GROWモデルとは?面談で簡単に使えるコーチングの質問例を紹介
ビジネスにおける人材育成では、指示されなくても自ら動く姿勢を持つ社員の育成が求められています。現状の課題を分析し、必要なアクションを取れる人材が育てば、困難に立ち向かうための組織力を高められるでしょう。
しかし、「指示がないと動けない社員が多い」「部下の主体性がない」と悩むリーダーや管理職の人も多いのではないでしょうか。主体性を身に付けるためには、思考を促すコミュニケーションが大切です。そのために効果的なのがコーチングにもとづく関わり方だといえます。
本記事では、コーチングの基本的な枠組みであるGROWモデルについて解説します。5つの視点を意識することで、社員の主体性を高められるシンプルなモデルです。社員教育や関わり方に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
GROWモデルとは?
GROWモデルとは、質問を通して相手を目標達成へと導くコーチング手法の一つです。達成したい目標や現状と目標とのギャップ、必要な行動を整理し、納得感を持って取り組めるようにサポートするモデルです。
以下の5つのステップを意識した質問を繰り返していくことで、コーチング的な関わり方ができるようになります。5つのステップに沿って、質問例を紹介します。
- G(Goal):目標設定
- R(Reality):現状把握
- R(Resource):必要なリソースの確認
- O(Options):選択肢の検討
- W(Will):行動計画と自己決定
G(Goal):目標設定
まず、相手の理想の姿や達成したい目標を明確化する質問をします。理想の状態をイメージしてもらったり、達成のイメージがしやすい具体的な目標を引き出すよう意識するとよいでしょう。
営業成績のような数値だけでなく、なりたい状態や獲得したい能力を含めて明確にすることが大切です。具体的には、以下のような質問を投げかけながら、目標設定をサポートしていきます。
【質問例】
- どんな結果を得たい?
- 1年後、3年後、5年後までにどんな目標を達成していたい?
- 何を達成すれば目標達成したといえる?
R(Reality):現状把握
目標が明確になれば、次に現状把握ができるように関わっていきます。目標と現状のギャップを確かめ、達成のために必要な行動や周囲の協力などを認識できるような質問を意識します。
【質問例】
- 目標が100点だとしたら、現在は何点?
- 目標達成のためにすでにしていることは?
- 前に進むことをさまたげているものは?
R(Resource):必要なリソースの確認
目標達成に必要なリソースを確認し、さらに現状の分析を進めていきます。リソースとは、達成に必要な資源のことで、過去の実務経験やスキル、人脈などを指します。すでに持っているリソースと不足しているリソースを把握し、具体的な行動を考えられるようサポートしましょう。
【質問例】
- 目標達成のために役立ちそうな過去の経験は?
- あなたらしさは目標達成のためにどう生かせる?
- どんな人が協力してくれたら、目標に近づく?
O(Options):選択肢の検討
目標と現状のギャップを埋めるための行動を検討します。相手の発想を広げ、幅広い選択肢を挙げられるように関わることが大切です。多くの選択肢から決定することで、納得して行動でき、モチベーションが高まります。
【質問例】
- 目標を達成するために、乗り越えないといけない障害は?
- 障害が全くないとしたら、何をする?
- 他の人がやっていたことで、自分でも取り組めそうなことは?
W(Will):行動計画と自己決定
目標達成のための行動を自己決定する段階です。「O(Options)」の段階で挙げた選択肢の中から、優先順位や期限を決め、具体的な行動計画を立てます。あくまでも、相手に決めてもらうことを重視し、納得感を持って決定できるように関わるとよいでしょう。
【質問例】
- どの解決策にエネルギーを注ぎたい?そこにどれくらいのエネルギーを注ぐ準備がある?
- ゴールに向かうために、あなたが最初に取るべき行動は?
- 実際にはいつから行動する?
GROWモデルを用いる3つのメリット
社員の主体性を引き出すために有効なGROWモデルですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つの視点から解説します。
メリット①:主体性の高い人材を育成できる
主体性の高い人材を育成できる点がメリットの一つです。GROWモデルでは、答えを与えるのではなく、自分自身で答えを見つけられるようにサポートします。目標設定を明確にし、具体的な行動に落とし込むプロセスを経て、納得して自己決定できるよう導きます。
そのため、問題に対して主体的に考え、具体的な解決策を自力で発見できる人材を育てられるでしょう。
メリット②:漠然とした問題を具体化できる
コーチングは、「どういう状態になりたいか」「どんな能力を生かせるか」など答えが一つではないテーマを扱うのに適しています。こういったテーマは、漠然と一人で悩みを抱えていることが多いでしょう。
問題が漠然としていると、解決のための具体的行動に結びつきにくいといえます。リーダーがGROWモデルを意識した関わりを行うことで、具体的にどのように解決すればいいかを検討できます。
メリット③:普段の会話でも活用できる
GROWモデルは、1on1のような個別に対話する場面だけでなく、普段の会話にも活用できます。仕事の進捗を確認するときや業務を依頼する際に、目標と現状を把握できるように質問するとよいでしょう。
部下に何かを伝えるときには、「○○した方がいい」とアドバイスしたくなることが多いかもしれません。GROWモデルを意識して、答えを導くように関わると、部下も納得感を持って仕事に取り組めるでしょう。
GROWモデルを用いるときの3つの注意点
GROWモデルは社員の主体性を引き出すために大切な関わり方ですが、注意すべき点もいくつかあります。3つのポイントを理解しGROWモデルを効果的に活用しましょう。
注意点①:部下の自己決定をサポートする
あくまでも部下が自分自身の意思で決定できるよう、サポートすることが大切です。GROWモデルに沿って質問をしても、すぐに答えがでないことがあります。関わる側は「こうすればいいのに」ともどかしい思いを抱えてしまうかもしれません。
ただ、自分と部下の答えが全く同じということは少ないでしょう。部下が本当に納得しているかを確認しながら、自分の言葉で「やりたい」といえるように支援する姿勢が重要です。
注意点②:継続的にフォローする
コーチングでは、目標達成に向けて継続的な行動を行うことをサポートします。そのため、GROWモデルに沿って目標を立てた後は、進捗を確認しフォローする必要があります。
定期的に1on1を行い、どこまで目標達成できているかの確認や、必要な行動を再確認します。1回きりの関わりで終わることなく、継続的にフォローしていくとよいでしょう。
関連記事:1on1ミーティングでストレス軽減できる?対話の姿勢や質問を解説
注意点③:問題によっては適さない場合がある
相手が抱える問題や解決したい課題の内容によっては、コーチングが適さない場合があります。コーチングが適しているのは、重要だが緊急性が低いテーマです。「新しい業務の進め方がわからない」といった緊急性が高く具体的な問題は、明確に指示した方がよいでしょう。
コーチングの特徴を正しく理解することで、テーマや目標の設定が適切となり、GROWモデルをうまく活用できます。コーチングの特徴については、以下の記事もご覧ください。
関連記事:カウンセリング・コーチング・ティーチング・コンサルティングの違い
まとめ:部下が納得できる自己決定をサポートしましょう
GROWモデルは、部下の主体性を引き出すためのコーチング手法です。5つのステップに沿った質問を意識することで、主体的に考える姿勢を養い、自律的に動ける人材への成長を促します。
ただ、モデル通りに質問すればよいのではなく、最適なテーマ設定を行うことや相手の主体性を重視する姿勢など、コーチングの基本を理解する必要があります。そのためには、まずは自分自身が主体的に考える習慣をつけることが大切です。
コーチングの基本姿勢を身に付けてGROWモデルを意識することで、よりよい関わりができるようになるでしょう。