質のいい睡眠時間の目安とは?睡眠休養感を高める改善方法を解説
「何時間眠ればいいのだろう…」
「5時間睡眠しかできないけど、健康面は大丈夫?」
「8時間寝たのにあまり眠れた気がしない…」
睡眠に関して一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。とくに、適切な睡眠時間は何時間なのか、自分ではよくわからないことも多いでしょう。
厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上の睡眠が推奨されています。また、睡眠時間だけでなく、起床時に身体が休まったと感じる睡眠休養感も、健康増進には必要な要素だと考えられています。
ただ、適切な睡眠時間は人によって異なるため、自分自身に合った睡眠時間を見つけていくことが大切です。
本記事では、厚生労働省のガイドラインをもとに、一人ひとりに合わせた睡眠時間の目安やチェック方法を解説します。睡眠の質を高めるための習慣も紹介していますので、質のいい睡眠をとりたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
適切な睡眠時間の目安は?
適切な睡眠時間は平均的には6~8時間とされていますが、年齢や季節によっても必要な時間は異なります。重要なのは睡眠休養感であり、日中の眠気がなくよく眠れていると感じているのなら、適切な睡眠時間だといえます。
では、どのような目安をもとに適切な睡眠時間を考えればよいのでしょうか。3つの目安を紹介します。
目安①:長すぎず短すぎない時間である
慢性的な睡眠不足は、生活習慣病の発症やストレス症状の増大、認知機能の低下を引き起こすなど健康面に悪影響を及ぼします。一方で、睡眠をとればとるほど健康になるかというと、そういうわけではありません。
10時間以上の長時間睡眠は7時間の睡眠に比べ、死亡リスクが男性1.8倍、女性1.7倍と高くなることがわかっています。持病の影響で長時間睡眠になりやすい傾向が原因だと考えられています。
概ね6~8時間、長くても10時間の範囲内で、睡眠休養感が高くなる睡眠時間を探していくことが大切です。
参考:国立がん研究センター「睡眠時間と死亡リスクの関連について」
目安②:年齢により個人差がある
人間が眠れる時間には限界があり、年齢に応じてその時間が異なります。一般的には、15歳前後で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳では約6時間と加齢に伴って減少します。若いころに比べて代謝が低下するため、必要な睡眠時間が少なくなるためです。
そのため、20~30代と同じような睡眠習慣を50代になっても続けると、必要以上に寝床にいる時間が増える可能性があります。すると、睡眠の質が低下し睡眠休養感を得にくくなります。
年代別の適切な睡眠時間を意識し、現在の生活の中で必要な時間に適正化していくことが大切です。
目安③:季節によって変化する
必要な睡眠時間は、季節に応じて変化します。一般的には、夏に比べて冬は平均睡眠時間が約10~40分長くなるとされています。冬になると日長時間(日の出から 日の入りまでの時間)が短くなるためです。
冬も夏も同じ時間寝ている場合、冬には睡眠が不足する可能性があります。季節に応じて無理のない睡眠時間を確保するとよいでしょう。
睡眠の質をチェックする2つの方法
睡眠時間を確保できていても、眠れた気がせず睡眠休養感が低ければ質のいい睡眠とはいえません。質のいい睡眠をとれているかどうかをチェックするには、どのような方法があるのでしょうか。
チェック①:睡眠効率を計算する
睡眠の質をチェックする際に有効なのが、睡眠効率という指標です。睡眠効率とは、寝床にいる時間のうち実際の睡眠時間の割合を示すもので、以下の式で算出されます。
睡眠効率=実際の睡眠時間/床上時間(寝床にいる時間)
睡眠効率は85%以上が適切とされています。85%を下回っている場合、睡眠可能な時間以上に寝床にいる状態といえるでしょう。眠れないのに寝ようとすると、かえって睡眠の質が低下してしまいます。実際に眠れる時間にあわせ、就寝時間を遅らせることが有効です。
たとえば、8時間寝床に入っていても6時間しか眠れていなければ、睡眠効率は75%です。そのため、実際に眠っている6時間~6時間30分に合わせて就寝時間を遅らせます。遅らせた時間で問題なければ、徐々に睡眠時間を伸ばしていくとよいでしょう。
チェック②:睡眠休養感を記録する
質のいい睡眠がとれているかを把握するには、睡眠休養感を記録することがおすすめです。5時間半未満の睡眠時間で睡眠休養感が低い状態だと、総死亡リスクが1.54倍上昇したという研究結果があります。睡眠により休養できているかを把握することは、健康維持には重要です。
睡眠休養感は、以下の9つの項目を起床してから30分後にチェックし、点数化することで把握できます。合計で45点以下であれば、日常生活に支障をきたすレベルだとされます。
まったく | 少し | いくらか | かなり | 非常に | |
1.疲れている? | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
2.眠い? | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
