【医師監修】冬季うつで仕事に行けない?症状チェックや休職、復職まで

【この記事のポイント】

  • 冬季うつで仕事に行けないのは「甘え」ではなく、日照不足によるセロトニン減少などが原因の医学的な症状(季節性感情障害)です。
  • 主な症状は「過眠(朝起きられない)」「過食(特に炭水化物)」「気力低下」です。
  • 対策は「光を浴びること」が最重要。症状が辛い時は無理せず休み、専門医に相談し、傷病手当金などの制度利用も検討しましょう。

「冬になると朝起きられない」

「仕事に行く気力が全くわかない」

「理由もなく落ち込み、集中力が続かない」

もしあなたがこのような状態に悩んでいるなら、「怠け」や「甘え」ではありません。「冬季うつ(冬季うつ病)」や「季節性感情障害(SAD)」と呼ばれる、うつ病の一種である可能性があります。

冬季うつは、日照時間が短くなる秋から冬にかけて発症し、春になると改善することが特徴です。気分の問題ではなく、日照不足による脳内の神経伝達物質の変化によるものとされています。

しかし、周囲から「怠けている」と誤解されたり、自分自身を「意志が弱い」と責めてしまったりして、一人で抱え込んでいる人も少なくありません。

この記事では、冬季うつで「仕事に行けない」と悩む人に向けて、症状と原因、具体的な対処法、休職や公的支援制度の利用方法までを、専門家の視点から詳しく解説します。

さらに、管理職や人事担当者にも、冬季うつの部下への対応方法を紹介します。

この記事を読むことで、適切なセルフケアや公的支援(傷病手当金など)の活用法を、管理職の方は部下への具体的なサポート方法を学び、回復への一歩を踏み出せます。

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目次

冬季うつとは?「甘え」ではない医学的メカニズム

冬季うつの原因である日照不足とセロトニン・メラトニンの関係を示す図。

冬季うつはなぜ冬に気分が落ち込みやすいのでしょうか。主な原因は「日照時間の大幅な減少」にあると考えられています。

冬季うつ(季節性感情障害:Seasonal Affective Disorder(SAD))は、秋から冬の日照不足が引き金となり、脳内のセロトニン減少やメラトニンリズムの乱れを引き起こす気分障害の一つです。

気分の落ち込みや過眠、過食が特徴で、意志の弱さや「甘え」ではありません。

冬季うつにより気分の落ち込みなどの症状が生じるメカニズムを詳しく説明します。

症状のメカニズムと概要

症状のメカニズムと概要

症状のメカニズム 概要
セロトニン減少 日照不足で不安などをコントロールするセロトニンというホルモンが減少し、不安や意欲低下を招きます。
メラトニン異常 「睡眠ホルモン」の分泌リズムが乱れ、過眠や日中の眠気を引き起こします。
体内時計の乱れ 光を浴びる時間が減り、体のリズムがずれて「朝起きられない」状態になります。

日照不足が招く「セロトニン」の減少

太陽光、特に午前中の光を浴びる量が減ると、脳内で気分を安定させる役割を持つ「セロトニン」の分泌が減少します。

セロトニンが不足すると、不安を感じやすくなったり、意欲が低下したり、気分が落ち込んだりします。

日照不足によるセロトニン系の機能低下が、冬季うつの症状を引き起こす主な要因の一つと指摘されています。

参考:Lam RW, Levitan RD. Pathophysiology of seasonal affective disorder: a review. J Psychiatry Neurosci. 2000 Nov;25(5):469-80.

睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌異常

セロトニンは、夜になると睡眠を促す「メラトニン(睡眠ホルモン)」に変換されます。

日照不足でセロトニンの分泌が減ると、メラトニンへの変換リズムが乱れてしまいます。その結果、夜間のメラトニン分泌が遅れたり、逆に日中に分泌されたりして、「過眠(日中の過剰な眠気)」を引き起こすことがあります。

メラトニン分泌のリズムが乱れることが、冬季うつの睡眠に関する症状の原因となります。

体内時計(概日リズム)の乱れ

人間の身体は、朝の光を浴びることで体内時計(概日リズム)をリセットし、活動と休息のリズムを保っています。

冬場は日の出が遅く日照も弱いため、体内時計が後ろにずれやすくなります。そのため、「朝起きられない」「日中だるい」といった症状が生じやすくなります。

冬季うつは本人の性格や意志の強さとは関係なく、日照不足という環境要因が引き起こす脳機能の変化によるものです。決して「甘え」や「サボり」ではありません。

参考:Dollish HK, Tsyglakova M, McClung CA. Circadian rhythms and mood disorders: Time to see the light. Neuron. 2024 Jan 3;112(1):25-40.

【セルフチェック】これって冬季うつ?特徴的な症状

冬季うつ症状のセルフチェックリスト。

冬季うつの症状は、「過眠(寝過ぎてしまう、朝起きられない)」「過食(特に炭水化物や甘いものを欲する)」「体重増加」です。さらに、強い倦怠感、気力・集中力の低下、気分の落ち込みが秋から冬にかけて続きます。

一般的なうつ病と共通する症状に、冬季うつ特有の症状が加わるのが特徴です。症状が秋の終わりから冬にかけて2週間以上続き、仕事や生活に支障が出ている場合は注意しましょう。

冬季うつのチェック項目
チェック項目 内容
主な症状 過眠、過食(特に炭水化物)、体重増加、強い倦怠感など。
一般のうつ病との違い 不眠・食欲不振のうつ病に対し、冬季うつは「過眠・過食」が特徴です。

冬季うつの主な症状チェックリスト

  • 過眠: いくら寝ても眠い。夜10時間以上寝ても、日中も強い眠気がある。
  • 過食(特に炭水化物への渇望): 甘いもの、パン、パスタ、お米など、炭水化物を無性に食べたくなる。
  • 体重増加: 過食と、活動量が低下することによって体重が増える。
  • 強い倦怠感: 体が鉛のように重く、動くのが億劫。特に午前中はひどい。
  • 気力・集中力の低下: 仕事の能率が落ち、ミスが増える。
  • 気分の落ち込み: 理由もなく憂鬱になったり、イライラしやすくなったりする。
  • 社会的引きこもり: 人と会うのが億劫になり、約束をキャンセルしがちになる。

一般的なうつ病との違い(非定型症状)

冬季うつの症状は、一般的なうつ病(非季節性うつ病)とは異なる症状がみられることが特徴です。

具体的には、症状に以下のような違いがみられます。

うつ病の種類の比較
うつ病の種類 特徴的な症状
一般的なうつ病(非季節性うつ病)
  • 不眠(寝つけない、途中で目が覚める)
  • 食欲不振
  • 体重減少
冬季うつ(季節性感情障害)
  • 過眠(日中に寝すぎてしまう)
  • 過食
  • 体重増加

一般的なうつ病とは逆の症状であることも少なくないため、本人も周囲も「うつ病」だと気づきにくい傾向があります。

参考:NIH「Seasonal Affective Disorder」

【当事者向け】仕事に行けない時の緊急対処法

冬季うつで仕事に行けず、会社に休む連絡をしている。

仕事に行けないほどつらい時は、無理せず「休む」ことが最優先です。

まずは「体調不良」として上司に連絡し、早急に心療内科や精神科、うつ病などを診療できる内科などを受診してください。医師の診断書があれば、休職の相談もスムーズに進められます。

「朝起きられない」「どうしても会社に行く気力がない」という状態は、心と身体が「限界だ」と発しているSOSサインです。無理をして出社し続けると、症状が悪化し、回復までにより多くの時間がかかってしまう可能性があります。

冬季うつで休職する際に大切なポイントとして、以下の3つを解説します。

緊急対処法
緊急対処法 概要
まずは「休む」勇気を 無理な出社は悪化の原因です。心身のSOSサインを最優先します。
会社への伝え方 体調不良で休む旨を連絡し、可能なら受診の意向も伝えます。
診断書の重要性 医師の診断書は、休養の必要性を客観的に証明し、休職手続きを円滑にします。

