メンタルヘルスケアとは?社員を守るために企業でできる4つの対策
メンタルヘルスケアに取り組むことは、職場環境改善や社員の心身の健康増進に役立ちます。しかし、「具体的にどのような取り組みを実施すべきなのか」と、頭を悩ませている企業担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、企業が取り組める社員のメンタルヘルス対策を具体的に紹介します。
メンタルヘルスケアの取り組みに関する具体例も交えて解説するので、企業での取り組みを検討している場合にはぜひ参考にしてみてください。
職場に求められるメンタルヘルスケアの義務とは
メンタルヘルス不調社員への配慮は企業の義務です。
労働契約法第5条では、「使用者は、労働契約に伴い労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」として、労働者の安全について配慮することが義務付けられています。
職場に求められるメンタルヘルスケアの枠組みが拡充してきている背景として、労働安全衛生法の改正により、社員の働き方改革が強化されていることも挙げられます。
メンタルヘルス不調社員へ配慮することで、職場環境の改善や社員の心身の健康増進を図れるメリットもあります。
ストレスチェックテストで社員のメンタルヘルスチェックと生産性向上
社員のメンタルヘルス不調の予防には、ストレスチェックテストが有効です。ストレスチェックテストは、労働安全衛生法により、従業員50人以上の事業場では1年に1回実施することが義務付けられています。
※労働安全衛生法66条の10「心理的な負担の程度を把握するための検査」がストレスチェックテストを意味する(従業員50人未満は努力義務)
ストレスチェックテストのメリットは、社員が自分自身のストレス度を把握できるという点です。メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」および早期発見の「二次予防」の観点でストレスチェックテストは有効な手段です。
たとえば、厚生労働省の「こころの耳」というサイトでは、株式会社丸井グループがストレスチェックテストを実施した効果を紹介しています。
具体的には、丸井グループでストレスチェックテストを実施した後、高ストレス者が多い部門で全社員が産業医と面談したり心の健康増進に取り組むことで、メンタルヘルス不調の未然の防止や早期発見など、従業員のメンタルヘルス対策の成果を挙げています。
参考:厚生労働省 こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例 株式会社丸井グループ(東京都中野区)」
また、ストレスチェックテストでは独自のアンケート項目の追加を行い、メンタルヘルスケアにより個人を守るだけでなく、企業全体の労働を高めることもできます。
年1回の実施が義務付けられているストレスチェックテストを活用して、従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく企業の生産性向上につなげてみてください。
企業で対策できる4つのメンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアにおいて、「4つのケア」が継続的に行われることが重要です。ここでは企業で実施できる4つのメンタルヘルスケアを紹介します。
加えて、社内に産業保健スタッフがいない場合や、体制が不十分なときに実践できる方法についても併せて紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
①社員や従業員が自分で対策するセルフケア
メンタルヘルスケアにおいて、まず社員や従業員が自ら精神的な疲労やストレス状態に気づくことが重要です。前述したストレスチェックテストを実施したり「セルフケア」に関する研修を受講すると、社員や従業員のストレス耐性を高めることができます。
まずは、自身のストレス状況についての現状を俯瞰(ふかん)し理解する能力を養うことがおすすめです。
人は、わからないものに対して脅威を感じやすい性質があります。「自分は何に対してストレスを感じやすいのか」「何がストレスとなっているのか」を認識し、ストレスに接したときの対処法を社員に学ばせる機会を設けるようにしてみてください。
厚生労働省が運営しているメンタルヘルスに関するポータルサイト「こころの耳」ではセルフケア研修に関するコンテンツが公開されており、無償で利用が可能です。
参考:厚生労働省 こころの耳「職場のメンタルヘルス研修ツール」
このようなセルフケアはメンタルヘルス予防に役立ちます。しかし、職場には社員の力だけでは取り除けないストレスも数多く存在します。労働者の心の健康づくりを推進するためには、次に紹介するように周囲のサポート体制や職場環境を整えるようにしてください。
②上司が職場の部下のメンタル不調に対応するラインケア
2つ目は、上司がメンタル不調に対応するラインケアです。ラインケアとは、職場のライン上にいる上司が部下である社員の状況を把握し、いつもと違う様子が見られたときにいち早く改善を図るケアのことを指します。
日常的に部下と接する上司は従業員の変化や社員のストレス要因を把握しやすいです。そのため、職場環境やストレス要因について把握し改善を図ることや、労働者の求めに応じて相談対応を実施することなどが求められます。
状況に応じた適切なケアを行うことにより、社員の重症化を予防し、職場復帰を支援する「三次予防」ができる環境づくりができるでしょう。
③事業場内の産業保健スタッフが対応するケア
3つ目は、産業医や衛生管理者、保健師などによる事業場内産業保険スタッフによるケアです。事業場内産業保険スタッフは、セルフケアおよびラインケアが職場で効果的に実施されるように働きかける役割を持ちます。
社員の心の健康づくりに関する企画立案、管理監督者のサポートなどを実施し、心身の健康増進に寄与します。そのため、職場のメンタルヘルス対策の根幹を担います。
事業場内の産業保険スタッフは、職場環境の調査や意見交換の場をつくるなど職場の実態に合わせた取り組みを行って健全な職場環境を維持するために、心の健康づくりに精通した専門的なスタッフの配置がおすすめです。
④企業の産業医などによる専門ケア
4つ目は、事業場内に専門的なスタッフを配置するのが難しい場合などに、企業外の専門家や専門機関のサポートを受けるメンタルヘルスケアです。企業外の産業医などによるケアには以下のようなものが挙げられます。
- 従業員支援プログラム(EAP)
- 産業保健支援センター
- 地域産業保健センター
- こころの耳相談センター
- 医療機関
- 保健所
管理監督者は、メンタルヘルスの疑いがある本人に、適切な外部専門機関を案内できる知識を身に付けることが重要です。メンタルヘルスを抱えた社員に、企業として取り組むことが肝心であるといえます。
まとめ
企業が取り組めるメンタルヘルスケア対策について紹介しました。社員のメンタルヘルス不調を防止するためには、4つのケアができる体制の整備が大切です。
企業が4つのケアができる体制を整えることは、メンタルヘルス不調の予防だけでなく社員や従業員の働くモチベーションアップにもつながります。
記事内容を参考に、ぜひメンタルヘルスケアに取り組んでみてください。