3.気分はいい? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
4.休息できた? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
5.リフレッシュや回復できた? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
6.1日を始める準備はできている? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
7.元気? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
8.頭は冴えている? | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
9.機嫌が悪い? | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
※合計得点=(全項目の平均値-1)×25
睡眠の質を高める5つの習慣
寝つきが悪く睡眠不足となっている場合は、睡眠リズムを整えて質を高めることが重要です。質のいい睡眠のためには、以下の5つの習慣を意識するとよいでしょう。
習慣①:朝に日光を浴びる
朝に日光を浴びることで体内時計を調整し、睡眠リズムを正常に保つ効果があります。人間の体内時計は約25時間と考えられていますが、同調因子と呼ばれる刺激により調整されています。
同調因子の中でも最も強力な刺激が光です。体内時計の中枢がある脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)に作用し、適切なリズムに調整します。日中に多く光を浴びると、眠気を促すメラトニンの分泌量が増えて入眠できるようになります。
体内時計を整えるのに必要な光の強さは、1,000ルクス以上です。晴天であれば1,000ルクス以上の明るさが確保されており、曇りであっても十分な明るさがあります。起床後はカーテンを開けたり散歩をしてみたりするなど、光を浴びるように習慣づけるとよいでしょう。
習慣②:規則正しく食事をとる
食事をとることも、体内時計を調整する同調因子の一つです。1週間程度朝食をとらない期間が続くと、体内時計が後退し遅寝遅起きのリズムになる可能性があります。
また、就寝前の間食や夜食も体内時計を乱す一因です。勤務形態によって食事をとるのが深夜になる場合、夕方に軽く食べてから帰宅後におかずを食べるなど、調整するとよいでしょう。
習慣③:就寝前にぬるま湯につかる
就寝前にぬるめの湯船につかると、深部体温が低下して入眠が促されます。さらに、副交感神経優位な状態となりリラックスできます。熱いお湯に長時間つかってしまうと、交感神経を刺激して目が覚めてしまうため、控える方がよいでしょう。
習慣④:中~高強度の運動を行う
入浴と同様に、運動を行うと体温が上昇したのち、深部体温が下がって自然な眠気が生じます。ウォーキングやジョギング、軽い筋力トレーニングなどの中~高強度の運動を行うと、睡眠の質が高まるとされています。
ただし、寝る直前に運動をすると、かえって興奮が高まってしまうため注意が必要です。就寝のおよそ2~4時間前までに終えておくのが望ましいでしょう。1日60分程度の運動を習慣化するのが理想ですが、少ない時間でも定期的に運動を行うことが大切です。
習慣⑤:嗜好品の摂取に注意する
カフェインやたばこ、アルコールなどの嗜好品の摂取は、睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。適切な量とタイミングを把握し、睡眠を妨げないようにしましょう。
カフェイン
カフェインは、1日の摂取量が400mg(コーヒー700cc程度)を超えると、寝つきを悪くする可能性があります。また、夕方以降に100mg以上のカフェインを摂取すると、睡眠が浅くなりやすいでしょう。1日の摂取量を超えないようにするとともに、夕方以降は控えることが大切です。
また、カフェインはレストレスレッグス症候群や歯ぎしりの悪化リスクがあるとされています。発症するとさらに睡眠を妨げる原因になるため、過剰な摂取には注意しましょう。
喫煙
たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があるため、就寝前に喫煙すると寝つきが悪くなり、睡眠の質を悪化させます。夕方に喫煙しても、ニコチンの成分が体内に残ってしまう可能性があるため睡眠に影響します。
受動喫煙でも睡眠に影響を及ぼすことがわかっているため、周りに喫煙する人がいる場合は注意しましょう。
アルコール
アルコールは一時的には寝つきをよくしますが、睡眠の質は悪化します。そのため、寝酒をして眠るという習慣は、長期的には睡眠を妨げてしまいます。また、閉塞性睡眠時無呼吸の悪化につながることがあるため注意が必要です。
まとめ:自分に合った睡眠時間を把握しましょう
適切な睡眠時間は、平均的には6~8時間とされていますが、必要な睡眠時間には個人差があります。現在の睡眠時間や寝床にいる時間、睡眠休養感を振り返り、自分なりに質のいい睡眠時間を把握してみましょう。
質のいい睡眠をとるためには、運動や食事、入浴、外出などの生活習慣を整えることが大切です。睡眠を大切にする習慣を身につけて、質のいい睡眠によって日々のパフォーマンスを向上させましょう。