しないつらい症状には、薬を上手に活用することも大切です。

鎮痛薬

ズキズキする頭痛には、アセトアミノフェンという成分の市販の鎮痛薬が有効です。症状が出始めたら、我慢せずに早めに服用するのがポイントです。

酔い止め薬

めまいや吐き気の症状には、抗ヒスタミン成分などが含まれた乗り物酔いの薬が効果を発揮することがあります。内耳の過敏な反応を和らげる働きが期待できます。

漢方薬

漢方では、気象病は体内の水分バランスの乱れ(水滞・水毒)が原因の一つと考えられています。

特に「五苓散(ごれいさん)」は、体内の水分循環を整えることで、頭痛、めまい、むくみなど幅広い症状に効果が期待できる代表的な処方です。

参考:熊本大学「五苓散(ソウジュツ配合)の天気頭痛への効果を発見」

即時的な対策は、あくまで一時的に症状を緩和するものです。なお、薬や漢方薬の使用に際しては、薬剤師や医師に確認してから使用することが推奨されます。

次に、天気に左右されない体を作るための、根本的な対策について見ていきましょう。

【根本対策】天気に左右されないための体質改善と生活習慣

食事、運動、睡眠、予防アプリの活用といった気象病の根本対策となる生活習慣のイラスト

気圧の変化に負けない体をつくるためには、日々の生活習慣を見直し、自律神経のバランスを整えておくことが大切です。

継続することで気象病の症状が出にくい体質へ改善できます。

食事、運動、そして予防という観点から、根本的な対策をご紹介します。

セルフケア(体質改善)
対策の種類 主な目的と方法
1. 食事 自律神経の働きを支える栄養素(ビタミンB群、マグネシウム等)を意識的に摂取する。
2. 運動 ウォーキングヨガなどの有酸素運動で全身の血行を促進し、自律神経のバランスを整える。
3. 睡眠・ストレスケア 規則正しい生活ストレス管理で、体内時計と心の安定を図る。
4. 予防 予測アプリ「頭痛ーる」「痛み日記」を活用し、症状を予測して先回りのケアを行う。

食事:自律神経を整える栄養素を意識する

毎日の食事が、自律神経の働きを支える土台となります。

以下の栄養素を意識的に取り入れてみましょう。

自律神経を整える栄養素
栄養素/食材の種類 働き・効果 多く含まれる食品の例
ビタミンB群 神経の働きを正常に保ち、自律神経のバランスを整える。 豚肉、うなぎ、玄米、納豆など
マグネシウム 神経の興奮を抑え、精神を安定させる。 アーモンドなどのナッツ類、ひじき、ほうれん草など
トリプトファン 気分や活力の安定につながるセロトニンの生成の原料になる。 乳製品、大豆製品、バナナなど
ビタミンB6 セロトニンの合成を補助する。 鶏肉、まぐろ、かつおなど
体を温める食材 血行をよくし、自律神経の乱れを防ぐ。 しょうが、根菜類など

運動:無理なく続けられる有酸素運動

適度な運動は、全身の血行を促進し、自律神経のバランスを整える方法の一つです。

激しい運動である必要はありません。ウォーキングやヨガ、軽いストレッチなどの心地よいと感じる程度の有酸素運動を週に2〜3回、習慣にすることを目指しましょう。

とくに、朝の時間帯に運動を行うと体内時計がリセットされ、夜の質の良い睡眠にもつながります。

睡眠とストレスケア:体内時計と心の安定

自律神経の安定には、規則正しい生活リズムが何よりも大切です。具体的には、「体内時計」や「ストレスマネジメント」が生活リズム安定の鍵です。

1. 体内時計を整える

毎日なるべく同じ時間に起き、同じ時間に寝ることを心がけましょう。とくに、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びることが大切です。体内時計をリセットし、交感神経と副交感神経のスムーズな切り替えを促すために非常に効果的です。

2. ストレスを上手に管理する

精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、気象病の症状を悪化させる重要な要因です。

ストレスは交感神経を過剰に興奮させ、痛みを抑制する脳内システム(下降性疼痛抑制系)の働きを弱めることで、痛みをより強く感じやすくさせる(痛覚過敏)ことが知られています。

また、症状への不安感がさらにストレスを高め、症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあります。そのため、日々の生活の中で、意識的に心身をリラックスさせる時間を作りましょう。