まずは「休む」勇気を

「甘えではないか」「迷惑をかけてしまう」という罪悪感を感じるかもしれません。

しかし、前述の通り、冬季うつは治療が必要な医学的な状態です。

まずはしっかりと休養をとることが、回復への第一歩です。自分を責めず、休むことを優先しましょう。

会社(上司)への伝え方と例文

休むことを決めたら、会社の就業規則に従って上司に連絡をします。電話が望ましいですが、体調的に難しい場合はメールやチャットツールでも構いません。

重要なのは、「病気である可能性」を伝えることです。

詳細な病名を自ら伝える義務はありません。しかし、「体調不良」とだけ伝えると、一時的な風邪などと誤解される可能性も否めません。

<電話・メールでの伝え方 例文>

「おはようございます。〇〇です。

実は数週間前から体調が優れず、特に朝起き上がるのが困難な状態が続いています。

本日、どうしても出社できる状態ではないため、お休みをいただきたくご連絡いたしました。

(可能であれば)本日中に心療内科を受診し、改めて今後のことをご相談させてください。

ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。よろしくお願いいたします。」

診断書の重要性と取得方法

「仕事に行けない」状態が続くようであれば、必ず心療内科または精神科、うつ病などを診療できる内科などを受診してください。

医師の診察を受け、冬季うつ(季節性感情障害)と診断された場合は、「〇週間の休養を要する」といった内容の診断書を書いてもらいましょう。

診断書は、現在の状態が医学的に休養を必要としている証明になります。診断書を提出することで、会社側も休職に必要な配慮や手続きをスムーズに進めやすくなります。

休職中の不安を解消:傷病手当金と公的支援

休職中の生活を支える傷病手当金などの公的支援制度。

健康保険に加入していれば、医師の診断にもとづき休職した場合、給与のおよそ3分の2が支給される「傷病手当金」を利用できる可能性があります。

また、通院治療費の自己負担を軽減する「自立支援医療制度」もあります。

仕事を休むとなると、経済的な問題が一番の心配事かもしれません。しかし、日本には会社を休む労働者の生活を支える公的な制度が整備されています。

休職中に利用できる公的な支援制度を2つ紹介します。

公的支援制度
公的支援制度 概要
傷病手当金 健康保険から給与の約3分の2最長1年6ヶ月支給される制度です。
自立支援医療 精神科などへの通院治療費の自己負担が3割から1割に軽減されます。

生活の支え「傷病手当金」とは?(対象・期間・申請方法)

健康保険(協会けんぽや組合健保など)に加入している会社員であれば、「傷病手当金」を利用できる可能性があります。傷病手当金は、病気やケガ(冬季うつも含む)のために働けなくなった場合に支給される手当です。

  • 支給条件: 以下のすべてを満たす必要があります。
    • 業務外の病気やケガで療養中であること
    • 働けない状態であること
    • 連続する3日間(待期期間)を含み4日以上休んでいること
    • 休業中に給与の支払いがないこと
  • 支給額: おおよそ、休職前の給与の3分の2が支給されます。
  • 期間: 最長で1年6ヶ月間受給可能です。

手続きには、医師の意見書と会社(事業主)の証明が必要です。まずは会社の人事・労務担当者、または加入している健康保険組合に相談してください。

参考:全国健康保険協会病気やケガで会社を休んだとき」 

医療費の負担を減らす「自立支援医療(精神通院)」

冬季うつの治療で継続的に通院が必要な場合、「自立支援医療制度」を利用できる場合があります。

自立支援医療制度は、精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額が通常3割のところを1割に軽減される制度です。所得に応じて月額の負担上限額も設定されます。

申請はお住まいの市区町村の担当窓口(障害福祉課など)で行います。また、主治医が作成した診断書が必要です。診断書は市区町村によって様式が異なりますので、事前に確認した上で主治医に依頼しましょう。

