健康経営度調査とは?実施の流れや主な変更点を解説(2024年版)
健康経営は広く知られるようになり、実際に取り組んでいる企業も増えてきました。しかし、健康経営度調査については聞いたことがない、もしくは聞いたことはあっても詳しくないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
健康経営度調査は、健康経営優良法人に認定されるための調査でもあります。健康経営に関心を持つ企業にとっては、調査を実施することで今後健康経営に取り組むためには何をすればいいのか、どのようなポイントが重視されるのかなどを理解できるようになります。
本記事では、健康経営度調査の評価項目や調査を実践する流れなどについて解説します。また、前回からの主な変更点についても触れております。
健康経営に取り組みたい、関心があるという企業の経営者や人事担当者は、ぜひお読みください。
なお、本記事は2024年の改訂内容を説明し、現在最新の内容となっております。今後も改訂がありましたら記事でご紹介してまいりますが、申請される際には公式ページをご参照ください。
参照:「令和5年度健康経営度調査 今年度の概要と主な変更点」(PDF)
健康経営度調査とは?
健康経営度調査は、経済産業省が2014年度から開始しました。毎年8月ごろから受け付けを開始し10月ごろを締め切りとしています。
企業の健康経営の取り組み状況と経年変化を分析し、さらには健康経営銘柄や健康経営優良法人(大規模法人部門のみ)の認定に向けて基礎情報を得るための調査です。
健康経営優良法人に認定されると、取引先企業や求職者からの信頼につながりイメージアップとなります。
調査に回答した企業には、健康経営のレベルなどが分析されたフィードバックシートが届き、自社の改善点を知るうえで必要な情報を得ることができます。そのため、これから健康経営優良法人の認定を目指す企業にとってもメリットがあります。
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5つのフレームワーク
健康経営度調査の評価は、専門家から成る基準検討委員会で策定された評価基準に基づいて行われています。評価項目は大きく5つに分かれており、「5つのフレームワーク」といわれています。それぞれの項目を解説します。
なお、大規模法人と中小規模法人では評価項目の内容や項目数が異なります。
参照:経済産業省「令和5年度健康経営度調査(PDF)※大規模法人部門
参照:経済産業省「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請書(PDF)
①経営理念・方針
1つ目は「経営理念・方針」です。
経営トップとして健康経営の取り組みを普及させているか、健康経営の方針を社内外に発信しているか、従業員パフォーマンス指標・測定方法を開示しているかなどを評価します。
②組織体制
2つ目は「組織体制」です。
経営層が健康経営の責任者として組織体制を構築しているか、産業医・保健師など専門職が関与しているか、健康保険組合など保険者と連携しているかなど、組織体制づくりを評価します。
③制度・施策実行
3つ目は「制度・施策実行」です。
5つのフレームの中でいちばん設問が多く、健康経営の具体的な取り組みを問う内容となっています。
健康課題に関して具体的な目標を設定し、健康診断やストレスチェックを実施しているか、ヘルスリテラシーの向上や育児・介護の両立支援などワークライフバランスを推進しているか、病気の治療と仕事の両立を支援しているかなどを評価します。
さらに、具体的な対策として食生活の改善、運動機会の増進、受動喫煙対策に取り組んでいるかなどを判定します。
④評価・改善
4つ目は「評価・改善」です。
健康経営実施後の効果検証・改善ができているかを評価します。
⑤法令遵守・リスクマネジメント
5つ目は「法令遵守・リスクマネジメント」です。
このフレームに関しては、定期健康診断やストレスチェックを実施しているか、労働基準法または労働安全衛生法を遵守しているかの適否を判定します。
健康経営度調査の流れ
健康経営度調査に取り組みたいときはどうすればいいのでしょうか。基本的には、調査票の入手、回答、フィードバックという流れです。ただ、大規模法人と中小規模法人で少し異なる点があります。
大規模法人の場合
東証一部上場企業と過去に回答歴のある非上場企業の場合、調査開始時に郵便やメールで案内が届きます。
一方、今回初めて回答する非上場企業は、専用サイトでIDを発行し、健康経営度調査のページにアクセスして調査票をダウンロードします。
健康経営調査票に入力し、専用サイトに電子データでアップロードすれば提出完了です。後日フィードバックシートが届きますので、自社の健康経営状態の把握・改善につなげるための参考にすることができます。
中小規模法人の場合