たとえば、ぬるめのお湯での入浴や、就寝前の軽いストレッチ、腹式呼吸などは、副交感神経を優位にし、心身の緊張を和らげるのに役立ちます。

また、ヨガやマインドフルネス瞑想といった手法を取り入れることも、ストレス耐性を高める上で非常に有効であることが科学的に示されています。

参考:Abdallah CG, Geha P. Chronic Pain and Chronic Stress: Two Sides of the Same Coin?. Chronic Stress (Thousand Oaks). 2017;1:2470547017704763. doi:10.1177/2470547017704763

参考:Tracey I, Mantyh PW. The cerebral signature for pain perception and its modulation. Neuron. 2007;55(3):377-391. doi:10.1016/j.neuron.2007.07.012

予防:予測アプリの活用と「痛み日記」のすすめ

気象病対策で最も重要なのは、症状が出てから対処するのではなく、「症状が出る前に予防的にケアを始める」ことです。

予防的なケアには、気圧変動を予測するアプリや症状を記録する日記の活用が有効です。

予測アプリの活用

スマートフォンアプリ「頭痛ーる」などは、気圧の変動をグラフで予測し、体調不調のリスクが高い時間帯をプッシュ通知で知らせてくれます。

「明日は気圧が下がるから、今日は早めに寝よう」といった先回りの行動が可能になります。

「痛み日記」のすすめ

自分の症状がいつ、どのような天気の時に、どのくらいの強さで出るのかを記録する「痛み日記」をつけることもおすすめです。

1か月ほど続けると、自分特有の症状のパターンや、どんな対策が効果的だったかがわかります。記録は、後に医療機関を受診する際にも、医師に症状を正確に伝えるための貴重な情報となります。

【専門家による治療】セルフケアで改善しない場合の選択肢

医師に気象病の症状を相談し、専門的な治療法について説明を受けている様子のイラスト

セルフケアを試しても、日常生活に支障が出るほどのつらい症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。

症状別の受診に適した診療科と主な治療法について解説します。

何科を受診すべき?主な診療科と役割

気象病の症状は多岐にわたるため、どの症状が最もつらいかによって、受診すべき診療科が異なります。

症状別の受診先の例
受診先の例 このような症状の時に 主な治療法
耳鼻咽喉科 めまい、ふらつき、耳鳴りが特に強い 内耳機能の検査、薬物療法
神経内科 ズキズキとした頭痛(片頭痛)が主症状 頭痛の正確な診断、予防薬(CGRP関連製剤など)
精神科・心療内科 気分の落ち込みや不安感が強い カウンセリング、自律神経調整薬など
漢方内科 全身のだるさや冷えなど、体質から改善したい 個々の体質(証)に合わせた漢方薬の処方

どの科に行けばよいか迷う場合は、まずはかかりつけの内科医に相談し、適切な専門科を紹介してもらうのも良いでしょう。

病院で行われる主な治療法

病院では、市販薬よりも専門的な薬物療法や、特殊なリハビリテーションなどが行われます。

片頭痛の予防薬(CGRP関連製剤など)

気圧の変化が引き金となる片頭痛が月に何度も起こるような重症の場合、発作を未然に防ぐための「予防薬」が処方されることがあります。

CGRP関連製剤は、頭痛の発生そのものを抑える新しいタイプの注射薬です。

前庭リハビリテーション(VRT)

めまいやふらつきが主な症状の場合に有効な理学療法です。内耳の機能を改善し、視線の安定化や症状悪化につながる動作への慣れなどが生じることを目指します。

参考:奈良理学療法学第17号「めまい・ふらつきに対するリハビリテーション ~前庭理学療法という新たな領域~」

体質に合わせた漢方薬

セルフケアで用いられる市販の漢方薬とは異なり、医師はより専門的な観点から、患者一人ひとりの体力や体質(証)を診断し、最適な漢方薬を処方します。

えば、市販でも手に入る五苓散に加え、「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」や「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」など、根本的な体質改善を目指した処方が行われます。

