ストレスでノイローゼになりそう…診断方法と症状について解説
過度なストレスで心が疲れてしまうと、「自分ってノイローゼかな?」と心配する人も少なくありません。ノイローゼとは、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。
この記事では、ノイローゼの症状や特徴、ノイローゼになりやすい性格について解説します。
ノイローゼに該当する7つの精神疾患についても、具体的な症状とともに説明しています。ストレスがたまりノイローゼになりそうな人は、当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
ノイローゼ(神経症)の症状や特徴は?
ノイローゼとは、過度の不安からイライラや気分の落ち込みがみられるように、精神的に不安定な状態が続く精神症状を指します。明らかな身体の異常がないのに、動悸(どうき)や胃腸の不調などの症状が起こり、日常生活に支障をきたします。
とくに、仕事や育児、介護、対人関係において、環境の変化に適応できなかったときに発症することが多いでしょう。多くは不適応の原因を取り除くことで、心の安定を取り戻せます。
しかし、ノイローゼは、誘因のない気分の落ち込みや幻覚、妄想をはじめとした非現実的な体験などの精神症状はみられません。入院に至るまで症状が悪化することは少ないといえますが、放置すると日常生活を送れないレベルにまで悪化する場合もあります。
ノイローゼ(神経症)の代表的な7つのタイプ
ノイローゼは過度の不安がみられ、症状や関連する疾患は幅広いことが特徴です。精神医学では「神経症」と呼ばれていましたが、現在の診断基準では、より具体的な疾患名に分類されています。
以下、ノイローゼ(神経症)とされる7つの精神疾患について解説します。当てはまる症状があるかどうかチェックしてみましょう。ノイローゼやその他の心の病気については、下記の記事も参考にしてください。
参考: American Psychiatric Association「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き」医学書院 2014年(書籍)
1.パニック障害
パニック障害は、強い不安や動悸(どうき)を伴うパニック発作が生じる精神疾患です。パニック発作とは、強い恐怖感や不快感が数分以内にピークに達するもので、以下のような症状がみられます。
- 動悸(どうき)や発汗、震え、息苦しさ感覚
- 胸や腹部の不快感、吐き気
- めまい、ふらつき
- 感覚の麻痺
- 「どうにかなってしまうのでは」「死んでしまうのでは」という強い恐怖
さらに、パニック発作から「電車で発作が起きるのでは」という恐怖感が生じて、生活に支障をきたします。二次的に生じる恐怖は広場恐怖と呼ばれ、以下のような場所で恐怖を感じやすいです。
- 電車、バスなどの公共交通機関
- 駐車場、ショッピングモールなどの広い空間
- 店や映画館などの閉鎖空間
- 行列に並ぶ状況
- 自宅の外に1人でいる状況
2.全般性不安障害
全般性不安障害は、仕事や生活でのさまざまな出来事に対して、過度に心配し不安になることです。過度に心配する日が多い状態が6カ月以上続いている場合に診断されます。具体的には、不安や心配に伴い、以下のような症状がみられるでしょう。
- 落ち着きなく、緊張している
- 疲れやすい
- 集中できない
- 怒りっぽい
- 眠れない
3.恐怖症
動物や血液など、特定の対象や状況に対して強い恐怖感を抱く精神疾患です。恐怖対象として代表的なものは以下の4つが挙げられます。
- 動物:クモや虫、犬、は虫類など
- 環境:高所、水中など
- 血液:注射、けがをする状況など
- 状況:飛行機、エレベーターなどの閉所
恐怖を抱く状況の中でも、対人場面での不安や恐怖が強い状態は、社交不安障害と呼ばれます。人との雑談や人前で発言する場面など、注目を浴びることに著しい恐怖を感じる精神疾患です。
4.強迫性障害
強迫性障害は、「不安で何度も手を洗ってしまう」というように、不安を打ち消すために特定の行動を繰り返す精神疾患です。行動することで一時的に不安が軽減されますが、再び不安が生じると同じ行為を繰り返してしまいます。次のようなこだわりが代表的です。