参考:厚生労働省「自立支援医療制度の概要」

冬季うつの治療法と自分でできる対策(セルフケア)

冬季うつのセルフケアである「光」「食事」「運動」のイメージ。

冬季うつの治療は、心療内科・精神科での「高照度光療法」や「薬物療法」、「認知行動療法」が中心です。

並行して、午前中の日光浴、セロトニンの原料となる食事(タンパク質)、リズム運動などのセルフケアも効果的です。

「仕事に行けない」ほどの症状がある場合は医療機関での治療が必要です。一方で、症状が軽度な場合や、治療と並行して行うセルフケアも症状の改善に重要です。

医療機関での治療とセルフケアの具体的な方法について解説します。

治療と対策
治療と対策 概要
医療機関での専門的治療
  • 高照度光療法
  • 薬物療法(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitor など)
  • 認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)
  • など
自分でできる3つの対策
  • 光を浴びる
  • 食事の見直し
  • リズム運動 など

医療機関での専門的治療

セルフチェックで該当する項目が多い、または日常生活に支障が出ている場合は、早めに心療内科や精神科を受診しましょう。

高照度光療法

冬季うつ治療の第一選択とされます。2,500ルクス以上という明るい光を放つ専用のライトを、毎朝起床後に30分〜2時間程度浴びる治療法です。

体内時計をリセットし、セロトニンの分泌を促す効果が期待できます。

参考:Nussbaumer-Streit B, Forneris CA, Morgan LC, Van Noord MG, Gaynes BN, Greenblatt A, Wipplinger J, Lux LJ, Winkler D, Gartlehner G. Light therapy for preventing seasonal affective disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2019 Mar 18;3(3):CD011269.

薬物療法(SSRIなど)

症状が重い場合、SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬が処方されることがあります。

医師の指示に従い、適切に服用することが重要です。

参考:Seasonal affective disorder (SAD) – Diagnosis & treatment│Mayo Clinic

認知行動療法(CBT)

冬に対するネガティブな考え方(例:「冬は寒いから何もできない」)を見直し、活動的な行動を促すことで気分を改善させる認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)も有効とされています。

参考:Seasonal Affective Disorder and Complementary Health Approaches : What the Science Says│NIH

自分でできる3つの対策(セルフケア)

治療と並行して、生活の中で以下の3点を意識することが症状改善の鍵となります。

1. 光を浴びる(最も重要)

最も大切な対策です。起床時や日中に光を浴びるよう、以下の点に注意してみましょう。

  • 起床後すぐにカーテンを開け、太陽の光を部屋に入れる。
  • 午前中に15〜30分程度、屋外で散歩するのが理想(曇りの日でも室内よりはるかに明るい光を浴びられる)。
  • 在宅勤務の場合は、デスクを窓際に配置するなど工夫する。

2. 食事の見直し(セロトニンを増やす)

セロトニンの材料となる「トリプトファン」を積極的に摂取しましょう。トリプトファンは、肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、バナナなどに豊富に含まれています。

トリプトファンに加え、赤身肉やマグロ、貝類、レバーなどの代謝を助けるビタミンB群を合わせて摂ると効果的です。

過食しがちな炭水化物(糖質)の摂りすぎには注意し、バランスの良い食事を心がけてください。

参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「セロトニン」

3. リズム運動と生活習慣(体内時計を整える)

ウォーキングやジョギング、ヨガ、踏み台昇降など、一定のリズムで行う有酸素運動はセロトニンの分泌を促します。日中に行うのが最も効果的です。

また、起床時間を一定に保つことが体内時計を整える上で重要です。

夜更かしを避け、就寝1〜2時間前にはスマートフォンやPCの使用を控えるなど、決まった時刻に眠れるような工夫も有効です。

【管理職・人事向け】部下が冬季うつの場合の対応

管理職がラインケアを実践し、冬季うつが疑われる部下の話を傾聴している。

部下の冬季うつが疑われる場合、管理職には「ラインケア」が求められます。

企業は「安全配慮義務」にもとづき、不調のサインに気づき、傾聴し、産業医や外部EAPへの相談を促す必要があります。休職・復職のプロセスも適切に管理することが重要です。

