短時間睡眠は健康や作業効率に影響する?睡眠不足の対処法も紹介
仕事もプライベートの時間も忙しく過ごすビジネスパーソンにとって、睡眠不足は切っても切り離せない悩みの一つです。慢性的な睡眠不足は健康面や作業効率に悪影響を及ぼすと考えられています。働く上では、適切な睡眠習慣を確保し、睡眠不足を解消することが大切です。
本記事では、短時間睡眠や睡眠不足がもたらす影響や、睡眠不足を解消する方法について解説しています。厚生労働省のガイドラインである「健康づくりのための睡眠ガイド2023」から、正しい知見をもとに説明します。
「睡眠不足を解消したい」「時間の確保が難しいが、睡眠の質を上げたい」とお悩みの人は、ぜひ参考にしてみてください。
短時間睡眠を続けると何が起こる?
一般的には短時間睡眠が慢性化すると、健康上のリスクが高いとされています。睡眠時間が6時間未満だと、7時間以上8時間未満の人に比べて、心血管疾患のリスクが4.95倍となることがわかっています。その他に明らかとなっているのが、肥満や糖尿病、うつ病などのリスクです。
健康を考えると、少なくとも6時間以上の睡眠が望ましいといえるでしょう。一方で、睡眠時間が長すぎても健康上のリスクを高めてしまうとされており、おおむね6~8時間が適正時間内です。
ただし、睡眠時間が5時間で足りるという人もいれば、10時間必要という人もいます。適正時間でないと健康を損ねるわけではなく、「自分が眠れていると思うか」という主観的な感覚を重視するとよいでしょう。
睡眠不足がもたらす影響
具体的には、睡眠不足が続くとどのような影響をもたらすのでしょうか。身体面、精神面、行動面と、3つの側面から解説します。
身体面:生活習慣病のリスク
睡眠不足による健康上のリスクはさまざまな研究で明らかになっています。代表的な疾患や症状としては、以下のものが挙げられます。
- 肥満、メタボリックシンドローム
- 高血圧
- 糖尿病
- 心疾患
- 脳血管疾患
- 認知症
睡眠不足は、生活習慣病や認知症の引き金になる可能性があるでしょう。40歳から64歳までの年代では、睡眠が短時間になるにつれて総死亡率が増加することがわかっています。年齢を重ねるにつれて生活習慣病となり、健康を損ねてしまうことが多くなると考えられます。
精神面:ストレスに反応しやすくなる
睡眠不足が続くと、感情をつかさどる扁桃(へんとう)体の働きが強くなり、ネガティブな刺激に過剰に反応しやすくなります。たとえば、他人が恐怖を感じた表情に強く反応するようになり、抑うつや感情の不安定さを引き起こしやすいでしょう。
また、睡眠不足により、自律神経系のうち交感神経が優位な状態になります。そのため、イライラや不安、動悸(どうき)、胃部の不快感などのストレス症状が強く出やすくなるでしょう。
行動面:パフォーマンスが低下する
慢性的な睡眠不足は、集中力や判断力などの認知機能を低下させることがわかっています。低下することがわかっている機能は、実行機能(計画力)、持続的な注意(集中力)、長期記憶の3つです。
仕事において、優先順位をつけられなかったり、長時間の集中ができなかったりして、作業効率に影響する可能性があります。また、長期記憶の低下から、新しい仕事を覚えようとしてもスムーズに覚えられないといったことも起こりうるでしょう。
参考:Neurosci Biobehav Rev「The neurocognitive consequences of sleep restriction: A meta-analytic review」
睡眠不足を解消する3つの対処方法
睡眠不足が続いて日常生活に支障をきたしている場合、どのように対処すればよいのでしょうか。3つの対処方法について解説します。
方法①:30分以内の昼寝をする
睡眠不足によって日中の眠気が続いている場合、20~30分の昼寝をするパワーナップが有効です。パワーナップには、パフォーマンスや記憶の向上、疲労回復、リラックス効果があります。
