
厚生労働省の調査では、現在の仕事において強いストレスや不安を感じている労働者の割合は53.3%であることが分かっています。2人に1人が強いストレスを抱えて働いており、ストレスが限界に達している人も少なくないといえます。
しかし、「気分が落ち込むけど、うつ病…?」というように、治療が必要なレベルなのか分からない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ストレスによって起こる4つの症状と、受診が必要な3つのサインについて解説します。紹介する症状やサインがみられる場合は、専門家への相談など適切な対処を取ることがお勧めです。
ストレスが限界に達していることに気づくためには、目安となる症状を知ることが大切です。ストレスによって引き起こされる症状は、「考え方」「感情」「身体」「行動」の4つの側面に表れることが多いでしょう。4つの側面に分けて、具体的な症状を解説します。
ストレスによって、気分の落ち込みや憂うつ感が強くなると、考え方が悲観的になってしまうことがあります。具体的には、次の3つの物事に対して悲観的になり、自分を責めてしまう傾向がみられます。
ストレスが続くと、些細なことでイライラしたり、不安を感じたりしやすくなります。自律神経の1つである交感神経が優位になり、感情を司る脳内神経伝達物質のバランスが変化するためです。
また、「やる気が起きない」「動くのが億劫に感じる」など、憂うつ感が高まる場合もあります。憂うつ感が高まると、意欲が低下して活動範囲が狭くなり、好きだった物事にも関心を失ってしまうことがあります。
ストレスを感じると、頭痛やめまい、腹痛などの様々な身体症状を引き起こします。考え方や感情の変化に比べて、比較的自覚しやすいため、ストレスを感じると初めに訴えられることが多いといえます。
特に注意が必要なのは不眠の症状です。過去に不眠がみられた人はそうでない人に比べて、うつ病の発症リスクが約2倍であることが研究で示されています。不眠が慢性化している場合は、見過ごさずに適切な対処を取ることが大切です。
参考:厚生労働省 こころの耳「No.5 身体症状に着目したストレス反応」
参考:Chang PP et al.(1997)Insomnia in young men and subsequent depression. The Johns Hopkins Precurors Study.
ストレスの増大により、飲酒や喫煙が増えることもよくみられる変化です。緊張状態が続くと、寝酒をしないと眠れなくなったり、喫煙しないと落ち着かなかったりと、依存しやすくなることがあります。
また、悲観的な考え方や憂うつ感が強くなった結果、家に閉じこもりがちで寝てばかりということもあります。これまでは休日に出かけていても、「どうせ出かけても身体がしんどくなるだけだ」と悲観的に考えて、行動することを躊躇するためです。
ストレスが限界に達した場合、精神疾患を発症してしまう可能性があります。厚生労働省の調査によると、精神疾患のうち頻度の高い病気は次の3つであることが分かっています。
参考:厚生労働省「平成30年版厚生労働白書 図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況」
ストレスが限界に達した場合、発症しやすいのは3つの精神疾患だといえます。具体的にはどのような症状がみられれば、精神疾患が疑われるのでしょうか。受診の目安となる症状について解説します。
「以前よりも物事についての興味関心が薄れた」「何もやる気が起きない」といった気分の落ち込みが2週間以上続いている場合は、うつ病の可能性があります。特に、ストレスの原因が解消されても気分が回復しないというような場合は、注意が必要です。
うつ病の代表的な症状としては、以下のような症状が挙げられます。一時的な症状ではなく、長く続いているという場合は、医療機関への受診をお勧めします。
プレッシャーのかかる場面では、不安になったり緊張したりすることは正常なストレス反応です。しかし、その程度が強く日常生活に支障が出ている場合は、不安障害になっている可能性があり、注意が必要です。
代表的な不安障害の症状は以下の5つに分けられます。症状が原因で「仕事や外出ができない」「人前で話せない」などと、これまでの生活が送れていない場合は適切な対応が必要です。
統合失調症という精神疾患では、考えがまとまらずに、現実的な解釈が難しくなることがあります。「周囲の人が嫌がらせをしている」「不気味なイメージが浮かぶ」など、嫌な考えで頭がいっぱいになる場合は注意が必要です。
また、不眠や気分の落ち込みといったうつ病のような症状が目立つ場合もあるため、見極めが重要です。周囲の環境が以前よりも変化してしまったと感じ、日常生活に支障が出てきた場合は、早めに専門家へ相談することをお勧めします。
「ストレスによって日常生活に支障が及んでいるのでは…」と気づいた場合、まずは自分のストレスの強さを知ることが大切です。
仕事のストレスは、業務量や裁量権、周囲のサポートなど様々な要因が絡んでいます。ストレス診断を行うことで、症状の程度やストレス要因の大きさをチェックし、適切な対処へ繋げられます。
自分でもできるストレス診断については、こちらの記事もご覧ください。
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ストレスによって引き起こされる症状は、こころやからだが示すSOSのサインだといえます。気づかないまま放置してしまうと、さらに重い症状に発展していく可能性があります。慢性化したストレスにより不調をきたすことは、甘えなどではなく誰にでも起こりえることなのです。
精神的に辛く、ストレスが限界かもしれないと気づいた時には、早めに精神科や心療内科などの専門機関への受診がお勧めです。