中小規模法人は、加入している保険者(健康保険組合連合会、協会けんぽなど)が実施している健康宣言事業に参加し、申請書をダウンロード、取り組み状況を記載してアップロードします。
データを提出した後は、大規模法人と同じくフィードバックシートが届きます。
健康経営度調査:主な変更点
健康経営度調査の内容は、毎年改訂されます。2024年(2023年10月申請分)の調査について、前年度から変更した主な点を解説します。
変更点①情報開示の推進
人的資本経営の情報開示に関する流れを背景に、年々、健康経営の分野でも情報開示が求められるようになってきました。3つの変更点をみていきます。
1.特定健診・保健指導の実施率の評価
1つ目として、「特定健診・特定保健指導実施率の把握」という項目が追加されました。
企業と保険者の連携促進のため、企業単位の特定健診・特定保健指導の実施率を把握していることを評価対象としました。実施率の数値の回答欄も追加されました。
2.業務パフォーマンス指標・測定方法の開示
2つ目には、「業務パフォーマンス指標と測定方法」を開示しているかどうかが評価の対象になりました。
ホワイト500は開示URLの回答が認定要件となりました。
測定人数と回答率も開示が問われるようになり、より具体的な情報開示が求められるようになりました。
プレゼンティーズム、アブセンティーズム、ワークエンゲージメントを把握することは、企業の今後の課題や対策を考案するうえでも大切です。
関連記事:「プレゼンティーズムとは?健康経営に向けた企業の改善策を解説」
3.労働安全衛生・リスクマネジメントに関する開示
3つ目は、「労働安全衛生・リスクマネジメントに関する開示」の項目が追加されました。
労働安全衛生・リスクマネジメントは、健康経営に取り組むうえで基本になります。開示できるよう準備しておくことは大事でしょう。
変更点②社会課題への対応
今回の変更点として、社会課題への対応としてより具体的な設問が追加されたことは注目に値するでしょう。4つの変更点をみていきます。
1.仕事と育児・介護の両立支援
「仕事と育児・介護の両立支援」に関する項目が追加されました。社会課題としても注目されています。
2.「女性特有の健康課題」への対応
「女性の健康課題に関する認知向上のためにセミナーなどを実施しているか」、「行動を促すためにどのような取り組みをしているか」の両設問への回答が認定要件です。
3.生産性低下防止のための取り組み
花粉症と眼精疲労に対する具体的な支援の項目が追加されました。
日本耳鼻咽喉科学会の発表によると、2019年時点でスギ花粉症の有病率は国民の38.8%、花粉症全体では42.5%だといわれており、10年間で10%以上増加しています。
日本アレルギー学会顧問で福岡病院名誉院長の西間三馨さんは、花粉症などアレルギー性鼻炎患者の経済的損失の試算をしました。
試算によると生産性が低下することにより「1人当たり年間12.74日の労働時間の損失」「1人当たり年間19万1,783円の経済的損失」が発生しているといわれています。
このような花粉症による従業員の生産性低下を防ぐために、福利厚生として花粉症手当を導入している企業もあります。
また、パソコンだけでなくスマートフォンを見る時間が増えて眼精疲労を感じる人が多い昨今、従業員の目の健康管理は必須だといえるでしょう。
4.新型コロナウイルス感染症への対策
昨年度は、新型コロナウイルス感染症への対策について問う項目がありましたが、五類感染症へ移行したことにより、インフルエンザなど感染症予防対策を問う設問に統合されました。
ただ、新型コロナウイルス感染症に限定した設問項目はアンケート項目として残しています。
変更点③健康経営の海外展開
海外従業員への対応について問う設問が追加されました。海外支社・事業所の駐在員や現地法人の健康経営を推進しているかどうかについて把握することが目的です。
現段階では認定の評価には用いられませんが、今後ますます国際展開していくことを意識して、海外従業員の健康経営も推進していくことは不可欠だと考えられます。
まとめ:健康経営度調査は社会課題への対応を考えるきっかけに
健康経営度調査を実施することで、自社がどれだけ従業員の健康のための取り組みができているかを振り返るきっかけになります。
また、自社の従業員のためにこれからどのようなことに取り組んでいけばいいのかを確認する機会にもなります。
今回の主な変更点を説明しましたが、時代に合った社会課題に対応するための具体的なポイントが追加されていることが理解できたことでしょう。
社会課題に合わせて企業も変化していくことが必要です。将来を見据えて発展する企業を目指すためにも、まずは健康経営度調査に回答しながら自社の改善点を洗い出してみることをおすすめします。
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