昼寝は長ければいいというわけではなく、30分以上眠ると寝起きに頭がぼんやりしやすくなります。睡眠サイクルを乱す原因にもなるため、20~30分以内にとどめておくことが大切です。
方法②:休日の寝だめを控える
平日の睡眠不足を休日に寝だめして解消しようとする人も多いのではないでしょうか。ただ、休日の寝だめは、平日の眠気をかえって強くする可能性があります。
平日と休日の起床時刻の間に2時間以上のズレがあると、ソーシャルジェットラグという時差ぼけのような状態となります。睡眠サイクルが乱れ、夜間の不眠や日中の眠気を引き起こすことが特徴です。
休日に起きられないほどの強い眠気がある場合、平日の睡眠時間が不足している証拠だといえます。休日に寝だめをするよりも、平日の睡眠時間を確保するように意識するとよいでしょう。
方法③:睡眠の質を高める
睡眠不足の解消には、睡眠時間の確保だけでなく睡眠の質を高める必要があります。睡眠の質を高めるためには、適切な睡眠習慣を意識し、睡眠サイクルを乱さないようにすることが大切です。
具体的には、規則正しい食事や運動、就寝前の入浴習慣などが睡眠サイクルを整えます。睡眠の質を高める習慣については、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:質のいい睡眠時間の目安とは?睡眠休養感を高める改善方法を解説
睡眠不足が改善しない場合の対処方法
睡眠習慣を見直しても睡眠不足が解消されない場合、何らかの睡眠障害が背景にあるかもしれません。以下の3つのパターンが続いている場合、睡眠障害の可能性があるため、注意が必要です。
- 睡眠を取れない
- よく眠れた気がしない
- 日中に強い眠気がある
パターン①:睡眠を取れない
睡眠時間を十分に確保しても、寝つきが悪かったり、夜中に目を覚ますことが頻繁にあったりする場合は、睡眠障害かもしれません。
睡眠を取れなくなる睡眠障害として、代表的なのは不眠症です。寝つきが悪かったり、眠りが浅く何度も目が覚めたりする症状が特徴です。
また、入眠時に脚がむずむずするレストレスレッグス症候群や、無意識に脚がピクンと動く周期性四肢運動障害も睡眠を妨げます。さらに、睡眠中に一時的な呼吸の停止が生じる閉塞性睡眠時無呼吸も睡眠の質の低下につながり、日中の眠気を引き起こします。
不眠や日中の眠気に加え身体の動きや不快感がある場合、睡眠専門の医療機関を受診し、検査を受ける方がよいかもしれません。
パターン②:よく眠れた気がしない
十分に睡眠を取っているにもかかわらず、よく眠れた気がしないときには、睡眠障害が影響している可能性があります。背景にある原因としては、不眠症や閉塞性睡眠時無呼吸、レストレスレッグス症候群が挙げられます。
これらの睡眠障害によって効率のよい睡眠が取れなくなり、十分に休息できたという感覚が損なわれてしまうのです。
パターン③:日中に強い眠気がある
睡眠時間を確保してもなお日中に強い眠気がある場合は、ナルコレプシーの可能性があります。
ナルコレプシーは、睡眠不足や睡眠の妨げとなる病気がないにもかかわらず、日中に強い眠気が生じる睡眠障害です。驚いたときや笑ったときなど、強い感情が刺激となり身体に力が入らなくなる情動脱力発作を特徴とします。
日中の眠気に加え、力が入らなくなったり呂律(ろれつ)が回らなくなったりする症状があれば、ナルコレプシーかもしれません。
まとめ:睡眠不足を解消して生活の質を上げましょう
短時間睡眠や睡眠不足が慢性化すると、心身の健康に悪影響を及ぼします。生活習慣病やストレス症状、作業効率の低下を引き起こす可能性があり、企業全体の生産性にもかかわる問題です。睡眠時間を削って生活の質を上げるよりも、睡眠不足を解消した方が有効でしょう。
また、休日に寝だめをして睡眠不足を回復させる習慣は、逆に睡眠の質を低下させる可能性があります。正しい睡眠習慣を身に付けて、質のよい睡眠を取れるように意識することが大切です。