冬場に部下の遅刻が増えたりパフォーマンスが低下したりしている場合、冬季うつのサインか

もしれません。

管理職や人事担当者に求められる法的責任と、従業員へのケアについて解説します。

管理職・人事の対応
管理職・人事の対応 概要
法的な責任(安全配慮義務) 企業は従業員の心身の健康を守る義務を負っています。
部下の不調への気づき(ラインケア) 変化に気づき、傾聴し、産業医などの専門家へつなぐことが重要です。
不調を未然に防ぐ予防的アプローチ オフィスの照明を1,000ルクス以上に上げることや、午前中に短時間の日光浴休憩を調整するなど、作業環境や休憩時間を調整します。
休職・復職支援 安心して療養できる環境整備と、リワーク等を活用した段階的な復帰支援が求められます。
復職後の再発防止支援 翌年以降の冬季に再発しにくいように、症状が出始めやすい秋口に本人と職場が連携して状況確認と就業支援を行います。

法的な責任:「安全配慮義務」とは

企業は、従業員が心身の健康を損なわないように配慮する「安全配慮義務」を負っています(労働契約法第5条)。

従業員から明確な申告がなくても、遅刻や欠勤の増加、様子の変化などから不調に気づいた場合は、業務負荷の軽減や専門家への相談を促すなどの対応が必要です。

安全配慮義務を怠ると、法的な責任を問われる可能性があります。

参考:e-Gov 法令検索「労働契約法」

部下の不調に気づくサインと声かけ(ラインケア)

部下の不調に気づくために重要なのは、決めつけや説教ではなく「傾聴」です。話を聞く際には、以下の点に注意しましょう。

  • プライバシーが守られる会議室などで、1on1の時間を設ける。
  • 「最近、朝つらそうだね」「何か困っていることはない?」と、客観的な事実と心配している気持ちを伝える。
  • 本人が話し始めたら、遮らずに耳を傾ける。
  • 産業医や社内の相談窓口、外部EAP(従業員支援プログラム)の利用を勧める。

従業員のメンタルヘルス対策を組織的に行うことは、ラインケアの重要な基盤となります。

管理職が行うラインケアの具体的な実践方法については以下の記事もご覧ください。

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不調を未然に防ぐ予防的アプローチ 

不調者が発生した後の対応だけでなく、不調者を発生させないための「予防」も企業の責務です。

特に冬季うつは日照不足という環境要因が明確なため、職場環境の改善が予防に直結します。

冬季うつを防ぐ職場環境づくりでは、「オフィス照明の改善」「積極的な日光浴の推奨」の2つを意識して行うことが重要です。

1.オフィス照明の改善

JIS規格(日本産業規格)では、一般的なオフィスの推奨照度を約750ルクスとしています。この基準は主に、デスクワークなどの「視作業」における効率性や安全性を目的とした照度です。

一方、冬季うつ(季節性情動障害)の治療法として確立されている「高照度光療法」では、2,500ルクスから10,000ルクスという非常に強い光を用います。

強い光は、体内時計(概日リズム)を調整し、セロトニンの分泌を促すことなどを目的としており、視作業のための照度とは目的が異なります。

このため、JIS規格の推奨照度(750ルクス)を満たしているオフィス環境であっても、生体リズムを整えるという観点では、冬季のうつ対策として不十分な場合があります。

【具体的な対策案】

  • オフィス全体の工夫:冬の期間、オフィス全体を可能な限り明るく保つこと(JIS推奨照度750ルクスを確実に確保する、など)や、窓から自然光を取り入れ、特に午前中に明るい環境で作業できるようデスク配置を工夫することが望まれます。
  • 高照度光の局所導入:治療レベルの照度(2,500ルクス以上)をオフィス全体に導入することは、まぶしさ(グレア)やコストの観点から現実的ではありません。 もし導入する場合は、休憩室や専用ブースなどに「高照度光療法用の照明器具」を設置し、希望者が午前中の時間帯に短時間(例:15~30分)利用できる形が適切です。