セルフケアは非常に重要ですが、専門家の診断を仰ぐことで、より効果的な治療を受けられることを覚えておきましょう。

【法人向け】従業員の生産性を守る「健康経営」としての気象病対策

企業がテレワーク導入などで従業員の健康を守る「健康経営」としての気象病対策のイメージイラスト

気象病は個人の問題だけでなく、企業にとって無視できない「経営課題」です。

頭痛やめまいなど気象病の症状が従業員のパフォーマンス低下や欠勤に影響するため、企業が行う対策は「健康経営」の一環といえます。

企業ができる対策例
対策ステップ 主な取り組み内容 目的
STEP1: 理解と実態把握 経営層が問題を「経営課題」として認識し、社内アンケート等で現状を可視化する。 対策の必要性について全社的な合意を形成する。
STEP2: 柔軟な働き方の導入 テレワークフレックスタイム制度を導入・拡充する。 従業員が体調に応じて無理なく働ける環境を提供する。
STEP3: 職場環境の整備 オフィスの温湿度管理の徹底や、服装規定を緩和する。 物理的なストレスを軽減し、自律神経の乱れを防ぐ。
STEP4: 啓発と支援体制 管理職向け研修や産業医によるセミナーを実施し、相談しやすい風土を醸成する。 正しい知識を共有し、組織全体でのサポート体制を構築する。

なぜ企業に対策が必要か?生産性への影響と経済的損失

まず、気象病による影響をデータで見てみましょう。

日本国内における気象病の患者数は約1000万人と推定され、国民の約12人に1人にあたります。

また、これまでの調査では気象病による頭痛(天気痛)を抱える人の5人に1人は学校や仕事を休むなど支障があるという報告もあります。

単なる欠勤だけでなく、出勤していても、頭痛やだるさ、パフォーマンスを発揮できない状態である「プレゼンティーズム」をもたらします。

プレゼンティーズムによる生産性の低下は、企業にとっては深刻な経済的損失です。

従業員の健康を守り、生産性を維持するために、企業主導の対策が不可欠です。

参考:PAIN RESEARCH「気象関連痛(天気痛)の疫学、臨床的特徴と発症予測情報サービス」

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明日からできる導入ステップと体制構築

気象病対策は、以下の4つのステップで段階的に進めることが効果的です。

STEP1: 経営層の理解と実態把握

まずは経営層が気象病による生産性低下の改善を「経営課題」として認識することが第一歩です。

その上で、匿名のアンケート調査などを実施し、自社内にどのくらいの従業員が悩んでいるのか、業務にどの程度影響が出ているのかをデータで可視化します。

STEP2: 柔軟な働き方の導入

最も効果的な対策の一つが、従業員が体調に応じて働き方を柔軟に選択できる制度の導入です。

  • テレワーク制度: 通勤の負担をなくし、自宅で休憩を取りながら業務を進めることを可能にします。
  • フレックスタイム制度: 症状が辛い時間帯を避け、比較的体調の良い時間に集中して働くことを可能にします。

STEP3: 職場環境の整備

気圧や温度変化による不調を防止するため、オフィス環境を整えることも重要です。たとえば、以下のような対策が考えられます。

  • 温湿度管理: オフィス内に温湿度計を設置し、急激な温度変化が起きないように室温を18〜28℃、湿度を40〜70%の範囲になるように空調を管理します。
  • 服装規定の緩和: 従業員が自分で体温調節しやすいよう、ビジネスカジュアルなどを推奨します。

参考:e-Gov法令検索「事務所衛生基準規則」

STEP4: 啓発活動と相談体制の構築

全社的な理解を深めるための教育も欠かせません。全従業員に向けて啓蒙活動を行うとともに、部下からの相談に対応できるよう管理職向けの研修を行いましょう。

  • 全従業員向けセミナー: 産業医などを講師に招き、セルフケアの方法や利用できる社内制度について周知します。
  • 管理職向け研修: 部下から相談を受けた際に適切に対応できるよう、気象病のメカニズムや会社の制度について研修を実施します。症状を「甘え」と見なさない、心理的安全性の高い職場風土の醸成が求められます。

効果測定と先進企業の事例

施策を導入するだけでなく、効果測定と改善を続けていくことが重要です。

「気圧が急変した日の欠勤率」や「フレックスタイム制度の利用率」、「従業員サーベイにおけるQOLスコア」などをKPI(重要業績評価指標)として定期的に把握しましょう。