- 不潔恐怖:汚れの不快感、感染への恐怖から何度も手を洗ってしまう
- 加害恐怖:「誰かを傷つけたのではないか」という不安に駆られる
- 確認強迫:鍵やドアを閉めたか不安で何度も確認してしまう
- 縁起強迫:決まった順番で行わないと、恐ろしいことが起きるのではないかと不安になる
5.心気症
心気症とは、「自分は何か重い病気にかかっているのではないか」という強い不安が生じている状態です。さまざまな病院を受診し検査を行っても、異常は見つからず、さらにドクターショッピングを繰り返すといったケースが多くみられます。具体的には、次のような症状が代表的です。
- 病気にかかっていないか何度も検査する
- 体調の異変を感じると重い病気にかかったのではないかと心配する
- インターネットで病気に関する情報を過度に調べる
6.解離性障害
解離性障害とは、意識や記憶などがまとまっている感覚が一時的に失われる精神疾患を指します。例えば、記憶が一時的に失われたり、つらい記憶が現実のようによみがえってきたりするなど、「自分」としての感覚が低下する状態です。症状としては以下のようなものが挙げられます。
- 解離性健忘:災害や事故など強いストレスから記憶が一時的に失われる
- 解離性遁(とん)走:過度のストレスから、失踪して異なる自分として生活する
- 解離性同一性障害:自分の中に複数の人格が現れる
- 離人症:現実感が失われ、自分が自分でないような感覚に陥る
7.気分変調症(抑うつ神経症)
気分変調症とは、うつ病よりは軽度な気分の落ち込みが長期間にわたって続く精神疾患です。従来は抑うつ神経症と呼ばれ、何らかのストレスイベントをきっかけに、2年以上軽い気分の落ち込みが続く状態を指します。具体的には、次のような症状がみられる場合が多いでしょう。
- 憂うつな気分が1日中続く日が、続かない日よりも多い
- 食欲が低下したり亢(こう)進したりする
- 気力が湧かない
ノイローゼ(神経症)になりやすい性格
人生で経験するストレスから、全ての人がノイローゼになるとは限りません。では、ノイローゼになりやすい性格とは、どのようなものなのでしょうか。
性格①:完璧主義で理想が高い
完璧主義で理想が高い性格は、ノイローゼになりやすいといえます。強い忍耐力で粘り強く取り組む一方で、理想の高さから細かいポイントまで気になってしまうことがノイローゼの原因につながるでしょう。
たとえば、完璧主義の対象が「自分の健康」に向いた場合、心気症になりやすいでしょう。少しの体の異変も見逃さず、対処しようと考えやすいからです。完璧主義だと常に良い状態でないと不安だと感じやすく、そのような傾向がノイローゼにつながりやすいといえます。
性格②:細かいものごとに敏感で心配性である
細かいものごとに敏感で心配性だと、不安が解消されず持続しやすいといえます。心配性な性格は、念入りに計画を立てて慎重に行動できる点が長所ですが、心配が強いと行動を避けてしまうことがあります。
行動できないと、不安が固定化してさらに恐怖感が増すといった悪循環に陥ってしまいがちです。たとえば、人前で話すのは緊張するので発言を避けると、ますます緊張が強くなるでしょう。不安を避けるために慎重すぎると、より不安が増大してノイローゼになる可能性があるのです。
性格③:内向的でよく反省する
反省することは、失敗から原因を分析し、行動を改善していくために重要です。しかし、「○○がダメだった」「こうすればよかった」と過度に反省して、自分に注意を向けすぎると不安が持続しやすいでしょう。
そのため、人生で経験する失敗や葛藤に対して、自責的に考え込んでしまうようなノイローゼの状態に陥りやすいといえます。
まとめ:ノイローゼは早めの対処が肝心
ノイローゼは、うつ病や統合失調症などの精神疾患に比べて、比較的軽度の症状であると考えられています。しかし、症状を放置してよいわけではなく、症状が重くなると生活に支障をきたしたり、ほかの精神疾患を併発する可能性もあります。
不安や恐怖が強く、自分ではコントロールできない場合、迷わず精神科や心療内科で相談することをおすすめします。