参考:高照度光照射器具の商品例(※Amazonの商品ページが開かれます)

2.積極的な日光浴の推奨

リモートワーカーを含め、全従業員に対し、午前中(可能であれば10時頃まで)に15〜30分程度の散歩や窓際での作業を推奨する啓発を行います。

可能であれば、午前中に短時間の「日光浴休憩」を取ることを許可することも有効です。

休職から復職までの支援体制(リワークプログラムの活用)

従業員が休職を必要とする事態になった場合、企業には、その従業員が安心して療養に専念できる環境を整える責任があります。回復には個人差があるため、復職を焦らせることはせず、本人のペースを尊重することが重要です。

従業員の回復が進み、復職の段階となった際には、まず主治医や産業医といった専門家の意見書に基づき、復職が可能かどうかを慎重に判断します。

復職が決定した後、大切なのは「再発を防ぐ」ための支援です。再発防止のためには、「リワークプログラム」と「段階的な復帰プラン」の2点が重要となります。

1.リワークプログラム

休職した従業員がスムーズに職場へ戻るためのリハビリテーションです。

主に生活リズムの再調整、職場復帰への不安軽減、ストレスへの対処法(ストレスコーピング)などを学びます。リワークプログラムは、専門の医療機関や、地域障害者職業センターなどで受けられます。

リワークプログラムの内容や進め方については、以下の関連記事もご覧ください。

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2.段階的な復帰プラン

復職していきなり以前と同じ業務量や勤務時間に戻ることは、大きな負担となり再発のリスクを高めます。 

そのため、本人の状態に合わせて無理のない復帰プランを立てることが不可欠です。

例えば、復職直後は短時間勤務(時短勤務)から開始し、体調や業務への適応状況を確認しながら、少しずつ勤務時間や担当する業務量を増やしていくといった段階的なアプローチを取ります。

復職後の再発防止支援

冬季うつは季節性のため、翌年以降も再発しやすい特徴があります。再発を防ぐため、本人と職場が連携することが不可欠です。以下のように、本人と職場の双方が対策の方針を明確にしておきましょう。

  • 本人:症状が出始める秋口から、予防的に光療法やセルフケア(午前中の散歩など)を開始する。(主治医と要相談)
  • 職場:復職後も、冬場は窓際の席に配置する、午前中の短時間休憩を許可する、残業を制限するなどの継続的な配慮を行います。

うつ病の従業員への対応ポイントについては、関連記事もご覧ください。

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多様化する働き方と冬季うつ(リモートワークなど)

リモートワークや交代制勤務など、冬季うつのリスクが高まる多様な働き方。

リモートワーク(在宅勤務)は、通勤がなくなり日光を浴びる機会が減るため、冬季うつのリスクを高めます。

また、医療・介護職などの交代制勤務も体内時計を乱しやすく、特に冬場は注意が必要です。

働き方の多様化に伴い、冬季うつへの対策も個々の環境に合わせて考える必要があります。特に、リモートワークや交代制勤務・夜勤は体内時計が乱れやすく、冬季うつへの注意が必要です。

働き方別の注意点と概要
働き方別の注意点 概要
リモートワーク 通勤がなくなり日光を浴びる機会が減るため、意識的な対策が必要です。
交代制勤務・夜勤 体内時計が乱れやすいため、特に冬場は仮眠の質や日中の活動に工夫が求められます。

※横にスクロールして全体を表示できます。

リモートワーク(在宅勤務)の落とし穴

リモートワークは、通勤がなくなることで日光を浴びる機会が激減し、冬季うつのリスクを高めます。

また、人との雑談が減ることで孤立感を深めたり、上司が部下の変調に気づきにくくなったりするケースもあります。

意識的に午前中の散歩を取り入れたり、窓際で作業したりするよう心がけましょう。企業側も、定期的な1on1ミーティングを設定するなど、コミュニケーションを意図的に確保する工夫が求められます。