ロート製薬や花王などでは、全社の健康データを「健康白書」としてまとめ、科学的根拠にもとづいた健康経営を推進しています。

気象病対策を全社的なウェルネス戦略に生かす方法として参考になります。

【ケース別】子ども・高齢者・職場環境ごとの注意点と対策

子ども、高齢者、働く環境ごとの気象病に関する注意点と対策を示したイラスト

気圧による体調不良は、年齢や性別、置かれている環境によって、現れ方や注意すべき点が異なります。

さまざまなケースに応じた対策ポイントを解説します。

ご自身やご家族、職場の状況に合わせて参考にしてください。

対象者別の注意点と対策
対象 主な注意点 対策のポイント
子ども 症状をうまく言語化できず、「朝起きられない」「イライラする」などのサインで現れる。学校では「欠席」扱いになる課題がある。 保護者がサインに気づき、学校側と連携して症状の背景を丁寧に説明し、理解を求めることが重要。
高齢者 自律神経の機能低下基礎疾患により影響を受けやすい。めまい・ふらつきによる転倒リスクやヒートショックに注意が必要。 不要な外出を避け、手すりの設置など室内の環境整備を徹底する。
働き方・職場別 リモートワークでは運動不足、オフィスでは空調、屋外労働では熱中症、運輸業では事故リスクなど、環境特有の課題がある。 各環境のリスクを認識し、意識的な運動、自己防衛、厳格な安全管理など、状況に応じた対策を講じる。

子どもの不調サインと学校での課題

大人のように、子どもは自分の症状をうまく言葉で説明できないことがあります。「朝起きられない」「なんとなく元気がない」「イライラしている」などは、実は気象病のサインかもしれません。

保護者がとくに直面するのが、学校の欠席の扱いです。気象病は正式な病気の名称ではないため、症状が重くて学校を休んでも通常の「欠席」扱いになってしまいます。

内申点などへの影響を不安に思うお子さんや保護者にとっては、大きなストレスとなり得ます。

学校側と密に連携を取り、症状の背景にある医学的なメカニズムを丁寧に説明し、理解を求めていく姿勢が重要です。

高齢者が特に注意すべきこと

高齢者は、加齢に伴い自律神経の調整機能が低下しています。さらに、高血圧や関節痛などの基礎疾患を抱えていることが多く、気圧の変化による影響を受けやすい傾向があります。

とくに注意したいのが、めまいやふらつきによる転倒リスクです。雨の日や台風の接近時は、不要な外出を避ける、室内の段差をなくす、手すりを設置するなどの環境整備が命を守ることにつながります。

また、冬場の急激な温度差によるヒートショックにも注意が必要です。

働き方・職場環境別の対策ポイント

現代の多様な働き方に合わせた対策も必要です。リモートワークやオフィス、屋外など、環境に応じた対策を行いましょう。

リモートワーク

通勤の負担がない反面、運動不足や生活リズムの乱れを招きがちです。意識的に朝の散歩を取り入れたり、時間を区切ってストレッチを行ったりと、オンオフのメリハリをつけることが重要です。

オフィス勤務

「空調の風が直接当たる」「足元だけが冷える」といった環境は、自律神経の乱れを助長します。ひざ掛けやカーディガンで自己防衛するとともに、職場全体でサーキュレーターを活用して空気を循環させるなどの配慮が求められます。

屋外労働(建設業など)

気象病のリスクに加え、夏場は熱中症との複合的なリスク管理が不可欠です。WBGT値(暑さ指数)に基づいた厳格な休憩管理や、水分・塩分補給の徹底が求められます。

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運輸業

ドライバーの体調不調は、重大事故に直結する可能性があります。運行前の体調確認の徹底はもちろん、体調に異変を感じた際に、気兼なく報告・休憩できるルール作りと職場風土が極めて重要です。

気圧と体調不良に関するよくある質問(FAQ)

気圧による体調不良(気象病)に関するよくある質問(FAQ)のイメージイラスト

気圧と体調不良に関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式でお答えします。

Q. 気圧がどれくらい変化すると症状が出やすいですか?

A. 一概に「何hPa(ヘクトパスカル)の変化で症状が出る」という明確な基準はありません。

台風の接近時のような大きな気圧低下はもちろんですが、人によってはごくわずかな変化でも敏感に反応することがあります。

重要なのは、自分自身の体調がどのような気圧パターンで変化しやすいかを知ることです。

たとえば、予測アプリを活用した「痛み日記」での記録がおすすめです。「気圧が低下するときに頭痛がひどくなっている」など症状の傾向を把握でき、早めの対策を取ることが可能になります。