交代制勤務・夜勤の注意点

医療・介護職や製造業など、夜勤を含む不規則な勤務形態は、体内時計を乱す要因の一つです。日照不足が重なる冬場は特に注意が必要です。

夜勤明けでも、日中は仮眠室を暗くして睡眠の質を高め、活動時間はなるべく日光を浴びるよう工夫することが求められます。

まとめ:冬の「仕事に行けない」はSOSサイン!一人で抱え込まず専門家へ相談を

冬になると「仕事に行けない」と感じるほどの気力の低下や過眠、過食は、あなたの「甘え」や「怠け」ではなく、「冬季うつ」の症状である可能性が高いです。

もし今、あなたが「仕事に行けない」と悩んでいるなら、まずは自分を責めないでください

大切なのは、その状態を「休養が必要なサインだ」と受け止め、早めに行動することです。具体的には以下のような対処が推奨されます。

  • セルフケアを試す: まずは朝日光を浴び、タンパク質を意識した食事、軽い運動を取り入れてください。
  • 専門家に相談する: 症状が続く、または仕事に行けないほど深刻な場合は、ためらわずに心療内科や精神科を受診してください。
  • 会社の制度を利用する: 休職が必要な場合は、診断書をもらい、上司や人事部に相談しましょう。「傷病手当金」などの公的支援も活用できます。

冬季うつは、日照不足という明確な要因があり、適切な対処と治療によって必ず改善します。ひとりで抱え込まず、専門家の助けを借りて、無理のない「越冬」の方法を見つけましょう。

合同会社SUGARでは、冬季うつをはじめとしたメンタルヘルス不調を抱える従業員の面談や対応方法の助言など、産業医サービスを提供しています。

オンラインでの面談や管理職向けの研修など、ニーズに合わせた柔軟な対応で、企業のメンタルヘルス対策をご支援いたします。

メンタルヘルス不調の従業員への対応でお悩みの人事労務担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  1. 冬季うつで仕事に行けないのは、甘えなのでしょうか?

    いいえ、甘えではありません。冬季うつ(季節性感情障害)は、日照不足による脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが原因で起こる病気です。過眠や気力の低下は本人の意思とは無関係に現れる症状であり、適切な治療と休養が必要です。

  2. 冬季うつで会社を休む場合、どのように伝えればよいですか?

    まずは直属の上司に「体調不良のため」と伝え、休養が必要であることを相談するのが基本です。可能であれば医師の診断書を提出すると、会社側も状況を客観的に理解しやすくなります。プライバシーに関わるため、具体的な病名を自ら伝える義務はありません。

  3. 冬季うつの主な症状にはどのようなものがありますか?

    一般的なうつ病と共通する気分の落ち込みに加え、「過眠(寝過ぎてしまう、朝起きられない)」「過食(特にパンや甘いものなど炭水化物を強く欲する)」「体重増加」といった非典型的な症状が特徴です。これらの症状が秋から冬にかけて顕著になり、春になると軽快する周期性がみられます。

  4. 企業には、冬季うつの従業員に対してどのような義務がありますか?

    企業は、労働契約法に基づき、従業員の心身の健康と安全に配慮する「安全配慮義務」を負っています。従業員の様子の変化(遅刻の増加、パフォーマンス低下など)から不調を察知した場合は、業務負荷を軽減したり、産業医との面談を設定したりするなどの対応が求められます。

  5. 冬季うつの対策として、自分でできることは何ですか?

    最も有効なセルフケアは、毎日できるだけ日光を浴びることです。特に午前中の光が効果的です。また、セロトニンの原料となるタンパク質(肉、魚、大豆など)を豊富に含む食事を心がけ、ウォーキングなどのリズム運動を日中に行うことも症状の改善に役立ちます。

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