Q. 症状を「甘え」だと言われます。どう説明すればいいですか?

A. 気象病がまだ社会的に広く認知されていないため、つらい思いをされる人も少なくありません。

周囲の方に説明するときは、感情論ではなく科学的根拠にもとづいて伝えることで、理解を得やすくなります。

たとえば、「耳の奥にあるセンサーが気圧の変化に過敏に反応してしまい、脳や自律神経が混乱して頭痛やめまいなどが起こる、体の生理的な反応なんです」と伝えることが望ましいでしょう。気象病が生じる身体のメカニズムをわかりやすく伝えることが大切です。

Q. 飛行機や新幹線、高層階のオフィスでも不調になりますか?

A. はい、なり得ます。飛行機の上昇・下降時や、トンネルの多い新幹線、高速エレベーターでの移動は、短時間で大きな気圧の変化にさらされる環境です。

気圧の変化が大きい環境では、体の内側からかかる圧力と外からかかる圧力のバランスが崩れ、内耳が刺激されます。、

そのため、気象病と全く同じメカニズムで頭痛や耳の痛みといった症状が引き起こされることがあります。

Q. 保険適用や公的なサポートはありますか?

A. 残念ながら、現状では「気象病」という病名で健康保険が適用されたり、公的なサポート制度の対象となったりすることはありません。

気象病は、国際的な疾病分類に正式な疾患として含まれていないためです。

ただし、頭痛、めまい、うつ症状など、現れている症状に対する診察や治療、薬の処方は、もちろん健康保険の適用となります。

つらい症状は我慢せず、専門の医療機関に相談することが大切です。

まとめ:気圧による不調は、原因を正しく理解し、主体的に行動することでコントロールできます。

天候の変化は私たちにはコントロールできませんが、引き起こされる体調不良は、決して耐えることしか対処方法がないわけではありません。

気象病が起こるメカニズムや自分の症状が悪化するタイミングを理解し、早めの対策を取ることで症状を軽くしていくことは可能です。

つらい症状に悩んでいる場合には、まずは「くるくる耳マッサージ」やツボ押しから試してみてください。

また、組織が従業員の健康と生産性の両立を目指しているなら、気象病対策を「健康経営」の新たな一手として検討してみてはいかがでしょうか。

合同会社SUGARでは、気象病などの従業員の健康に関して、研修やスポット相談など、企業の状況に応じた健康経営コンサルティングを提供しております。組織としての対策をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。

  1. 気圧がどれくらい変化すると体調不良の症状が出やすいですか?

    一概に「何hPaの変化で症状が出る」という明確な基準はありません。気圧の大きな低下(台風など)はもちろん、わずかな変化でも敏感に反応する人がいます。重要なのは、単なる気圧の数値だけでなく、ご自身の体調がどのような気圧パターン(低下時、上昇時、または変動の大きさ)で変化しやすいかを知ることです。予測アプリなどを活用し「痛み日記」をつけることで、ご自身の症状の傾向を把握し、早めの対策をとることが可能になります。

  2. 気象病の症状を「甘え」や「気のせい」だと言われます。周囲にどう説明すれば理解してもらえますか?

    気象病がまだ社会的に広く認知されていないため、辛い思いをされる方も少なくありません。周囲の方に説明する際は、「耳の奥にあるセンサーが気圧の変化に過敏に反応してしまい、脳や自律神経が混乱して頭痛やめまいなどが起こる、体の生理的な反応なんです」といったように、感情論ではなく科学的なメカニズムにもどづいて伝えると、理解を得やすくなります。この記事で解説しているメカニズムの部分を参考にしてみてください。

  3. 気象病は病院で治療できますか?保険は適用されますか

    「気象病」という病名で保険適用となるわけではありませんが、頭痛、めまい、うつ症状など、現れている個々の症状に対する診察や治療、薬の処方は健康保険の適用となります。セルフケアで改善が見られない場合は、我慢せずに専門の医療機関(耳鼻咽喉科、神経内科、精神科、漢方内科など)にご相談ください。

  4. 企業として気象病に従業員のためにできることはありますか?

    はい、企業としてできる対策は多くあります。まず、気象病が生産性に影響を与える経営課題であると認識することが重要です。具体的な施策としては、体調が悪い日に無理なく働ける「テレワーク」や「フレックスタイム制度」の導入、管理職への研修による正しい知識の普及、産業医や保健師による相談体制の構築などが挙げられます。これらは従業員のエンゲージメントを高め、企業の持続的な成長につながる「健康経営」の一環として非常に有効です。

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